著者
赤澤 威 西秋 良宏 近藤 修 定藤 規弘 青木 健一 米田 穣 鈴木 宏正 荻原 直樹 石田 肇
出版者
高知工科大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

旧人ネアンデルタール・新人サピエンス交替劇の最大の舞台のひとつ西アジア死海地溝帯に焦点を当て、事例研究として、一帯における交替劇の真相解明に取り組み、次の結果を得た。両者の文化の違いは学習行動の違いに基づく可能性が高いこと、その学習行動の違いは両者の学習能力差、とりわけ個体学習能力差が影響した可能性が高いこと、両者の学習能力差を解剖学的証拠で検証可能であること、三点である。以上の結果を統合して、交替劇は両者の学習能力差に基づく可能性があり、この説明モデルを「学習仮説」と定義した。
著者
朴 啓彰 熊谷 靖彦 永原 三博 片岡 源宗 北川 博巳
出版者
高知工科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

一般ドライバーと同質サンプリングと考えられる健常中高年の脳ドック検診者2193名(男性1196名,女性997名;平均年齢53.84±9.67 歳)を対象として、過去10年間における交通事故歴に関するアンケート調査を行い、頭部MRI所見の大脳白質病変と交通事故との関連性について多変量ロジスティック解析を行った。運転走行中の衝突事故など大きな事故に対して白質病変は、グレードに応じて有意の高い関連性を示した(年齢調整オッズ比は2.937:95%信頼区間1.260-6.847; P=0.013)。白質病変は、軽度でも大脳半球両側に存在すれば、視覚情報処理能力や注意機能の反応速度が有意に低下することを既に報告しているが、白質病変によるこれらの高次脳機能低下が、白質病変ドライバーと交通事故との因果関係を説明するものと推察された。因って、脳ドック受診者1150名(男性642 名、女性508 名、平均年齢52.1±8.9歳)に対して、警察庁方式CRT 運転適性検査におけるアクセル・ブレーキ反応検査結果と白質病変との関連性を調べた。アクセル・ブレーキ検査は、選択的反応動作の速さ、反応むら(変動率)、反応動作の正確さ(見落とし率)を測定する検査である。白質病変のグレードを説明変数に、見落とし率・変動率の高低を目的変数にして、多変量ロジスティック解析を行うと、見落とし率では、オッズ比1. 530(95%信頼区間;1.094-2.140、P=0.013)であり、変動率では、オッズ比1.348(95%信頼区;0.991-1.834、P=0.013)となった。安全運転に必要と考えられる認知判断機能の不正確さと反応むらに白質病変が有意に影響することが、交通事故の発生機序の一つとして想定された。頭部MRI で定量評価される白質病変グレードに応じた安全運転対策の可能性が示唆された。
著者
渡辺 高志 小山 鐵夫 岡田 稔 朴 〓宣 木内 文之 川原 信夫 水上 元 田中 伸幸 伊藤 美千穂 杉村 康司 飯田 修 渕野 裕之 PITISOPA Fred TAVIE Clemen GIDEON Solo PATTSON Tofu
出版者
高知工科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ソロモン諸島は,豊富な熱帯雨林に恵まれ未開の地と云え,生物は種類が豊富であり,ソロモン固有種が多く生育しており4,500種を超える高等植物が確認されている.従って薬用植物の分布も多く,未研究種が大半である事から,主に新薬創出・代替生薬の発掘のため,カギカズラ属Uncaria(生薬「釣藤鈎」として利用),ゴシュユ属Tetradium (Euodia)(生薬「呉茱萸」類縁品として利用)などを中心に探索収集し,さく葉標本は2392種(SIMB 1-2392)で7020点,そして生薬標本は1440点に達した.
著者
渡邊 法美 小澤 一雅
出版者
高知工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本の公共発注者に必要な「発注力」を明らかにし、今後の技術調達モデルの方向性を検討した。今後も維持すべき発注力とは「信任」の精神であり、具体的には技術者の良心、Win-Win、規準作成、自己管理、努力者評価である。向上すべき発注力は、透明性の向上である。そのためには、リスクとコストの関係明確化、プロセスマネジメントシステムの構築・運用、利用者・納税者への説明、発注者に不足する機能を補完する新しい職能の創設・導入、各リスクを最も適切に取ることが出来る主体を選抜する仕組みの構築が必要である。
著者
坂輪 光弘 今西 隆男
出版者
高知工科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

従来の木炭に比して、4から5倍の気孔を有する超多孔質の炭を製造できることを見出した。この原料として、古紙やダンボールなどの廃材も使えることを明らかにした。これらの木質系資源を粉砕し、圧密後、炭素化することで超多孔質の炭を造る。この圧密の過程での圧密の程度で気孔を制御できる。この気孔には、マクロな気孔とミクロな気孔が存在することが判った。マクロな気孔は、圧密の程度に比例する。ミクロな気孔は原料の炭素化過程での揮発分に因る。このためマクロ気孔は制御が可能であるが、ミクロ気孔は原料依存性が大きく、制御は簡単ではない。このマクロ気孔は、植物の根や菌糸の大きさに適合するので、植物と菌糸の生育には欠かせない。一方、ミクロ気孔は水分や空気の流通の経路として大切であり、やはり植物や菌糸の生育には欠かせない。植物や菌糸の生育を試みた結果、松などの樹木の生育も可能である。またトマトやきゅうりなどの野菜類の生育も可能である。特に炭素化過程で1000℃程度まで加熱してあるので、雑菌に犯される確率が少ないため、野菜類の苗の生育する割合が通常の苗床に比較して高いことも見出された。また、芝などの生育も可能である。ビルの屋上やベランダでの利用が可能であり、炭が軽量であるので土の栽培床に比してメリットが大きい。このためヒートアイランドへの対応や都市でのビル街の緑化にも使える可能性がある。また、炭は吸着性があるので植物や菌糸類の栄養剤を吸収するのではないかと懸念される。窒素、燐酸、カリの3要素について炭の吸着特性を調べたところ、一部は吸着するがすぐに飽和し、ある量以上は吸着しないことも判った。このことは過剰に栄養剤を与えた場合でも、緩和してくれる可能性もある。以上の結果か従来の炭では全く栽培することの出来なかった樹木や野菜などの植物と菌糸類が生育することが判り、実用化の可能性を見出すことができた。
著者
山本 真行
出版者
高知工科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は明るい流星の出現直後に稀に見られる流星痕について、研究代表者らが1998年より開始した市民参加の観測キャンペーンである流星痕同時観測(METRO)キャンペーンによって得られた史上初の大量流星痕画像を解析し、未知の部分を多く残す流星痕生成メカニズムならびにその地球超高層大気における消散過程を統計的に調査したものである。本研究課題ではMETROキャンペーンのデータを各種パラメータと共に記録した画像集として世に残すため、まず2編の流星痕カタログ論文を出版した(Toda et al., 2004 ; Higa et al., 2005)。これらの論文は1988〜2002年の国内流星痕観測を纏め上げた世界初の流星痕画像カタログであり、流星痕研究の基礎をなすデータとして今後も活用が期待される観測史的に貴重な文献である。以上は本研究課題によって平成16年度に成された成果である。平成17年度には、さらにカタログ論文に掲載しきれなかった画像についても世界の研究者による利用の便を考えweb上におけるMETROキャンペーンアーカイブとしての整備を進めた。現在、最終の確認作業中であり、著作権等の確認の後に公開される予定である。流星痕の高度解析結果については、1988年〜2001年に得られた観測例のうち、解析に必要な十分な時刻精度と空間分解能を備えたデータ20例を吟味し整約計算を進めた。結果として、オリオン座流星群による2例しし座流星群による18例(計20例)の永続流星痕の高度解析結果から、永続流星痕の出現高度に関して109km〜75kmの高度領域を得た。流星雨の夜の数時間にメソスケール程度の領域に得られた10例のしし座流星群による流星痕に関し、平均中央高度93.0kmを得た。この高度は、Borovicka and Koten (2003)モデルのフェーズ3である主に酸化鉄FeOによる発光過程における流星痕発光高度を統計的に初めて明らかにした成果である。同発光過程においてはオゾンの中間圏・熱圏下部からの供給と酸素原子の供給、拡散を支配する背景大気圧力のバランスが重要であるとJenniskens (2000)等により指摘されているが、本研究はこれを観測的に求めた成果である。20例の分布から、流星痕高度の上端は100km付近で一定であるが、下端については地方時(輻射点高度)依存性が見られ、流星痕発光領域の流星経路長依存性が指摘できる結果を得た。これらの成果は、Yamamoto et al. (2005)としてEarth, Moon, and Planets誌に出版された。その過程で、Abe et al. (2005)における分光観測結果に対し高度情報を与える成果も得た。三次元構造解析の時間発展から中間圏・熱圏風速場について研究した成果は、日本地球惑星科学連合2006年大会にて発表予定である。