著者
大桃 道幸
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.29-35, 1998-03

ロイ・モレルはFar from the Madding Crowdの主人公Gabriel Oakの生き方を例に挙げて,幾多の苦難を乗り越えて人生の勝利者となるOakこそハーディが称揚する人物像であるとし,夢想家や夢想的な生き方をハーディは非難しているのだと論じている。モレルの立場はハーディの小説の悲劇性を登場人物たちの非現実的で夢想的な生き方に求めるもので,宿命論に立脚した従来のハーディ観を打破するという点で高く評価されるべきだが,ハーディの小説を単なる人生訓,処世訓のレベルで捉えている点に不満が残るし,ハーディがその後Oakのような人物ではなく,むしろ自己破滅型の夢想家を執拗に描き続けた理由を明らかにはしない。ハーディの小説,とりわけ後期の小説に登場する主人公たちの多くは芸術家ないしは芸術家肌の人物であるが,夢想性は彼らの生来の気質であって,それはしばしば人を破滅に導くものの,彼らにとっては創造力の源泉であり,彼らの存在そのものの基盤であると言ってよい。また彼らにとって,理想の恋人像が生身の人間よりも現実的であるのと同じように,想像の世界のほうが実際の世界よりも一層現実的なのである。従って,芸術家ないしは同様の気質を備えた人物が実社会で生きてゆくことそれ自体が多くの矛盾をはらみ,必然的に悲劇が生じることになる。厳しい現実の中で幸福を獲得するOakを称える一方で,自分自身苦悩の人生を歩んだハーディは,虚しく夢を追い求め破滅してゆく人々を,大いなる共感を持って描き続けざるを得なかったのである。
著者
石田 和子 石田 順子 中村 真美 伊藤 民代 小野関 仁子 前田 三枝子 神田 清子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.53-61, 2005-03

外来で化学療法を受けている乳がん再発患者の日常生活上の気がかりと治療継続要因を探求することを目的に質的研究を行った。外来で化学療法を受けている乳がん再発患者を対象で本研究参加への同意が得られた10名であった。半構成的な面接によりデータを収集した。面接内容を逐語録に起こし,質的帰納的方法を参考に,患者の言動から日常生活上の気がかりと治療継続要因に関する言動をコード化し類似性に従いサブカテゴリー,カテゴリーと抽象化を行った。その結果は以下のようにまとめられる。1.外来で化学療法を受ける患者の日常生活上の気がかりは【抗がん剤を続けることの気かかり】【再発・転移が気がかり】【嘔気・嘔吐による体力の消耗】【倦怠感により動きたくとも動けない現実】【脱毛による活動範囲の縮小】のカテゴリーが抽出された。2.治療継続要因としては《抗がん剤治療へ託す生への希望》《変化した生活を補う人》《療養生活での癒し体験》のカテゴリーが抽出された。3.抗がん剤の副作用である嘔気・嘔吐・倦怠感は行動範囲の縮小が見られることから,症状マネジメントの方法や気分転換活動,患者教育を行う必要がある。4.抗がん剤の副作用である脱毛はボディイメージの変容により耐え難い苦痛であるため,脱毛の時期,受容の状況や考えを聞き必要に応じて指導や情報提供を行う必要がある。5.治療生活を支える要因とは,患者の長い治療生活を支えていくことであり,心理,社会的なサポートが重要な役割を果たすことが明らかになった。以上のことより,患者の外来治療時間を利用して看護師は,患者が治療を継続していく上での悩みや思いを自由に語れる場を提供する必要があることが示唆された。
著者
河村 英将
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

線維芽細胞株や軟骨肉腫細胞株に放射線照射を行い、その照射した細胞と照射をしていない非照射細胞を共培養を行うことで放射線に対する細胞応答反応を解析した。特に共培養した非照射細胞の細胞応答反応におけるセラミドの関与を解析するため、蛍光免疫染色の手法を用い、画像解析を行うことでDNA損傷やセラミドの定量的な評価を行った。非照射細胞の放射線応答反応(バイスタンダー効果)を確認し、セラミドの影響について検討する基礎的な検討を行った。
著者
福島 光義
出版者
群馬大学
雑誌
群馬大学社会情報学部研究論集 (ISSN:13468812)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-13, 2003-03-31

19世紀に、社会を理解する事の可能性への懐疑や不信が増大し、結果として、知る事の出来る関係と、知る事の出来ない社会との間に亀裂が生じている。Charles Dickensは彼の後期の小説の一つBleak House(1852-53)において、共同社会認識の危機に対して重要な反応を示している。Dickensはロンドンの警察力の集合的な力と情報を描き、Bucketという人物を通じて社会についての新しい形の認識を表明している。Bucket は特別に注目を引く人差指を与えられており、それはグロテスクな描かれ方をしている。本論文は、Bucketの人差指によって代弁される社会共同体の構造を分析し、又捜査中におけるBucketの独特の情報収集方法を探り、最後に、公私両面におけるBucketの他の人達への親切な態度や人間味について分析している。
著者
小林 雅美 砂崎 博美 吉田 美由紀 侭田 ゆかり 伊藤 まゆみ
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.23-27, 2002-03
被引用文献数
1

皮膚科における電子メールを媒体とした相談内容の分析とセルフケア支援の展望について検討することを目的として, 1997年7月〜2000年1月までにアクセスのあった質問メール404件(のべ290名)について, 質問者の特性, 全疾患・代表疾患の相談内容を分析した。1.質問者は20歳代40%, 30歳代21%と若年者が多く, 質問者と相談対象の間柄は本人が75%であった。居住地域は国内外に及んだ。2.疾患では掻痒性疾患が最多で, 相談部位は顔面が多かった。病名記載ありが約7割, 受診経験ありが約6割を占めた。主な相談内容は, 治療法の検索(88件), 詳しい疾患の説明を希望(59件), 治療法の正当性(53件)についてであった。3.アトピー性皮膚炎では, 治療法の検索(21件), 薬の情報を希望(17件), 腫瘍では, 詳しい疾患の説明を希望(13件), 治療法の検索(10件), 毛包炎では, 治療法の検索(10件), 日常生活指導を希望(6件)が多かった。以上の結果から皮膚科外来におけるニーズの多様化が明らかになり, 電子メールを媒体としたセルフケア支援の展望が示唆された。
著者
三友 宏志 粕谷 健一
出版者
群馬大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

キノコのベニタケ科チチタケ属(Lactarius属)国産のチチタケ子実体を乾燥後、粉砕し、これをn-ヘプタンで抽出し、メタノールに再沈殿させることによって天然ゴムを得た。これをトルエンでさらに精製後、元素分析で窒素含有量が0であることを確認した。これはゴムアレルギーの主因であるタンパク質を全く含まないことを意味する。このキノコからゴムの収率は約6.6%であった(これは完全なシス1.4-ポリイソプレンであり、キノコゴムと呼ぶこととする)。次に中国産のチチタケから得られたキノコゴムの収率はさらに1%ほど向上した。市販の天然ゴムの数平均分子量は20万以上であるが、国産キノコゴムのそれは4万前後であり、中国産でも約5万であるが、このままでは液体ガム状で成形品にならない。これを改善するため、対照試料として化学合成のシス、トランス混合の1,4-ポリイソプレンオリゴマー(分子量:約1万)を用い、これに数種類の放射線架橋剤を混合し高分子量化を行った。最も有効な架橋剤としてはTrimethylolpropane triacrylate (TMPrA)と1,6-Hexanediol diacrylate (HDDA)であることが分かった。両者のキノコゴムにHDDAを5phr混合して100〜200kGy照射するとかなり耐久性のあるゴム体が得られ、天然ゴムの約50%ほどの力学的性質を示すことが分かった。一方、チチタケを採取後これのフラスコ培養を試みたが成功しなかったので黄チチタケ菌糸体Lactarius chrysorrheus(L.C.)を入手し、これの液体培地中での培養も比較のために行った。培養日数は28日であった。L.C.菌糸体からのゴムは、収率は約2%、数平均分子量は1500前後となり、チチタケ子実体からのゴム(収率:6.6%,分子量:40,000)と比べて収率、分子量とも低くなり、これにTMPTAやHDDAを5phr混合してγ-線照射するとある程度の固さを持った固形物が得られた。このL.C.ゴムはNMR測定の結果、シス型ポリイソプレンのみでトランス型ポリイソプレンは含まれないことが分かった。チチタケの菌糸を大量培養法を検討した。また、固体培養でも大量培養系を検討した。チチタケのイソプレン生産能力は、培養形態や培養条件に依存することが判明したが、分子量を増加させることはできなかった。天然ゴムの老化がキノコゴムでも起こり、これへの対策が求められている。
著者
粟田 さち子
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

学生の系統解剖のご献体に対して、解剖固定液で希釈した経口造影剤を橈骨動脈より注入して造影CTを行った。この方法により、多くのご献体で頭部から下肢まで血管内が造影できた。また、臓器内も造影される事が確認できたが、細い血管内の血栓が原因なのか均一に造影される例はかなり少なかった。均一に造影する方法は確立出来なかった。司法解剖を行うご遺体では、造影剤を入れたことで体内の液体量が変化してしまう場合に、解剖時の所見が本来と異なってしまうため、CTのみで体内の液体量を正確に把握する必要があった。しかし液体の照合の検討が出来ず司法解剖のご遺体に対しては造影できなかった。
著者
前田 亜紀子 山崎 和彦
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

冬季の群馬における気候と着用率の関係について、男女大学生を対象に撮影法によって検討した。気温およびWCI(風冷指数)は着用率評価に有効であった。外衣には性差が認められ、女性は寒風、男性は気温の影響を受けていた。内衣は化繊素材の下着を増加させ、現代は軽くて暖かい服装をしていた。気温24℃と30℃、Tシャツ短パン(T)と透湿性防水雨衣(P)、風雨を組み合わせた条件下で体温調節反応を観察した。弱風(1.0m/sec)、強風(4.3m/s)、弱風+雨、強風+雨に曝露した結果、風のみでは平均皮膚温が維持されたが、風雨では特に30Tにおいて著しい皮膚温低下と寒冷感がもたらされた。
著者
金井 昌信
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題では,住民の主体的な防災活動が促進されない理由として,住民の防災対応に関する行政依存意識に着目した.そして,その行政依存意識の形成には,マスメディアによる災害報道が影響しているという仮定のもと,2つの視点で分析を行った.一つは,災害報道の内容と住民の行政依存意識の関係を明らかにし,もう一つは,どのような災害報道が住民の行政依存意識の低減に寄与するのかを検証した.
著者
小林 英樹
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、サ変動詞の意味・用法を詳細に記述したものである。本研究では、次のような動詞クラスを分析した。・建てること(新築(する)、増築(する)、……)・除くこと(除去(する)、排除(する)、……)・火がつくこと(発火(する)、着火(する)、……)・直すこと(修理(する)、修復(する)、……)・連れて行くこと、ついて行くこと(引率(する)、随行(する)、……)・運ぶこと(運搬(する)、運送(する)、……)
著者
山延 健
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

高分子の融液からの結晶化は、材料成形プロセスおよび成形物の構造物性と密接に関係する極めて重要な過程である。従って、結晶化過程をリアルタイムで解析し、また結晶化物を平均値としてではなく、局所的に超微細構造解析し、結晶化機構を解明することは、学問的にも工業的にも重要な課題である。NMR法は結晶化過程、特にダイナミックスについてリアルタイムに観測する有用な方法である。本研究では、パルスNMR法の高感度化を行い、更に様々な応力下で測定を可能にし、溶融結晶化機構をリアルタイムで解明するともに、結晶化過程の結晶の生成、成長、厚化等を詳細に解明し、高分子材料成形の基礎的研究手法を確立することを目的とする。上記の目的のためにまず、プローブの高感度化を行った。これはプローブのフィリングファクターを改善することで達成される。そこで、試料管径を半分の5mmとしてプローブの設計を行った。その結果、プローブの感度が約20倍向上した。このプローブの性能を確認するためにポリプロピレンの重合パウダーの構造解析を行った。ポリプロピレンの重合パウダーは結晶化度が非常に低く、これは重合直後の結晶化により、通常の結晶化とは異なる機構で結晶が生成しているものと考えられる。そこで重合パウダーの熱処理による結晶化挙動を調べることにより、元の重合パウダーの構造を推定した。その結果、重合パウダーでは結晶部のサイズが非常に小さく、周りの中間相や非晶の運動開始により容易に結晶成分の構造が壊れることが明らかになった。また、上記のプローブをMXD6ナイロン、ポリカーボネートの結晶化機構の解析に応用し、結晶化の詳細な解析をすることができた。また、応力下の測定として延伸状態での測定を超高分子量ポリエチレンについて行った。その結果、この手法により絡み合い状態の解析方法を確立することができた。
著者
片田 敏孝 及川 康 金井 昌信 結城 恵 渥美 公秀 淺田 純作 結城 恵 渥美 公秀 淺田 純作
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、「災害に強い地域社会の形成技術の開発」を最上位の目標に掲げ、地域社会が自然災害からの被害軽減に対して効率的に機能するよう形成されるための技術の一般化を図ることをもって我が国の防災科学に資することを目的としている。具体的には、災害文化を地域に再生させるためのコミュニケーション手法やコミュニティが希薄な地域におけるコミュニケーション手法などの開発や実践から得られた知見を一般化し、その体系化を図った。
著者
加藤 幸一
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

小中学生の幾つかのロボット製作・ロボコン活動を調査して、以下のことが明らかになった。・ロボット製作・ロボコン活動には、発想力を向上させる効果が認められた・チューターの子どもへの係わり方が良い場合、または、グループ内やグループ間のコミュニケーション促進の支援をした場合には、コミュニケーションが高いレベルで持続する。・ロボット製作・ロボコン活動では、中学生は小学生に比べて、意識、態度、操作能力等で明らかに勝っていることが認められる。・幾つかのロボット教室での参加者の意識や行動には違いは見られないので、教室の運営・指導の影響はほとんどないと考えられる。経験が多いことが小学生のロボット製作・ロボコン活動を良くする傾向が見られる。また、経験の多いチューターの指導は良い傾向にある。・マインドストームを用いた授業は、製作品の構想を考える授業に比べて、生徒の「探求心」や「工夫力」等の意識が向上する効果がある。ものづくり系ロボット教材を用いた授業は構想の授業と同程度の効果があると考えられる。・パス解析の結果、子どものロボット製作・ロボコン活動には、チューターの指導法が大きく影響し、さらに、チューターの指導法には、「子どもの養育に対する責任感」「チューターの経験値」「ロボット製作の理解度」が影響することが分かった。
著者
長津 美代子
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.研究の概要「個人の枠をしっかりと確保し、配偶者と親和的な関係を築くと同時に、外部の多様なネットワークとも繋がり、重層的な関係のなかで生きること」が理想的な老いの姿となるであろう。こうした理想的な老いを実現するためには、老いの入り口にあたる50代の中高年期に夫婦関係や社会関係の再構築を行う必要がある。平成12(2000)年度は、夫婦関係の再構築尺度を作成し、再構築状況を把握すると共に、それに影響する要因を明らかにした。平成13(2001)年度は、12年度調査から選び出した13名を対象に、結婚3〜40年に及ぶ夫婦としての歴史を夫婦関係の危機との関連で把握すると共に、危機解決にどのような資源が活用されているかをインタビュー調査でとらえた。平成14(2002)年度は、パーソナル・ネットワークの現状と夫婦の情緒的統合およびウェルビーイングとの関連を明らかにした。平成15(2003)年度は、平成13年度に調査したケースを危機発生-対処-適応の二重ABC-Xモデル(McCubbin, H.L.)に当てはめて分析しようとすると、情報不足のあることが判明したので、追加のインタビュー調査を行った。2.結果の概要1)夫と妻に共通して、夫婦関係の再構築に影響している要因は、「夫婦共通の友人の有無」「就寝形態」「夫の母親と妻の関係(嫁姑関係)」「夫婦の個人化」であった。「夫婦の個人化」のみ負の相関で、他は正の相関である。2)夫と妻に共通して、パーソナル・ネットワーク規模、夫婦単位の付き合い組み数は、夫婦の情緒的統合と正の相関が認められた。また、ネットワーク規模の大きさは夫のウェルビーイングを高める要因であるが、妻の場合にはそうした関連が認められなかった。3)夫あるいは妻は、さまざまな資源を活用しながら夫婦間に生じた危機を乗り越え夫婦関係経歴を築いている。その危機は、社会・経済状況の変化によって生じた場合も多く、夫婦関係は社会・経済状況によっても規定されているといえる。
著者
藤原 悠基
出版者
群馬大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

本研究は農薬等で使用されるネオニコチノイドによるヒト中枢神経系分化・発達への影響を解析する。これまで、実験動物を用いた研究から、周産期のネオニコチノイド曝露が中枢神経系の発育・発達を阻害する可能性が報告されているが、ヒトへの影響は明らかでない。また、中枢神経系の分化・発達と同時期に構築され始める血液脳関門(BBB)への影響を検討した報告はない。以上から、ネオニコチノイド曝露による影響を「ヒト胎児由来神経前駆細胞株を用いた神経分化」、「BBB透過性及び機能」の2点から評価することで、ネオニコチノイド曝露による胎児脳神経系の発達、発育への影響とその機序の解明を目指す。
著者
上原 顕仁
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

亜鉛は生体において必須な微量元素である。高齢者では亜鉛欠乏症が多く、褥瘡患者では血清亜鉛値が低いことなどから「亜鉛欠乏によって褥瘡が生じやすいのではないか」と想定されているが、実際にこのことを科学的に証明し、機序を解明した報告はない。そこで、本研究では、亜鉛欠乏マウスと正常マウスを用いて、皮膚の圧迫による褥瘡モデルを作製して、実際に亜鉛欠乏によって褥瘡が生じやすいのか、また、その機序について解明したい。
著者
横山 洋子 茂木 精一郎
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

全身性強皮症は、皮膚および内臓臓器の線維化、血管異常、免疫異常(自己抗体)を特徴とする原因不明の自己免疫性疾患である。我々は、間葉系幹細胞(MSC)から分泌されるエクソソームの膜に多く存在するMFG-E8が皮膚線維化の抑制機序の一部に関わると考え、MSC由来エクソソームおよびエクソソームに含まれるMFG-E8が強皮症の皮膚線維化に関与するのかどうかについて、MSC由来エクソソームおよびMFG-E8 WT/KOマウス由来MSCから産生されるエクソソームを強皮症マウスモデル(ブレオマイシン誘導皮膚線維化マウス、Tight skinマウス)に投与し、皮膚線維化への影響を明らかにする。
著者
佐野 孝昭 吉田 朋美
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

我々はHPVの癌遺伝子蛋白の発現に伴い、Rb蛋白機能調節にあたるp16蛋白がヒト子宮頚部異形成や子宮頚癌において過剰発現していることを報告した(Am J Pathol,1998)。今回、このp16抗体を細胞診液状化検体(モノレイヤー標本)にも応用し、p16の免疫染色が、細胞診標本上で腫瘍細胞の同定にきわめて有用であること報告した。(Cancercytopathol,2004)。この検討ではHSIL以上の病変を検出する手段として、PCR法によるHPV検出よりも、p16免疫染色法はより高感度かつ特異性の高い検査方法であることが明らかであると同時に、現在行われているPap法による形態学的な異型細胞同定法を補助する手法としても有用である。また、p16と同様に細胞周期調節蛋白の一つで、G2チェックポイントに働く蛋白である14-3-3sigma蛋白についても同様の検討を行ったところ、異形成から扁平上皮癌、および腺癌にいたるまで広く高発現していることが明らかになった(Pathol Int,2004)。これはp16とともに14-3-3sigmaが子宮頚癌・異形成のすぐれたマーカーになる可能性を示唆していた。同様に、頚部病変とともに採取される可能性の高い内膜病変での14-3-3sigmaの検討を行なったところ、14-3-3sigmaは進行内膜癌に過剰発現していることも明らかとなる一方、分泌期正常内膜腺にも14-3-3sigmaの発現が認められ、内膜腺細胞を含む頚部検体の14-3-3sigmaの評価には注意が必要であると考えられた(Pathol Int,2005)。
著者
末松 美知子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬大学社会情報学部研究論集 (ISSN:13468812)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-14, 2006-03-31

The 2002 production of Twelfth Night by Shakespeare's Globe Theatre Company is one of the most successful productions since the theatre's opening in 1996. Not only it played to the full house throughout its entire run but also it received a number of theatre awards that year, to critical acclaim for theatrical achievement. The production was originally staged in January at the Middle Temple Hall, one of the existing Inns of Court in London, to celebrate the 400th anniversary of the play, before opening at the Globe in May with a major cast change. By comparing Twelfth Night at the Middle Temple Hall and the Globe, this paper explores the following issues: the significance of Shakespearean performances in historical sites, physical conditions of theatre space and their effects on performances, and the new possibility of playing Shakespeare at the reconstructed Globe. The paper briefly refers to the company's another example of 'original practices' production, the 2004 production of Measure for Measure at the Hampton Court and the Globe.