著者
前田 桝夫
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

水を注ぐだけで生殖現象を観察できる教材をシダ植物ミズワラビ(Ceratopteris richardii)と日本在来種のカニクサ(Lygodoium japonicum Sw.)を材料としてプロトタイプを作製した。観察キットは容器底面に虫眼鏡を当てることにより胞子から発芽し前葉体(配偶体)の成長を観察することができる。さらに、反射鏡を介して倒立型の簡易型複合顕微鏡としての観察ができることも検討した。児童生徒は注射器を使って、フィルターを通して水道水を注げば、実験が開始されるシステムになっている。継続的、発展的な実験への展開のために安価で簡易型のクリーンベンチの試作も試みた。その他、裸子植物イチョウの精母細胞の段階の花粉管を単離・培養し、精母細胞の分裂から2つの精子の形成、成熟精子の過程を容易に観察できるハンギングドロップ法を開発した。
著者
横井 正信 近藤 潤三
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

近年の経済のグローバル化、経済成長率の低下、国民の高齢化といった先進諸国共通の構造変動がドイツの協調重視型の経済社会・福祉国家体制をどのように変容させつつあるかを、具体的な政策対応の面から調査分析した。その結果、福祉国家体制再編のための政策面での選択肢の幅の狭さが二大政党の政策面での実質的接近をもたらすと共に、両党間の差異を不鮮明化させ、従来のドイツの政党システムに大きな変化をもたらす可能性があることを明らかにした。
著者
八木 秀司 謝 敏カク 佐藤 真
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

中枢神経系の発生において神経細胞の移動と増殖に関与すると考えられたFilip分子とFilip相同分子の機能解析を通じ、神経発生における新たな調節系を明らかにすることを目的として本研究を行った。その結果、細胞骨格関連分子がFilip分子とFilip相同分子に結合することを見いだした。この結合を通じてFilip分子が結合分子の機能を調節していることを見いだし、神経細胞におけるFilip分子の新たな機能を同定した。
著者
小枝 兼二 黒岩 丈介 小倉 久和
出版者
福井大学
雑誌
福井大学大学院工学研究科研究報告 (ISSN:04298373)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.9-14, 2008-03-31

In this paper,we construct the character search amusement demonstration system in explaining basic image processing techniques for the PBL lecture.At the Graduate School of Engineering,University of Fukui,new program for graduate student, PBL,starts on last October.One of lectures at the Deparment of Human and Artificial Intelligent Systems opens a copse,"Construction of amusement demonstration system in promoting an investigation" as one part of PBL. The main purpose of the lecture is to construct an amusement demonstration system which helps better understand in to our investigation for people. My major filed is in medicali image processing,and especially,I investigate 3D filter design for CT images in improving visibility RI capsules in prostate cancer treatrment. Then, in explaining my study for undergraducate students,it is important to induce intensest in image processing techniques.Therefore,we construct the character search amusement demonstration system. Through the lecture for 1st degree undergraduate students,I introduce major filed by means of the system.The system is quite to explain and almost students exhibit interest in my major filed.
著者
玉川 洋一 杉本 章二郎 小林 正明
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

原子力発電所およびその周辺施設等における主に建屋内の漏洩放射能のモニターを行うため,ガンマ線のコンプトン散乱を利用した数個のシンチレーターからなるリアルタイム型全方向有感型の検出器の開発を行った.2インチのNaI(Tl)シンチレーターとプラスチックシンチレーター等を組み合わせて,角度分解能5°でガンマ線のエネルギー同定可能な検出器のプロトタイプを2つ製作し,ガンマ線源の飛来方向を視覚的に捉えるための描画ソフトも開発した.
著者
山田 武千代 坂下 雅文 窪 誠太 藤枝 重治
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

スギ抗原で刺激されたヒト好塩基球の培養上清により、気道粘膜由来線維芽細胞からのTSLP産生は有意に増加した。スギ花粉症患者自己IgG(高濃度)、キメラ分子で作用させることにより、ヒト好塩基球による気道粘膜由来線維芽細胞からのTSLP産生を抑制した。気道粘膜由来線維芽細胞にIL-4存在下でヒスタミンを付加するとTSLP産生は有意に増強した。刺激ヒト好塩基球の培養上清による線維芽細胞からのTSLP産生は抗IL-4Ra(CD124)阻止 抗体、抗ヒスタミン(H_1)受容体抗体の処理により有意に減少することを明らかにした。スギ抗原刺激によりヒト好塩基球からのヒスタミン遊離とIL-4とIL-13の産生が有意に増加することを確認した。 スギ花粉症でも好塩基球がIgE依存性アレルギー疾患の責任細胞であり、Th2応答や適応免疫応答である2次抗体産生を制御していると考えられる。好塩基球は、アレルギーなどの抗原特異的な免疫反応で、司令塔として重要な役割を果たしていると考えられる。
著者
保科 英人
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,農村地帯に放棄された水田を,ビオトープとして,学校教育や社会教育の材料として維持・管理し,活用していくシステムを確立していくことを目的としている.フィールドは,平成17年度と同様,越前市(旧武生市)黒川町の休耕田を用いた.このエリアは,武生西部地区と呼ばれ,ナミゲンゴロウやハッチョウトンボのほか,アベサンショウウオなどの希少種が数多く残存する地域として有名である.環境省が全国から4つ選定した「里山保全モデル事業」の1つにもなっている場所である.フィールドとなった休耕田の管理を始めてから,今年で4年目である.近年の温暖化,少雪傾向を反映してか,イノシシの増加が目立つ.そのため,あぜの決壊が頻繁に起こり,その対策が必要となった.なお,希少種であるナミゲンゴロウは,平成19年度も新成虫が誕生している.トンボ類では,ニューフェイスの飛来は見られなかったが,種多様度は全体的に維持されている.里地保全で最も重要と言うべき,地元の協力は相変わらず強く得られている.アベサンショウウオに代表される希少種の保護活動が,住民の意識を高めているのは言うまでもないが,それから派生して,外来種問題などにも協力を得られている.オオクチバスやアメリカザリガニと言った里地に生息可能な侵略的外来種に対しては,地域の厳しい監視の目が存在する.昨年度から見られるようになったヒシ類の極端な増加は見られず,トンボ類にとって,重要な休憩場所及び産卵場所になっていることが観察された.他地域に位置する休耕田との比較の調査を前年に続き,継続した.北陸における水資源の豊かさは,本州太平洋側や四国,九州と比べて際だっており,ビオトープ造営や維持・管理に関しては,大きな強みであることが改めて示された.
著者
川本 義海
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

まず道路管理者、交通管理者および道路利用者から指摘された問題点に対するハード面(道路構造面)における対策はそれほど進んでいなく抜本的な改善は困難な状況を把握し、とくにソフト面での対応の重要性を確認した。次にソフト面において対策の要点と考えられる雪道の情報提供による交通マネジメントの方法を提案するために、運転者に有効とされる情報内容、情報入手媒体、情報入手タイミングを検討した。その結果、移動中のタイムリーかつ正確な交通情報の必要性が明らかとなり、とくに道路上で提供されている道路交通情報板が重要であることが確認された。そこで現在提供されている情報の諸問題のうち、これまであまり指摘されることのなかった提供される情報のあいまいさおよび運転者の認識不足に着目し、情報提供側の改善点はもちろん、運転者側の改善点も明らかにすべく、運転者に対して情報の正確な認識と判断の観点から、運転者に対するアンケート調査を通じて提供されている情報に対する運転者からみた評価のランク付けをおこなった。あわせて従来体系的に整理されることのなかった情報の内容をそのレベルに応じて規制、警戒、指示、案内の4つに分類した。これら情報の分類と評価ランクという概念を用いて道路交通情報板で提供されている内容の標示方法の是非、内容の是非についても検討できる基準を提示したとともに、標示の組み合わせによる効果的な情報提供の具体例についても提案した。これにより、情報提供者側の意図と運転者の理解の差を少なくすることが可能となり、より分かりやすく有効な情報提供と享受による冬期の道路交通マネジメントに資することにつながることを示した。
著者
青木 幸一
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

電極上に電解合成した導電性高分子膜は、電気化学的なスイッチングにより、導電体(酸化体)と絶縁体(還元体)との間で相変化を起こす。イオン性溶液中で還元膜を電気化学的に酸化すると、電極に接した部分はイオンの放出または取り込みを伴って電子導電体になり、それ自身が電極として作用する。その結果、導電層が電極表面から溶液/膜界面へ向かって成長すると考えられ、本研究室では、この成長を導電層伝播機構と名付けて理論的に取り扱い、成長速度を測定してきた。導電膜を還元すると、膜全体にわたって均一に絶縁体化することがわかった。それ故、膜の酸化還元を繰り返すと、膜の電極近傍では酸化状態、溶液に近い側では還元状態をとる。すなわち、イオンの膜への取り込み量に動的分布を作ることができる。この分布をマクロ的に拡大するため、電極から引き剥した膜の一端に別の電極を取り付けてスイッチングを行うと、膜の長さ方向に酸化と還元体の分布が形成できた。ポリアニリン膜における電位と導電種の濃度との関係をスペクトロメトリーにより測定したところ、大きなヒステリシスのために、不可逆性が重要な問題になった。酸化方向の膜の変化では、電位の変化速度に依存しなかったため、平衡に近い状態が得られた。電位と導電種の対数濃度との関係はネルンスト式で表される直線からはずれ、ある電位で急激に折れ曲がることが分かった。この電位はパーコレーション閾値電位と考えられ、電極と電子的につながった酸化体と電子的につながらない酸化体との線形結合によってネルンストプロットを説明した。また、誘導電流を利用した抵抗測定に成功した。現在、そのpH依存性について実験が進行中である。
著者
吉田 伸治 岸 由紀子 米田 真梨子 蘇 鐘玉 井上 理史
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

数値シミュレーションに基づく屋外歩行者の移動・滞留に伴う温熱環境の変化を考慮した歩行空間の温熱快適性の評価手法を開発した。本研究では、被験者実験、屋外温熱環境実測により歩行空間の温熱環境の現状を把握・分析し、数値解析手法の開発に活用した。本研究で提案する数値解析手法は、今後、公園内の散歩コース内の緑陰、休憩地点の適切な配置、並びに街路内の温熱環境評価への適用が期待される。
著者
吉田 潤 (三寺 潤)
出版者
福井大学
巻号頁・発行日
2006

具体的な研究の実施内容としては、以下の4点について調査・研究を終えている。(1)鉄道の利用者と非利用者に対しQOLと地方鉄道の再生に関する意識調査を実施(2)QOLを構成する要素の重視度の解析と利用者、非利用者、それぞれの視点からの考察(3)地方鉄道の再生によるQOL向上の可能性に関する検討(4)全国の地方鉄道を対象に、地域特性別にみた地方鉄道の価値に関する検討(1)〜(3)については、昨年度にひきつづき論文の内容について検討を重ね、口頭による発表を終えた後、レフリー付英文論文(学会誌等への発表の第2、3番目の論文)として投稿し採択された。さらに、(4)については、これまですすめてきた研究成果をまとめ、投稿し採択された。また、欧米諸国における「地方鉄道の駅周辺地区におけるまちづくり(都市再生)」に関する詳細な事例調査を行い、駅周辺地区の再生に至った背景、市民と行政、事業者間のパートナーシップのあり方や具体的な再生手法等を日本における取り組みに活用できるように整理・分析するための準備もおこなっている。
著者
横山 修 秋野 裕信 青木 芳隆 横田 義史 楠川 直也 伊藤 秀明 棚瀬 和弥
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

メタボリック症候群候補遺伝子の変異が下部尿路症状(lowerurinary tractsymptoms:LUTS)の発生と関連しているのか、ヒトあるいは病態モデルを用いて検討して以下の結果を得た。(1)過活動膀胱患者の血液サンプルを用いて、特にcycloxygenase-2(COX-2)遺伝子多型(JAMA291:2221,2004)について検討した。COX-2のプロモーター領域には-765番目のグアニンがシトシンに変異している一塩基多Single Nucleotide Polymorphism(SNP)が存在するが、その頻度は低く、これが直接過活動膀胱発生に関与しているとは考えにくかった。しかし、ヒトの症状スコアーと尿中パラメーター(PGE_2、PGF_<2a>、NGF、substance P)を用いて解析した結果、脳血管障害患者では、そのphenotypeとしての尿中PGE_2量は下部尿路症状、特に過活動膀胱(overactive bladder;OAB)症状と有意に関連し、他のメディエーターであるPGF_<2a>、NGF、substance Pよりも強い相関があった。脊髄疾患患者でもOAB症状と尿中PGE_2量とは有意の相関を示した。(2)福井県住民健康診査を受けた男女を対象に、夜間頻尿と下部尿路症状とメタボリック症候群のリスク因子との相関を検討した。その結果、夜間頻尿は肥満・高血圧・心疾患・不眠が独立したリスクで、メタボリック症候群の危険因子の数が多いほどオッズ比が大きかった。(3)なぜ上位脳血管障害患者で尿中PGE_2量が上昇するのか、動物モデルを用いた検討を行った。ラットに脳梗塞を起こさずに排尿反射のみを亢進させても尿中PGE_2量やATP量に変化はみられなかった。しかし脳梗塞を作成すると膀胱壁のATP量増加が認められ、知覚C線維をレジニフェラトキシンにて脱感作するとATP増加はみられなかった。したがって脳梗塞により膀胱の知覚C線維のupregulationが生じていると考えられた。PGE_2量は遅れて増加するものと推測される。(4)メタボリック症候群の病態モデルを用いて、排尿筋過活動の発生について実験を行った。その結果、高フルクトース食にて11ヶ月飼育したラットでは、高血圧・インスリン抵抗性が獲得され、排尿回数の増加とともに膀胱壁COX-2発現の上昇・尿中PGE_2の増加がみられた。
著者
山口 かおる
出版者
福井大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

○研究目的:幼児の体力や運動技能を高めるために、どのような遊具や体操が効果的であるか考え、教育課程の中に取り入れて実践してみた。○研究方法:遊具は、オリジナルの遊具を考案した。この遊具は、目的に応じて、ブランコや登り棒、ハンモック・はしご・吊り輪などのパーツを組み替えて使うことができる。この遊具を好きな遊びの時間に取り入れて遊んだ。オリジナル体操は、五十嵐淳子先生を講師に招き、各学年に応じた動きを取り入れて作成し、運動会の開会式に行った。この他にも、定期的に淳子先生を招き、学年ごとのみんなの時間に体を動かす活動を行った。遠足にも一緒に来ていただき、親子で踊ったり、ゲームをしたりして過ごした。○研究成果:オリジナルの遊具ができたことで、ブランコ遊びや登り棒など新しい遊びに挑戦する幼児が多くなった。特に、竹の登り棒で、腕や足で登っていく力をつけたり、吊り輪にぶらさがり、一回転する力をつけたりできた。また、揺れるはしごを自分の力で登ろうと挑戦する幼児も出てきた。この遊具を用いながら、忍者の修行ごっこを楽しむ幼児も出てきて、楽しみながら体を動かして遊ぶことができた。運動技能も高まったものと思われる。また、オリジナル体操をしたり、淳子先生から様々な動きを教えてもらったりすることで、体を動かすことは楽しいと感じる幼児が増えてきた。体操は、腕を伸ばす・回す・ジャンプするなど様々な動きを取り入れており、幼児が普段はしないような身のこなし方を教えてもらうことができた。
著者
佐々木 百恵 長谷川 智子 上原 佳子 北野 華奈恵 礪波 利圭
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

看護師及び乳がん患者のリンパ浮腫に対する知識,認識及びケアの実施状況を明らかにすることを目的とし,看護師 383 名及び乳がん患者 526 名,計 909 名を対象に自記式質問紙調査を実施した。質問紙は研究者が独自に作成したリンパ浮腫の認識等に対するものと, 作田らのリンパ浮腫知識スケールを使用した。その結果,有効回答数 630 名(69%)であり,看護師の 7 割以上がリンパ浮腫ケアに対し不安を感じており,そのほとんどが知識に対する不安であった。
著者
三上 俊介 杉谷 貞男 山口 光代 土井 幸雄 黒木 哲徳 下村 宏彰
出版者
福井大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

緩増加な不変固有超関数(IED)の場合に成立する指標等式,Weyl群の表現およびstableな緩増加なIEDのliftingの間に成り立つ関係を緩増加の条件を外した場合への拡張を目指した。Gをコンパクトカルタン部分群T_0を持つ実半単純Lie群(R上定義されたreductive線形代数群の実点全体として実現されるものに限る)とする。t,〓をT,GのLie環の複素化,μ〓t^*に対し,Gのcoーadjoint表現によるμ〓t^*〓〓^*のstabilizerをL,μより定まるC上のθーstable放物型部分環をqとする。πをLの1次元表現(λ=dπ:微分表現)とし、三つ組(q,L,π)に対応してcohomological parabolic inductionで定まる(〓,K)ー加群をA(λ)と書く。(KはGの極大コンパクト部分群)また,Wを(〓,t)のWeyl群とするとWが自然に三つ組(q,L,π)に作用し,w(q,L,π)=(q_w,L_w,π_w)と書く。いま表現とその指標を同じ文字で表すと,{A(wλ),w〓W}は,それらが生成する有限次元部分空間V(λ)内にstableなIEDが存在するような拡張されたLーpacketになるので,最初に掲げた問題をこのV(λ)に限定して考えた。そして階数の低い群(SU(p,q);p+q≦3,Sp(2,R))の場合に次の結果を得た。定理次の(1),(2)は同値である。(1)Θ〓V(λ)がGの極大splitカルタン部分群上恒等的に0に等しい。(ΘはG'={Gの正則元全体}上の実解析関数とみなせることを用いる。)(2)L_wの極大splitカルタン部分群T_w(これはGのカルタン部分群にもなる)およびT_o上でΘ(w_ot)=ーΘ(t)(tはT_w〓G'またはT_o〓G'の元)が成り立つ。ただしw_oは(〓,t_w)あるいは(〓,t_0)のimaginary Weyl群の最長元である。これは緩増加な場合に自然な拡張になっている。これまで得られてきた事例をもう少し発展させ一般化できることを期待しており、その時点でまとめて公表するべく考えている。
著者
桑原 陽子
出版者
福井大学
雑誌
福井大学留学生センター紀要 (ISSN:18805876)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-27, 2006-03-01

本研究では、入門期の日本語学習者を対象に、4ヶ月に渡って単語クイズを実施し、得点の分析を行った。クイズは、主として、絵や英語単語を見てそれに対応する日本語を筆記再生する形式であり、新出単語クイズと既習単語クイズの2種類が並行して行われた。調査の結果、新出単語と既習単語クイズの成績には差がないこと、新出単語クイズの得点変動は学習者間で似た傾向が観察されたのに対し、既習単語クイズの得点変動の傾向はそれぞれの学習者で大きく異なることが示された。結果から、新出単語クイズの難易度が高く、既習単語クイズによる復習の重要性が示唆された。また、新出単語クイズ得点の推移については、単語クイズの難易度や、文法学習項目の難易度と併せた考察を行った。
著者
岩井 善郎
出版者
福井大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

耐摩耗設計における材料選択と摺動条件選定の指針を得るために、シビヤ摩耗一マイルド摩耗の遷移条件および摩耗率に及ぼす材料の含有成分と摺動環境の影響を研究した。1.成分含有量の異なる種々の銅合金についてピン・ディスク形式の摩耗試験を行った。その結果、Niの含有率が大きい銅合金では、シビヤ摩耗一マイルド摩耗の遷移がみられるが、Ni含有率が30%以下のCuーNiーZu合金(洋白)ではいずれの摩擦条件でもシビヤ摩耗を生じる。洋白材の耐摩耗性はNiとZnの含有率の増加にともなって向上する。その程度はNiのほうが著しいが、Znの含有率が増加するとNiの影響は小さくなる。このような成分含有率と摩耗量の関係を立体座標上にプロットして耐摩耗性を平面で表示することによって、最適な耐摩耗性材料の選択や創製の指針を提示できることが明らかになった。2.空中、イオン交換水中、食塩水中で炭素鋼どうしのすべり摩耗試験を行った。液の腐食性が増すとマイルド摩耗を生じる領域は高荷重側にシフトする。また液中のマイルド摩耗率は低荷重域では荷重によらずほぼ一定値を示すが、高荷重域では比例して増加するので、マイルド摩耗と荷重の関係は折れ線で示される。前者は表面の腐食疲労破壊による摩耗、後者は疑着摩耗に支配されているが、いずれも液の腐食性にともなって増加することが明らかになった。3.食塩水中の軟鋼の摩耗では、カソ-ド防食を施すと自然腐食下に比べてマイルド摩耗を生じる領域は低荷重側にシフトするが、マイルド摩耗率は小さくなることが明らかになった。4.前項の2、3の結果をから、腐食環境下の鋼の耐摩耗性はシビヤ摩耗一マイルド摩耗の遷移条件と摩耗率から評価すべきことの重要性が一層明らかになった。このような観点から、腐食摩耗に及ぼす成分元素の影響を引続き研究する予定である。
著者
松田 和之
出版者
福井大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

前年度に現地で撮影した写真やスケッチ、調査メモ等の記録をもとに、フランス国内の教会・礼拝堂内にコクトーが残した壁画やステンドグラスの各々に関して綿密な分析を加えた結果、イカロスを思わせる天使像など、予想どおりヘブライズム的な要素とヘレニズム的な要素の混淆がそこには認められ、壮年期のコクトーの文学作品より読み取れる独自の世界観が晩年の教会美術作品にも反映されていることを確認できたが、加えて、より注目に値する予想外の発見があった。二つの異端的な性格を秘めたモチーフ、具体的に言えば、マグダラのマリアのモチーフとテンプル騎士団のモチーフが、慎重にカムフラージュを施されながら、一連の教会美術作品の中に盛り込まれていたのである。こうしたモチーフをカトリックの礼拝堂の内部に描きこむ行為は、安易な気持ちでできるものではなく、コクトーの反カトリック的な宗教観が確固たるものであったことを物語っている。従来、その重要性にもかかわらず、彼の宗教観(カトリック観)について掘り下げて考察されることは少なかった。それだけに、今回の発見を端緒としてコクトーの文学と芸術の本質を正統と異端の観点より照らし出すことができれば、本研究は充分に意義のあるものとなるだろう。コクトーが残した教会美術作品の中でも、とりわけ最後の作品となったフレジュスの通称「コクトー礼拝堂」は、円形で天井から光を取り入れる仕組みになっており、南仏にあるマチスやピカソが装飾を手掛けた礼拝堂や同時代の日本に残されたヴォーリズの教会建築等に見られるそれぞれに個性的な意匠と比較しても、その様式上の特異性には際立ったものがある。ともすれば等閑視されがちな「コクトー礼拝堂」の存在意義を改めて確認できたのも、本年度の研究成果と言えるだろう。今後とも引き続き考察を深め、その特殊な形状にこめられた意味を探ってみたい。
著者
服部 勇
出版者
福井大学
雑誌
福井大学地域環境研究教育センター研究紀要 : 日本海地域の自然と環境 (ISSN:1343084X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.99-115, 2007-11-01

福井県旧美山町芦見地区では近年いちじるしい人口流出に伴う過疎化,農業の衰退がおきている.地区全体の現在人口は200名ほどであるが,江戸時代はじめには1,000名近い人口があった.江戸時代を通じて芦見地区は大野藩の領地であったが,周囲を険峻な山々に囲まれ,ほぼ閉鎖社会であり,独自の共同生活社会を形成した.新文化は大野藩から峠越えに入ってきたに過ぎない.明治以降になると,西側の福井市との交流を求めるようになり,芦見道の整備と相まって,文化交流,産業交流,及び人的交流は獺ケ口を経由して福井市側と行われた.日本の国家政策や地方都市の都市化により,芦見地区の人口流出が始まった.都市へのあこがれ,農業収入の不安定さ,少子化,等がその原因であるが,さらに,道路の整備により,平常は都会で生活し,休日に農作業に芦見に来る人も増えた.道路整備が人口流出を導く例である.過疎は,若年層の流出により進展する.現在の芦見地区の年齢構成は極端に高年齢側に偏っており,農業従事者も高年齢の女性が中心となっている.働き手の減少は農地の放棄や植林による杉林化を導いている.現在の土地利用状況は,杉林が山から平地へ,奥地から中央部へ押し寄せていることを示している.農業に従事する高齢者へのインタービューでは,跡継ぎがいないこと,農業経営では生活できないことなどから,現在の高齢者が最後の農業従事者となるというようなあきらめの境地に浸っている.芦見地区も美山町も過疎の進展をただ黙って見つめていたわけではなかった.芦見地区には平成になってからも旧芦見小学校が新築され,森林体験キャンプ場やスキー場が開発された.芦見地区を過疎から守り,発展させる想いで造営されたこれらは,現在では壮絶な過疎との戦いの痕跡として残されている.過疎から逃れる方策はあるのだろうか.芦見地区の多くの人々は芦見地区に愛着があり,先祖からの田畑を守っていきたいと想っている.しかし,結局は芦見地区やその周辺に働く場があり,ある程度の生活が保障されないと芦見に住むことは困難である.芦見地区がなくならないための一つの方法は,現在の芦見道(県道31号)の両端側,すなわち獺ケ口側と大野市側を拡幅直線化,一部トンネル化し,国道158号の代替道路の役割を持たせることである.この道は福井市-大野市間の主要道路となり,いくつかの産業も入ってくると同時に地区外に出た住民も戻りやすくなる.しかし,芦見地区以外の人々の通行が増えることにより芦見地区が変貌していくことは避けられない.