著者
久保田 紀彦 中川 敬夫 有島 英孝 井戸 一憲
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1. VEGF-Aに対するsiRNAをデザインし、ヒト悪性神経膠腫細胞株U87およびU251に対するVGEF-Aの発現抑制効果をRT-PCRおよびELISAにて検討し、2種のVEGF-Aの発現抑制効果の高いsiRNA配列を見出した。2.先のsiRNAをU87およびU251細胞にトランスフェクションし、その培養上清によるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の血管形成能をfibrin gel assay法にて検討し、血管形成能が阻害されることを確認した。3.U87およびU251細胞に対するsiRNAの導入効率を通常のリポフェクタミン法とMagnetofection法にて比較検討した。Magnetofection法により、より短時間に培養腫瘍細胞に導入できることを確認した。4.手術にて採取された神経膠腫組織中のVEGA-A発現をRT-PCR、ELISA、免疫組織染色にて検討した。腫瘍の悪性度と、腫瘍組織内血管密度、VEGF-A発現量に正の相関を認めた。5.VEGF-A mRNAの安定化因子であるHuRの発現を、培養悪性神経膠腫細胞および手術組織において、RT-PCRおよび免疫組織染色にて検討した。悪性神経膠原細胞は、高率にHuRを発現していた。6.HuRに対するsiRNAを作成、U87およびU251細胞にトランスフェクションし、腫瘍細胞の増殖能に及ぼす影響をMTS assayにて、VGEF-Aの発現抑制効果をELISAにて検討した。腫瘍細胞の増殖およびVGEF-A発現に対し抑制効果を認めた。7. HuR inhibitorであるleptomycin B(LMB)のU87およびU251細胞に対する効果を検討した。腫瘍細胞の増殖およびVEGF-A発現に対し抑制効果を認めた。8. U87細胞をヌードマウスの皮下に接種し、腫瘍モデルを作成、3週間後に、先のsiRNAを通常のアテロコラーゲン法にて局注し、腫瘍の成長抑制効果を検討したが、抑制効果は得られなかった。さらに、同siRNAを磁性粒子にて標識し、Magnetofection法を併用したが、腫瘍成長に対する抑制効果は得られなかった。
著者
IMAI Yuko
出版者
福井大学
雑誌
福井大学教育地域科学部紀要 (ISSN:2185369X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.325-350, 2014-01-10

福井大学教育地域科学部紀要(芸術体育学 美術編) , 4, 2013
著者
水田 英實
出版者
福井大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

デカルトが方法的懐疑を通して心身の実在的な区別に言及する一方、「身体は人間精神によって形相づけられる」とも述べて、人間精神=実体的形相という説を保持していたことは明らかである。ところで人間精神が、一個の実体としての人間の部分であるのか、それともそれ自身として存在する一個の実体であるのかという問題は、トマス・アクィナスにもある(拙論(1988))。ただしジルソンによれば、人間精神を不完全な本質を持つものと見るが完全な本質を持つものと見るかという点にトマス説とデカルト説の決定的な違いがある。さてこのようなデカルト説をとる際に生じる、心身の実体的結合の可能性に関する議論については、ゲーリングスやライブニッツらを含めて、従来から詳しい研究が行なわれてきた。しかし心身の実体的結合の必然性の問題については、近世初頭のアレクサンドロス説・トマス説・アヴェロエス説の間で三つ巴の論争があり、デカルトもそれを承知しているけれども、その詳細が研究されてきたとは言いがたい。この論争の中で、魂の不死性の論証可能性を否定するカエタヌスは、アレクサンドリストのポンポナッツィにくみして、トミストでありながらトマス説と齟齬をきたす主張をするにいたっている。あるいはスピノザの「人間の魂は神の無限の知性の一部である」という主張は、アリストテレスの『デ・アニマ』第三巻の解釈をめぐって十三世紀以来トミズムと対立関係にあるアヴェロイズムの側に位置づけしたのである。アヴェロエス説を論駁するトマスの立脚点は、可能知性の内在説であり、それは人間の魂における能動知性と可能知性の存在的な同一性の主張を伴う点で「殆どすべての哲学者たち」と一致しないだけでなく、離在的な能動知性と存在的に異なる内在的な能動知性の措定を伴う点で全く特異である。このようなトマス説の成立を可能にしたのは、言うまでもなくエッセの思想であり、創造の思想である。
著者
村田 拓也 松岡 達 成田 和巳
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、エストロジェンの心血管系の調節におけるオキシトシン(OT)およびビタミンD(VD)の役割を明らかにすることである。マウス心房筋由来細胞において、VDレセプター(VDR)の発現を抑制すると、Caトランジエントの異常が観察され、心機能に関わる数種類の遺伝子の発現が減少した。ラットの発情前期において、血圧は低下し、大動脈のOTレセプター(OTR)のmRNA発現が増加した。さらに、卵巣摘出した雌ラット右心房のVDRのmRNA発現が、エストロジェン投与により抑制された。以上のことから、エストロジェンの心血管作用において、OT作用とVD作用が補完的に働いている可能性が示唆された。
著者
成瀬 廣亮
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

注意欠陥多動性障害(以下、ADHD)を持つ児童を対象に、運動機能の特性を同年代の定型発達児(以下、TD)と比較検討した。対象は、7歳から12歳までの通常学級に通う児童を対象とし、解析には、ADHD男児19名(平均年齢9.7歳)、TD男児21名(平均年齢10.7歳)の測定データを使用した。ADHD児ではTD児と比べ、運動機能検査が有意に低値であり、特に巧緻動作やボールスキルで有意に低値であった。歩行解析では、ADHD児ではTD児と比べ、1分間に出す歩数、骨盤前傾角度、股関節角度が有意に高値であった。追加解析にて、骨盤前傾角度が、ADHD症状と有意に相関し、ADHD特異的であることが示唆された。
著者
堀 俊和
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、反射位相を任意に制御できるメタ・サーフェス(Meta-Surface:MTS)の設計・構成技術を確立するとともに、反射面における特異な反射性能を有する新たな反射面を実現し、アンテナ・伝搬領域における適用領域の開拓を行うことである。研究においては、周波数選択板と地板から構成されるMTSを取り上げ、光学近似理論を用いた簡易設計法を提案した。これを用いて、MTS反射板、完全磁気導体特性を持つMTS、偏波変換MTS、反射角制御MTS等の新たな反射性能を有する特異な反射面の設計法・構成法を確立した。さらに、これらの研究成果をアンテナ・伝搬領域に応用し、その実現の可能性を明らかにした。
著者
渡邊 洋
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

路面雪氷正常予測モデルの改良について、数値計算また、補足的な室内実験により検討を進めた1 単一層路面雪氷状態モデルの課題抽出(1) 雪氷厚および質量含氷率の計算誤差が、雪氷厚の増大に伴って、雪氷厚20mmを境に急増する。(2) 単一層路面雪氷状態モデルの適用範囲は、雪氷厚20mm以下が望ましい。2 多層路面雪氷状態モデルへ改良し、適切な雪氷分割要素厚により、計算精度の向上に努めた。(1) 多層路面雪氷状態モデルの方が、先出の単一層路面雪氷状態モデルより高く、雪氷厚が20mm以下であれば、計算精度は無次元計算誤差0.06以下(雪氷厚の計算誤差1.2mm以内)となる。(2) 多層路面雪氷状態モデルでの雪氷分割要素厚は初期雪氷厚の2割程度で良い。3 路面薄雪氷層に入射するアルベドと透過率を考慮したモデル改良を行った(1) アルベドは、雪氷密度および質量含氷率で規定され、厚さ0.04m以下の薄雪氷層では融解に伴うアルベドの低下は著しい。(2) 透過率は、雪氷厚の増加とともに指数関数的に低下し、その低下率は湿潤、シャーベット、乾燥雪の順で大きくなる。(3) 透過率は、雪氷厚と水、氷および空気の体積割合で表現できる。4 雪氷層と路面との間の接触熱抵抗の考慮した改良を実施した(1) 雪密度が増加するにつれて、乾燥積雪路面の接触熱抵抗は指数関数的に減少する。(2) シャーベット路面の接触熱抵抗は、質量含氷率が0.6以下では湿潤路面の値(1.1×10-3m^2K/W)と変わらないが、0.6以上になると非線形的に増加する。(3) 雪氷状態に係らず、接触熱抵抗は体積含空率の増加に伴って指数関数的に増大する。今後は、凍結防止剤の散布に伴う雪氷性状の変化を取り入れたモデル改良が必要である。
著者
泉 佳伸 松尾 陽一郎 山野 直樹 砂川 武義 小嶋 崇夫
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

マイクロ波技術を使ってこれまで困難だと考えられてきた水溶液系のDNAの評価を可能にした。具体的には、プラスミドDNAの鎖切断に伴う大きな構造変化とそれによる誘電率変化を、空洞共振器の共振周波数変化等で検出し、精度や再現性の向上のために環境の影響を低減させた。酵素で2本鎖切断させたDNAと切断前のDNAで測定値に違いが得られた。この技術を用いて、放射線被曝線量評価手法に応用できる可能性を見出した。
著者
友田 明美 藤澤 隆史 島田 浩二 小坂 浩隆
出版者
福井大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

自閉スペクトラム症(ASD)の発症リスク因子である環境ストレスとしてのミクログリア活性化分子ネットワークに着目し、ASDのバイオマーカー候補としてmiRNA(micro-RNA)解析を行った。福井県A町で出生した子の発達に関する前向きコホート調査参加者の母子に対し、視線計測検出装置による社会性の評価を行った。その結果、母のメンタルヘルスは乳児期における子の社会性発達へ影響することが示唆された。また、月齢により異なる側面の社会性が発達するが、その発達の程度はOXTR遺伝子多型によって異なる可能性が示唆された。本成果は、ASDの病態解明を目指した臨床応用への足掛かりになりうる。
著者
福元 謙一 野際 公宏 鬼塚 貴志
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では材料評価手法としてTEM内引張試験その場観察法により熱時効および照射により生じる組織要素の硬化因子パラメータの定量評価を行い、熱時効および損傷発達過程に伴う高温強度特性変化を予測評価した。Bcc金属の純Vおよび純Feでの研究結果から運動転位と空孔型欠陥集合体であるボイドの相互作用が直接観察され、材料因子による障害物強度について測定した。その結果、ボイドによる照射硬化は母材の剛性率などに依存せず、ボイド形状因子が硬化量に対して支配的であるであることが示された。上記手法を用いた信頼性の高い原子力構造材料寿命評価解析手法を確立した。
著者
越野 格
出版者
福井大学
雑誌
福井大学教育地域科学部紀要 (ISSN:2185369X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.21-66, 2014-01-10

福井大学教育地域科学部紀要(人文科学 国語学・国文学・中国語学編) , 4, 2013
著者
綾城 初穂 平野 真理
出版者
福井大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

価値観が多様化し、社会変動の大きい現代日本において、子どもの心理援助は社会文化的文脈(ディスコース)を含めて検討される必要がある。そこで本研究では子どもの心理援助の過程を、ディスコース分析、特にポジショニング理論の枠組みから検討し、理論化することを試みた。その結果、a) 子どもが苦しむディスコースに対してセラピストが取るポジショニング(あるディスコースに対して取る立ち位置)が子どものポジショニングも変化させること、b) この過程を通して、子どもは多様なディスコースを利用するようになっていくこと、c) このディスコースの多様化が子どもの心理的回復につながること、の3点が大きく示された。
著者
田中 正人 玉井 良則
出版者
福井大学
雑誌
福井大学大学院工学研究科研究報告 (ISSN:04298373)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-9, 2009-03-31

A molecular dynamics simulation was carried out in order to investigate a peculiar permanent densification phenomenon for SiO_2・K_2O・CaO・SrO glasses of an invert composition, i.e., the fraction of SiO_2 lower than 50 mol%. The phenomenon was previously observed by an experiment by high pressure treatment: the densities of permanently densified glasses exhibit a maximun value at 3 GPa (Kawamoto et al., J. Non-Cryst. Solids, 284, 128(2001)). In our simulation, the density profile was qualitatively reproduced: the density after decompression exhibits a maximum at treatment pressure 12 GPa. After decompression, the five-and six-coordinated Si species, which promote a network at high pressure, remain mostly at treatment pressure of 12 GPa, where the density exhibits a maximum.