著者
岩崎 博之
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

31年間AMeDASデータと高層気象データを利用して,近年,北関東山岳域の南側で日没後の豪雨(25mm/hr)が増加し,かつ,大気中の水蒸気量も増加していることを示した.また,数値モデルの結果から,大気中の水蒸気量が増加すると,この領域での日没後の積乱雲活動が活発することが示された.近年の水蒸気量の増加が,北関東山岳域の南側での積乱雲活動の活発化に寄与している可能性が示唆された.
著者
坐間 朗 田村 勝
出版者
群馬大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1.ラットC6神経膠腫細胞を継代培養し、ラットの大脳に移植し、ラット神経膠腫モデルを作成した。血管新生阻害剤TNP-470 (AGM-1470)は武田薬品から供与され、10%エタノールに溶解し移植後8日目から隔日で15回まで腹腔内注射した。コントロール群は10%エタノール液を同量注射した。2.移植後の平均生存日数はコントロール群で35.7日、TNP-470・10mg/kg投与群で26.3日、同30mg/kg投与群で29.1日。死亡時の脳腫瘍の体積はコントロール群で266.7mm^3、30mg/kg投与群で227.5mm^3。移植時から死亡時に至る体重は、コントロール群で149.4gから235.6gへ増加し、TNP-470・30mg/kg投与群で172.5gから190gまで増えたのち減少し死亡時178.7gであった。TNP-470の脳腫瘍増殖抑制効果は推測されたが、副作用で体重も減少し生存期間が短縮すると思われた。3.移植後経時的にラット神経膠腫モデルをヘパリン加生理食塩水とホルマリンで潅流固定し、proliferating cell unclear antigen (PCNA)免疫染色を行い、この陽性率で腫瘍細胞(以下「腫瘍」)と腫瘍血管内皮細胞(以下「内皮」)の増殖能を検索した。腫瘍の体積を[ ]内に、光顕百倍1視野当たりの腫瘍内血管数を( )内に記す。PCNA陽性率はコントロール群では移植後1-20日目に腫瘍19%[88.3^3]・内皮4.4% (19.6本)、21-30日目に腫瘍31.6%[255.2^3]・内皮11.6% (18.7本)、31-40日目に腫瘍35.3%[257.0^3]・内皮12.7% (20.6本)、41日目以後腫瘍25.6%[308.0^3]・内皮6.2% (10.0本)であり、TNP-470・30mg/kg投与群では、移植後1-20日目に腫瘍16.8%[64.7^3]・内皮6.0% (41.7本)、21-30日目に腫瘍14.6%[275.2^3]・内皮4.1% (19.2本)、31-40日目に腫瘍23.9%[160.0^3]・内皮5.2% (22.0本)、41日目以後腫瘍7.0%・内皮2.0%。TNP-470による増殖能の抑制は内皮に強く見られ、次いで腫瘍にも認められた。4.今回の脳腫瘍の透過電子顕微鏡標本および血管鋳型の走査電子顕微鏡標本を現在作成中である。
著者
新井 雅隆 斉藤 正浩
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ディーゼル機関から排出される粒子状物質(すす)を除去するために,すすの捕集と燃焼を繰り返すことで連続処理を可能とした電界式すす除去装置(E-DPF)を新たに開発した.この装置の特徴として,E-DPF内に電極を兼ねたステンレス製の多孔板が層状に配置されており,交流電界(0〜260V)あるいは直流電界(0〜350V)を電極間に印加した.E-DPF装置の基本的性能を調べるために,ディーゼル排ガスの模擬ガスとしてアセチレン火炎から発生するすすを用いて実験を行った.その結果,すすは電極を兼ねた多孔板を通過する際に,電界の作用により帯電し,分極したすす粒子が多孔板に付着して電界方向に粒子のブリッジを形成することがわかった.そのブリッジ状すすの捕集量と電極間の電流には相関があり,印加電圧が低い領域では比例関係となるが,印加電圧を高めてブリッジ状すすが再燃焼する領域では,多孔板間のブリッジが局所的に切断されて電流値の増大が抑えられる.ブリッジ状すすの生長速度は電界強度が比較的低い約50kV/mで最大となるが,すすが再燃焼するには至らなかった.また,電界強度が100kV/m以上になるとブリッジ状すすが火花放電あるいは直接通電によるジュール熱ですすの再燃焼が生じ,本実験範囲では150kV/m付近において,すすの再燃焼効率が約30%で最も高くなることがわかった.さらに,電界強度が200kV/m以上では,ブリッジ状のすすの成長が強度の火花放電によって抑制され,これがすすの捕集効率を下げることにつながり,結果として再燃焼効率は低下した.
著者
小林 英樹
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は、以下のことに取り組んだ。1.「映画化(する)」の「化」など、漢語を構成する言語単位の造語機能について分析を行った。その成果を、小林英樹(2006)「漢字の造語機能」(『朝倉漢字講座2 漢字のはたらき』)として、まとめることができた。2.「助けることを表す漢語サ変動詞」の分析に取り掛かった。その結果、以下のようなことが明らかになった。(1)通常は、危険なところから安全なところに移せば(救出すれば)、助けたことになるが、救出しても、助けたことにならない場合(手遅れのケース)もある。(大島署や地元消防団員らに5日午前9時50分に救出され、病院に運ばれたが、すでに死亡していた。(朝日新聞1993年7月5日))(2)助けることから許すことに移行しつつある「救済(する)」がある。(恩赦は平成に入ってから「大喪恩赦」(89年)と「即位の礼恩赦」(90年)の2回あり、いずれも政令恩赦として行われ、選挙違反者が大量に救済された。(朝日新聞1993年5月6日))以上のようなことを、小林英樹(2006)「漢語サ変動詞の意味・用法の記述的研究-「救助(する)」、「救出(する)」などをめぐって-」(『日本語文法の新地平1形態・叙述内容編』)として、まとめることができた。3.「建てることを表す漢語サ変動詞」の分析に取り掛かった。その結果、以下のようなことが明らかになった。(1)「建築(する)」は、モノ名詞として使うことができるが、「建設(する)」、「建造(する)」、「建立(する)」は、モノ名詞として使うことができない。(古い{建築/*建設/*建造/*建立}の保存に熱心だ。)(2)内項になるものの範囲は、「建設(する)」の方が「建築(する)」よりも広い。(新庁舎を{建設/建築}する。ヨルダンとの連合国家を{建設/*建築}する。)以上のようなことを、小林英樹(2007)「漢語サ変動詞の意味・用法の記述的研究-「建築(する)」、「建設(する)」などをめぐって-」(『語学と文学』43)として、まとめることができた。
著者
伊藤 賢一
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的に掲げた「公共空間の希薄化と個人化傾向を説明する統一的な理論モデルを構築すること」は、十分完成した形には至らなかったものの、ある程度中心的なアイディアを示すことができたと考える。中核となるアイディアはBeck(1986)らが提示しているものと殆ど同型であるが、Beckらが必ずしも結びつけて論じなかった地域コミュニティの変容や、新しいメディアの浸透、消費行動の変化なども、さまざまな社会制度やしくみの組織化にともなう「意図せざる結果」として描くことができるのではないか、というものである。これは、現在起こっている社会変動の一面を捉えるだけでなく、多くの社会理論が指摘している傾向性をまとめあげ、現代社会が直面している大きな社会変動の意味を見通す成果になりうると考える。
著者
岡 美智代 恩幣 宏美 川村 佐和子 村上 みち子 山名 栄子 上星 浩子 高橋 さつき 越井 英美子
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

患者、看護職、医療費削減という3方向に効果のある患者教育プログラムを学ぶための、看護職向けの学習システムの開発と評価を目的とした研究を行った。その結果、6ステップからなるEASE(イーズ)プログラムの学習システムを開発した。またその学習システムの効果として、患者のセルフマネジメント行動の向上、看護職の適切な発話内容が明らかになった。医療費の試算では、676億6144万円の削減効果が見いだされた。
著者
田渕 祥恵 小板橋 喜久代 柳 奈津子 小林 しのぶ
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

リラクセーション法(呼吸法)による睡眠改善効果を検証することを目的に基礎研究を実施した。健常成人を対象に腹式呼吸法を実施する対象者(実験群)と実施しない対象者(対照群)を無作為に振り分け、腹式呼吸法の有用性について検討した。その結果、5日間の腹式呼吸法の練習を実施した後、就寝直前に腹式呼吸法を実施した場合には入眠潜時(就床から入眠までの時間)が短縮されることが示唆された。
著者
服部 健司
出版者
群馬大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

臨床倫理学の特異性はもっぱら個別特殊的なケースに照準を合わせたケーススタディに存する。ケーススタディの成果が豊かなものであるか貧しいかを決定する要因は、議論の仕方に先立ち、すでにケースそのものの叙法のもつ物語論的特性のうちに存する。具体的に言えば、カルテや症例報告を範型とした客観的自然科学的な視点からの記述よりも、見えない陰の部分、発せられる言葉の曖昧さ、明示あるいは暗示される意思の両義性の仄めかしをそのままに残した、多声性を含んだ文学的叙法こそが臨床倫理学ケースにふさわしい叙法である。次に問われるべきはケース解釈の妥当性をいかに確保し確証するかである。正典の妥当な釈義をいかにして得るかをめぐって興った解釈学が、その対象領域を文献一般、他者とその生、歴史へと拡張したのは一九世紀後半である。前世紀には、解釈の方法論の基礎づけという進路そのものの変更と深化が行われ、解釈学的哲学へと転回が図られた。臨床倫理学の領域での課題は、いわば共通の文化的地平上の大文字の文化の理解ではなくて、個々の人々の生きざまや迷いが描き込まれた小文字の物語としての臨床倫理学ケースの理解である。そのためには、解釈学的哲学以前の、方法論的な解釈学へとあえて意図的に後退する必要があるように思われる。客観的にではなくむしろ心理主義的、直観主義的な要素を排除するのでない仕方の解釈学でなければ、目前の小文字の物語を読み解く助けにはならないように思われる。この種の読みの技法を磨きつづけてきたのは文学であった。臨床倫理学の方法論的研究のためには、文学の哲学へと進んでいかなくてはならない。
著者
花泉 修 本島 邦行
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

まず、電子ビーム露光やエピタキシャル成長を伴わず、二重干渉露光と高周波スパッタリングのみという非常に簡便なプロセスにより、硫化カドミウム(CdS)系2次元フォトごック結晶を形成した。作製されたフォトニック結晶の面内のパターンは三角格子で、格子間隔は610nmである。膜面に垂直な方向のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルは525nm近傍にピークを持ち、半値前幅(FWHM)が48nmに狭窄化されていることが分かった。非常に簡単な構造で、詳細な設計や調整なしに、目標であったFWHMが50nm程度の狭窄化が実現できた。次に、機能材料から成る3次元フォトニック結晶構造を実現するための第一のステップとして、InP基板上で、横方向を3次元フォトニック結晶で閉じ込められた領域に半導体活性層を選択エピタキシャル成長させるプロセスを開発した。すなわち、InP基板上で、ドライエッチングにより3次元フォトニック結晶に孔を形成し、そこにInGaAs/InGaAlAs系多重量子井戸(MQW)活性層を選択エピタキシャル成長させた。また、主にフォトニック結晶層を横方向に伝搬した自然放出光のスペクトルを測定し、偏波依存性があることを確認した。最後に、自己クローニング法と整合性の良い新しい発光材料の開発を行った。これは、結果が予想されていたものではなく、本研究遂行中に偶然発見されたものである。すなわち、自己クローニング法と同じrfスパッタでアニールなしのプロセスでSiナノクリスタルを形成し、白色や青色の発光を得ることができた。
著者
高橋 昭久
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

温熱処理においてγH2AXに比べてATMのフォーカスの減衰が速いこと、DNA-PKcs、Chk2のフォーカスは遅れて認められることを明らかにした。また、NHEJ修復欠損株に比べてHR修復欠損株は温熱感受性になることを明らかにした。温熱耐性にPolβが関与していることを明らかにした。さらに、温熱耐性獲得時にγH2AXおよびその他のDSB認識リン酸化タンパク質のフォーカス形成率が減ることを明らかにした。
著者
青山 義之 武井 雄一 須田 真史
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)を行った際の脳血液量変化を近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)を用いて測定することにより、気分障害(大うつ病性障害、双極I型障害、双極II型障害)、および適応障害における脳機能の特徴の検討,および適正な刺激条件の設定を目的とした。rTMS中の対側脳機能反応性は疾患群によって異なる反応を示し,その反応は状態像による相違を認めなかった.
著者
小湊 慶彦 中島 たみ子 佐野 利恵 浅尾 高行
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ABO式血液型は個人識別に重要な指標として法医学、犯罪鑑識において利用されている。しかし、ABO式血液型遺伝子の転写調節機構は不明である。そこで我々はENCODEプロジェクトから明らかにされた赤白血病細胞K562におけるDNaseI高感受性領域に基づき、レポータープラスミドを作製した。K562細胞を用いたプロモーターアッセイから、ABO遺伝子第1イントロン内に赤血球特異的エンハンサーを同定し、その領域にGATA転写因子が結合することを証明した。また、B_m型およびAB_m型112例中111例に第1イントロンのエンハンサー領域を含む約5.8kbの欠失を見出したが、通常の血液型1005人において欠失はなかった。また、欠失がないB_m型一個人ではエンハンサー内のGATA結合サイトに一塩基置換があり、その一塩基置換によりエンハンサー領域へのGATA転写因子の結合を阻害され、エンハンサー活性が完全に消失していた。以上から、エンハンサーの欠失や塩基置換に基づくエンハンサーの機能喪失から転写活性が低下し、血球系細胞におけるB抗原量の産生低下からB_m型が生じたと考えられた。従って、上記の赤血球特異的エンハンサーが細胞内において機能することが推測された。一方、B_m型は血液型亜型の半数を占めるものであり、その遺伝子診断が可能となったことから、本研究はABO式血液型の遺伝子診断の実現に貢献したと考えている。
著者
根岸 謙之助
出版者
群馬大学
雑誌
紀要 (ISSN:03897540)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.95-105, 1981-03-10