著者
長田 圭三 三宅 良彦 中沢 潔 松田 央郎 藤田 禎規 西尾 智 龍 祥之助 高木 明彦 岸 良示 原田 智雄
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.17, 2006

症例は47歳,女性.2002年より動悸症状あり,心電図で心房拍動(AF)を認めたため当院紹介受診.頻回に発作繰り返すため,pilsicainide 150mg/3× 処方.投与開始後約1週で歩行中突然の胸部圧迫感を生じ,失神・転倒し頭部打撲.当院救急搬送となった.来院時心電図上洞調律,QT延長なし.経過観察となった.以後動悸・失神は認めなかったが,2005年4月末より動悸あり,5月受診時3:1~2:1の心房粗動(AFL)を認めた.失神,<BR>AFL精査加療のため心臓電気生理学検査施行.AFL持続,頻回刺激で停止しないためpilsicainideを投与. 粗動周期延長をきたし1:1AFLに移行,その後VTに移行し血圧低下したためDCを要した.VTはPESで再現性を持って誘発,burstで停止可能.VPS3連刺激でVF誘発された.<BR>Pilsicainide投与により2種類の致死性不整脈の顕性化を認めた失神症例を経験したので報告する.
著者
桜田 春水 住友 直方 難波 研一 家城 恵子 江尻 成昭 徳安 良紀 渡辺 浩二 本宮 武司 平岡 昌和
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.18, no.8, pp.975-981, 1986

症例は74歳の女性で,頻拍の精査目的で入院した.毎分140の頻拍で,心電図上,II・III・aV<SUB>F</SUB>・V<SUB>3</SUB>~V<SUB>6</SUB>で陰性P波を呈しており,PR時間とRP時間の関係は,PR<RPであった.頸動脈洞圧迫やベラパミル静注により, 一たん, 頻拍の停止を見たが,数拍の洞収縮後,PR時間の延長なしに頻拍が再出現し持続しており,いわゆるincessant型の上室性頻拍であった.<BR>本例に,電気生理学的検査を施行した.頻拍中の心房内興奮順序は,冠静脈洞入口部が最も早期であった.頻拍中の順伝導路は,房室結節・ヒス束を利用していた.逆伝導A波を伴わない右室早期刺激にて頻拍は停止したが,洞収縮から再度頻拍が出現していた.また,頻拍中のヒス束の不応期に加えた右室早期刺激にて,心房補捉が認められた.<BR>以上より,順行性には房室結節・ヒス束を逆行性には副伝導路を利用する房室回帰性頻拍(atrioventricular reciprocating tachycardia)と診断した.逆伝導路には,著明な伝導遅延と,房室結節類似の減衰伝導の性質が認められた.<BR>この様なincessant型の房室回帰性頻拍例は,著者らの知る限りでは本邦初例と思われるので,その発生機序の考察を加えて報告した.
著者
村上 英徳 村上 暎二 竹越 襄 松井 忍
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.16, no.11, pp.1173-1180, 1984

砂時計型を呈する大動脈弁上狭窄症の2症例の臨床的特徴について報告する.第1症例は,約20年前より心雑音を指摘されている43歳女性,美容師で,今回,胸部圧迫感と失神発作を主訴に入院した.本症例では大動脈弁狭窄症の合併がみとめられた.第2症例は小学校入学時の健康診断時に心雑音を指摘されていた17歳女性,学生である.本例は本学胸部外科にて手術し良好な経過を示している.2症例共,左右冠状動脈起始部近くに動脈瘤を認めた.また第1例は本邦報告例中最も高齢であり,大動脈弁狭窄症の合併は本邦初例である.
著者
永井 克也
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.987-1000, 2000

哺乳類の概日リズムの体内時計は脳視床下部視交叉上核(SCN)に存在する.筆者らはSCNに自律神経と内分泌系を制御して血糖調節に関与するニューロンが存在することを明らかにした.SCNから膵臓,肝臓と副腎へ投射する自律神経経路が存在することを示す結果も得ているので,SCNはこの経路を介して血糖調節を含むエネルギー代謝調節に関与すると考えられる.低血糖状態の体内環境や明暗などの体外環境の情報を得て,体内時計の時刻情報に依存して,SCNニューロンは自律神経系を制御する.筆者らは,阪神大震災の際に体内時計が乱れて,その位相(時刻)が大きく移動すると共に,体外環境の明暗周期による体内時計の同調が起こらなくなる(時差ぼけ時のような)状態にマウスが陥ったことを認めている.したがって,冬季うつ病や不登校などの患者における体内時計の乱れによる時差ぼけ状態が,体内外の環境情報によるストレス刺激によって引き起こされることは十分に考えられる.ヒトの光照射が心拍数を変化させることが報告されているので,自律神経経路を介するSCNによる心臓機能の調節機構の存在も予想される.
著者
青野 潤 渡辺 浩毅 東 晴彦 稲葉 慎二 池田 俊太郎 濱田 希臣
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.346-352, 2006

症例は68歳,男性.高血圧と糖尿病で近医に通院治療中であった.2004年8月4日に全身倦怠感を主訴に当科外来を受診した.外来時のトレッドミル負荷心電図でII・III・<SUB>a</SUB>V<SUB>F</SUB>のST低下を認めたため,ATPタリウム心筋シンチグラフィを施行した.下壁の取り込み低下と後期像で同部位の再分布現象を認めたため,9月9日に心臓カテーテル検査を施行した.冠動脈造影では右冠動脈seg.1の慢性完全閉塞を認めた.ワイヤーをIntermediateからShinobi,Conquestに変更しExelsiorのバックアップ下でワイヤーを通過させた.Sprinter(1.5×15mm)で拡張後,血管内視鏡による観察を行った.病変部はワイヤーによる内膜損傷や小さなフラップが観察された.Seg.1~2にDriver(4.0×30mm),seg.2~3にPenta(3.5×28mm)を留置し終了した.PCI後の内視鏡ではフラップやプラークをステントが押さえつけている所見が観察された.今回われわれは慢性完全閉塞の病変部を内視鏡で観察し得た1例を経験したので報告する.
著者
岡田 雅彦 中村 雄二 古田 博文 斉間 恵樹 松尾 史朗 岸本 道太 埴岡 啓介 浅野 正英 由谷 親夫
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.881-886, 1988

著明な右室の拡張を呈し右心不全に慢性腎不全を合併して死亡した1剖検例につき,生前の諸検査所見および剖検所見から右室の障害を主徴とする拡張型心筋症の症例と考えられたので報告する.症例は67歳女性で全身浮腫を主訴として入院.入院時現症にて全身浮腫,腹水の他に心聴診上三尖弁領域に全収縮期雑音を聴取.胸部X線上心拡大を,また心エコー図にて右房,右室の著明な拡大を認めたが左室の拡大はなく左室壁運動も正常であった.右心カテーテル検査では右房,右室圧の上昇を認めたが肺動脈は正常,また左右短絡所見は得られなかった.これらの所見から右心不全の原因として孤立性三尖弁閉鎖不全および右室異形成症が疑われたが,剖検所見からいずれも否定された.剖検所見は,右室は著明なびまん性拡張を示し左室の拡張はなく,心筋組織所見上は左室に比して右室により高度なびまん性病変を認めた.拡張型心筋症の病態は一般に左室の拡張と収縮障害を主徴とするものと考えられているが,左室の障害が軽度ないしほとんど存在せずに高度の右室の障害を示す拡張型心筋症の報告例も本邦および海外において散見され,自験例を含めて右室型拡張型心筋症と考えるべき症例がまれに存在するものと思われる.
著者
井上 博
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.191-201, 1995

QT時間の延長は特発性QT延長症候群や抗不整脈薬によるtorsade de pointes発生との関係で重要視されている.III群薬を使用する機会が増加しつつある今日,QT時間調節の生理的,病理的要因について理解しておくことは大切である.QT時間は心拍数によって変動するが,心拍数を変化させる要因によっても修飾を受ける.このため日常使用されるBazettの式によるQTc時間は,実際の心拍数によるQT時間の変化と一致しないことがしばしば見られる.健常例では自律神経によって心拍数に応じた変化をするとともに,夜間に長いという日内変動を示す.糖尿病,心室頻拍,心筋症,特発性QT延長症候群や抗不整脈薬投与などでは,健常例とは異なったQT時間の変動が観察される.QT時間調節の異常の機序の解明により,このような病態での心室性不整脈の治療が進歩することが期待される.
著者
高宮 智正 横山 泰廣 山下 周 白井 康大 鈴木 雅仁 前田 真吾 田中 泰章 佐々木 毅 笹野 哲郎 川端 美穂子 平尾 見三
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.S3_12-S3_16, 2013

症例は33歳, 女性. ほぼ終日持続する心房頻拍 (atrial tachycardia ; AT) に対してカテーテルアブレーションを施行した. 12誘導心電図のP波の形状から心房頻拍は右心耳または三尖弁輪起源と推定された. EnSite Multi-Electrode Array (MEA) カテーテルが三尖弁輪を跨ぐように右室心尖部に向けて留置してAT中に三尖弁輪部のNCMを行い, 自由壁側10時方向に心房頻拍の起源を同定してカテーテルアブレーションに成功した. ATの機序としては心臓電気生理学的検査 (electrophysiological study ; EPS) 所見より異常自動能と考えられた. 三尖弁輪部は中隔側, 自由壁側ともconventional mappingに苦労することがあり, non-contact mapping (NCM) が有用と考えられた.
著者
貝沼 圭吾 三谷 義英 大橋 啓之 淀谷 典子 本間 仁 駒田 美弘
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.S2_86-S2_86, 2011

症例: 心臓震盪は, 小児期から若年成人の競技, 遊戯などに伴って発生する外因性の院外心停止をきたす病態である. 欧米などでは主に球技により発症し, 自動体外式除細動器(AED)を用いた適切な心肺蘇生がなければ, 予後不良とされる. 今回, 本症を経験し, 発症時の映像, AEDファイルの心電図も含めて報告する.<BR>患者は14歳, 男児. 空手歴8年. 空手の試合中, 相手のパンチと膝蹴りが左前胸部に直撃した直後に, 心肺停止をきたした. 2分後に待機していた父親と医師による心肺蘇生, 4分後に3回のAEDによる除細動がなされ, 自己心拍が再開した. 発症13分後に救急搬送された病院で会話が可能であった. 以後, 後遺症なく経過良好であった. AEDファイルの心電図では, 心室細動が確認された. その後の精査により内因性の疾患は除外された. 以上から経過により心臓震盪と診断した.<BR>本症は, AEDを用いた適切な心肺蘇生が重要と考えられ, その対策について考察する.
著者
真鍋 知宏 山澤 文裕
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.S2_198-S2_203, 2011

日本国内では, 1年間に2,000以上の市民マラソン· ロードレースが開催されている. 日頃のランニングやジョギングの成果を発揮しようとして, 全国各地で行われる市民マラソン大会には多くの参加者が集まっている. 市民ランナーに対するメディカルチェックは, 現時点においては十分に行われておらず, 走行中に心肺停止を生じることも稀ではない. また, 救護体制は主催者によってまちまちであり, AEDが適切に配備されたロードレースにおいては, 心肺停止者が救命される事例をマスコミ報道などで知ることができる. 一方で公表されない死亡事例も存在しており, その情報を入手するのも容易ではない. ある程度は, マスコミ報道からの情報収集が可能であるが, 病状などの詳細についてはデータとしてまとめられることはなかった. ロードレース中の安全を確保する観点からは, 個別の事例を検討して, 今後の予防に対して活用することが重要である. 日本陸上競技連盟医事委員会では, 陸連, 地方陸上競技協会が主催, 主管しているロードレースにおいて, その救護体制と傷病者数を把握するシステムを構築しようとしている. 現状と今後の課題について報告する.
著者
森本 美典 角田 裕 藤井昌 麻呂 北村 尚臣 竹沢 英郎
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.403-411, 1981

NYHA III~IV度で入院したうっ血性心不全患者9例( 年齢64~88歳, 男5例, 女4例) にPrazosinを2~4mg経口投与し, 血行動態, 臨床症状の変化を検討した.右房圧, 肺動脈圧, 肺動脈楔入圧はSwan-Ganzカテーテル,心拍出量は熱稀釈法により測定.Prazosin投与後肺動脈楔入圧(p<0.001) , 肺動脈拡張期圧(p<0.01),平均動脈圧(p<0.01),末梢血管抵抗(p<0.01), 肺血管抵抗(p<0.05) は有意に下降減少し, 心係数(p<0.01)は有意に増加した.心拍数,Transmural coronaryflow gradient(拡張期動脈圧-肺動脈楔入圧)は不変であったがDouble product(心拍数×収縮期動脈圧)は減少の傾向を示し, 心筋酸素供給- 需要バランスを保ちながら心機能の改善が得られた.これらの血行動態の変化は投与後約30分でおこり, 効果のピークは60~120分後にみられた.<BR>これら循環動態の改善に伴い心不全症状は9例中7例で約30~60分後に軽減ないしは消失した.以上よりPrazosinはうっ血性心不全に対し有効であると判定することができた.
著者
吉田 奈々絵 山田 容子 平原 大志 和田 浩 菅原 養厚 阿古 潤哉 百村 伸一
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.927-933, 2014

症例は18歳女性. 主訴は失神. 家族歴は兄が18歳で突然死. 現病歴は朝通学中の電車内で立位時に失神し, 次の駅で意識回復し当科に救急搬送となった. 来院時は意識清明. 心電図上, QT間隔は正常だが連結期の短い同形の心室性期外収縮より開始する非持続性多形性心室頻拍の頻発を認めた. 心臓超音波では軽度左室拡大のみで器質的心疾患は認めなかった. 発作時も含めQT延長はなく運動負荷によるQT延長, 多形性心室頻拍も認めなかった. カテコラミン負荷で増悪なく, カテコラミン誘発性多形性心室頻拍およびQT延長症候群は否定的と考えた.  ピルジカイニド負荷で4連の多形性心室頻拍を認めたがベラパミル投与で抑制された. 遺伝子解析ではQT延長症候群, カテコラミン誘発性多形性心室頻拍, Brugada症候群に関連する遺伝子変異は陰性であった. short-coupled variant of torsade de pointesを最も疑い, 家族歴も考慮しICD植え込みを施行後ベラパミルの内服を開始し退院となった. その後は, ICDが作動することなく経過している.
著者
池村 修寛 稲川 浩平 福田 芽森 山田 亘 宮田 宏太郎 田中 宏明 吉田 拓生 池上 幸憲 谷本 耕司郎 布施 淳 坂本 宗久 樅山 幸彦
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.S2_105-S2_109, 2014

症例は心室細動蘇生後の23歳男性. 生来健康. 従兄弟が32歳で突然死. 駅のホームで倒れているところを発見され, 救急隊要請された. 目撃者なし, bystander CPRなし. AED (Automated External Defibrillator) により, 除細動を2度行われた後に自己心拍再開し, 当院救命センター搬送となった. 心肺停止時間は不明だが最大で1時間程度と考えられた. 全身状態安定後に低体温療法を開始した. 来院時のQT間隔は正常 (QT/QTc : 370/440msec) であったが, 低体温時の心電図で著名なQT延長 (QT/QTc : 720/600msec) を認めた. 復温後にQT間隔は正常化した. 冠動脈造影は異常なく, アセチルコリン負荷試験は陰性, 心エコー, 心臓MRI (magnetic resonance imaging) で器質的心疾患を示唆する明らかな所見は認められなかった. 潜在性QT延長症候群を疑いエピネフリン負荷試験を施行した. 負荷前のQT間隔は正常 (QT/QTc : 440/423msec) であったが, 投与1分後 (Peak state) にQT/QTc : 480/640msecまで延長し, 投与3分後 (Steady state) にはQT/QTc : 440/454msecまで戻った. 潜在性QT延長症候群と診断し, ICD植え込みを行った. 診断にエピネフリン負荷試験が有用であった心室細動蘇生後の潜在性QT延長症候群の1例を経験したので報告する.
著者
田中 宏明 福田 芽森 山田 亘 池村 修寬 宮田 宏太郎 吉田 拓生 稲川 浩平 池上 幸憲 谷本 耕司郎 布施 淳 坂本 宗久 樅山 幸彦
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.S3_226-S3_231, 2014

DCMの68歳男性. ○年○月にCRT-D植え込み. VT stormに対し, ○+3年○月にアブレーション (心内膜側) を施行. 左室中隔および側壁に低電位領域 (LVA) を認め, ICEでLVA領域に一致して壁内から心外膜側にかけて高輝度領域を認めた. VTはペースマップ (PM) を用いて良好なPM部位でアブレーション施行. アブレーション後再発を認めたが, ATPで停止可能で経過観察していた. ○月○日 (1回目のアブレーションより3カ月後) にVT stormを認め, 緊急入院. ○月○日, アブレーション (心内膜側・心外膜側) を施行した. 前回アブレーションした側壁LVAの心外膜側は正常波高であったが, perfect PM (S-QRS=40ms) およびNSVT時にQRSに先行する拡張期電位 (Egm-QRS=54ms) が得られ, VTのExitと考えられた. 心外膜側および心内膜側にアブレーションを行い, clinical VTは誘発不能となった.
著者
諏訪 賢一郎 俵原 敬 浮海 洋史 尾関 真理子 待井 将志 田村 純 宮島 佳佑 神田 貴弘 安見 和彦
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.484-489, 2013

症例は62歳, 男性. 発熱にて当院受診. 心電図にてI, II, aVL, V4~6にST上昇を認め, さらに心筋逸脱酵素とCRP上昇を認めた. また心エコーにて心尖部前側壁と中部下壁に壁運動低下が認められた. 緊急心臓カテーテル検査にて前壁, 側壁, 下壁の一部に壁運動低下を認めたものの, 左室駆出率57%であり, 冠動脈に有意狭窄を認めなかった. 以上所見より急性心筋炎と診断. 第4病日の心臓MRIでは, シネMRIにて左室駆出率11%, 全周性高度壁運動低下, T2強調画像black blood像にて左右両室全体に高信号, そして遅延造影MRIにて心尖部寄り側壁の心外膜側を主とした遅延造影を認めた. 同日心筋生検を施行. リンパ球の浸潤を多数認め, リンパ球性心筋炎と診断した. また血行動態破綻のため大動脈バルーンパンピング (intra-aortic balloon pumping ; IABP), 経皮的心肺補助装置 (percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS) を導入. その後も心機能は悪化し, 大量免疫グロブリン療法, ステロイド短期大量療法を施行するも第9病日に死亡した. 剖検では心筋へリンパ球主体の高度の炎症細胞浸潤, 心筋の凝固壊死, 融解, 変性と間質浮腫を認めた. 初期軽症期から入院し血行動態破綻直前に心臓MRIの撮影ができた劇症型心筋炎の貴重な1例を経験したので報告する.
著者
林 洋史 宮内 靖史 林 明聰 高橋 健太 植竹 俊介 坪井 一平 中辻 綾乃 村田 広茂 山本 哲平 堀江 格 小原 俊彦 加藤 貴雄 水野 杏一
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.S3_34-S3_41, 2011

症例は52歳, 男性. 繰り返す動悸を自覚し, 携帯心電計で周期240msのnarrow QRS頻拍と心房細動を認めたため, アブレーションを行った. 両側肺静脈を隔離後, 冠静脈洞近位部からのburst pacingでWenckebach型房室ブロックを伴う周期240msの心房頻拍(AT)が誘発され, このATはATP 5mg静注で停止した. AT中のelectroanatomicalマッピングでは, 右房はHis束領域が最早期であったが, 局所の単極電位にR波を認めた. 左房は前壁中隔が最早期であったが同部位での焼灼は無効であった. そこで大動脈弁無冠尖(NCC)にカテーテルを留置したところ, His束領域よりも20msec先行し, 単極電位ではQSパターンとなる最早期興奮部位を認めた. ここでの通電中にATから周期350msの非通常型房室結節リエントリー頻拍(AVNRT)へと移行. その後, 通常型AVNRTも誘発され遅伝導路領域を焼灼し, これらの頻拍はすべて誘発不能となった. NCC起源ATを認め, その焼灼中にAVNRTへの移行が見られた症例を報告する.
著者
五十嵐 裕美 伊藤 博 一林 亮 坪田 貴也 吉原 克則 小泉 雅之 佐藤 秀之 山崎 純一 池田 隆徳
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.S2_5-S2_10, 2012

症例は60歳代の男性, 未治療の高血圧の既往があり, 国内線の飛行機内で心肺停止となった.客室乗務員が自動体外式除細動器(AED)を装着し1回作動後に心拍が再開し, 羽田着陸後, 当センターに緊急搬送された.AEDの記録では心室細動(VF)を呈していた.JCSII-10, GCS E4V2M4, 瞳孔3mm大で左右差なく, 血圧212/mmHg, 脈拍111/分であった.心電図は洞調律で, V<sub>4~6</sub>誘導でstrain T波が認められた.脳保護目的で低体温療法が3日間施行された.復温後に意識状態は回復し, 神経学的後遺症は認められなかった.ACh負荷冠動脈造影で4-AVが完全閉塞となり, 冠攣縮性狭心症と診断された.心臓電気生理学的検査(EPS)でVFが誘発されたこともあり, 植込み型除細動器(ICD)が植え込まれ退院となった.2010年1月より当センターは羽田空港の航空会社と救急医療連絡会を行っている.同年10月に新国際線旅客ターミナルが開設し, 旅客数の増加が見込まれる.迅速な応急処置と救急処置で救急の輪が成立し, 社会復帰が可能となった症例であったので報告する.
著者
小林 貴 久保 典史 坂倉 建一 高田 宗典 平原 大志 荒尾 憲司郎 宇賀田 祐介 森 将之 船山 大 菅原 養厚 阿古 潤哉 百村 伸一
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.1438-1443, 2010

たこつぼ心筋症(transient left ventricular apical ballooning, takotsubo cardiomyopathy; TTC) では診断時, 冠動脈の有意狭窄を除外基準とすることが多い. しかしながら, 高齢者に多い病気であり, 最近, 冠動脈に有意狭窄のあるたこつぼ心筋症の存在もいわれるようになってきた. 症例は83歳, 女性. 普段から行っているわけではない, 緊張を伴った神社参拝, 豆まきという行事直後の食事, 飲酒をした際に著明な冷汗と意識が遠のく感覚を自覚したため, 救急要請となり当センターに救急搬送された. 急性冠症候群(acute coronary syndrome; ACS)が疑われ, 緊急心臓カテーテル施行. 左冠動脈前下行枝(left anterior descending artery; LAD)#7に90%狭窄を認めたため, 緊急経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention; PCI)を行った. 直後の左室造影(left ventriculography; LVG)では, LADの支配領域に合致しない左心室基部の過収縮と心尖部の無収縮を認め, 高度冠動脈狭窄を合併したTTCと診断された. TTCとLAD病変の関与したACSは最も重要な鑑別点である. ACSとして判断されていた症例の中にも実際には詳細に検討すると, たこつぼ心筋症が潜んでいる可能性があることを示唆している. また, 診断方法の感度を考慮すると, 疾患概念による形体描写に基づかない命名の必要性が指摘されている. 病態解明の進歩が, 今後一層期待される.
著者
水野 篤 西 裕太郎 山添 正博 小松 一貴 浅野 拓 増田 慶太 新沼 廣幸 丹羽 公一郎
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.1083-1089, 2014

背景 : 過去に抗凝固薬における内服薬種類変更に伴うアドヒアランスの変化をみた研究はない. 今回心房細動患者における抗凝固薬のアドヒアランスを薬剤変更前後でアンケート調査にて確認した.  方法 : 心房細動において, 抗凝固薬を内服している患者のうち, リバーロキサバンに変更した患者全例を対象とした. リバーロキサバン開始時と次回約3カ月後の外来時にアドヒアランスに関するアンケートを行った.  結果 : 対象患者は40人 (平均年齢70.1歳, 男性7割). 変更前の抗凝固薬はアスピリン1人 (2.5%), ダビガトラン30人 (75%), ワルファリンが9人 (22.5%) であった. アンケート結果では, 開始前にも32.5%の患者が内服し忘れたことがあり, 3カ月の間に2.47±4.0回内服忘れることがあるということであった. 変更後のアンケート結果では3カ月間での薬を飲まなかった回数/日数のみ1.1±2.2回と有意に低下していた (p=0.008). アスピリン・ワルファリン群では有意に変化せず (p=0.285), ダビガトランからの変更群でのみ有意に3カ月間での薬を飲まなかった回数は改善した (p=0.018). 内服回数が2回以上の群では2.1回±3.6回から1.0±1.6回まで減少傾向を認めるものの, 有意差はなく (p=0.066), 内服回数が1回の群2.9±4.5回から1.2±2.6回に有意に減少した (p=0.046).  結論 : リバーロキサバン変更により内服を忘れる回数は有意に減少し, アドヒアランスによい影響を及ぼすと考えられた. さらにその効果は特にすべての内服薬を含めた服用回数が1回のものに顕著であると考えられる.