著者
甲斐 教行
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

中部イタリアのフィレンツェで活動した彫刻家コッラード・ヴィーニ(1888-1956年)の伝記的消息および進歩史観を、存命する三名の弟子への取材により明らかにした。またその親交の深かったホテル・バリオーニの経営者フランチェスコ・バリオーニが依頼した同ホテル開業25周年記念メダル《ケレス》を、彫刻家が抱いた進歩史観の観点から、文明の寓意と解釈した。さらに、《ケレス》、北米の墓地のための《キリスト磔刑》、南イタリアのシチリア州ラグーサの郵政電信庁舎を飾る女性擬人像の個人像習作を初公刊し、女性擬人像の主題を同庁舎設計者マッツォーニの残した文書に基づき初めて特定し、図像分析を行った。
著者
牧野 泰彦
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1,安倍川は源流域に大谷崩と呼ばれる崩壊地をもち、世界的にみても砕屑物の豊富な河川の代表とみなすことができる。安倍川は全流域にわたって網状流路によって特徴づけられている。2,安倍川河口域における海岸地形について、明治28年発行の5万分の1地形図「静岡」から最新の地形図までを比較・検討した。18世紀初頭に発生した大谷崩以来、安倍川は大量の砕屑物で埋積されており、昭和30年頃まで河口には三角州が存在し、ほぼ平衡状態にあったと考えられる。このように沖側に凸状の地形が形成されている理由は、安倍川からの供給量が多いためである。その後、河口は海岸線がほぼ直線的で海側に凸状を呈していない。これは、大型の建築物や新幹線や高速道路などの土木工事がわが国で活発に施行された時期に対応しており、建設骨材として、安倍川の河床堆積物が大量に採取された結果、河口への供給量が大きく減少したためである。現在は、河口突出部がやや回復しつつあるようだ。3,河口域に到達した砕屑物は、沿岸流によって北西の三保海岸方向へ運搬されている。これは安倍川流域に産出する特徴的な礫(蛇紋岩)を追跡することによって判明している。現在の三保海岸は沿岸域に供給される砕屑物量が減少して、侵食状況にある。三保海岸侵食は、砕屑物の不足した部分が順次その運搬経路の下流方向へ移動し、現在、三保の松原付近まで到達している。つまり、この問題は自然環境に人為的な手を大きく加えたことによって生じたもので、そのシステムを理解して対応していれば起らなかったはずである。自然環境の基盤をなす地形や地質は、数万年におよぶ長い年月にわたる現象である。自然現象を眺める時間スケールは、当然それに対応していなければならない。海岸侵食のような自然環境に関わる問題では、このように長期間におよぶ現象に対する自然観を持つことで回避すべきである。
著者
原田 隆郎 横山 功一
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

橋梁の各種振動によって人体が受ける影響度の定量化手法を提案するため,本研究では歩道橋の振動問題に着目し,歩道橋横断時に利用者が感じる不快な揺れを生体脈波で評価するための実験的検討を行った.実験では,歩道橋の振動を実測するとともに,歩道橋利用者の歩行時の振動を同時計測し,両者の振動特性と人間の生体脈波の関係を把握した.その結果,歩道橋の振動変位が大きくなればなるほど不快感も大きくなるとともに,利用者の歩調が歩道橋の固有振動数と一致する場合に利用者の生体脈波が大きく変化することを確認した.
著者
木村 昌孝
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

フィリピンでは、1986年の民主化以来、民主主義の定着及び発展の文脈において選挙改革が重要事項のひとつであった。本研究は、フィリピンの選挙について、選挙行政研究の立場から、選挙人登録、投票、開票、及び集計の4つの局面におけるICT導入の経緯と現状について把握したうえで、選挙権の保障、不正防止、及び選挙行政の合理性(正確性、効率性、経済性)の3つの観点から分析し評価する。これら3つの要素は多くの場合トレード・オフの関係にあるので、民主政治におけるリーダーシップの正当性に不可欠な選挙の信頼性を損なわないように、様々な要請のバランスをとらなければならない。
著者
柳田 伸顕 手塚 康誠 兼田 正治 工藤 研二
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

此の研究者、柳田(研究代表者)、工藤、兼田、手塚による研究課題'群のコホモロジーとBP理論の研究'において幸いにも多くのコホモロジーを計算することができ、それらをかなりの数の論文として発表することができた。まず柳田とアメリカの共同研究者によってBP-theoryとMorava K-theoryの関係が詳しく調べられた。その結果もしMorava K-theoryが偶数次元の元だけで生成されていればBP-theoryもそうなる事を証明した。またBSL(Z)のmod2コホモロジーを完全に決定した。工藤と柳田はH-空間、特に例外リー群がtorsionを持つ場合にホモトピー性質(homotopy normality,homotopy nilpotency)を詳しく調べた。兼田は標数正の代数群のコホモォジーの良いfiltrationを与えている。
著者
梅比良 正弘 沢田 浩和
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

3つの環境(リビングルーム、会議室、オフィス)で60GHz帯伝搬実験を行い、統計的SISO(Single Input Single Output)ミリ波チャネルモデルを開発し、これをミリ波WLANの国際標準化を行うTG IEEE802.11adに提案して、標準評価モデルとして採択された。また、伝搬実験により水平・垂直偏波の直交偏波を用いるミリ波MIMO 通信の交差偏波干渉は十分に小さいことを明らかにした。この成果を元に、レイトレーシング法に基づくMIMO 伝送シミュレーションプログラムを開発し、直線偏波を用いた2X2直交偏波MIMO伝送方式を提案して特性評価を行った。その結果、半値幅が30度以下のアンテナを用いれば、等化なし、ZF(Zero Forcing)法の簡易な信号処理で良好な誤り率特性が得られること、円偏波を用いた2X2直交偏波 MIMO伝送では、直線偏波に比べて安定なMIMO伝送が可能であることを明らかにし、MIMO伝送による10Gbit/s次世代無線PANの実現性を示した。
著者
稲葉 奈々子
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

新自由主義は社会的排除という新しい形の貧困を生み出した。それにともなって、これまでの反貧困運動とは異なる特徴を備えた社会運動が1990年代の西ヨーロッパを中心に展開した。本研究はフランスと日本の反グローバリズム運動のなかで、社会的排除を経験する当事者に対するインタビューを行い、その特徴を明らかにした。経済的な貧困のみが問題ではなく、市場原理のみを基準として判断されて自己の存在価値を無用とされた個人の尊厳回復の過程を含む運動として立ち現れていた。そのため運動は、公正な再分配を求める運動であるとともに、傷ついた自己の尊厳を取り戻すアイデンティティ・ポリティクスとしての特徴も兼ね備えている。
著者
稲垣 照美
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,赤外線センシングの利点を地雷探査に応用して,探査・除去作業に関わる危険を低減する技術の可能性について,数値シミュレーションとモデル実験の観点から探査に付随するメカニズム,探査限界,および探査に付随する影響・因子などについて総合的に検討を加えたものである.その結果,以下のことが明らかになった.なお,数値シミュレーションは,実際に取得した自然環境条件に基づいている.・提案した物理モデルは,従来の金属探知機などで探査しにくいプラスチック製地雷を想定しているが,実際の地雷探査を実施する上で有効であることを一連の数値シミュレーションから明らかにした.・太陽放射や自然環境条件を援用した赤外線センシングによる地雷探査では,地表面放射率や日照時間帯などにより探査に最適な条件が存在する.すなわち,太陽光エネルギーを最も受け易い時間帯及び日没後に熱エネルギーの方向が変化する時間帯が最も赤外線探査に適している.・赤外線センシングによる地雷探査では,地雷が地中深くに埋設されているほど難しくなる.すなわち,太陽放射や自然環境条件に基づいた探査を実施する場合,砂漠における赤外線探査の限界埋設深度は,地雷構成物質・物性などに依存するものの,100mm以下である.・地中に地雷が埋設されていない箇所でも,地中に大小の木片・石片などの混在物が存在したり,地中に水分含有率の差異が存在したり,地表面の放射率が周辺より特異であったりした場合,赤外線探査が困難になる場合がある.本手法のデメリットは,放射率が種々に変化している地表面や周辺土壌中に様々な混入物が存在する場合に探査が難しくなることである.また,ジャングル地帯の地雷探査などでは,地表付近に生育した草木などが障害物となる.これに対して放射率を特定し易い砂漠地帯では,赤外線地雷探査が比較的容易であろう.
著者
小柳 武和 笹谷 康之 山形 耕一 三村 信男
出版者
茨城大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

本研究では、地域社会の海岸に関わる開発計画、特に観光レクリェーション計画、景観計画の見地から、茨城県北部の海岸を対象に、海岸部の都市化による影響と海岸域の有する環境的資質を把握することを試みた。その結果、以下の成果を得ることができた。(1)茨城県の海岸保全施設の設置状況を調査し、自然海岸の景観タイプ、人工海岸の形態の類型化を行い、海岸景観の状況を把握することができた。(2)海水浴場、港湾等における現地調査とアンケート調査により、海岸部のレクリェーション利用特性を把握するとともに、釣り、磯遊び、バードウオッチング等の観点から、レクリェーション資源としての生物の分布と地形特性等との関連性を把握することができた。(3)民俗学的調査やアンケート等の調査から住民やレジャー活動をする人々の海岸環境の認識とイメージ把握、更に、海岸環境の保全・活用への意識を探ることができた。(4)日立市域の海岸を含めた地形、土地利用等に関する細密データシステムを構築し、海岸環境の表現および評価支援システムを開発した。以上の成果に基づき、海岸環境計画に資する知見をまとめると以下のようになる。(1)海岸のレクリェーション活動の多くは、海岸の自然環境をベースとしており、その開発計画において自然環境を重視した海岸域の保全・活用計画が不可欠である。(2)住民の日常生活や漁業の場あるいは港湾施設等がレクリェーション活動の場となっており、今後、複合的利用のためのルールづくりやゾーニング等の方策づくりが重要である。(3)沿岸域には、神磯など民俗学的に重要な磯や魚介類の生息する漁場として重要な磯場が多数存在する。沿岸域の環境計画策定のためには、現在情報の不足している海中(干潟も含めて)の詳細調査が必要である。
著者
稲葉 奈々子
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

失業者やホームレスなど社会的排除を経験する当事者の社会運動は、社会的権利を要求する手段であると同時に、同じ経験を共有する排除の当事者の共同性の場としても機能することで、内に向かうインヴォルーションの過程をたどる。しかしながら、「いまだ出会っていない潜在的な仲間」との連帯というフレームが受け入れられたときには、街頭行動が他者と出会う場として認知されるがゆえに、公的空間の占拠などの対抗性を持った抗議行動として表出される。
著者
野口 高明 中村 智樹 木村 眞 木村 眞
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

4年にわたり、総計約400kgの雪を南極より日本に持ち帰ってもらい、その雪から地球外起源の塵を約200個発見した.その中から、従来、成層圏でしか捕集できなかった彗星起源塵を約10個同定できた.彗星起源塵には、炭素質コンドライトという隕石に特徴的な構成要素と鉱物学的にも同位体化学的にも区別のつかない物体が含まれることを発見した.さらに、彗星起源の塵と小惑星起源の塵には、炭素質物質の骨格構造的に違いがあることがラマンスペクトルの解析から分かった.
著者
澁谷 浩一
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,18世紀前半の中央ユーラシアにおけるジューン=ガル,清,ロシアの相互関係を解明することを目的とした。当初の予定では,ジューン=ガルの滅亡という大事件が起る18世紀半ば以降まで含めて研究を進める予定であったが,中国における史料収集状況の変化により,18世紀前半に焦点を絞ることにした。研究成果は大きく三つに分けられる。第一は,1712-15年に清からボルガ川流域のオイラト系遊牧勢力トルグートへ派遣された使節に関する研究である。ここでは,特に使節を受け入れたロシア側の対応を詳細に分析した。第二は,1720年代前半にロシアからジューン=ガルへ派遣されたウンコフスキー使節団を取り上げた研究である。この時,ジューン=ガルは実は清からの使節も受け入れており,同時期にロシア-ジューン=ガル,清-ジューン=ガルの交渉が平行して行なわれていた中央ユーラシアの国際関係を解明した。第三は,その直後に開始された清とジューン=ガルの国境画定交渉に焦点を当てた研究である。この交渉と同時期に,清はロシアとも国境問題に関する交渉を継続的に進めていた。清は,ジューン=ガル,ロシアの両勢力と一気に平和的な関係を構築しようとしていたのである。しかしながら,ロシアから派遣された国境問題解決のための全権大使がモンゴリアに到着するに至って,この交渉は打ち切りになった。清はロシアとの国境画定交渉を優先させたのである。以上の研究を通じて,18世紀前半の中央ユーラシアにおいては,ロシア,清,ジューン=ガルの三大勢力が,トルグート等の周辺勢力をも巻き込みながら複雑に絡み合った国際関係を取り結んでいたことが明らかとなった。特に,従来露清関係に影響を与える第三者的立揚で捉えられてきたジューン=ガルの存在の重要性を中央ユーラシア史の視点から明らかにすることができたと考える。
著者
原口 弥生
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

東日本大震災・原発事故の影響により、茨城県に避難してきた広域避難者を対象として、2回のアンケート調査を実施し、茨城県内の広域避難者の実態把握、必要とされる政策的ニーズについて分析を行った。茨城県内の放射能汚染については「低認知被災地」という視点から、激甚災害の発生のなかで、被害の実態が埋もれがちな地域に於いて、各地域の市民グループがどのように展開・ネットワーク化され、専門家が市民グループとの協働でどのような役割を果たしたのかについて分析を行った。上記の研究と従来からの自然災害研究の成果を統合し、自然災害・原子力災害を考慮した「レジリエンス」概念の再定義の必要性を提言した。
著者
深澤 安博
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

1910年代~1920年代にスペイン人青年男性をスペイン軍の兵士にさせえた1912年兵役法の内容と意義、徴兵の実態、モロッコでの植民地軍の創設、モロッコ植民地「平定」後の「原住民」統治、植民地モロッコの一大軍事基地化、アフリカ派軍人たちが「平定」後にも独自の軍人社会を維持しつづけ軍内で最有力の勢力となったこと、以上のことを明らかにした。総じて、スペイン内戦が「アフリカからやってきた戦争」であることの意味を解明した。
著者
櫻井 豪人
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

幕末の洋学研究教育機関である開成所が刊行した英和辞典や西洋語対訳単語集について、編纂方法や収録語の諸相を新たに明らかにした。例えば、刊本として日本初の英和辞典である『英和対訳袖珍辞書』(1862年刊)については、2007年に発見された草稿を分析することにより、底本のPicard英蘭辞典以外にHoltrop・Hooiberg・Bomhoff・Weilandの英蘭辞典類も利用して訳語が導き出されていたことを指摘した。また、蘭日辞典『和蘭字彙』(1855-58年刊)の日本語部分の全てを電子テキスト化することにより、『和蘭字彙』に見られない『英和対訳袖珍辞書』の訳語の例を示すなどの成果も得られた。
著者
稲葉 奈々子
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

パリで住宅への権利運動を中心とした争議に参加する都市底辺労働に従事する移住労働者に対して聞き取り調査を行った。福祉国家型の社会統合機能が弱体化するなかで、貧困層の社会権行使は、当事者の当該社会での社会的地位を決定する重要な要素となる。フランスでは、労働運動など、かつて争議を担った主要な社会運動が衰退しており、労働者コミュニティも機能せず、貧困問題への対応が個人化する傾向にある。こうしたなかで1990年代以降活性化してきた社会的排除を争点とした新しい争議は、社会的排除社会といわれる現代社会における社会統合のあり方を考察する上で重要である。本調査では、争議への参加は、移民出身者の場合に出身コミュニティによる規定の度合いが大きいことが明らかになった。当事者のアイデンティティの準拠先が出身コミュニティにある場合には、フランスにおいて経験する社会的排除が、個人的責任として自己認識されない傾向にあることは、前年度までの調査で明らかになったことだが、今回の聞き取り調査では、職業や家族構成が与える影響についても聞き取りを行った。非正規滞在移民については、フランスでの争議の経験が、出身国に帰還したのちに及ぼす影響についても調査を行った。とくに争議の中心を担うマリ人について、バマコにおいて聞き取り調査を行った結果、フランスの出身コミュニティとのつながりを保ち続けているソニンケの場合は帰国後も社会統合が比較的容易であるのに対して、出身コミュニティと切り離されている者の場合、争議をへて獲得したフランスからの資源がまったく得られなくなり、マリにおいても社会的排除を経験していることが分かった。
著者
三村 信男 江守 正多 安原 一哉 小峯 秀雄 横木 裕宗 桑原 祐史 林 陽生 中川 光弘 太田 寛行 ANCHA Srinivasan 原沢 英夫 高橋 高橋 大野 栄治 伊藤 哲司 信岡 尚道 村上 哲
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

気候変動への影響が大きいアジア・太平洋の途上国における適応力の形成について多面的に研究した.ベトナム、タイ、南太平洋の島嶼国では海岸侵食が共通の問題であり、その対策には土地利用対策と合わせた技術的対策が必要である.また、インドネシア、中国(内蒙古、雲南省など)の食料生産では、地域固有の自然資源を生かした持続可能な農業経営・農村改革が必要である.また、本研究を通して各国の研究者との国際的ネットワークが形成されたのも成果である.
著者
利安 義雄 大辻 永 山本 勝博
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では4本の柱を立て、「総合的な学習」への活用のカリキュラムを開発した。1.伝統的染色技術の教材化「水戸黒染め」の再現と簡便法を確立し、文部科学省のSPP事業の教員研修において実践を行った。一方,茨城の大洗海岸において採集した海藻(アオサ、カジメなど)を用いて海産物による染色法を開発し、地域のこども科学館で実践した。海藻からの色素の抽出について適正なpHを調べて、授業時間内に効果的に抽出できる条件を見つけた。2.茨城県の地震関連教材前年度開発した簡易水平動地震計で新潟中越地震および茨城県周辺の多くの地震を計測できた。今回は、地震が発生すると計測を始める簡易上下動地震計を開発した。作動するセンサーはカラクリ技術で作り、記録ドラム部分はオルゴールを使用し、、振動本体部分は木製にした。さらに、最近の茨城地方に発生した地震の各観測地点でのデータから振動開始時間と震度の分布マップを作った。3.茨城県の塩に関わる教材化。茨城県海岸地方の釜や塩に関連した地名と古代製塩との関係と、昔塩の内陸への輸送路になった「塩の道」の調査を行った。また塩の字名の多い大子町の湧水、鉱泉、温泉水の水質分析(イオン分析)を行った。ジュラ紀の八溝中生層は非常にきれいな水が多く、主要な溶存イオンは、重炭酸カルシウムである。一方、第3紀層に属する北田気・浅川層は、鉱泉・温泉群が多く分布して、溶存イオンは硫酸ナトリウム・塩化ナトリウムが多かった。また、水戸の名産梅干を作るときの梅酢より、正八面体の食塩を析出させる条件を見出した。4.山寺の水道の教材化永田茂衛門・勘衛門親子の江堰に関する文献調査をすすめた。一部の成果を、SPP事業中学校理科教員研修において実践を行い、自然と人間とがかかわった「総合学習的な学習」への地域教材の一例として提示した。
著者
藤田 昌史
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

晴天日における流入下水や生活廃水中のLAS濃度の日内変動を調べたところ、下水中の界面活性剤の主要な起源として、洗濯廃水が考えられた。そこで、界面活性剤としてLASを含む洗濯洗剤に着目し、ポリリン酸蓄積細菌群(PAOs)の有機物摂取に及ぼす影響を調べた。その結果、界面活性剤がPAOsの酢酸摂取効率を悪化させることに加えて、PAOsの潜在的なPHA源として利用されることが確認され、PAOsに対して正と負の影響を及ぼすことが明らかとなった。