著者
野口 康彦 青木 聡 小田切 紀子
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

質問紙及びインタビューによる調査等から,子どもが別居親と交流を持つことは,子どもの親への信頼感において,重要な要因となることが確認された。また,別居親と子どもが満足するような面会交流がされている方がそうでない場合よりも,自己肯定感や環境への適応が高いことも明らかになった。また、ノルウェー視察の結果については、関連の学会だけでなく、家庭裁判所の調査官や臨床心理市などの専門家への研修においても、報告をすることができた。日本における離婚後の子どもの権利擁護のあり方について、一定の示唆を行うことができた。
著者
先崎 千尋
出版者
茨城大学
雑誌
茨城大学地域総合研究所年報 (ISSN:03882950)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.87-99, 2007

2007年度から「新農政」が始まる。その骨子は,これまでの「バラマキ農政」から「選別政策」へ転換するもの,ということであり,財界,マスコミ,それに生協などが賛意を表している。この農政の転換は,その通りに実現すれば,わが国農政では農地改革以来の大改革となる。小農経済の中で,農協の存在は不可欠だが,現在の農協に対する批判は厳しく,まさに四面楚歌の状態にある。批判の論旨は,農業構造の変化に農協は対応出来ていない,行政と癒着している,農協の経営はどんぶり勘定だ,組合員の声が運営に反映されていない,など。しかしそれにもかかわらず,農協の対応は鈍い。昨年秋に開かれた全国,都道府県レベルでの大会は「農協の生き残りをかけたもの」という意気込みだったが,その内容は問題だらけだった。重要な問題は,農協としてわが国の農業をどうするかというグランドデザインが欠けていること,農家の暮らしをどう守っていくのか,まったく触れていないことの二つである。では,農協で展望を見出す(農協が生き残れる)とすれば,解決すべき課題は何か。そもそも協同組合とは何か,など9つの課題と私見を展開するものである。
著者
Kamezaki Masaru
出版者
茨城大学
雑誌
五浦論叢 : 茨城大学五浦美術文化研究所紀要
巻号頁・発行日
vol.12, pp.A39-A53, 2005-11-30

より洗練された優美な国際様式を好むロレンツォ・ギベルティがフィレンツェ洗礼堂に制作した第三門扉、即ち「天国の扉」の浮彫りパネルに認められる言わば絵画主義(pittorismo)への傾向は、その著書『I Commentari』に於いて、シモーネ・マルティーニにも優る評価をアンブロージォ・ロレンツェッティに与えていることからも理解される。実際に、「天国の扉」には、アンブロージォの絵画から想を得たと思われるモテイ-フが随所に見出される。殊にシエナのパラッツォ・プッブリコのサーラ・デッラ・パーチェの≪善政≫でかくもあやしくリリシズムを湛えて踊る娘達(fanciulle danzanti)は、「天国の扉」のうちの≪ノアの物語≫、≪ダヴィデの物語≫、≪モーセの物語≫、≪ヨシュアの物語≫、≪カインとアベルの物語≫を表す各浮彫りパネルの中に様々な形をとって現れる。ギベルティによるアンブロージォ・ロレンツェッティに対する"nobilissimo componitore(かくも高貴な構成家)"という呼び名は、場面が恰も目の前で次々と継起するように、絵画空間に"闊達にして豊かな(copiosa)"物語を説明し且つ記述するための画家のcapacita narativa(説話能力)を表す呼び名に他ならない。しかしながら、アンブロージォの絵画とは、絵筆のリリカルで詩的用法による記述であったに相違ない。そして、そこでの絵画空間とは、造形的な対象を内に収めた三次元的な穿たれた空間(spazio scavato)、即ち、ジョットやピエトロ・ロレンツェッティに固有の"inquadratura prospettica(遠近法的枠組み)"ではなく、閉じられた壁として定義される装飾的平面を強調するためのものであった。そして、このようなアンブロージォの絵画の特質こそは、ギベルティを魅了し、その"teorica d'arte(芸術理論)"を満足させていたと考えられる。つまり、彼ギベルティの芸術理論は、単にdisegnoのためのものではなく、諸表面の装飾的且つ構成的な(compositivo)効果、即ち彼を魅了していたアンブロージォの作品に見られる色彩の諸層、または色彩面からなるtessuto(織物)のような効果をも志向していたに違いない。そして、国際ゴシックへと向かう自身の趣味ゆえに、ギベルティが、諸場面や色彩の知的構成のためのイデアの点でシモーネ・マルティーニよりも優れていたともいえるアンブロージォ・ロレンツェッティを、トレチェント芸術に於ける彼自らの先駆者と考えていたとしても何の不思議もないのである。
著者
稲垣 照美
出版者
茨城大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、日本の豊かな自然環境の象徴の一つであり、幻想的な光で古くから日本人の心を魅了している昆虫"ホタル"を取り上げ、その発光現象中に人に対してどのような癒し効果が含まれているのかについて実験的な検討を行ったものである。まず、平成11年度には、ホタルの発光現象を計測・解析する光計測処理システムを新たに構築し、関東エリアにおいてフィールド計測を開始した。平成12年度には、四国エリアにも広げてフィールド計測を継続しつつ、統計解析や画像処理などの工学的技法を応用してホタルの発光現象を解析・評価し、人の精神に安らぎを与える効果があると言われている1/fゆらぎを始めとする様々なゆらぎ現象について考察を進めた。また、各地で開催されているホタル鑑賞会などにおいても、感性工学に基づいた意見サンプルを充分に採取し、ホタルの発光現象が人の精神に及ぼす影響を評価した。その結果、ホタルの発光輝度変動・発光間隔変動・輝度差変動には、人の網膜が反応することの出来る中低周波数域において1/fゆらぎが存在することを初めて明らかにすることができた。これには、十分な癒し効果が期待できるものと考えられ、ホタルを活用したヒーリング機器や福祉機器への応用が十分に期待できることが予想された。また、ホタルの発光パターンが有する癒し効果については、感性工学的な立場からもその有効性を統計学的に確認することができた。したがって、本研究から得られた知見は、今後、ホタルを利用したヒーリング機器や福祉機器の開発を展開研究して行く上での基礎と成り得るものである。なお、一連の研究成果は、日本機械学会へ研究報告したばかりではなく、NHKテレビ・ラジオや日本工業新聞などのメディアなどにおいても報道された。
著者
稲垣 照美 穂積 訓
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本申請課題では, 要素技術として確立した知識を総合的に融合して, 住空間だけでなく福祉施設や病院などの医療施設・ホスピス等に, 自然や生物情報に基づいた(模した)サステイナブルかつ省エネルギーな快適(癒し)空間の設計指針を提供することを最終目標として研究を行ってきた. そのために, 昆虫類の活動特性や人の感性におよぼす影響を解析した. また, マイクロバブルの気泡発生に関わる物理特性を解明し, より細かくかつ大量の気泡発生について検討を行った. さらに, 風車を用いた発電におけるゆらぎ現象や, 風車の回転時に生じる不快音の調査を行って, より効率的かつ住環境に配慮した風車の配置・運転について提案した.
著者
稲垣 照美
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,福祉施設や病院などの医療施設・ホスピス等の福祉住環境の構築へ向けて,提唱した要素技術(マイクロバブルと多孔性媒体によるホタル水圏環境の改善技術,遮熱塗料を施工した通気層制御型外断熱技術,色香と人の感性に関する評価技術)を個別に検証するとともに,これら要素技術群を試験的に構築したネイチャー・テクノロジーに基づいたサステフィナブルな模擬環境空間へ取り込んでその効果を総合的に評価したものである.
著者
青柳 直子
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では, 通学形態と心身機能や生活行動との関連性について検討するため,中学校を対象として,学校統合前後を包含する縦断的調査を行った.また,域環境特性との関連性について検討を行うため,中山間地域の小学校を対象として調査を実施した.結果として,通学形態と小中学生の精神的・身体的愁訴,睡眠を含めた生活行動には相互に関連があることが示唆された.生活リズム関連指標について更に検討を行い,日常的な心身症状・ストレスや生活行動と遠距離通学との関連について,より詳細に解明することを今後の課題としたい.
著者
梅原 守道
出版者
茨城大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

連続体近似(圧縮性粘性流体の基礎方程式)を用いて天体をモデル化し,それに対して数学解析を行うことでモデルの妥当性を検証した.主な成果は次の二つである.(1)天体を構成するガスが理想気体からなるものと仮定し,かつ運動の自由さを空間1次元的に限った場合に,初期データが小さくない場合にもモデルが長時間安定して存在することを証明した.(2)理想気体からなるガスが空間3次元的球対称運動をしている場合にも,(1)と同様にモデルが長時間安定して存在することを証明した.
著者
永井 典子 綾野 誠紀 岡田 圭子 中西 貴行
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大学入学前教育における英語読解教育の在り方を入学前教育の特徴、対象学生の英語能力レベル、及びヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)の「情報及び議論の為の読解能力記述文」を基に検討し、教材を開発した。教材は、自律的学習を支援するためのポートフォリオと、語彙・文法レベルはCEFRのA2(初級上)に限定しながらも大学教育で必要となるB1(中級下)の読解法力が育成できる読解テキストを一体化したものとした。
著者
新村 信雄
出版者
茨城大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

頭書テーマのモデルタンパク質としてDeath-associated protein kinase(DAPK)を選定1.(DAPK)の発現(1)宿主である大腸菌の使用コドンに従い最適化したDAPKリン酸化領域をコードするDNAをプラスミドベクターpET-20b(+)のNdel-Xholサイトにサブクローニングし、BL21(DE3)大腸菌株に形質転換し、大量培養する事によってDAPKを得た。(2)DAPKの精製はNi Sepharose FF担体を用いた金属アフィニティ精製とHiPrep Sephacryl S-100 HRを用いたゲルろ過クロマトグラフィーで行った。2.DAPKのATP結合状態、および非結合状態(Apo状態)の結晶育成(1)PEG1000、硫酸アンモニウム、硫酸リチウムの三条件を重点的に最適化し単結晶を得る事が出来た。(2)ATPアナログ物質としてアデニリル-イミド二リン酸(AMP-PNP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシンγチオ三リン酸(ATP-γS)を使用した。3.DAPKのATP結合状態、および非結合状態(Apo状態)での水和水構造の違い。(1)DAPKのX線結晶構造解析:DAPKに結合しているATPアナログ物質は10個以上の水分子と水和構造を形成している。これらの水分子は良くオーダーされており、はっきりと観測する事が出来たと言えるだろう。しかしAMP-PNP及びATP-γSのγ-リン酸基はディスオーダーしており、確実な原子位置を特定出来ているとは言い難い。(2)DAPKの中性子結晶構造解析:中性子回折法での見かけの水和水構造はその運動状態を反映して、ブーメラン状、棒状、ボール状にそれぞれ見える。ATP結合状態とApo状態での水和水配向の自由度(エントロピー)の差に寄与るると考えられる。ATP結合状態、および非結合状態(Apo状態)、非ATP結合タンパク質の水分子の構造を求め、3状態での構造の違いを比較し、ATPと水分子との相互作用を解明する。引き続き中性子結晶構造解析のための大型結晶育成実施中。
著者
大辻 永
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

自分史がブームになって久しい。「自分史」という言葉は,歴史家の色川大吉氏の造語である。色川は戦争直後の歴史研究にあって,それまでの青史ではなく,歴史に名前を残さない民の歴史,「民衆史」を開拓した。橋本義雄の「ふだん記運動」にも関係して,「自分史」と表現した。このフレームに理科・科学教育を照らし合わせれば,カリキュラムや学習指導要領,教科書を分析するのではなく,学習者に「残ったもの」に焦点を当てた理科・科学教育研究が姿を現す。これが本研究でいう,自分史を方法論とする科学教育研究である。(日本科学教育学会第27回年会において発表)。前年度から収集してきた,本学の自然科学系全女性教官を対象にした自分史を,本年はキャリア選択という観点ら分析した。すなわち,キャリア選択への影響の度合い,あるいは,種類という観点である。その結果,自然系女性研究者のキャリア選択に関わる要因は,素因,遠因,誘因に分けられた。素因には,個人では選択や変更のしようのない生育環境や女性という性別,時代や社会の認識といったもの,あるいは,個人による得意科目などの志向性が分類された。遠因には,現在の専門分野に導いた書籍や出来事などのきっかけが分類できる。誘因には,指導教官が公募情報を寄せてくれたといった,就職に関係する直接的な出来事などが含まれた。その他,被験者の職業選択には,プラスにせよマイナスにせよ,母親の影響が大きいという共通項を見出すことができた。プライバシーにも関わるため具体的なことは記述できないが,全体を通して,真剣に自己に向き合う被験者の姿が浮かび上がってきた(日本科学教育学会平成15年度第1回研究会において発表)。少年・少女時代に受けた教育について語らせることによってその教育のあり方を探る,あるいは,その人物の成長を丹念にたどり描きあげるといった研究は,今後さらに発展させる必要がある。
著者
斉田 智里 小林 邦彦 野口 裕之
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

英語教育の効果を測定・評価するために、項目応答理論(IRT)と構造方程式モデリング(SEM)の使用が有用であることを実証的に示すことができた。IRTを用いた大規模テストで高校生や大学生の英語力を測定し、英語力の大きさや変化の要因をSEMを用いて検討した。その結果,学習指導要領の変遷や入試科目の変更、大学英語教育カリキュラムの変更が、高校生や大学生の英語力に大きな影響を及ぼしていることが示された。言語プログラムにおける教育評価情報の収集・分析・評価のシステムを構築した。