著者
菅間 敦 泉 明里彩 瀬尾 明彦
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.191-198, 2014

ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着して拡張現実や複合現実感の元で3Dコンテンツを視認する場合,頸部や体幹を傾けた不自然な姿勢を取る場合がある.そこで本研究では,HMDを装着して覗き込みを行った際の身体負担を定量的に評価し,HMDの装着と視認位置が身体負担に与える影響を明らかにすることを目的とした.実験は11名の被験者を対象とし,座位で覗き込み姿勢をとらせ,HMDの有無2条件と視認対象物の位置9条件を実験条件として行った.関節角度,関節の最大トルク比,筋電図,主観的な負担感の指標について解析した結果,HMD装着時には頸部の側屈が小さく体幹の側屈と回旋が大きい姿勢をとることで,身体負荷を軽減する姿勢をとることが明らかとなった.
著者
劉 建中 久保 光徳 青木 弘行 寺内 文雄
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.29-38, 1996-02-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14
被引用文献数
4 3

本研究では, 5名の男子学生を被験者とし, 弛緩状態での座姿勢と仰臥姿勢において, 2-20Hzの垂直正弦振動を受ける人体の振動伝達特性を, 伝達率と位相差によって検討した. 伝達率は, 人体上の振動加速度実効値を振動台垂直加速度実効値に対する比率で表したものとし, 位相差は, 人体と振動台間の振動加速度の位相角で表した. また振動刺激に対する身体各部位の揺れの感覚について主観評価を行った. その結果, (1) 2Hzでは座姿勢, 仰臥姿勢ともに体全体が1つの剛体として, 振動台とほぼ同じ振幅と位相で振動した. (2) 5Hzと8Hzでは身体の振動が強くなって, しかも姿勢と被験者により各部位の振動状況がかなり異なった. (3) 11-20Hzの範囲では足部と頭部の振動を強く感じる一方, 腹部と胸部はほとんど減衰していることが明らかとなった. 本実験の結果から, 人体における振動の伝播は振動刺激の種類, 方向, 周波数, 強度のほかに, 被験者の体型と姿勢などから大きな影響を受けていることが明らかとなった.
著者
戸上 英憲 野呂 影勇
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.155-162, 1987-06-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
24
被引用文献数
6 7

VDT作業の愁訴率は, 眼および頸肩部が圧倒的に高い. 本論文は, 特に後者についての負担を軽減する目的でVDT作業台の座位身体寸法値に基づく最適な高さ決定の方法を提案した. この方法に従いキーボード置台およびCRTディスプレイ置台の高さを求め, また椅子の座面高さについても, 具体的に数値を求めた. キーボード置台の高さは, キーボードの厚みおよび脚空間のゆとりを確保すると, 現用のJIS S 1010の定める事務用机の高さである70cmより低い値が得られた. CRTディスプレイ置台の高さは, オペレータの視覚能力を十分発揮できるように視機能面からも検討した. その算出結果を実際の職場におけるオペレータ選好値と比較した結果, ほぼ等しい範囲にあり, 本設定法の妥当性が示されたVDT作業台の差尺は, 1/3座高-(4~6)cmがこの方法により求められた.

2 0 0 0 OA 椅子と掛心地

著者
山内 陸平
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.233-238, 1985-10-15 (Released:2010-03-11)
著者
中野 広
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.83-88, 1988
被引用文献数
1
著者
黒岩 将人 岡崎 甚幸 吉岡 陽介
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.29-40, 2001-02-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7
被引用文献数
4 6

生活空間を歩行中の周辺視の役割を, 通常視野実験と制限視野実験の比較によって解明する. 通常視野実験ではアイカメラを装着して廊下および階段を歩行し, 制限視野実験では著者らが新しく開発した周辺視野を制限するマスクを装着して同じ場所を歩行した. その結果, 通常視野下に対して制限視野下では, 1) 進行方向の床と壁の境界を注視しながら歩行する傾向がある, 2) 角を曲がる時には大廻りをする, 足や手がアンダーリーチングになる, 3) 階段下り歩行開始時に極端に歩行速度が落ちる, 4) 階段上り歩行時に足を擦らせて歩く等の特徴的な行動が見られた. 以上から歩行時の周辺視が, 身体と歩行環境との間の正確な距離や位置関係の把握を助ける役割を果たすことが明らかになった.
著者
半田 幸子 堀内 邦雄 青木 和夫
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.139-147, 2004-06-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
35
被引用文献数
30 15

足趾および足底が立位や歩行に果たす役割は重要である. 本研究は足趾把握筋力の測定器を作製し, 足趾把握筋力の加齢による変化と, 立位の平衡調整能力および歩行時間との関係について検討することを目的とした. 測定器は Smedley 式握力計を改良して試作した. 足関節を保持する支柱の位置は被験者の足長に応じて調整可能にした. 測定値の再現性はR=0.953で良好であることを確認した. 被験者は各年代層を含む男女97名 (20~84歳) とした. 測定項目は足趾把握筋力, 握力, 重心動揺, 片足立位保持時間, 上肢前方到達距離および, 10m歩行時間とした. その結果以下のことが明らかになった. (1) 足趾把握筋力は加齢により低下し, 低下率は握力よりも大きい傾向を示した. (2) 足趾把握筋力と握力, 開眼片足立位保持時間, 上肢前方到達距離および, 10m歩行時間の間には有意な相関が認められた. (3) 重心動揺とは相関が認められなかった. これらのことを検討した結果, 足趾把握筋力は立位の保持や前傾への耐性などの平衡調整に影響を与えると考えられ, 高齢者の転倒事故対策などに応用可能であると思われる.
著者
矢野 宏
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.143-150, 1973-08-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
27

測定値のかたよりとばらつきの個人差を研究するために, 計量研究所では精密測定に関するマン・マシン・システムの研究を行なっている.通常, 測定者間の個人差は多年の経験に基づいて扱われている. しかし, 経験的には解決し得ない多くの問題が存在することが明らかにされている.上記のシステムでは, 測定器の精度評価, 測定者のパフォーマンス, さらに両者の相互関係が研究されなければならない.
著者
伊南 盛治
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.237-240, 1980-10-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
2
著者
小森 政嗣 山本 靖典 長岡 千賀
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.64-69, 2006-04-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1

音声情報を短時間で呈示するために音声を高速で再生すると, 同時に談話理解が難しくなる. 本研究では, 音声中のポーズ長に操作を行うことで, 聴取者の談話理解を促進し, より高速での録音音声の呈示を可能にする手法を提案する. 音声中のポーズ長の変動は談話構造の手がかりとなっていることから, ポーズ長の違いを明確にすることで談話理解を促進することができると考えられた. そこで, ポーズ長の変動を明確化する二つの手法の有効性を話速判断課題により検討した. 実験1では, ポーズ長を全体的に延長することで, より弁別能の高い時間範囲にポーズ長分布をシフトさせる手法を検討した. しかし音声再生時間を短縮する上で有効とは言えなかった. 実験2では, ポーズ長の変動を誇張する手法を検討した. この手法は聴取者が音声内容を理解できる話速を向上し, かつ, 音声をより短時間で呈示できることが結果から示された.
著者
小谷津 孝明
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.135-144, 1968-05-30 (Released:2010-03-11)
著者
田所 諭 相川 誠 市道 和廣
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.41-47, 1990-02-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
25

人間の腕は機構的冗長性をもつため, 手の位置・方向だけでは一意に姿勢が定まらない. ところが, 人間は日常生活においてある程度決まった上肢姿勢をとっている. このことは人間が無意識下に姿勢を決定する基準を有していると解釈できる. 著者らは, 5名の被験者の9種類の上肢動作を計測・解析し, 手首位置と肩のある回転角との間に成立する関係式を見いだすことができた. この関係は, 任意の手首位置に対する腕姿勢は一意に決まることを意味しており, 人間の上肢姿勢がもつ法則性を定式化したものであるといえる. この関係式は動作の種類や被験者が変わった場合でも成立し, 人間らしい腕姿勢の生成を可能とする.