著者
鞍谷 文保 吉田 達哉
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

シンバルは薄板円板状の打楽器で,ブロンズの薄板円板をシンバル形状に成形する成形工程と音質を調整する音質調整工程(ハンマリング加工,音溝加工)を経て製品となる.本研究では,シンバルの音質に大きな影響を及ぼす成形加工後のベル(シンバル中央の膨らんだ部分)の形状とハンマリング加工に注目し,それらがシンバル音に及ぼす影響を明らかにする.最初に,音響放射効率を用いてシンバルの振動と放射音の関係を調べ,ベルサイズにより放射音特性が異なる理由を検討する.次に,ハンマリング加工後のシンバルの振動・放射音の変化予測法を提案し,それを用いてハンマリング加工によりシンバルの振動・放射音特性が変化する理由を検討する.
著者
山本 博文 藤井 純子 安田 正成 岡本 拓夫 外岡 信一郎
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

若狭湾地域に位置する福井県高浜町薗部の海岸低地において,津波によって形成されたと考えられるイベント砂層が見出された.薗部地区におけるコアリングおよびトレンチ調査により,深さ1m以浅のイベント砂層は海岸から550m以上内陸まで分布し,海岸の砂と同様のよく円磨された岩片を特徴とし,ところによっては貝殻,有孔虫,ウニのトゲなどの生物遺骸を含んでいた.また砂層基底部には明瞭な浸食が認められ,砂層中にはリップアップクラストがみられた.この砂層の堆積年代としては,上下の泥炭質層の14C年代測定結果からすると,14~16 世紀頃と推定された.
著者
荒木 良子
出版者
福井大学
雑誌
福井大学教育実践研究 (ISSN:13427261)
巻号頁・発行日
no.32, pp.203-215, 2008-01-31

全盲の一誠くん※が小学校に就学した頃,点字の学習をするのはまだ少し時間が必要だった。文字がなくてもたくさんのことを一誠くんは学んできた。小学校での豊かな生活が積み重なって6年生になった時に,彼は点字の勉強を始めた。その時々を大切にして,生活が膨らんできたときに文字を学ぶようになる時が訪れることを一誠くんに教えて貰った。大切にしてきたことはなんだったのか。一誠くんは全身を使って周りの世界を調べてきた。その時間は彼の生活のすべての土台である。朝読書で友だちに絵本を読んで貰ってきた。担任とともに友だちや先生に手紙を書いてきた。思い出に残る出来事を作文に仕立ててきた。位置や方向について教材を工夫して机上での学習を積み上げてきた。盲学校の教育相談担当者はクッキーを作りを通して点字の環境を取り入れてきた。これらの学習が展開され,「点字に向かう」時が満ちた。※ 保護者の了解により実名で記す。これは保護者のご希望でもある。
著者
芝 幸弘
出版者
福井大学
雑誌
福井大学教育実践研究 (ISSN:13427261)
巻号頁・発行日
no.32, pp.121-125, 2008-01-31

福井大学教育地域科学部附属中学校(以下「本校」という)では,第2学年の3月に修学旅行を実施している。その中で,総合学習の一環として,子どもたちは1年生の時から学んだことや経験したことを創作音楽ドラマという形で発表する。本研究では,一度上演された創作音楽ドラマを福井市連合音楽会(毎年6月中旬に実施)に向けて再構成していく中で,「自分たちの想いを,もっと伝えたい。」「聴いてくれる人達に感動を与えたい。」という子どもたちの気持ちを受け,日本歌曲での表現追究を通し,新たな視点から表現力を高めていく。グループでの楽曲分析や意見交換を通し「言葉」の大切さに気づき,言葉を大切にした表現を個人発表・相互評価で追究・確認することにより,聴き手により深く自分たちの想いを伝えることができるようになる。子どもたちは個の学びが全体の表現力向上につながっていくことを実感していく。
著者
松本 英樹 北井 隆平 成田 憲彦
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

正常マウス(Jcl:ICR マウス、5 週齡、雄)に炭素線(135 MeV/u、25 keV/μm)を 0.01~2.0 Gy 全身照射し、小腸および精巣でのアポトーシス誘導について精査した。その結果、小腸および精巣共にそれぞれの幹細胞および前駆細胞が分布する部位に特異的にアポトーシスが誘導されていた。また 0.05 Gy 以下の照射においても、小腸では非照射の対照マウスと比較して有意にアポトーシスの誘導が検出され、アポトーシス細胞の出現頻度は線量依存的に増加した。さらに特異的にアポトーシスが誘導されていた細胞を免疫組織化学染色により解析した結果、小腸および精巣いずれにおいてもアポトーシスが誘導されていた細胞は幹細胞およびその前駆細胞であることが明らかとなった。以上の結果から、炭素線の低線量被ばくにより正常組織の組織幹細胞および生殖幹細胞に特異的にアポトーシスが誘導されることが明らかとなった。
著者
中井 昭夫 川谷 正男 吉澤 正尹
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害など発達障害にいわゆる「不器用さ」、発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)の併存は多く、またDCDの頻度は世界的に約6-10%とされ、非常に多い状態であるが、我が国ではその研究は少ない。本研究では多数の発達障害症例での「不器用さ」に関する詳細な検討、2つの国際共同研究による国際的評価・スクリーニング尺度(DCDQとMOQ-T)の日本語版の作成と信頼性の検討、モーションキャプチャーや筋電図等バイオメカニクスによる行動計測方法の検討、事象関連電位、NIRS、PETなど脳機能イメージング研究を行い、我が国における「不器用さ」、DCDの発達小児科学的検討方法をほぼ確立することができた。
著者
上野 栄一 川野 雅資
出版者
福井大学
雑誌
福井大学医学部研究雑誌 (ISSN:13488562)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-18, 2015-01

Our nursing fields put most of our efforts into elucidation of tacit knowledge. It greatly assists the assessment ofthe evaluation for nursing care that we offer nursing care based on the EBN. As stated above, it is very important toclarify the tacit knowledge.In this paper, we explain the method for guiding from tacit knowledge to clinical knowledge using the analysis oftext mining. In the past, the mainstream of the nursing research was quantitative research with a central focus oncomputer science.Recently, number of qualitative researches have grown rapidly and developed various qualitative research design.Additionally, the method of content analysis used by computer and text mining is introduced in many nursing journalsto elucidate the nursing tacit of knowledge, and the research concerned of text mining is growing gradually. Thus,the usage of text mining is considered to contribute to resolution of nursing tacit knowledge.As stated above, we introduce the characteristics of text mining and see what is possible to utilize the text mining,and methods of analysis that is useful to clarify the tacit of knowledge in this paper.
著者
膽吹 覚
出版者
福井大学
雑誌
福井大学留学生センター紀要 (ISSN:18805876)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.11-19, 2007-03-01

『いちげんさん』の「僕」と『彗星物語』のボラージュは、その留学目的と卒業後の進路において、前者は<遊牧民的留学生>として、後者は<海亀的留学生>として対照的に描かれている。その背景を探ると、<遊牧民的留学生>には作者ゾペディ自身が投影されていることが考えられ、一方の<海亀的留学生>には日本人作家が描く外国人留学生像のひとつの典型を看取ることができるようである。このように「僕」とボラージュは、対照的なイメージで描かれているにもかかわらず、両者はともに、身近な動物とのコミュニケーションによって、留学にともなって生じたカルチャー・ショックを解消・克服しようとしている姿が描かれていた。そこに、<遊牧民的留学生><海亀的留学生>の区別を超えて、両者の根底に、対人コミュニケーションでは支えきれない苦悩や孤独感を抱えた外国人留学生像を看取ることができるようである。
著者
明石 行生 安倍 博 仲嶌 亜弓
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

実務環境において日常生活をおくるヒトにLEDを用いた光制御を施したときに生体リズムに及ぼす影響を調べるために合計10名の被験者が参加したフィールド実験を行った.実験の結果,朝と夜の光制御を行った場合の方がそうでない場合に比べて,ヒトの生体リズムの位相は前進し,振幅は増幅すること,朝の覚醒度が向上することを明らかにした.これらの実験結果と体内時計の光受容機構に関する最新の知見に基づき,生体リズム障害を予防・緩和し,学習・就業時の覚醒度を向上する光制御システムを構築した.
著者
大久保 貢 田上 秀一 谷口 秀次 森 幹男
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、これまでの高大連携活動で実践した経験を基に、高校教員と大学教員との連携により「学びの基盤」を育てる高大接続教育を創造する課題探求型の実践を行うことを目的に平成21年度~23年度の3年間で実施した。平成21年度~平成22年度は高校生と高校教員を対象として大学研究室(物理系研究室と化学系研究室)への体験入学を実践した。この体験入学により課題研究活動に関する知的好奇心の喚起や問題解決能力、論理的思考力、プレゼンテーション能力などの重要性について感じ取ったことが明らかになった。
著者
本田 信治
出版者
福井大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

私たちはモデル生物のアカパンカビを用いて、ヘテロクロマチン領域が異常に拡がるのを防ぐ複合体 (DMM-1/DMM-2)を同定し、この分子機構を発表した (Honda et al. Genes Dev. 2010)。今回、DMM-2と相互作用する候補蛋白質としてDMM-3を同定した。本研究では、この新規蛋白質DMM-3とヘテロクロマチン境界制御の関係を明らかにするために、当初の計画に沿った研究を行い、以下の成果を得た。1) アカパンカビKOプロジェクトでは、DMM-3の部分欠損株の作製しか遂行できなかった。そこで私たちは、ノックダウン法によりDMM-3遺伝子発現を抑制させた株、DMM-3が有し、種間で保存されたドメインに変異を入れた機能抑制株、更に独自にDMM-3の完全欠損株の作製を行い、これらすべてを成功させた。2) 上記で作製したDMM-3欠損株は極度の成長阻害を持つ。この欠損株にC末端にFLAGタグを付加したDMM-3遺伝子(DMM-3-FLAG)を導入すると、成長が元に戻った。この結果、成長阻害はDMM-3の欠損によって引き起こされること、そしてDMM-3-FLAGは正常な機能を持つことが明らかになった。3) DMM-3-FLAGを発現する株を用いて、DMM-3を精製し、Mass spec解析により相互作用する蛋白質を同定した。更に、この同定した蛋白質をFLAGタグ化した株を作製し、同様な方法で精製とMass spec解析を行った結果、DMM-3と相互作用することを確認した。この結果、DMM-3はこの新規蛋白質と安定的に相互作用することが分かった。以上から、次年度に計画しているDMM-3の分子機構から生理作用に結びつけるために必要な実験系の確立を本年度中に遂行することができた。
著者
駒田 致和
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

哺乳動物の大脳皮質の形成においては、適切な時期に適切な数の細胞が増殖・分化することが重要である。近年、終脳背側においてはradial glial cell(RGC)のほかに、intermediate progenitor cell(IPC)が存在していることが報告されている。我々は終脳背側のHedgehogシグナルが神経幹細胞の増殖や生存、分化を制御していることを報告し、さらに本研究では、特にRGCのIPCや神経細胞への分化、さらにはIPCから神経細胞への分化を調節していることを示した。その作用は胎生16. 5日においてより顕著であり、細胞周期を調節することによってRGCからIPC、さらには神経細胞への分化を制御している可能性がある。ヒトの大脳皮質では2、3層が高度に発達している。IPCは主にこの領域の神経細胞を産生することから、本研究は高次脳機能の形成や精神疾患の発症のメカニズムの解明に寄与することができる。
著者
森島 繁 村松 郁延 鈴木 史子 西宗 敦史
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

G蛋白共役型受容体はダイマーで機能していると信じられている。我々は、α1A受容体と相互作用するSnapinを発現させた細胞を用いて、研究を行った。Snapinはα1A受容体と結合するが、Snapin自身も2量体を作る。我々はSnapinの2量体形成に伴い、α1A受容体も2量体を形成していることを示唆するデータを得たが、Hill係数の解析から、驚くべきことに、従来の受容体とは異なり、2量体の受容体にたいして1つのアゴニストが結合することが明らかになった。
著者
小川 勇治
出版者
福井大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1.研究目的:本研究は、深刻化している野生獣による農作物被害防止のため、一般農林業者や高齢者が比較的簡便で取扱が容易な獣害被害防止装置を開発すること。特に、市販の駆除撃退用ロケット花火による獣害被害防止・抑止装置の技術開発のため、「野生獣被害防止の遠隔制御追い払い装置の技術開発」を目的とした。2.研究方法:本研究を進めるため、とれまでの研究成果、獣害被害防止・抑止技術及び追い払い技術など開発準備と予備調査研究を行った。本研究の「遠隔制御追い払い装置」の基本仕様は:(1)市販のロケット花火破裂音を利用。(2)花火は複数装填及び連続的に発射が可能。(3)花火の装填、発射及び発射方角は遠隔操作が可能。(4)装置の構成はコンパクトな構造で保守管理が容易。(5)遠隔制御は無線テレコントロールを使用。(6)野生獣の監視及び安全上花火による事故・火災防止のため監視カメラを活用。(7)追い払い装置や監視カメラの電源は太陽光発電を使用。(8)装置場所や野生獣出没・被害地の地図作成にGPSナビゲータを活用。本研究の試作及び実証実験は、監視や安全確保が容易で花火破裂音が迷惑にならない日の出から日の入りまでの日中に行った。3.研究成果:技術開発した「遠隔制御追い払い装置」は、野生獣と安全を監視カメラで監視しながら、遠隔無線でスライド式・回転式ロケット花火を装填・発射が可能で、安全にPIC制御のサーボ及びステッピングモータが機能・動作することを確認できた。実用的な「追い払い効果」は、イノシシの出没が夜間でサルの出没が無かったため検証出来なかった。GPSナビゲータの活用は、野生獣被害防止・抑止に有効であった。今後、本追い払い装置効果の検証と装置の改良など有効な技術開発研究を進めることを目指したい。
著者
重松 陽介 畑 郁江
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

タンデムマススクリーニング全国実施にあわせ、スクリーニング指標とそのカットオフ値の妥当性を保証するための精度管理法を検討し、旧来の指標での偽陰性例を回避し、偽陽性率を減じるために、CPT-2欠損症やメチルマロン酸血症を中心として新たな指標を開発した。更に、偽陰性回避で生じる再採血率増加を防ぐために、有機酸代謝異常症スクリーニングでは、初回濾紙血を用いた新たな二次検査法として濾紙血中有機酸高感度測定法を開発した。脂肪酸酸化異常症スクリーニングでは、精密検査法として血清でのアシルカルニチン分析の診断精度を実証し、また末梢リンパ球を用いた脂肪酸酸化能検査法を改良しCPT-1欠損症診断にも対応した。
著者
菊池 彦光 藤井 裕
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

競合的な交換相互作用を有する一次元量子磁性体は新規な物性が期待される。本研究ではダイヤモンド鎖、三本鎖、ジグザグ鎖磁性体の磁性を調べた。ダイヤモンド鎖の新規化合物の強磁場磁化を測定し1/3磁化プラトーの徴候を見いだした。三本鎖磁性体の現実物質アントラライトとセニックサイトの磁気的性質を研究した。アントラライトは非常に複雑な磁気相図を示すのに対し、セニックサイトは低温まで磁気秩序を示さない。両化合物の構造は類似しているにもかかわらず、磁性は顕著に異なる事から量子相転移が基底状態に存在する事が示唆される。ジグザグ鎖磁性体NaCr2O4において新規な機構に基づく巨大磁気抵抗効果を見いだした。
著者
高嶋 猛
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

永瀬狂三(明治10(1877)〜昭和30年(1955))は、東京帝国大学卒業(明治39年)後、横浜・大阪で民間の設計事務所で設計活動を行っていた。その後京都帝国大学の創立に伴う建築部の設置(明治40年)直後の明治42年から退職する昭和4年までの20年間、同大学の営繕組織の一員として建築の設計に従事した。その間大正8年からの10年間は組織の長であった。京都キャンパスでは初代建築部長山本治兵衛や建築学科教授武田五一の存在が大きかったためか永瀬個人の代表的作品は少ない。その中でキャンパス外の大分県別府市の京都帝国大学別府地球物理学研究所(大正12年)や、京都大学以外の大和田銀行本支店(福井県、昭和2年)、敦賀町庁舎(福井県、昭和8年)では京都大学キャンパスとは違った自由な意匠で設計を行っている。このことから、永瀬狂三はこれらの建築において自由に実力を発揮でき、また永瀬の建築観をよく示していると考えられる。山田七五郎(明治4年(1871)〜昭和19年(1944))は、東京帝国大学卒業(明治32年)後、福岡医科大学、長崎高等商業高校の創立時の営繕組織に関わり、明治38年から大正2年までは長崎県技師を勤めた。大正3年からは横浜市に移り、大正9年からは初代横浜市建築課長となり、昭和4年の退職までの30年間を官庁の営繕組織の一員として設計活動を続けた。この中で特に長崎県時代の明治37年〜43年までの第二課(土木課)事務簿から当時の営繕の職務内容や仕事の推移が把握された。技師としては、議会で答弁を行う立場であり、また皇室の来県では関係施設の設計を自ら行うなど、組織内での位置づけが把握された。また永瀬同様、森田銀行本店(福井県・大正9年)等の営繕組織外の設計活動の位置づけの需要性を知ることができた。