- 著者
-
飯塚 舜介
- 出版者
- 鳥取大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1994
アルミニウム負荷後の尿中アルミニウム排泄量については,有意な増加がみられた.今回の食物中のアルミニウム吸収率は0.14%であった.アルミニウムは他の毒性のある金属と比較して腸管吸収率は低く,日常生活レベルでのアルミニウムの毒性の低さがうなすける結果となった.さらに制酸剤中のアルミニウムの吸収率は,飲食物中のアルミニウム吸収率に比べてわずか10分の1以下の低い値であった.アルミニウムの生物学的半減期は,は約8.5時間であった.文献による血中アルミニウム半減期は約8時間とよく一致していた.尿量(x)と尿中アルミニウム濃度(y)の相関については,xy=一定と近似された.このことは単位時間当たりのアルミニウム排泄量は,でほぼ一定であることを示している(制酸剤の場合:約27ng/min).市販の缶詰,びん詰,テトラプリック無菌充填包装およびハイパーパック包装の天然果汁中のアルミニウム濃度を測定した.アルミニウム材料が使用されているが,著しい溶出などは観察されなかった.市販のコンブ3種,ワカメ4種,ヒジキ1種を試料とし,海草中のアルミニウム含有量,浸漬液および加熱抽出液へのアルミニウム移行量,浸出条件によるアルミニウム濃度への影響について検討したところ,ヒジキに高い濃度のアルミニウムが観察された.長期の曝露や,腎不全患者などのアルミニウムに対する排泄機構の働きか低下している場合,吸収されたアルミニウムが長い時間を経て脳その他の器官に蓄横し,アルツハイマー病などの重篤な健康障害をもたらす危険性は十分認識されるべきである.しかし,健常人においては,アルミニウムの吸収率は極めて低く,また吸収されたアルミニウムは速やかに尿中へ排泄されることが分かった.