著者
中野 はるみ
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.55-64, 2006

留学生の大衆化が進行するというグローバルな世界のなかで、留学生を受入れる日本人の姿勢と政策が試されている。元来好奇心旺盛な日本人が、前世紀のしがらみから抜け出し、異文化に対する寛容性を育むためには留学生との接触場面を多く作りだすことが肝要だろう。そうした接触場面の増加が留学生と日本人の双方にとってポジティブな異文化間の学習効果を挙げ、21世紀の共生に役立つのである。
著者
武 秀忠 正山 征洋 Xiuzhong WU Yukihiro SHOYAMA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.139-146, 2021-03

COVID-19 が中国で確認され全世界へと蔓延し現在に至っている。中国では傷寒雑病論に収載される小柴胡湯、大青竜湯、五苓散を組み合わせ、21種の生薬を配合した新処方、“清肺排毒湯”が創出された。本処方は214名の患者に対して、90%以上の総有効率が見られ、そのうち60%以上の患者は臨床症状と画像診断で著しく改善され、30%の患者の症状は安定し重症化には至らなかった。清肺排毒湯を解析すると発熱・咳・インフルエンザ等に有効な麻黄、桂皮、杏仁、甘草を配合する麻黄湯が浮かび上がった。そこで麻黄湯の論文調査を行った結果、麻黄湯の有効性が明らかとなり、特に縮合型タンニンの抗ウイルス作用が強いことが判明した。アユルベーダで用いられてきた穿心蓮も麻黄湯同様な作用が認められ、広範囲の疾病に使われてきた。論文調査を行った結果、臨床的に抗ウイルス作用が明らかとなり、その活性成分はアンドログラフォリド類であった。これらの結果から麻黄湯加穿心蓮が COVID-19 に有効であろうとの結論に至った。
著者
友池 敏雄 Toshio TOMOIKE
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.173-183, 2013

2011年の東日本大震災は、地震や津波および原子力発電所爆発事故まで引き起こしたため、この被災地からでる"ガレキ"は、放射能汚染と結びついて受けとめられた2)。国からの広域処理の要請で、受け入れの検討が行われた長崎市においては、同市内の被爆者団体は意見が分かれることもあった4)が、受入反対の意思表示を行なった3)5)。そこで、部分的ではあるが市民の意向を一定の範囲で把握すべく、一部長崎市民を対象に調査したところ、統計学的に有意差を見出せなかったが、"震災ガレキ"を長崎で受け入れるべきだとする人は78.49%存在していた。その中で、特に50~69歳代者には、積極的な受け入れ姿勢がみられた。40歳代や70歳代者も受け入れ姿勢は高く見られたものの、難色や拒否する人は他の年代者よりも2~3倍存在していた。これは、自らの子や孫への放射能による影響不安があったがためと考えられた。70歳代者は受け入れ拒否は低かったが、積極的でもなく中位だった。放射能からの影響不安では80歳代者も高かったため、高齢になるほど変化や不安から遠ざかり安泰な生活を望む傾向から来ていると推察された。しかし、もう一つの視点である、被爆者と一般市民との"ガレキ"受け入れ意識の差は見られなかった。尚、2012年7月26日、長崎市長は、"ガレキ"の受け入れの検討作業を中止すると発表した6)。
著者
細田 亜津子 Atsuko HOSODA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.161-172, 2013

東日本大震災から一年余経過し、被災文化財の状況が解明されてきた。国指定および選定、県指定、登録されている文化財の被災状況は744件であった。これは、未指定文化財と東京電力福島第一原子力発電所の事故による立ち入り制限の文化財をのぞくものである。また、地形の変化による遺跡などへの影響についてはまだ解明されていない。1995年の阪神淡路大震災の被災文化財の調査と修復の経験は、東日本大震災で文化財レスキュー事業、文化財ドクター派遣事業などとして施行された。行政と民間のレスキューは阪神・淡路大震災の経験をいかし、流出した多くの古文書、資料、民俗文化財などを救出した。しかしこれまでとは比較にならない震災の規模で、多くの文化財を失った。この経験は、平時の文化財所有調査を継続して行っていくこと、データ化しそれを多くの機関に保管することなどとして提起されている。この経験と蓄積は、ハーグ条約で文化財を尊重し、緊急時の文化財保存の定義に通じるものである。世界の紛争、テロ、自然災害などに対処するためハーグ条約第二議定書が採択された。日本は平成19年(2007年)に締約した。条約で重視しているのは平時の文化財保存、緊急避難の準備などである。東日本大震災の被災文化財救出の経験は、ハーグ条約に合致し、世界の指針となり、継続して実行することが被災地の復興にもつながるのである。
著者
立平 進
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.37-44, 2005

筆者は、「海を旅する人たち」のテーマで、いくつかの論考を記してきた。海を旅する人たちとは、決して楽な旅ではなく、旅の経緯が比較的不明なものが多く、名も無き人々や、記録に残らないような人たちの旅を記してきたつもりである。漁民は、その中心的な存在であるといえる。本稿では、瀬戸内海漁民の移動について、山口県熊毛郡平尾町佐合島の漁民が、対馬の峰町志多賀に出漁してきていたことを記したものであるが、これを聞き取り調査で明らかにすることができたため、漁民の移動の軌跡として記録したものである。近代になって、瀬戸内海漁民が長崎県の近海に出漁してくる経緯について、江戸時代からの歴史的な経緯もあったが、対馬に「各地ノ漁夫群来シテ種々ノ漁業ヲ営メリ」(下啓介、本文注2)と記されるように、遠くから好漁場であった西海地域に各地の漁師が出漁してくる背景についても考察したものである。また、長崎県の漁民が離島へ出漁していく経緯について、民俗学的な調査により明らかにされたものを、旅の歴史・庶民の交流の歴史として提示したものである。
著者
中村 美穂 Miho NAKAMURA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
no.21, pp.17-27, 2021-03

本研究では、長崎国際大学の学生にとって有益な相談環境の整備を目指し、学生相談室を利用しようとする学生の情報ニーズを把握した。学生は、安心かつ信頼して相談できる環境を求め、カウンセラーの人となりや相談室内外の環境、学生相談の利用状況などを確認したいということが明らかになった。また、情報提供の仕方については、学生がアクセスしやすい Web 上のホームページをはじめ、学生の目に入りやすい媒体で行う必要があることが示された。さらに、学生にとっての相談相手として友人、家族、教員、学生相談カウンセラーそれぞれのイメージや相談することに対する抵抗感や不安を把握した。その結果、学生は、自分の問題や状況などに応じて相談相手を選択し、相談することによる良好な予後を期待していることが推察された。つまり、学生相談カウンセラーは、学生の問題や状況などに合う学内外の援助資源の情報を提供し、必要に応じて学生相談カウンセラー自ら学生と支援者との橋渡しをする必要もあると考えられた。
著者
細田 亜津子 Atsuko HOSODA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.83-95, 2005-01

トラジャ社会は農村社会である。就労者の約80%が農業に従事しており、その他の就労者も兼業が多い。しかし、水田面積は全面積の約10%であり、二期作と棚田での収穫という厳しい現実である。水田形態は、Uma Mana、Uma Tongkonan と呼ぶ一族の共有田と個人所有とがある。共有田の収穫物は儀式など公的儀礼のために使用される。儀式での恩恵は一般大衆にも及び社会的役割を持つ水田である。また、地主と小作の関係は、先祖代々からの関係が多い。土地を所有しない小作は、他地域への出稼ぎを行う。伝統的な収穫物の分配は地主と小作は50%―50%が多く、第二期作は30%―70%になる。この地主―小作の元で働く農夫は、Ikat という稲束の単位により、稲刈りの労働に比例して報酬をうけとる。田植えについては、同じ報酬を受け取る。このように平等性と競争性を取り入れた社会である。一方、農村社会の諸規則は、儀礼との関連が強く、分配や遺産相続に影響する事もトラジャの特色である。
著者
圷 洋一 Yoichi AKUTSU
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.127-137, 2002-03

社会福祉にかぎらずどの制度領域にも学問領域にも「対象」はある。社会福祉における「対象」の理解と把握(対象論)そして対応には特徴的な身振りや構えがみられる。本稿ではそこに「本質化」ないし「本質主義」をみとめ、これを批判的に検討する。社会福祉の対象論・対象化にみられる本質主義・本質化を反省していくための思考の枠組や立場として、本稿では「批判的福祉対象論」を設定する。そして社会福祉を「必要充足空間」としてとらえかえしその透明化をはかる。ここでの考察は、社会福祉のさまざまな局面や文脈における本質主義・本質化に理論的な反省を加えていくための準備作業でもある。
著者
Du Xiao-Ming 正山 征洋 Xiao-Ming DU Yukihiro SHOYAMA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.119-130, 2011

本総説において以下の知見を得たのでこれらについて述べる。1)マウスを用いた金線連の薬理活性、特に肝障害改善作用について検討した。2)ボランテイアによる脂質関連障害の改善傾向を認めた。3)金線連の粗エキスから脂質代謝改善作用を指標として kinsenoside を単離し、本化合物が活性本体であることを明らかにした。ラン科に属する金線連(Anoectochilus formosanus Hayata)は台湾から沖縄にかけて自生しており、高血圧、肺障害、肝障害、小児の発育障害等に用いられてきた。原料の枯渇から金線連の近縁種が代用として用いられるようになってきた。かかる現状から研究材料を確保する目的で、金線連の完熟種子を培地へ無菌的に播種し、発芽後幼植物を得た。このものを液体培地で培養し、植物体を得て実験材料とした。金線連のエキスは四塩化炭素で誘導する肝細胞障害を抑制することが判明した。また、マウスの体重増加や肝重量増加を抑制した。さらにマウスの肝臓や血清中の脂質を低下させる作用が認められた。ボランテイアによる金線連エキスの臨床試験の結果、健常者には作用しないが、脂質やコレステロール、またその両者が高い患者に対しては VLDL や LDL、ALT、AST 値を下げることが明らかとなった。培養金線連を抽出しカラムクロマトにて成分の精製単離を行い、8種の化合物を単離し構造を明らかにした。その中で量的にも多い kinsenoside についてはX-線解析を行い、絶対構造を明らかにした。金線連エキスにつき脂質代謝を指標として分画を行い、kinsenoside がその活性本体であることを明らかにした。Kinsenoside を金線連エキス同様の評価系にて評価した結果、肝臓や子宮の脂質量低下作用があることが明らかとなった。脂肪肝を発症させたマウスに kinsenoside を与えて顕微鏡により調査した結果、0.2%の kinsenoside を与えることにより脂肪肝は改善されることが明らかとなった。
著者
黒山 竜太 下田 芳幸 Ryuta KUROYAMA Yoshiyuki SHIMODA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.13-20, 2010

本研究では、大学生の感じるストレスに対してストレスコーピングのあり方がどのように関連しているか、特に先延ばし傾向が及ぼす影響について男女別に検討した。対象者は大学生315名であった。質問紙は、ストレスコーピングに関連のあるとされる共感尺度、先延ばし傾向尺度、対人ストレスコーピング尺度、ストレス反応尺度で構成された。「抑うつ不安」「不機嫌怒り」「無気力」からなるストレス反応について重回帰分析を行った結果、男子では全てのストレス反応に対して先延ばし傾向の影響が大きいことが明らかとなった。また、女子では先延ばし傾向よりも被影響性の影響が大きいことがわかった。以上よりストレス反応に影響を与える傾向やコーピング手段が男女で異なり、ストレス反応の低減のために男子は問題を後回しにしないことや独りよがりにならないこと、女子は男子の傾向に加えて周囲に影響を受けすぎないことが重要であることが示唆された。
著者
松本 知子 Tomoko MATSUMOTO
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.63-73, 2017-03

英語のコミュニケーション能力向上のための指導法についてはこれまで多く議論されてきたが、文法指導とコミュニカティブな学習とを統合する指導法についてはあまり議論されていない。これはコミュニケーション能力が文法の基礎力なしで向上することを暗示していると捉えられるかもしれない。また、このような見方で学習をする学習者は、文法学習を機械的な暗記による活動として捉えかねない。本研究は、「情報や考えを理解し、適切に伝えるコミュニケーション能力」の向上を目的とし、効果的なコミュニカティブ文法指導法について考察する。さらに、学習者にとって文脈の理解が助けとなる映画を利用した指導法について述べる。具体的には、過去形の「コア」である距離感に焦点をあて、助動詞 will と would や wonder を使った構文と wondered や was wondering を使った構文の丁寧さの度合いを理解できる方法について言及する。最後に、過去形のコアを活用して仮定法過去の指導法についても述べる。
著者
宮本 彩 Aya MIYAMOTO
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.59-69, 2019

本稿は、日本におけるアンプティサッカーの競技普及ならびに競技力向上に向けた取り組みの変遷をまとめるとともに、世界の動向を概説するものである。日本におけるアンプティサッカーの変遷は、各関係機関のホームページや過去に発行されたパンフレット、新聞等の掲載記事の情報を基に、①特定非営利活動法人日本アンプティサッカー協会、②国内のアンプティサッカー大会、③アンプティサッカー日本代表のワールドカップに向けた取り組みについてまとめた。世界の動向については、各関係機関のホームページ、書籍および学術論文を基に、①アンプティサッカーの歴史、②最近の競技発展の動き、③学術研究についてまとめた。アンプティサッカーは、高価な専用器具を用いないため、気軽に楽しめるスポーツとして人気が高まっており、今後も世界的な競技普及が進むと推察される。
著者
安徳 勝憲
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.21-31, 2020-03

松下電器産業(現パナソニック)創業者松下幸之助(以下幸之助)は、戦後復興途上の昭和26年に市場調査のため訪米した。滞在中に多くの工場を視察した幸之助は、自社も含めた日本の製造業の遅れを痛感せざるを得なかった。3か月後、幸之助は日本の素晴らしい景観を生かしたインバウンド観光の振興こそが戦後復興の鍵ではないかとの考えを携えて帰国した。そして『文藝春秋』昭和29年(1954)5月号に発表した「観光立国の辨」において、①観光省を新設し、観光大臣を任命して、この大臣を総理、副総理に次ぐ重要ポストに置く、②国民に観光に対する強い自覚を促す、③各国に観光大使を送って、大いに宣伝啓蒙する、そして④いくつかの国立大学を観光大学に改編して観光ガイドを養成するといった具体的なインバウンド観光振興策を提言したのである。同年の外国人入国者数がわずか5万人足らずであったことを勘案すれば、幸之助の先見の明に驚かされる。その後も、工場立地による瀬戸内海景観の棄損に警鐘を鳴らすなど、幸之助は松下電器産業経営の傍ら、国内観光資源の維持の大事さを訴え続けた。本稿は、幸之助が「観光立国の辨」を発表するに至った軌跡をたどるとともに、「経営の神様」という呼び名にふさわしい厳密なソロバン勘定と緻密な論理の組み立て方を紹介するものである。没後平成24年(2012)、日本の観光振興へ多大な貢献をしたとして、幸之助は観光庁長官表彰を受賞している。

1 0 0 0 OA 大麻研究

著者
正山 征洋 Yukihiro SHOYAMA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.265-274, 2008-03

マリファナはアサから生産され、世界各国地域により色々な名称で呼ばれる。マリファナは特異のカンナビノイドと称するアルキールフェノールを含有する。それらの中で最も強い幻覚活性を持つのが THC である。THCA 生合成酵素を新鮮なアサから精製・単離し、その性状を明らかにした。THCA 生合成酵素は CBGA から環を形成して THCA を生成する過程を触媒する。また、THCA 生合成酵素はいかなる補酵素も要求しないので内在性の FAD 等の補酵素を持つことが予想される。そこで THCA 生合成酵素をクローニングし、昆虫細胞系で大量発現し結晶化に成功した。X-線結晶解析により全構造を明らかにした。これにより FAD がヒスチジン、システインと結合しポケット付近に位置すること、チロシンが環形成に必須であることを明らかにした。THCA 生合成酵素はアサの腺毛で生合成されそこで大麻成分を生合成することが明らかとなった。
著者
野嶽 勇一 深澤 昌史 榊原 隆三 Yuichi NODAKE Masashi FUKASAWA Ryuzo SAKAKIBARA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.239-248, 2010
被引用文献数
2

乳酸を環状に重合した化合物である環状重合乳酸(CPL)が、ガン細胞の増殖を強力に抑制することが見出されている。CPLのこの特異な生理活性が脚光を浴び、CPLを新しいタイプの機能性食品や抗ガン剤として応用するための試みが精力的に実施されている。 CPLはガン細胞のピルビン酸キナーゼおよび乳酸脱水素酵素の活性阻害に効果を示し、ガン細胞の解糖系を特異的に抑制する特長を示す。この結果、解糖系の機能が低下したガン細胞においては、エネルギーおよび細胞構成成分の産生・供給が停滞状態に陥る。また、CPLの作用によりガン細胞ではアポトーシスも誘導されることから、ガンの成長が抑制されることが示されている。現在では、ガン患者を対象としたCPLの臨床試験も実施されており、腫瘍の縮小や症状の改善に関する症例報告がある。
著者
立平 進 Susumu TATEHIRA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.13-22, 2008-03

本稿は、平戸藩の窯業が、いつ頃から産業として定着したのかを考察するのが目的である。今日まで、あまり知られていなかった『平戸焼沿革一覧』を読み解きながら検証を行った。さらに『平戸焼沿革一覧』と『平戸藩御用窯総合調査報告書』の発掘事例とを突き合わせて検討することにより、歴史資料(文献)と考古学的な知見を関連付けた。結果は、松浦鎮信(天祥公)の時代に三川内焼が安定した産業となったことを論じたものである。
著者
福森 良
出版者
長崎国際大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

Δ9-THCを親マウスに反復投与して、この親マウスより産まれたΔ9-THCを直接摂取していない仔マウス(第二世代マウス)における影響を明らかにする。行動生物学的手法を用いて、特に大麻の使用者で多く認められる精神病様症状と認知機能障害に着目して第二世代マウスの行動評価を行う。また、分子生物学的手法を用いて、脳組織における内因性カンナビノイド関連因子の発現変動を解析する。さらに、CB1受容体ノックアウトマウスを用いることで、大麻の第二世代マウスにおける影響について、CB1受容体の関与を検討する。
著者
嶋内 麻佐子 Masako SHIMAUCHI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.131-141, 2001-03

利休歿後、利休の弟子七人衆の一人である古田織部により、その茶が継承された。織部は武将の茶としての展開を遂げ、茶室・茶の形態・露地・懐石・点前に至るまで、武家相応の茶の湯に置き換えることにより、利休の身分平等性を主とする作法やその技法、精神性からの脱皮を計ることに成功したと言える。 しかし、その事で草庵における茶の形態だけは、守られたと思われる。そのことは、町人的作法から生まれた利休の茶を改良し、かつての貴族時代に生まれた文化と、武家故実に基づく文化を合流させた慶長年間の武家相応の茶の湯が、織部によって出来上がったと言えるのではないだろうか。
著者
友池 敏雄 Toshio TOMOIKE
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.173-183, 2013-03

2011年の東日本大震災は、地震や津波および原子力発電所爆発事故まで引き起こしたため、この被災地からでる“ガレキ”は、放射能汚染と結びついて受けとめられた2)。国からの広域処理の要請で、受け入れの検討が行われた長崎市においては、同市内の被爆者団体は意見が分かれることもあった4)が、受入反対の意思表示を行なった3)5)。そこで、部分的ではあるが市民の意向を一定の範囲で把握すべく、一部長崎市民を対象に調査したところ、統計学的に有意差を見出せなかったが、“震災ガレキ”を長崎で受け入れるべきだとする人は78.49%存在していた。その中で、特に50~69歳代者には、積極的な受け入れ姿勢がみられた。40歳代や70歳代者も受け入れ姿勢は高く見られたものの、難色や拒否する人は他の年代者よりも2~3倍存在していた。これは、自らの子や孫への放射能による影響不安があったがためと考えられた。70歳代者は受け入れ拒否は低かったが、積極的でもなく中位だった。放射能からの影響不安では80歳代者も高かったため、高齢になるほど変化や不安から遠ざかり安泰な生活を望む傾向から来ていると推察された。しかし、もう一つの視点である、被爆者と一般市民との“ガレキ”受け入れ意識の差は見られなかった。尚、2012年7月26日、長崎市長は、“ガレキ”の受け入れの検討作業を中止すると発表した6)。
著者
VAN DEUSEN Brendan OWATARI-DORGAN John Patrick RAWSON Thom Brendan VAN・DEUSEN John・Patrick Owatari-DORGAN Thom RAWSON
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-11, 2016

本稿では、日本の大学において、外国語としての英語を学ぶクラスのためのアクティブラーニングのビデオプロジェクトについて考察する。このリサーチプロジェクトの目的は、次の問いを調査することである : 1)学生の英語力にこのプロジェクトはどのような効果があるのか、 2)英語力以外のどのようなスキルを学生は身につけるのか。これらの問いに答えを出すために、このプロジェクト実施の前後に、学生が認識している効果と困難さに関する意見を把握するためのアンケート調査を実施した。これらの結果と教員の観察、及び最終成果物に基づき、このプロジェクトは、学生の英語コミュニケーションスキル、協力するスキル、プロジェクトのプランニングスキル、そしてメディア制作のスキルの向上に寄与したと言える。また、テクノロジーの役割は有益であることが見て取れたが、時に、プラスの面とマイナスの面の両方が見られる場合もあった。さらに、統合カリキュラム内でプロジェクトを実施することの含意についても論じている。This paper discusses the implementation of an active learning video project for an English as a foreign language class at a university in Japan. The goal of this research project was to investigate the following questions: 1) How did the project benefit students'English? 2) What non-English skills did the students acquire ? A questionnaire was administered before and after the project to gage students' opinions about the perceived benefits and difficulties of the project. Based on these results, teacher observation and an analysis of the end product, this project helped students improve skills for English communication, collaboration, project planning and media production. The role of technology was observed to be positive, though it both enables and hindered students at times. Implications for implementing projects within an integrated curriculum are discussed.