著者
Tetsuya FUJITA Yoshio NAKASHIMA Mamoru TAKAMATSU
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
The Japanese Journal of Ergonomics (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.132-137, 2007-06-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
10

近年, 情報表示装置として液晶ディスプレイ (LCD) が普及し広く用いられているが, 高齢社会の到来を迎え, 視覚バリアフリーを目指した配色・画面設計の必要性が高まっている. 本研究では白内障視環境下における色覚特性を求めるために, 色覚閾値法 (低輝度領域) および明るさマッチング法 (中輝度領域) を用いて, 呈示した刺激光に対する被験者応答を, 白内障再現ゴーグルを装着した場合とそうでない場合について測定した.実験の結果, LCDにおける青色 (HSV色相240°) を中心とする色相領域は通常時でも視認性が比較的低く, 白内障視環境下ではさらに視認性の低下が見られた. この傾向は中輝度領域でより顕著であった. 換言すると, 比感度はHSV色相210°~270°の領域で低下するが, 青色光のCIE輝度を上方補正すること, もしくは, 青色光に対し赤色光または緑色光成分が等分以上含まれるHSV位相領域を使用することによって感度が改善されることが定量的に明らかになった.
著者
Masumi TAKEDA Yoko WATANABE Ryoko TAKAHASHI Masaki TAUCHI
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
The Japanese Journal of Ergonomics (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.190-199, 2006-06-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
21
被引用文献数
1 8

本研究では近年規格化された視覚障害者用線状ブロックの方向指示機能を視覚障害者の協力を得て評価した. 歩行路 (幅3m×長さ10m) を設け, 手前に線状ブロックを一列 (奥行き30cm), 突起方向を進行方向に対し平行に向ける平行配置, あるいは垂直に向ける垂直配置で設置した. 方向検出方法は両足を交互に上下させる‘ステップ’と足を滑らせる‘スライド’の2種とした. 評価は歩行路中心からの歩行軌跡の左右への偏軌量及び方向定位時の確信の度合いをみることで行った. 歩行前半部の軌跡の偏軌量は全ての地点 (1~5m) で垂直配置/ステップが最も小さく, 平行配置/スライド, 平行配置/ステップの順で続いた. 一方, 方向定位時の確信度は, 平行配置/スライドが最も高く, 平行配置/ステップ, 垂直配置/ステップの順で続いた. この結果から, 検出方法に関わらず線状ブロックは平行配置より垂直配置の方が高い方向指示機能を示すことが分かった. 偏軌量と確信の度合いの間に見られた差異は, 視覚障害者の日常生活におけるブロックの利用法と関連するものと推測された.
著者
三宅 晋司 佐藤 望 赤津 順一 神代 雅晴 松本 一弥
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.239-249, 1996
被引用文献数
1

室温のゆらぎ条件 (28~30℃: 1/fゆらぎに基づくもので, 平均45分の短周期ゆらぎと平均90分の長周期ゆらぎ) と28℃で一定の定常条件で温度制御を行い, 終夜睡眠ポリグラフおよび体表面皮膚温を測定した. さらに, 起床時に主観的睡眠感と温熱感の調査を行った. 被験者は健康な男子大学生12名で, 適応夜3夜の後, 3条件の実験を無作為の順序で行った. 睡眠時間は8時間 (11時30分就床, 7時30分起床) とし, 睡眠中はトランクスのみの裸の状態で寝具の使用も禁止した. 有効な10名についての結果では, 定常条件において stage IIの出現率が長周期ゆらぎ条件よりも多いことが示された. また, REM+徐波睡眠の全就床時間に対する割合を睡眠質の指標とした場合, ゆらぎ条件と定常条件間で有意差が認められ, ゆらぎ条件のほうがやや良い睡眠であることが示唆された. その他の各種睡眠パラメータおよび主観的睡眠感では条件間で有意差は認められなかった.
著者
石原 恵子 長町 三生 大崎 紘一 石原 茂和 辻 昭雄
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.9-16, 1998
被引用文献数
3

市販の色セロファンを使った75歳相当の透過率をもつ眼鏡を用いて, 高齢化に伴う眼の水晶体の黄変化を模擬体験し, 高齢者の視界が日常生活にどのような影響を及ぼしうるかを調査した. 食事の場面・買い物・道路で調査した結果, (1) 色が変わってみえるだけでなく, (2) 色による区別がつきにくくなる, (3) 液体など不定形のものが知覚しにくい, (4) 立体感や奥行き感が減少する, (5) 光るものがみづらい, ことがわかつた. 具体的には, 食品の鮮度を誤認したり飲み物の種類や量がわかりにくい, 商品の区別が困難, 段差への対処が遅れるなどの生活上の困難があげられた. 色紙を用いた実際の高齢者による色の同異判断実験では, 黄と白, 青と緑, 濃青と黒, 紫と濃赤という, シミュレーションで誤認しそうな色の組み合わせに対して同じように誤認する高齢者がいることが確認され, ヒアリングでもシミュレーションであげられた困難に関連する事柄があげられた.
著者
堀尾 強 河村 洋二郎
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.423-430, 1994

箸の性質や持ち方と箸を扱う諸動作の動作時間との関係を明らかにするため, 男女大学生11名を対象に箸を用いた諸動作を解析した. 実験には14cm, 21cm, 33cmの長さの箸を用い, ダイズ, ニンジン, トウフをはさんで, あるいはつまんで運ぶ動作, ソーセージを切る動作, ハンペンをさく動作について, 作業時間, 動作中の手腕の筋電図, 指と箸の間の圧力を測定した. 作業時間は, ダイズ, ニンジンを運ぶときには箸の長さによる違いはみられなかったが, トウフを運ぶときには長い箸が, 切る, さく動作のときには短い箸ほど動作時間が短かった. また, 箸と接触する手の各部位の圧は, 持ち方により違いがあった. つまんだり, はさんで運ぶ場合, 伝統的な持ち方では各部位の圧の違いは箸の長さ, 食品の大小や性状によらず同じパターンであったが, 他の持ち方では各指の圧パターンのばらつきが大きかった. さらに手腕各筋の筋電図では, 短母指屈筋の振幅が大きいことが特徴で, ニンジンを運ぶ動作, ソーセージを切る動作, ハンペンをさく動作の場合, 長い箸のときは短い箸よりも短母指屈筋の筋電図振幅が大きかった. 箸の長さに関しては, 長い箸では, トウフを運ぶとき以外は, 作業動作が終ったときに箸を持つ位置が先端方向に移動していた. 中等度の長さの箸ではソーセージを切る動作でのみ先端方向へ, 短い箸ではトウフを運ぶ動作でのみ逆に後端方向へ移動していた. なお, 箸を用いた各動作の動作時間と身体計測値との相関はほとんど認められなかった.<br>この動作時間, 圧の比較, 筋電図振幅の比較, および作業後の箸を持つ位置の比較から, 大きい食品を運ぶときは長い箸, 食品を切る, さくという動作では短い箸がよく, 動作に適した箸の長さが異なることが明らかになった. また, 箸に接触した指の各部位の圧の比較から, 伝統的な持ち方ではつまんだり, はさんで運んだ場合, 箸の長さ, 食品の大小や性状に関係なく, 各指にかかる圧のパターンは同じであり, 他の持ち方に比べて安定していることが示唆された.
著者
遠藤 敏夫 池田 守利 猪俣 理 深野 重次郎
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.17-23, 1974
被引用文献数
2

人間特性と生産システムの適合性を評価するうえで, 種々の機能検査が応用されているが, その測定条件によって異った測定結果をうることが少なくない.<br>その一つの方法として多用されるフリッカー・テストは, 大脳活動度を指標として, 作業者がシステムの側からうける不利な影響を検出するのに適している. しかし, 従来の測定装置には, 精度や取扱いのうえで, あるいは保守の点などで, 測定条件が必ずしも均一とならない問題があった.<br>こうした問題点を解決するためにフリッカー値自動測定装置を開発した. 試作した装置は, 視標光源には発光ダイオードを用いた光源点滅方式とし, リセットボタンを押すことによって, 連続5試行のフリッカー値測定がおこなわれ, ディジタルに直示, または, 磁気記録されるよう, 安定した電子回路によって測定精度の向上をはかった. また, この装置は, 被験者自身でも単独測定できるのが大きな特徴であって, 測定条件が均一であり, 広く応用が可能である.
著者
黒田 勲
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.45-57, 1972

事故調査より得られた人間像は, その機械のデザインの場において仮想された人間像とは時として異なっているのではないかと考えられる.<br>事故調査組識のあり方, 方法の科学性, 事故原因究明のための確率論的論理の進め方等, 事故調査そのもののもっている問題点により真の人間像を画き出すことが困難である場合が多い.<br>しがし航空事故調査の例から, 経験と熟練度が必ずしもすべての場合に一致するとはいえず, 胴体着陸, 異常接近例からも従来人間工学面において取上げられていない, 操作と時間の関連性, 注意, 知覚の不信頼性の問題がクローズアップされてきている.
著者
Hong Seunghee Asao Takafumi Suzuki Keisuke Min Byungchan Doi Shun'ichi
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.S526-S531, 2015

According to traffic accident reports, many of the accidents that occur at intersections are caused by elderly drivers, and development of an assistant system that can prevent non-stopping accidents (i.e., accidents that occur by not stopping when required) is currently a pressing need. To develop an anti-stopping alert, it has been assumed that an alarm that informs the driver about the impending approach of an intersection is effective. However, a uniform alarm system cannot be expected to influence the individual differences among elderly drivers. Then, audio-visual assistance systems that consist of a nudge that informs drivers about the existence of an intersection and of an approach alarm that follows the nudge, as well as of a display and a warning with sound and voice, were designed based on the timing when braking occurs and on a given elderly drivers braking behavior when approaching an intersection. In this research, considering an elderly drivers cognition, judgment capability, and individual driving abilities, and while investigating individual elderly drivers vision capabilities and judgment functions, a questionnaire survey on the posture and concerns about driving was conducted in advance. Subsequently, using the driving simulator of a city road, the driving behavior of an elderly driver from braking behavior to stopping performance was observed; furthermore, driving behavioral changes following the proposed driving assistance alarm were analyzed. The result of our analysis demonstrated that elderly drivers differed in their response to the assistance alarm according to their cognition and judgment capabilities, their experience, and driving style. The proposed systems effectiveness was apparent when the alarm was adapted to each individuals capabilities.
著者
新村 猛 赤松 幹之
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 = The Japanese journal of ergonomics (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.208-214, 2010-06-15
被引用文献数
1

従来,外食産業は調理コストと味はトレードオフにあると考えられてきた.本研究は,商品の製造原価低減と味覚品質向上との両立を目指して,調理プロセスの最適化を見出すための実験を行った.最初の実験では,従来の生産方式である店舗調理,工場調理方式に加え,調理プロセス最適化を試みた工程組換方式で煮穴子を調理し,各方式の製造原価を計算するとともに,成人30人を被験者として各方式で調理された煮穴子の官能検査を実施した.続く実験では,各調理方式の調理条件と味覚品質との関係を把握するため,K値(素材の鮮度・熟成指標)を計測した.これらの実験の結果,1)工場での集中調理と調理師による店舗調理を組み合わせることによって,店舗調理よりも味覚品質を高めるとともに製造原価が削減できること,2)素材の輸送時間と熟成時間を制御することにより,店舗消費時点での味覚品質を高めることができることがわかった.