著者
田中 仁
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、次のような仮説を証明しようとして計画した。「香川景樹の創始した桂園派の和歌と歌論がひろく流布したのは、仏光寺を本山とする真宗仏光寺派の組織が基盤にあったことがその大きい要因であった」。資料としては主として次の二つを用いた。(1)本山仏光寺の日誌である『仏光寺御日記』(2)本山仏光寺と仏光寺派寺院、仏光寺派門徒とその関係者に伝えられている和歌関係資料。たとえば「香川景樹点随念上人ほか詠草」、『蓮光寺理山日記』、柳下清老関係資料、柏原正寿尼関係資料など(1)にもとづいて次のようなことが判明した。(1)香川景樹は仏光寺第23代門主随応上人、24代門主随念上人の時代に、門主をはじめ本山仏光寺に仕える僧俗、末寺の住職・門徒たちに、歌会、詠草点削、歌談などを通じて和歌を教授した。(2)同じく随応上人、随念上人の二代にわたり、御勧章の作成にかかわっていた。次の(2)からは、次のような事例があったことが判明した。(1)仏光寺派僧侶が景樹への入門を仲介した。(2)門主、仏光寺派寺院の住職、門徒などがともに集まり歌会を開催していた。以上のように、本山仏光寺と景樹との密接な関係を示す事柄と、桂園派の形成と展開に真宗仏光寺派とその関係者が密接に関与していたいくつかの事例を見いだすことができた。また、今後さらに多くの事例を発掘し、真宗仏光寺派の文化活動全般のなかでの桂園派の位置を見定める必要があることが明らかになった。真宗仏光寺派の文化活動は他宗派ともかかわって展開されているから、そのためには仏光寺派以外、真宗以外の宗派やその関係者への目配りも必要になってくるであろう。
著者
小野 勇一
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

まず,メタルプリンタを用いて作製した多数の円錐状圧痕を有するステンレス板を使用して,微小な突起を有するニッケルリン合金薄膜を作製した.すなわち,硫酸ニッケルを主体とし,リン酸とホスホン酸を添加しためっき浴を用いて,圧痕密度の異なる2種類のステンレス基板にニッケルリン合金めっきを施した.めっき終了後,最終電着面には基板の圧痕に沿ってくぼみが残るため,耐水研磨紙によりくぼみがなくなるまで研磨して,最終電着面を平滑面とした.最後にめっき部をステンレス板から剥離して,突起密度の異なる2種類のニッケルリン合金薄膜を作製した.さらに,この薄膜に400℃×1hの加熱処理を施して,析出硬化させた.上述のニッケルリン合金薄膜に材料試験機に取り付けた炭素工具鋼製の圧力負荷治具を用いて種々の静圧を負荷し,突起部の塑性変形量を光学顕微鏡にて観察した.すなわち,突起の底面積Aと突起先端部と治具との真実接触面積Arの比Ar/Aを種々の静圧について計測した.静圧の増加とともに,突起の塑性変形量Ar/Aは大きくなるが,突起密度の高い薄膜では1.5GPa程度の圧力が作用しても突起が完全に塑性変形しない(Ar/A<1)ため,1GPa以上の静圧測定が可能となることが明らかとなった.これは,従来の銅薄膜を用いた方法で測定可能な圧力の最大値(300MPa)よりも格段に高い値である.しかしながら,突起密度の増加とともに静圧の変化に対する塑性変形量Ar/Aの変化は緩慢となるので,圧力感度は低下する.そこで低圧力の測定には突起密度をなるべく小さくして薄膜の圧力感度を向上させる必要があるといえる.この観点から,静圧の測定レンジに対して適切な突起密度を予測可能な汎用性のある較正式を導いた.さらに,本手法の有効性を検証するため,円柱同士が接触する問題として自作したローラ試験機に作用する圧力を求めてみた.すなわち,ローラ間に上述の突起を有するニッケルリン合金薄膜を挿入し,突起の変形量からローラ間の接触圧力を測定した.これにより得られるローラ間に作用する全荷重は,ロードセルから得られた値とほぼ一致し,本手法の有効性が確認できた.
著者
山内 靖雄 田中 浄
出版者
鳥取大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

本研究では、強力な遺伝子転写プロモーターを植物に人為的に導入し、無作為に種々の植物ゲノム遺伝子の転写を活性化させることにより、さまざまな転写活性型突然変異体を作製し、原因となっている転写活性化された遺伝子のクローニングをするアクチベーションタギング法を用いて、環境ストレス耐性に関与する遺伝子をクローニングすることを最終目的として実験を行った。実験材料は当初はタバコとシロイヌナズナを用いて行ったが、シロイヌナズナを用いる形質転換係が芳しくなく、効率的に変異体を作製することができなかったので、当研究室で確立しているタバコを用いた形質転換系を用いて変異体植物作製を集中的に行った。本実験ではアグロバクテリウム(GV3101)とアクチベーションタギング用プラスミド(pPCVICEn4HPT)を組み合わせ、タバコ葉片に感染法によりプロモーターを導入した。プロモーター導入後のタバコカルスを抗生物質(ハイグロマイシン)を含んだ培地で選抜し、変異体植物タバコを完全体に再生した。第一世代の形質転換体タバコは種子を得るため、約6ヶ月間種子が完熟するまで栽培した。その結果、計191系統の形質転換体タバコを得ることができた。現在、得られた突然変異体タバコを播種し、塩ストレス、乾燥ストレスを負荷し、ストレスに耐性を持った個体を選抜中である。また、これらの形質転換体タバコのうちいくつかは、形態的に野生株と異なっているものがあり、今後はこのようなタバコ個体の遺伝子解析も行う予定である。
著者
小池 淳司
出版者
鳥取大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

現在,わが国では,財政赤字の増大などの社会的要請をうけて,社会資本整備評価必要性が叫ばれている.社会資本整備評価のためには定量的な客観性を有する評価手法が必要であるが,そのためには経済理論に基づいた社会資本整備手法の確立が不可欠である.土木計画学の分野では,これら社会的要請に答える形で,社会資本整備評価に応用一般均衡モデルを適応する試みがここ数年の研究課題となってきている.本研究では旅客交通整備評価のための空間的応用一般均衡モデルの開発と同時に,その実証分析に向けた応用の検討を行うことを目的としている.一般に,空間的応用一般均衡分析による交通整備評価は物流交通整備を対象としているため,旅客交通を明示的に扱うことが不可能である.そのため,本研究では世帯が消費する自由目的の旅客交通行動と企業が消費する業務目的の旅客交通行動を応用一般均衡のフレームで整合的モデルを構築している.さらに,交通需要データ(全国旅客純流動調査)と社会経済データ(地域間産業連関表)によりモデル内の未知パラメータ推定手法を提案することで実証可能としている.実証研究としては,わが国における整備新幹線計画,リニア中央新幹線計画,さらに,羽田空港発着枠増加などの効果を計測し,地域別の帰着便益を算出している.一方,東京首都圏における震災による交通マヒの社会経済的被害なども算出している.以上の研究成果は,土木計画学研究発表会,応用地域学会年次大会,WCTR(世界交通会議),RSAI(世界地域学会),災害比較シンポジウムなどを通じで内外の研究者と意見を交わし,評価を受けている.さらに,査読付き論文として,土木計画学研究論文集,Proceedings of 1^<st> Workshop for "Comparative Study on Urban Earthquake Disaster Managementに登載された.
著者
中島 路可 柴田 彩 水谷 義 上田 那須雄 山本 二郎
出版者
鳥取大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

沈香の生成に微生物が関与していることに着目し、沈香生成菌と考えられているカビ及びバクテリヤ51種類を選び、デヒドロアビエチン酸、ファルネソ-ル、ネロリド-ル、テトラリン、ヌ-トカトン、カウレンなどを基質として微生物変換を行った。デヒドロアビエチン酸では2ー位、7ー位、16ー位の水酸化がそれぞれ高収率で起こることを見出した。ファルネソ-ルではIFO7706(Fusarium oxysporumf)により3,7,11ートリメチルー2,6,10ードデカトリエン酸が、IFO3521(Pseudomonas aureofaciens)により3,7,11ートリメチル2,10ードデカトリエン1,7ージオ-ルが高い選択性で得られ、合成法としても利用できることを示した。ネロリド-ル、テトラリン、カウレンについては良い結果は得られなかった。テトラリン、カウレンについては基質が水に溶けないことに問題があり、水酸化、リン酸エステル化によって水溶性として変換を行いたいと考えている。ヌ-トカトンについては現在生成物を分離、構造決定を行っている。またデヒドロアビエチン酸の液晶としての利用の可能性を見るためにデヒドロアビエチン酸の化学変換を行い、デヒドロアビエチン酸の13ー位のアミノ基への変換及び各種置換フェノ-ル類とデヒドロアビエチン酸のエステルを合成し、液晶性を検討している。また、資源開発の目的で松柏類の樹脂成分の検索をコウヤマキ、白松について行い、とくにコウヤマキについては日本列島の日本構造線と成分の相関について調査を行っている。
著者
矢野 友久
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

ガラス室内に設置した計量型ライシメータ(直径1.5m,土層厚1.6m,海岸砂充填)を用いて,平成8年9月中旬から約1カ月間ならびに9年8月中旬から約1カ月半の間,オレンジを対象に塩水潅漑を行った.潅漑水はNaClとCaCl_2によって,2,000mg/lの塩分濃度(電導度:4.0dS/m)になるように調合した.潅漑は点滴潅漑方式によって毎日行い,毎日の潅水量は,前日の蒸発散量の1.2倍とした.日蒸発散量は水道水で潅漑した場合(対照区),最大4.2kg/day(ライシメータ面積を用いて水深に換算すると,2.4mm/day)であった.対照区の蒸発散量と計器蒸発量との間には相関係数0.955の強い相関があった.塩水潅漑による蒸発散量の影響は潅漑開始直後から表れ,2週間経過した時点で塩水潅漑条件下の蒸発散量は普通水潅漑条件下に比べて約20〜25%減少した.減少割合の変化はほぼ直線的であった.オレンジの根元から10,30,50cmの距離において,深さ10〜60cmの深さまで採土法によって実験終了後に測定した飽和抽出液の電導度は根元付近で高く,最大3.5dS/m,距離10cm地点の深さ10〜60cmで,1.4〜1.6dS/m程度の値を示した.従来の研究結果によれば,1.7dS/mの値まではオレンジの収量に全く影響がなく,3.3dS/mの値で収量が25%減少すると言われており,蒸発散量と収量の違いがあるが,本研究では塩水潅漑による生育への影響が大きいことを示した.有限要素法を用いて,塩水潅漑開始後ならびにリーチング潅漑開始後の土壌水分と土壌塩分の挙動に関するコンピュータシミュレーションを行った.理論解や他の公表プログラムとの比較によって,プログラムのアルゴリズムは正しいことが確認できたが,水分と塩分の実測値と比較すると,定量的には十分な精度が得られなかった.表面ならびに底部の境界条件,水分ならびに塩分移動に関するパラメータの値などの再検討が必要である.
著者
横須賀 俊司
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本年度も昨年度に引き続き、男性頸随損傷者に対して聞き取り調査を行いライフヒストリーを作成していった。その中で明らかになったことは、当初の仮説とは異なるものであった。当初の仮説としては、性機能障害のある男性頸随損傷者は性行動に対して消極的であり、セックス(その中でも特に性交)に対してどちらかというと否定的な意味づけをしているのではないかというものであった。しかし、聞き取りを行った5人の男性頸随損傷者の全員がかなり積極的な性行動をとっていた。健常者の性行動よりもかなり活発に性行動をとっていると思われる人もいた。性交に対して必ずしも否定的な意味づけを意味づけをしているわけでもなかった。それよりは、むしろ、できないことは仕方がないと受け止めて、その状況の中でどのようにやっていくかを志向しているようであったといえる。このように仮説を裏切るものであったが、これを一般化して論じるわけにはいかない。まず、調査対象の人数が少ないという点があげられる。それに加えて、対象者の偏りをあざけるを得ない。性のようなプライベートなことをインタビューすることを誰でもが引き受けてくれるわけではない。そのため、知り合いを伝っていく方法にならざるを得ない。今回のインタビューでもその方法がとられた。その結果、障害者団体の活動や障害者運動に参加しているという人たちばかりであった。ある程度活発に社会参加している人たちであったからこそ、性行動に対して積極的であったり、否定的意味づけをしていないということも考えられるところである。したがって、今後の研究課題としては、社会参加をあまりしていないような男性頸随損傷者にも聞き取りを行い、その人たちがどのような状況にあるのかを明らかにしていく必要がある。それを比較検討していくことで研究を豊かなものにしていくことができるであろう。
著者
田和 俊輔
出版者
鳥取大学
雑誌
鳥取大学教養部紀要 (ISSN:02874121)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.15-48, 1984-09
著者
岡本 芳晴 畠 恵司 荻原 喜久美 南 三郎 柄 武志
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

今回の研究により、細胞レベルでのルパン型トリテルペン(ルペオール)のメラノーマ分化誘導の機序を解明することができた。また遺伝子解析により、細胞周期に影響を及ぼすことも判明した。マウスを用いたin vivo実験より、ルペオールを腫瘍局所あるいは全身に投与することにより、メラノーマの増殖を抑制することが明らかとなった。さらに犬の自然発症例メラノーマに対しても十分有効なことが示された。
著者
松田 敏信 永木 正和 長谷部 正 草苅 仁 鈴木 宣弘 伊藤 房雄 茂野 隆一 趙 来勲 山口 三十四
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は,少子高齢化と食の安全性をキーワードとして,消費者需要を中心に生産や国際貿易などフードシステム全般のメカニズムを経済分析により明らかにすることである.主な研究成果として,代表者の独自モデルLA/QUAIDSによって,都市別・月別の疑似パネルデータを推定し,少子高齢化が食料需要に与える影響を明らかにした.また,需要システムの新たな独自モデルを複数提案し,さらに食料生産の計量経済分析や国際貿易の応用ミクロ経済分析等を実施した
著者
伊藤 啓史
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の主な目的は、家禽で増殖できない野生水禽由来のインフルエンザウイルスがどのような仕組みで家禽体内での増殖能を獲得するかを分子レベルで明らかにすることである。H16年度に実施した研究では以下の成績を得た。(1)野生の水禽から分離された弱毒トリインフルエンザウイルスA/whistling swan/Shimane/499/83株(以下499株)の鶏増殖能獲得変異株24a株のリバースジェネティクス系を確立し、人工24a株(以下RG24a株)を作出した。(2)鶏での増殖が不可能な499株と可能な24a株のリアソータントウイルス(合の子ウイルス)をリバースジェネティクスにより作出した。(3)(1)、(2)で作出したウイルスを用いて鶏雛での感染実験を行い、各ウイルスの増殖能を調べたところ、HA遺伝子は24a株に由来し、その他の遺伝子は499株に由来するRG24aHA株は鶏雛で増殖可能で、その逆のHA遺伝子は499株に由来し、その他の遺伝子は24a株に由来するRG499HA株は鶏雛で増殖不可能であった。したがって、HA遺伝子が水禽インフルエンザウイルスの家禽での増殖能に関わっていることが明らかとなった。さらに、RG24aHA株のNA遺伝子を499株から24a株に交換したRG24aHANA株の鶏増殖能はRG24aHA株に比べ増強されたことから、水禽インフルエンザウイルスの家禽での効率良い増殖には適切なHA遺伝子とNA遺伝子の組み合わせが必要なことが明らかとなった。(4)499株と24a株のHA遺伝子およびNA遺伝子翻訳産物であるHA蛋白とNA蛋白の機能を比較したところ、24a株の赤血球吸着活性(HA蛋白)およびノイラミニダーゼ活性(NA蛋白)は各々499株の約45%に低下していた。以上の結果から、野生水禽由来のインフルエンザウイルスが家禽で増殖できるようになるにはHAおよびNA遺伝子に変異が生じ、その翻訳産物であるHA蛋白およびNA蛋白の機能が変化することが重要であると考えられた。
著者
簗瀬 英司 岡本 賢治
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

世界に先駆けて、セルロースから直接バイオエタノールを生産できる遺伝子組換え発酵細菌を開発するために、セルロース系バイオエタノール生産のキーとなる遺伝子群の解析を実施した。先ず、我が国独自の発酵細菌であるZymobacter palmaeの全ゲノムを完全解読し、そのゲノム情報に基づき作製したDNAマイクロアレイを用いてエタノール発酵時に発現する遺伝子群の挙動を詳細に解析した。その結果、高効率なエタノール生合成代謝のキー遺伝子群、糖質の細胞内取り込みに働くキー遺伝子群、およびストレスに応答遺伝子群を初めて明らかした。
著者
山根 成之
出版者
鳥取大学
雑誌
鳥取大学教養部紀要 (ISSN:02874121)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.135-141, 1970-12