著者
前波 晴彦
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

中小企業は相対的に人材・資金・情報源等のリソースに乏しく,産学官連携への参入に対して障壁を感じていることが明らかになっている.こうした障壁を解消し,中小企業の産学官連携を促進するためには,適切な支援制度の活用と支援機能の運用が求められる.本研究では中小企業を主な対象とした産学官連携支援制度を事例とした.制度の利活用状況に地域間で差があることに注目し,これを産学官連携に関わる地域内の諸要素の影響によると仮定し検証した.その結果,地域内の研究リソースの蓄積だけではなく,外部資金受け入れ体制の整備やファンディング機関による直接的なサポートが有用であることを示した.
著者
香川 敬生 野口 竜也 赤澤 隆士 小林 明夫 北村 正志
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

2007年10月より緊急地震速報が運用され,他にもP波センサーが機器の緊急停止に用いられ,計測震度計で得られた各地の震度が速報されている。しかし,これらは独立に設置・運用されており,有機的かつ総合的な活用には至っていない。そこで,市販の計測震度計に緊急地震速報受信およびP波センサーの機能を付加することでP波センサーによる推定震度,緊急地震速報を用いたその場所の予測震度,実際の揺れによる計測震度を出力する「三段階震度計」を試作し,その活用方法の検討をおこなった。
著者
東 政明 小林 淳 石田 裕幸
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

細胞内外の水輸送を司る分子が,細胞膜にあるアクアポリン(水チャネル)である。生物の水やイオンのバランス維持は,細胞が有する必要不可欠な機能で,昆虫は小さな体でありながら,そのごく少量の体内水分をアクアポリンを介して効率よく循環させ,からだの乾き(渇き)を防いでいる。水を唯一の輸送溶質とするアクアポリンの基本的な性質に加え,細胞膜に対して通過性が高いとされる非電荷溶質(グリセロール・尿素等)をも通過可能な多機能タイプ(アクアグリセロポリン)の同定と特徴付けを,カイコおよび他昆虫を用いて実施した。さらなる分子機能を調査するべく,単純な小胞系やリポソーム系の確立をめざした。
著者
山下 博樹 藤井 正 伊藤 悟 香川 貴志
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16〜17年度の2年間における本研究課題では、リバブル・シティとしての評価が高いカナダ・バンクーバーとオーストラリア・メルボルンにおける公共交通網を基軸とした都市圈整備に関する現地調査を実施し、わが国における都市圈整備の方向性を検討することを目的とした。その研究成果の概要は、次の通りである。1.バンクーバー都市圈では、1970年代からの取り組みをベースにしたGVRDによる"Livable RegionStrategic Plan"を基に、公共交通網の再整備と結びついたコンパタトで高密度な街づくりが郊外タウンセンターで実践され、利便性の高い日常生活拠点として整備されている。2.メルボルン都市圈では、1990年代から取り組んできた市街地拡教化防止のための土地利用規制に加えて、2002年に第定されだMelbourne 2030"による持続可能な都市圈整備の取り組みがスタートし、郊外のディストリクト・センターを中心に公共交通でもアクセズ可能で、多様な機能集積による利便性の高い中心地形成が進められている。3.これらの両都市圈での詳細な土地利用調査や公共交通網整備の状況などから、21世紀の持続可能な都市整備方針としてのリバブル・シティの特性の一端を明らかにすることができた。4.わが国でのリバブル・シティ形成の可能性は、東京、大阪など公共交通網の発達した大都市部では高い実現性を有するが、反面、過密な人口密度などによる弊害をどのように緩和するか等の新たな課題が生じる。地方都市部では、低い人口密度とモータリゼーションにより、持続可能な市街地整備の必要性が一層高まっているが、その状況はむしろ悪化しつつある。高齢化の進展などに対応したバリアフリー化などの視点からの再整備が有効であると考えられる。
著者
國土 将平
出版者
鳥取大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的は、エイズに関する知識テストに対して項目反応理論を適用し、それぞれのテスト項目の特性を明らかにし、エイズに関する知識テストの標準化を行うことである。対象は小6から高校3年生までの4048名であった。知識項目は、対象の発育発達段階、学習のレディネスを考慮して選択した、小6・中1年13項目、中2・3年27項目、高校生28項目である。これらの資料に基づいて、学年別に2母数の潜在特性モデルを用いて、対象者の能力スコア、調査項目の困難度、識別度のパラメータを推計した。また、調査項目のパラメータを利用して、スコア、困難度、識別度を等化し、全ての学年に共通した被験者の評価得点、項目パラメータを算出した。なお、学年は該当学年の4月を基準とした。学年別の能力スコアの分布により、小学生、中学1・2年生、中学3年生、高校1・2年生、高校3年生に分類され、それそれの時期に適切な学習が有効であることが推測された。日常生活における感染の項目について、プールやお風呂、トイレでの感染、飲食による感染に関する知識は、困難度-1、識別力1以上であり、小学生の時期に有効な知識項目、及び学習内容である。しかし、動物からの感染、献血による感染、歯科医などからの感染は困難度1以上、識別力も0.5を下回り、難しい項目であることが示唆された。これらの項目は継続的な学習並びに評価によって、その学習状態が確認できると推測される。「早く処置すると発症を遅らせることができる」、「母子感染することがある」,「HIVは熱に弱い」といった項目は、小学生では安定した特性値が得られず、論理的記述による知識は中学生以上になって学習・評価することが好ましいと示唆された。以上の様な解析を経て、小学生、中学1年生では10項目、中学2・3年生では25項目、高校生では26項目が標準化テストとして適切であると結論された。
著者
神波 雅之
出版者
鳥取大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

1.磁気共鳴映像法による脳循環評価健常者における無呼吸時の脳の信号変化をT_2^*強調画像(スピンエコー型エコープラナー法)により測定し、無呼吸時の信号強度上昇を確認した。信号強度上昇はhypercapniaによる脳血流量増加の効果が脳血液量増加、動脈血酸素飽和度低下の効果を上回り、oxygenation上昇がもたらされたためと考えられた。閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者においても無呼吸時の脳の信号上昇を認めた。閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者においては健常者に比して信号強度変化は有意に大きかった。無呼吸発作の頻発する患者では無呼吸と過呼吸の反復によりhypercapniaの効果が増強されているものと考えられた。本研究により無呼吸時の脳の信号変化が臨床用磁気共鳴映像装置により測定可能であることが明らかにされた。本研究の成果は学会において発表ならびに学術雑誌に投稿中である。2.磁気共鳴分光法による脳機能評価脳の器質的異常を有さない閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者の脳プロトンスペクトルを測定し、ポリソムノグラフィーによる重症度(apnea index;AI)別および健常者との比較検討を行なった。中等症以上(AI≧20)の閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者において大脳深部白質のN-acetylaspartate/choline比の有意な低下を認めた。本知見は通常の磁気共鳴映像法等の検査では全く異常を認めない閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者においても脳代謝の変化を生じていることを示すものである。本研究により閉塞型睡眠時無呼吸症候群の中枢神経障害の評価法としての磁気共鳴分光法の可能性が明らかにされた。本研究の成果は学会および学術雑誌に発表した。
著者
長田 佳子
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

EBウイルスは、抗体産生細胞に分化するBリンパ球に潜伏感染します。私たちはEBウイルスが再活性化するとき、感染しているBリンパ球の抗体産生を刺激することを報告し「EBウイルス再活性化に誘導される抗体産生系」を提唱しています。この系ではIgM抗体が多く産生され、除去されるはずの自己抗体産生細胞がレスキューされて抗体産生してしまいます。私たちはEBウイルス再活性化の抑制による、バセドウ病など自己免疫疾患の抗体産生抑制治療をめざしています。
著者
伊藤 亜矢子
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

脂漏性皮膚炎は、全世界で2-3億人もの人々が罹患する慢性かつ難治性の皮膚疾患である。皮膚に常在するマラセチア属真菌が炎症を誘導し表皮肥厚をきたすと考えられているが、そのメカニズムは未解明である。そこで我々は、マラセチアの認識と表皮肥厚の両者を橋渡しする炎症のイニシエーターとして樹状細胞に着目し、世界で初めて脂漏性皮膚炎患者の毛包にCD1a+の樹状細胞が顕著に集積していることを見出した。今回、これらの樹状細胞が脂漏性皮膚炎発症にどのように関わっているかを明らかにするため、病変部皮膚に浸潤する炎症細胞について、免疫組織化学的手法を用いて正常皮膚と比較検討し、さらに電子顕微鏡観察を行い以下の成果を得た。1)脂漏性皮膚炎では、正常皮膚と比較して毛包上皮内と真皮にCD1a陽性樹状細胞が多数集積していた。特異マーカーの検討により集積している樹状細胞はランゲルハンス細胞と考えられた。毛包以外の上皮では差はなかった。2)脂漏性皮膚炎では、正常皮膚と比較して有意に真皮・表皮・毛包のマクロファージが浸潤していた。3)脂漏性皮膚炎の真皮でマクロファージは播種状に分布していたのに対し、ランゲルハンス細胞は毛包周囲に結節状に分布し細胞集団を形成していた。4)その細胞集団について電子顕微鏡観察を行うとランゲルハンス細胞とマクロファージ、リンパ球が接着していた。上記1)~4)は、脂漏性皮膚炎の病態において毛包が重要な役割を持ち、さらにランゲルハンス細胞が起点となり他の炎症細胞と情報交換を行っていることを示唆する重要な新知見である。
著者
唐澤 重考
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

約16,000個体の標本データに基づき日本におけるワラジムシ亜目の分布データベースを構築した.また,このデータに基づき外来種オカダンゴムシの日本における分布制限要因を調べた結果,その分布には最寒月の気温が大きく影響していることが明らかとなった.加えて,日本に侵入したオカダンゴムシのmt DNAのCOI領域に5つの遺伝子型があることを明らかにし,本種は5つの原産地から持ち込まれたことを示唆した.さらに,琉球列島の4島(奄美大島,沖縄島,宮古島,石垣島)のワラジムシ相調査,および,福岡県宗像市の草地における群集生態学的調査から,現在のところ外来種による在来種の排他現象は生じていないと考えられた.
著者
倉井 淳
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

黄砂時粉塵の長期曝露が発癌に関与する可能性について,気道上皮構成細胞株を用いて検討を行った.その結果,比較的短時間の黄砂時粉塵による細胞株刺激でも,炎症発癌に関与するサイトカイン,酸化ストレスマーカーが誘導され,粉塵の長期曝露が発癌に関与する可能性が示唆された.また,鳥取県内に長期在住している非喫煙肺腺癌患者の術後肺標本における元素解析を蛍光X線法で行った.喫煙肺腺癌患者の標本でも同様の解析を行い両群間で元素成分について比較検討を行った.黄砂に付着する重金属などの非土壌成分について明らかな差異は認めらなかった.長期粉塵曝露が肺組織へ与える影響については今後さらなる検討が必要と考えられた.
著者
中島 健二 中曽 一裕 古和 久典 YASUI Kenichi 安井 建一
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

我々はこれまでにParkinson病(PD)の発症要因および増悪因子を検討する中で,PD患者における血漿高ホモシステイン(Hcy)の存在を報告してきた(Yasui et al.,2000).今回高Hcy血症の生じる機序を検討するため,20例の未治療PD患者において,L-dopa内服前後の血漿Hcy及びメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子多型を検討した.PD患者のL-dopa内服前の血漿Hcy値は11.0±4.5μMで健常対照群(n=55)の10.2±5.3μMと有意差を認めなかった.一方,L-dopa内服後の血漿Hcy値は18.8±13.5μMであり,内服前と比較して有意な上昇を認めた.さらに血漿Hcy値をMTHFR遺伝子多型別にみると,C/C型(wild)では10.9±1.6μMから14.6±2.4μMへ,C/T型では10.3±4.0μMから14.1±4.2μMへ,T/T型では11.9±7.1μMから29.3±21.8μMへと上昇し,いずれも有意な上昇であり,特にT/T型では顕著だった(Yasui et al.,Acta Neuro Sca in press).さらに,高Hcy血症は血管障害の危険因子であるため,L-dopa内服PD患者における動脈硬化性変化を頸動脈超音波検査で検討した.PD群(n=100)では健常群に比して有意に中内膜複合体厚が高値であったが,L-dopa非投与PD患者では健常群と有意な差を認めなかった.さらに血漿Hcy値,MTHFR多型を同時に検討したところ,MTHFR 677T/T多型を有するL-dopa投与PD患者においては高Hcy血漿を伴う頸動脈中内膜肥厚が認められた.以上よりPD患者群における頸動脈中内膜肥厚への,L-dopa内服に伴う高Hcy血症の関与が示唆された(Nakaso et al.,J Neurol Sci 2003).また,53例のPD患者においてHcy産生の中間代謝産物s-アデノシルメチオニン(SAM)およびs-アデノシルホモシステイン(SAH)を測定してSAM/SAH比を算出し,臨床型と比較検討した.同比は罹病期間が長くなる程,またwearing off現象を有するPD患者において低値であったが,有意差は無かった.
著者
岸本 朗 井上 雄一 松永 慎次郎 中村 準一
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

現在、精神科臨床においては、複数の抗うつ薬に抵抗してうつ状態が持続するいわゆる難治性うつ病者の存在が問題となっている。難治性うつ病者にみられる臨床的特徴は急性期にみられるような高コルチゾール(COR)血症がしばしば観察されるところにある。そこで本研究は平成7-8年にかけて、難治性うつ病者に対して、COR合成阻害薬であるmetyraponeを投与するとともに、corticotropin-releasing hormone(CRH)を健常者や通常(非難治性)のうつ病者を対照として、難治性うつ病者に対して負荷し、それに対するadrenocorticotropic hormone(ACTH)やcortisol(COR)の反応を観察したものである。その結果、計9名の難治性うつ病者に対して1日量2,000mgまでのmetyraponeを、計16回にわたって使用したところ、双極性障害のみにおいて寛解が観察されたが、大うつ病では寛解が観察されなかった。また高COR血症が消失してもうつ状態の持続をみるものがあった。次に合計68名の対象について、100μgのCRHを静脈内に注射投与して得られたACTHやCOR反応を健常者や各うつ病者群と比較すると、難治性うつ病者においてはCRHに対するACTH反応,COR反応が服薬治療を受けている非難治性うつ病者、あるいは未治療者などにおけるそれらより有意に不良となっていた。以上の研究結果から、難治性うつ病者にみられる高COR血症は状態依存性ではあるが、必ずしもうつ病の原因とはなりえないこと、CRHに対するACTH,COR反応の不良性は長期間続く高COR血症のために下垂体や副腎皮質の反応性が不良となったものと考えられた。またCRH負荷試験は真の難治性うつ病から、不十分な抗うつ薬療法が行われているために、臨床効果が得られないうつ病者(すなわち偽難治性うつ病者)を区別する極めて有用な指標となるものと考えられた。
著者
板井 章浩 及川 彰
出版者
鳥取大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

果肉や果皮に花粉親の影響が出ることをメタキセニア現象と呼び、ナツメヤシなどで現象が確認されているが、その分子機構はまったく解明されていない。そこで、ニホンナシにおいて花粉親をかえ、メタキセニアの存在を明らかにすると同時に、その分子機構解明のためマイクロアレイおよびRNA-seq解析を用いて花粉親の違いにより変動する遺伝子の探索を試みた。収穫果実において、花粉親の違いによって種子数に差はないにも関わらず、果実重に差が認められたことから、メタキセニアが確認された。メタボローム解析ではアミノ酸、有機酸などで差がみられた。網羅的遺伝子発現解析により、各花粉親間で数百遺伝子の発現に差が認められた。