著者
宮良 俊行 Toshiyuki MIYARA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.51-58, 2014-03

文部科学省は2010年「スポーツ立国戦略―スポーツコミュニティ・ニッポン―」を策定した。そこでは、「スポーツ立国戦略の目指す姿」として、スポーツに親しみ、スポーツを楽しみ、スポーツを支える(育てる)ことによって、「スポーツの持つ多様な意義や価値が社会全体に共有され、『新たなスポーツ文化』を確立することを目指す」ことがあげられている。「5つの重点戦略の目標と主な施策」の5つ目には、「社会全体でスポーツを支える基盤の整備」があげられ、「地域」におけるスポーツの位置付けがなされている。宮良、小島(2012)は、『現在「スポーツによるまちづくり」という言葉に表現されるような、いわゆる地域社会の機能回復すなわち「コミュニティ」の再生をスポーツに委ねることは、これまで政策の場面において様々な視角から特集され、研究についても長期に渡って議論されてきた。』と分析し、様々な課題を提示している。一方、日本の多くの地域では、過疎化が進んでいる。地方自治体においても高齢化に伴う医療費負担の問題が深刻さを増している。このような状況において「スポーツによるまちづくり」は本当に可能なのであろうか。本研究では、「スポーツによるまちづくり」に関する事例として熊本県南関町の取り組みを報告する。
著者
小島 大輔
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学教育基盤センター紀要 = The Journal of Nagasaki International University Center for Fundamental Education (ISSN:24338109)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.91-101, 2018-03

本稿では、『学習指導要領社会科編(Ⅱ)(第七学年~第十学年)(試案)』で示された中学校第1学年の単元「われわれは余暇をうまく利用するには、どうしたらよいだろうか」(以下「余暇利用」単元)について、問題設定と社会機能の視点から検討し、以下のことを明らかにした。「余暇利用」単元の設置には、アメリカのレクリエーション運動が影響したヴァージニア・プランが反映された。一方、日本における戦後のレクリエーション運動は、「余暇善用論」の展開の一つであり、レクリエーションとの対比で余暇が問題化されていった。この「余暇善用」を前提とした余暇の規範化と、その方法としてのレクリエーションの普及という背景から、「余暇利用」単元が、本来的に自由な時間である余暇が、レクリエーションとしてすべて「社会生活の主要機能」に帰属させられる短絡的な展開になっていた。
著者
乙須 翼 Tsubasa OTOSU
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-12, 2010

アメリカにおいて、飲酒や賭博、暴力や動物への虐待を伴う娯楽への批判が本格的になされるのは、1820年代、30年代以降のことである。中流階級の人々を中心に行われた社会改革で、古くからある娯楽の多くは姿を消すか、形を変え、娯楽に対する人々の眼差しや態度は変化していく。本稿はこういった変化が見えつつあった18世紀末の娯楽批判の特徴を捉えるものである。アメリカでもいち早く社会改革が進められたフィラデルフィアの娯楽批判の言説空間では、古くからある娯楽が怠惰や浪費、貧困、犯罪と結びつくものとして批判される。またそれと同時に、健全な家庭生活や勤勉の精神、名誉、時間、健康、他者や動物の悲劇や痛みへの感受性といった諸価値がそこでは提示される。つまり、18世紀末の娯楽批判の言説空間とは、19世紀初頭の本格的な社会改革を支える「ミドリング・クラス」の価値観を提示、創出する、そういった場でもあったのである。In America, it was from the time of social reform that the people drastically changed their view and attitude to amusements in their leisure time. Middling-class reformers mainly attacked amusements which belonged drinking, gambling and violence to human and animals in the early nineteenth century. Consequently, these amusements were disappeared or were changed to rational leisure or sports. This study focuses the criticisms of amusements in the late eighteenth century Philadelphia where a capital of American social reform, and captures the features of them. In critical essays, reformers attacked traditional amusements because they made people idle, extravagant, poor and criminal. Furthermore, in the critical essays, some values were emphasized: healthy family life, spirit of industry, honor, time, health, and sensibility to tragedy and pain of others. In short, the criticism of amusements at that time was a place where the key values were created and presented to the people, that of "middling class" who would lead American social reform.
著者
乙須 翼
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-13, 2018

本稿は、18世紀末フィラデルフィアの無償貧困児教育の特徴を、1790年に設立されたアメリカ初の日曜学校団体ファースト・デイ・ソサイエティ(FDS)の教育活動の分析を通して捉えるものである。公教育論者ベンジャミン・ラッシュがその設立に深く関わった FDS は、宗派を問わず全ての貧困児を対象に聖書による読み書き教育を行い、教師による日曜礼拝への参加促進と生徒の行動監視により、貧困児のモラルの改良と安息日の保護、そして社会の安寧を成し遂げようとしていた。しかし、公教育にも近い特異な理念を掲げた FDS は、教育活動を展開する中で、任意団体としての財政基盤の弱さや、貧困児や教師、寄付者や親、FDS の役員といったアクター同士の衝突や思惑のずれによって生じる様々な困難に直面し、初期教育理念を修正していった。FDS が直面した困難は、公教育理念に近い教育活動を18世紀末に実践することがいかに困難であったかを示している。This study aims to describe the features of free education for poor children in late eighteenth-century Philadelphia. It focuses on the education of the first Sunday school society in America,"The Society for the Institution and Support of First-day or Sunday Schools"(the FDS). This voluntary association was established in 1790 and was strongly backed by Benjamin Rush, one of the most famous advocators of public education during the nation's Founding Era. The educational policy of the FDS was unique. The FDS welcomed uneducated, poor children of all religious faiths and denominations and provided free instruction in reading and writing using the Bible. Professional teachers were responsible for, not only providing instruction to children but also inspiring them to attend their own religious Sunday worship either after or before school, and closely monitoring and disciplining the children. Adopting this educational policy, the FDS was aiming to reform the unruly behavior of the poor children and preserve the sanctity of the Sabbath and peace in society. However, the FDS faced a number of difficulties. These were caused by conflicts and interactions among actors such as poor children, teachers, financial contributors, parents, and the FDS members, as well as by financial difficulties brought about by being a voluntary association. The difficulties the FDS faced suggest that an educational policy that was similar to that of public education was not easy to practice in late eighteenth-century Philadelphia.
著者
石倉 健二 高島 恭子 原田 奈津子 山岸 利次 Kenji ISHIKURA Kyouko TAKASHIMA Natsuko HARADA Toshitsugu YAMAGISHI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.167-177, 2008-03

本論は、近年、高等教育学界において注目を集めている「初年次教育」がいかなるものであるかを、国内外の動向をレビューしつつ検討したものである。M・トロウが明らかにしたように、大学入学者数・率の上昇は、大学教育の変質を必然的に伴うものであり、日本やアメリカ等、トロウの言うマス段階からユニバーサル段階に達した高等教育においては、その質的変化に伴う新たな教育が要請されることになる。「初年次教育」とは、そのような新たな教育形態の一つであり、特に、新入生の大学への適応を支援していくためのプログラムである。その背景には、大学教育のユニバーサル化により、必ずしも大学が期待する学習文化を持たない学生が多数入学し、結果として大学にスムースに適応できない学生が多数存在するということがある。高等教育のユニバーサル化を早期に経験したアメリカにおいて、初年次教育の理論・実践には一定の蓄積があるが、日本においては、アメリカの事例を参照しつつ、各大学が試行錯誤を行っている段階であり、初年次教育が十分に深化されているとは言えない状況である。大学全入時代を迎える日本の高等教育において、初年次教育の必要性はますます高まるであろう。このような視角のもと、今後、具体的な初年次教育のあり方を構想することが求められるであろう。
著者
小林 徹 Tohru KOBAYASHI
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.149-156, 2005-01

茶道は平和を追求する作法であり、現代社会に受け継がれている。作法は無駄のない動作と静寂のなかにその価値がみいだされる。武士道は戦う武士が勝利のために規範とするものである。規範のなかに現代人が守り伝えるべき約束事は存在する。しかし武士が存在しない現代においては新しい規範をつくって精神的拠り所とする試みが必要である。
著者
大西 良 辻丸 秀策 池田 博章 Ryo ONISHI Shusaku TSUJIMARU Hiroaki IKEDA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.175-182, 2017-03

本研究の目的は、一般市民を対象に質問紙による調査を実施して、「子どもの貧困」に対するイメージや貧困が子どもの成長に与える影響(問題)等に関する認識の実態を把握することであった。調査の結果、市民の約8割が国民の生活水準の低下(貧困化)を感じ、また4人のうち3人が子どもの貧困問題を身近な問題として捉えていることが分かった。また「貧困」に対するイメージについては、「身近」で「怖いもの」という認識を抱いている者が多く、さらに「貧困」が子どもに与える影響(問題)については、「進路選択・進路実現の問題」、「心理(こころ)の問題」、「衣食住の問題」が上位に挙げられた。子どもがごく普通の生活をするために必要な物や事柄(必需品)では、「病気やケガをした際に病院へいく」、「遠足や修学旅行などの学校行事への参加」、「休日等で家族と一緒に過ごすこと」などがすべての子どもに絶対与えられるべきであるものとして上位にあがった。その一方、教育の機会や教育用品に関しては、経済的な理由で与えられなくても仕方がないという意見も多くみられた。このような結果を踏まえて、考察では、「関係性の貧困」と「機会の貧困」が子どもの成長や将来に負の影響を与えることについて述べ、相対的貧困がもたらす本質的な問題について論じた。
著者
田渕 幸親
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.51-60, 2004-01-31

日本のインドシナ進出に関する研究は、多様であり多彩であるけれども、おおむね政治力学主導型で進められてきた。海外における研究もまた同様であった。新たな視角での研究が求められていることを示すための基礎的作業として、これまでの研究を整理してみたのが本稿である。
著者
岩本 敏夫
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.117-128, 2005-01-31

わが国の空港整備は配置的側面から見ると、全国的に既成したと考えられる。しかし、多くの地方空港が運用の低迷に苦慮している。開港6年を経た佐賀空港も例外ではない。近接する福岡空港に需要の多くが集積しているためである。しかし、福岡空港は処理能力の限界が目前である。対応策として2案がある。現福岡空港を廃港にして滑走路2本を備えた新空港と交代させる案と、佐賀空港と新北九州空港を加えた3空港による機能分担案である。本稿では佐賀空港を事例として、地方空港設置の経緯を整理し、既存の社会資本活用推進の立場から地方空港の展望を考察する。
著者
平井 美津子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.115-122, 2007

日本は歴史や文化の基盤が欧米と大きく異なる。そのため英語で日本を理解してもらうには、文化的背景を加えたわかりやすい説明が必要となるが、このとき特徴的なキーワードが見出される。本稿ではこれらのキーワードを指摘し、例文を提示して文化的背景を織り交ぜながら解説し、それらについて検証する。
著者
西村 貴直 Takanao NISHIMURA
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.185-194, 2005-01

1980年代以降、様々なかたちの社会変動プロセスが同時的に進行していくなかで、多くの社会的葛藤が生じてきている。なかでも、富める者と貧しい者との二極分化が「豊かな」先進諸国の内部でも深刻化しており、「新しい」貧困問題を形成しつつある。本稿では、わが国における「新しい」貧困問題の一端を構成する「フリーター」問題に関し、英米における「新しい」貧困問題に言及する“アンダークラス”の概念と対比させながら、特にその言説にともなういくつかの問題を浮き彫りにすることを目的としている。
著者
石倉 健二 高島 恭子 高橋 信幸 井手 睦美 Kenji ISHIKURA Kyouko TAKASHIMA Nobuyuki TAKAHASHI Mutsumi IDE
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.159-165, 2008-03

自閉症の大きな特徴の一つである「反復的で常同的な様式」は「同一性保持現象」とも呼ばれ、問題行動とみなされることも多い。本研究はこの「同一性保持現象」について、自閉症児の母親15名に質問紙調査を実施し、以下の結論を得た。一つ目は、「単純反復運動」で特徴づけられる「常同行動」と、「固執」「配列」「質問嗜好」「空想」で特徴づけられる「こだわり行動」はその出現の様相が異なることが示された。このことから、「常同行動」と「こだわり行動」は別々の機能的側面を有することが示唆された。二つ目は、「一週間後の予定の理解」のある者の方がその他の者よりも、「こだわり行動」が多いことが示された。「時間的見通し」が「こだわり行動」に影響を与える独自の要因であるのか、言語能力や「時間的なこだわり」を反映するものなのかは定かではなく、今後の更なる検討が求められる。
著者
中野 はるみ
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.67-84, 2007

文学作品は、作者が「ことば」の特性を最大限に使いこなして創作したものである。本稿では、「ことばのしくみ=語彙選択や文法」によって、その文学作品を読み解く方途を探っている。書き手が選んだ「ことばのしくみ」の特質が明らかになれば、読み手は、作品のイメージを明確に捉えることができる。素材として、日本の文豪、夏目漱石の最初の小説であり、誰もが一度は読んだことがある『吾輩は猫である」を取り上げた。
著者
中野 はるみ Harumi NAKANO
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.45-57, 2008

グローバル社会が到来し外国語教育の重要性が増していくにつれ、学習する外国語の背後にある外国の思想や地域文化、習慣もともに学習する必要性があることが認識され、非言語【ノンバーバル】コミュニケーションの重要性が指摘されている。本稿では非言語【ノンバーバル】コミュニケーションと周辺言語【パラランゲージ】について、研究成果を追いその構成要素を調べた。加えて、発話を文字化したばあいに周辺言語【パラランゲージ】がどのような表現になるのかを探るために、周辺言語【パラランゲージ】を表現する語彙を抽出した。In the wake of the coming of the globalizing world and the increasing importance on foreign language education, it is generally recognized that there is a great necessity for learners to learn and to understand the thinking, the regional local culture and social daily customs which are embedded in any foreign language. In this regard, furthermore, it is also pointed out that one should not neglect the importance of the non-verbal communication. This article aims to achieve two purposes : firstly, it attempts to investigate the components of nonverbal communication ; secondly, it endeavors to trace the research results of paralanguage and its relationship with nonverbal communication. In addition, the article is also attempted to examine the case that when spoken dialogue (hatsuwa) is expressed or demonstrated by words (mojika), what kind of paralanguage expressions would be used and what can be observed? To achieve this, I extracted the vocabulary (glossary) which are used to express paralanguage in the realm of nonverbal communication.
著者
末松 信子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.87-89, 2002-01-31

「〜せざるを得ない」を意味する表現形式について,19世紀初頭のJane Austen(1775-1817)の用法を調査した。そしてAustenでは,今日最も一般的な'cannot help doing'型ではなく,歴史的により古い'cannot but do'型が優勢であること,また今日しばしば見られる'cannot help but do'型,今日古風と考えられる'cannot choose but do', 'cannot choose but to do'型は用いられていないことを明らかにした。
著者
VAN DEUSEN Brendan PATRICK John Owatari-DORGAN Brendan VAN DEUSEN John Patrick Owatari-DORGAN Thom RAWSON
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.13-21, 2015

アクティブ・ラーニングの演習を実施し、管理することは、EFL の教員にとってはますます差し迫った問題になりつつある。本稿では、オンラインの学習テクノロジーを活用することによってもたらされるアクティブ・ラーニングへの利点について調査を行った。まず、アクティブ・ラーニング、および Moodle として知られている学習管理システムを概観する。次に、日本の大学の EFL クラスにおいて、Moodle と連携させたアクティブ・ラーニングの実践内容について記述する。さらに、アクティブ・ラーニングに Moodle を活用することに対する学生と教員の意識調査を行った。その結果、自主的な学習活動、タスクベースの学習活動、さらに社交的に構成された学習活動による体験を通じて、学生と教員の双方が、Moodle 活用はアクティブ・ラーニングを支えるものであると肯定的に捉えていることがわかった。The implementation and management of active learning practices is becoming a more pressing concern for instructors of English as a foreign language (EFL). For this paper, the authors investigated the possible benefits to active learning provided by online learning technologies. The authors begin with overview of active learning and the learning management system (LMS) known as "Moodle". Following this, the authors describe the implementation of active learning in conjunction with Moodle in an English as a Foreign Language class at a Japanese university. Additionally, the authors surveyed students and teachers about their impressions of using Moodle for active learning. Students and teachers positively perceived Moodle as supporting active learning through experiences with autonomous, task-based, and socially constructed learning activities.
著者
高井 伸彦
出版者
長崎国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

認知機能の低下は,脳腫瘍や小児白血病における放射線療法に限らず肺がんにおける化学療法においても生じる副作用の一つである。炭素線および陽子線を脳局所に照射した脳腫瘍治療モデル動物の場合,晩発期では実際の治療線量の1/2〜1/3線量である15-30Gyの照射により,記憶の獲得過程の障害が生じることを明らかにし,またその障害の要因として,海馬神経細胞数の選択的な減少が関連していることを明らかにした。
著者
細田 亜津子
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.119-126, 2002-01-31

インドネシア・南スラウェシ州タナ・トラジャ県において,伝統的家屋=トンコナンの修復保存事業を行った。文化・習慣・社会背景が違う文化財保存の国際援助はそれらの理解,学習の繰り返しである。援助する側,援助される側はそれぞれの主張をする。地域性は独自性を自主的に発揮する場合は,事業を成功させる。しかし,地域性の押し付けば,文化的強制となり,援助展開をスケールの小さいものにしてしまう。本来は,一地方から起こった支援活動は国際援助として十分評価,活用,展開できるのである。
著者
立平 進
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.43-53, 2003-01-31

本稿は、1600年4月19日(慶長5年3月16日)、大分県臼杵市佐志生の黒島海岸に漂着したとされるリーフデ号について、今まで、漂着とされていたものが、実は目的地であり、到着であったと訂正するのが課題である。本稿を要約すると、二つの視点から漂着というより到着であったという歴史的根拠を示すものである。第一点は、1600年以前の西洋において、東洋についての情報がどのように行われていたのか、ということである。当時西洋で作られた、西洋人が描いた日本の地図を見ることによって、日本の地理情報を基に来航したとするものであり、目的意識をもって日本を目指したものであったといえるのではないかという提示である。第二点は当時の歴史的背景である。日本近海に何らかの理由で来航した船について、政治的な理由や人道的な立場から「漂着」としたと見るのである。リーフデ号の場合は「漂着の状態であった」ということであり、たまたまそこへ流れ着いたというものではない、とするものである。そして現在、歴史的な経緯から、大方の解釈は、漂着ではなく到着であり来航であることが明白で、到着した時の状態が漂着と表現したほうがよいような状態であったということである。百歩譲っても、到着の時が漂着の状態であったためということと理解したい。このような理由から、「種子島にポルトガル人が来航」したとして、「オランダ人が初めて来航した」とか、「オランダ船の来航」と歴史的に表記すべきであると提案したい。筆者は「西洋人の描いた日本地図展」(1993年、長崎県立美術博物館主催)という展覧会を担当したことがあり、それを契機にオランダ船の最初の来航について、歴史的な解釈を示したものである。また長崎県立美術博物館には古地図コレクター松本賢一所蔵の古地図コレクションが寄贈されていたこともあり、それを機会に、筆者は、同時に別の西洋の日本古地図にかかわる企画展示を担当したのであった(「欧州古版日本地図展」平成5年7月)。その展覧会では、シーボルト(滞日期間1823-28)以前の西洋から、日本がどのように見られていたのかを知ることができるものであった。安土桃山時代から元禄時代にかけて、近世初期の頃の西洋との交流を証言する資料である。もう一つの見方をすれば、伊能忠敬(1745-1818)以前の日本の地理情報であり、マルロポーロの日本情報以後の歴史的な資料といえる。西暦1600年前後の日本について、西洋諸国で、大きな関心が払われていたということも、この展覧会から知ることになった。本稿にかかわるテーマは、その時からの持ち越であった。
著者
田中 誠
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.77-80, 2006

ヘミングウェイの簡潔な文体は、様々な要素が絡み合って構成されていると考えられるが、その中でも、この稿ではandの使用頻度に注目をする。ヘミングウェイがandを多用しているという印象は多くの人が感じていることであると思うが、andの使用頻度は本当にヘミングウェイの作品の中で、統計的に見ても多いと言えるのか、また、最初の頃の作品と、晩年の作品では、andの使用頻度に違いはあるのかの調査をしてみることにした。コーパス作成のために選んだ作品は、The Sun Also RisesとThe Old Man and the Seaである。また、比較のために「小学館コーパスネットワーク」のWordbanksOnlineを使用し、その中のandの使用頻度を調べた。結果として、WordbanksOnlineと比較して、ヘミングウェイ作品中のandの使用頻度は、統計的に見ても高いということが分かった。またThe Sun Also RisesとThe Old Man and the Seaでは、後者の方がさらに、andの使用頻度が高いということが分かった。上記のヘミングウェイ作品においては、他の単語と比べてもandの使用頻度は高いということが分かった。