著者
笠松 明男 金井 萬造 長尾 義三
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.230-236, 1988-06-20 (Released:2010-06-15)
参考文献数
5
被引用文献数
1

京都市の伏見地域は、豊臣秀吉の伏見城築城による城下町がその起源であったが、江戸時代以後は伏見奉行所の管轄下において、西国大名の参勤交代や京大坂間の河川水運の重要な中継地であり人口約3万人を数える一大港湾都市として栄えた。その保有舟数は700隻を数え、河川港湾でありながら東・西廻り航路のどの港町よりも大きな港湾であった。伏見港の発展をもたらした要因は、第一に豊臣秀吉の伏見城築城及び淀川 (宇治川) の改修と巨椋池の切り離し、角倉了以・了一父子による高瀬川運河開削というわが国の歴史的にも重要な土木工事の成果である。第二に、江戸時代中期頃の商品経済の発展に伴う、東海道 (大津~三条) の陸運物資が飽和状態となったため、琵琶湖水運が衰退し、代わって西廻り航路が発達したという、経済的要因に着目できる。しかし、鳥羽・伏見の戦いによる戦火と鉄道敷設という陸上交通の一大革命により、伏見港や淀川水運も他の河川水運と同様、一旦、衰退の兆しをみせるが、琵琶湖疏水 (明治23年) 及び鴨川運河 (明治27年) の開削により、再度脚光を浴びることになる。このような、伏見水運も鉄道と道路輸送の本格的な発展と淀川治水事業の進展により衰退し、昭和34年には、最後の舟溜まりの埋立が決定し、昭和40年伏見港はその歴史的な意義を閉じた。
著者
伊東 孝
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.264-273, 1988-06-20 (Released:2010-06-15)
参考文献数
8

万世橋は、東京の橋の中では、比較的名の通った橋であるところが、万世橋は、萬世橋・万代橋ともかき、読み方は、「まんせいばし」「よろずよばし」ともよむ.「昌平橋」とよばれたこともある。結構複雑である。橋の位置も、いろいろかわったようだ。「万世橋の前身は、江戸時代の筋違橋である」と、一般的にいわれている。しかし本稿では、「万世橋は、明治生まれの橋である」にこだわって、論をすすめている。まず、万世橋の橋名と架橋位置の変遷を文献でしらべ、これの確認をかねて、地図や図版などをもちいた。あわせて、橋詰空間の変遷や建物の状況などについても、言及した。結果は、仮説的ではあるが、万世橋の架橋と橋名の変遷をわかりやすい一覧図として提示した。
著者
八川 圭司 徳永 幸之 須田 熈
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.835-841, 1997-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
9

地方部において新幹線駅に無料駐車場を整備することはアクセス改善に対してだけではなく新幹線の利用促進に対して非常に有効であると考えられる.また, 地方部の人口減少に悩む過疎地域では, 近隣都市圏との交流が地域の利便性の向上, 生活機会の改善のために必要不可欠であり, 地方部における新幹線の活用は重要である.このように, 地方部における新幹線駅の無料駐車場整備は非常に重要であるにもかかわらず, P&Rを考慮した駐車場容量の算定基準はなく, 駐車場容量が地域住民の交通行動に与える影響に対する定量的な分析も為されていない.本研究では, 新幹線駅の駐車場容量に応じたアクセス手段, 交通機関選択行動の変化を表現できる需要推計モデルを構築することを目的としており, これに基づいて地方部の新幹線駅に関する駐車場容量の算定基準について検討を行った.
著者
久保田 稔 茂吉 雅典 中村 義秋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.61-68, 2002-05-15 (Released:2010-06-15)
参考文献数
10
被引用文献数
2

諏訪湖は江戸時代での干拓と共に湖面面積が減少し、さらに諏訪湖南側の低湿地の度重なる浸水被害に苦しんできた。諏訪湖沿岸部での浸水被害を軽減するために、江戸・明治時代に、湖尻 (釜口) の開削を行いさらに浸水被害住民と製糸工場側との話し合いによって、浸水被害も徐々に少なくなって来た。ところが昭和の時代に入り、西天竜一貫水路建設に端を発し、湖尻を境に、上・下流域住民さらに天竜川を挟んだ竜西と竜東側の下流住民の間にも争いが発生した。この争いを鎮めた大きな一歩が釜口水門建設である。本論では、浸水被害状況を1983 (昭和58) 年の「58災害」より概観した後に、諏訪湖湖面面積の減少と大正年代での浸水被害の減少を図より概観する。
著者
藤村 尚 坂口 雅範
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集 (ISSN:18848435)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.65-68, 2001

2000年10月6日午後1時30分頃, 鳥取県西部鎌倉山北西の地下約10kmでM7.3の地震が発生し, 日野町、境港市で震度6強, 鳥取市, 震度4, 倉吉市震度3を観測した (気象庁発表)。<BR>本報告では, この地震による被害のうち液状化被害について述べる。そこで、以前に行った地盤のデータベースと液状化のゾーニング結果を示し, これらの地盤情報と今回の平成12年鳥取県西部地震による西部地区での液状化地点の比較を行う。
著者
片岸 将広 岡田 茂彦 高山 純一 石川 俊之 埒 正浩
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.597-606, 2008-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
11

本論文では、バスレーンを活用した「自転車走行指導帯」(幅1.25mの着色帯) の設置による交通安全対策の効果と課題について述べる。道路交通法上、自転車は「車道の左側端」を走行しなければならないが、実態としては歩道走行や右側逆走など無秩序な走行が多くみられ、ルールと実態の乖離が近年の自転車関連の交通事故増加につながっていると考えられる。本論文では、バスレーンを活用した「自転車走行位置の明確化」と「交通ルール及びマナーの指導強化」を実施することが、歩行者・自転車・バス・クルマのそれぞれにとって安全・安心な道路空間の創出に効果的であることを、対策前後の自転車走行実態調査やアンケート調査等から明らかにしている。
著者
関口 浩二 遠山 哲次郎 荒田 崇 清水 敏晶
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.853-858, 1997 (Released:2011-06-27)
参考文献数
4
被引用文献数
1

Lake Saroma is an inland sea-lake on the Sea of Okhotsk. As the lake's environment is suitable for aquiculture, it is widely used for natural sea farming.Ice floes usually reach Okhotsk Sea coast of Hokkaido from late January through early February. When ice floes arrived before Lake Saroma had sufficiently frozen up, the inflow of ice into the lake damaged aquiculture facilities. As a countermeasure for this, construction of ice booms to control ice floes began in 1994 and 10 spans out of 13 planned have since been completed.In this study, the effectiveness of ice booms in controlling ice floes in an actual sea area is confirmed, factoes concerning the tension of the main wire, an important point in design, are analyzed using research results, and the design and actual values are compared.
著者
金盛 弥 古澤 裕 木村 昌弘 西園 恵次
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.475-482, 1995-06-09 (Released:2010-06-15)
参考文献数
10

狭山池は我が国最古のダム形式の農業用のため池であり、多くの文献によってその築造の歴史や改修の記録が残されている。現在、大阪府ではこの池を新たに洪水調節機能をもつ治水ダムとして活用する事業に取り組んでいる。今回の事業を進めるなかで、これまで数々の貴重な土木遺構が発掘され、狭山池の築造の歴史と過去の土木工事の様子が我々の目前に姿を現してきた。古墳時代から昭和の時代までの狭山池の用水による農業生産によって生活を支えられてきた多くの農民や当時の指導者達のこの池の築造と改修への努力と貢献が遺構や文献から明らかとなっている。以下の文ではこれら歴史的ダムの保全の事業の一部を紹介し、また改修の歴史を刻む堤体断面や数々の土木遺構を通じて、それぞれの時代での取り組みの有様を明らかにするとともに、今回発掘された貴重な歴史的土木遺構を将来へ継承するため、建設を計画している狭山池ダム資料館 (仮称) の概要を紹介するものである。
著者
久我 尚弘 根本 文夫 中山 等 日紫喜 剛啓
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.403, pp.219-228, 1989-03-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
8

The Yobuko-Ohashi Bridge, located in Yobuko Town, Saga Prefecture, is a 3-span continuous prestressed concrete cable-stayed road bridge with a center span of 250m, which connects an isolated island, Kabejima Island, to Kyushu. It is the longest-span concrete bridge in Japan. In construction of the superstructure, the girders were constructed by cast-in-place balanced cantilever method using travelers. And the deflection of girders, tensile forces in stay cables and stresses in girders, which are essential for prestressed concrete cable-stayed bridges, were monitored and adjusted rationally and promptly with the help of a new system using microcomputer. This report outlines the system used in this bridge construction project.
著者
土屋 修一 加藤 拓磨 手計 太一 山田 正
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
水工学論文集 (ISSN:09167374)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.367-372, 2005-02-01 (Released:2011-06-27)
参考文献数
6

The social experiment was carried out for the purpose of the mitigation of the heat island effect by watering on August 18th to 25th. The microclimate observation has been carried out at watering area in Eastern Tokyo. As the results, the effect of the watering on the thermal environment in urban area was evaluated as decreasing effect on temperature. The following results were obtained; 1) The temperature variation in the daytime is included to be different every site because of the dispersion of surface temperature. 2) The air temperature in the experiment area is from 2 to 9 [degree] higher than temperature in thermometer shelter by the effect of long radiation. 3) The temperature decrease instantaneously when watering starts. 4) The temperature decreases 0.66 [degree] on average, 1.93 [degree] on maximum after the watering. 5) Total amount of decreasing temperature is decreased linearly by the distance from the point of watering.
著者
河野 哲也 今 尚之 佐藤 馨一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.207-214, 1997-06-05 (Released:2010-06-15)
参考文献数
12

This paper make it clear that the two truss girders across the Daiya river were constructed across the Horomui river and across the Ikusyunbetsu river by Horonai railway in 1884-1885. We discovered unknown pictures of them taken in Meiji era and found that they have same shapes as the truss girders across the Daiya. We investigated official documents of Horonai railway to find out their date of construction and their specification. And we evaluate the value of them from a view point of civil engineering archaeology.
著者
吉田 綾子 山縣 弘樹 吉田 敏章 鶴巻 峰夫 森田 弘昭
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究論文集 (ISSN:13459597)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.433-441, 2006

本研究では, ディスポーザー設置地区のごみ集積場におけるごみ調査及びディスポーザー使用者の意識調査を実施し, ディスポーザーの導入によりごみ処理システムから下水道システムに移行する厨芥の量及び組成の解析を行った.得られた結果を以下に示す.<BR>1) ディスポーザーを導入した場合でもごみ集積場に厨芥が100g/人・日程度残存し, 厨芥移行率は100%とならない.<BR>2) ディスポーザー導入地区でも, 日常的にディスポーザーを使用しない世帯が1割, 厨芥を全量ディスポーザーで処理しない世帯が3割程度存在する.<BR>3) 厨芥を分別収集しても, 分別しきれない厨芥が発生する.<BR>4) ディスポーザー設置地区と未設置地区では, 厨芥類のみを分別収集したごみ組成に相違はなかった. しかし, 可燃ごみに混入した厨芥やディスポーザーに投入される厨芥の組成については, 今後の課題といえる.
著者
越沢 明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.265-276, 1985-06-25 (Released:2010-06-15)
参考文献数
28

1937年の芦溝橋事件から1945年の敗戦までの間、中国大陸の一部は日本軍の占領下にあった。この時期、華北の現地政府 (曰本のカイライ政権) には、日本の内務省・地方庁より大量の土木技術者が派遣され、占領地の土木事業に従事した。なかでも北京では増加する日本人を収容し、また都市住民のための軽工業を立地させるため、都市計画が立案され、西郊と東郊にそれぞれ新市街が建設された。この日本が立案、実施した北京都市計画は、近代都市計画理論 (住区構成、市街化禁止区域の設定等) を導入しながら、かつ北京という都城としての構成原理を尊重し、明解な軸線を有していた (東西軸は長安街の延伸、南北軸は万寿山を起点とする)。この日本による都市計画は、現在の北京の都市形態に大きな影響を与えている。
著者
松浦 茂樹
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.425, pp.213-220, 1991-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1

The national government has carried out projects for flood control since “the River Act” was enacted in 1896, when Yodo River improvement work started. The civil engineer, who mainly made the plan and led the work was Dr. Tadao Okino. But Mr Johannis de Rijke, who was a Dutchman engaged by the national government of Japan, had already investigated Yodo River to make the plan. In this report, the comparison between the idea of Okino and that of de Rijke was studied. Okino adopted the peak flood discharge proposed by de Rijke as design flood discharge. Besides the floodway plan in the lower part of the basin in Osaka Prefecture was laid by de Rijke. However we found the large difference between the two plans. That was how to deal with the retarding basin in the middle part and Biwa Lake in the upper part of the basin. Okino constructed the intake weir in the channel out of Biwa Lake and changed the retarding basin into the protected lowland.
著者
藤井 聡 小畑 篤史 北村 隆一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.439-445, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12
被引用文献数
2 5

本研究では, 路上放置自転車問題における心理的方略の一つとして, 施策としての “説得”(あるいは, 説得的コミュニケーション) の有効性を確認するためのフィールド心理実験を行った. 実験では, 被験者 (n=99) を複数のグループに分け, 何種類かの説得的コミュニケーションを行ったところ, 自転車放置行為の問題を指摘し, かつ, 自転車放置行為を止めるために必要な方法を具体的に提示することで, 放置自転車行為の実行頻度は3割減少することが見いだされた.
著者
瀬口 哲夫 河合 正吉
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.201-212, 1997-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
7

日本の運河は300近くあるが、近年モータリゼーションや産業構造の変化から運河の機能と運河周辺の土地利用に変化が現れている。運河の変容過程とその要因を明らかにするとともに、運河に対する将来イメージを明らかにした。ケーススタディーとして、工業開発・交通拠点型の運河を取り上吠その建設目的、変容過程、運河周辺の土地利用変化等について明らかにした。
著者
吉井 稔雄 桑原 雅夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.653, pp.39-48, 2000-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
16
被引用文献数
3 1

本研究は, リアルタイムの交通情報提供が交通状況に与える影響について, 考察を加えるとともに, その評価方法を提案し, 実際の道路ネットワークと交通量を用いた試算を行うものである. 簡単なネットワークを用いた考察を加え, 需要が変動すると, 場合によっては情報の提供が逆効果になるということを確認した. 都市内の道路ネットワークを対象として, 情報提供効果を試算する方法を提案し, 実ネットワークと実交通量を用いた試算を行った. その結果, ODパターンに変化がある場合には情報提供効果が認められるが, 平常時に関しては, 渋滞の立ち上がり時に効果が得られるものの, その他の時間帯については効果がほとんど期待できない等の知見を得た.
著者
榎本 拓真 中村 文彦 岡村 敏之
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.385-394, 2008-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

本研究では, 近年, 導入が進む大型SCの公共サービス機能の導入の中で, 特にアクセス公共交通導入に着目し, アクセス費用のモード問比較, 買物行動の実態評価を通じ, 郊外大型SCのアクセス公共交通導入実態と, 郊外大型SCへの公共交通乗り入れによる地方都市における買物行動の手段転換可能を明らかにした. 結果として, 郊外大型SCへのアクセス公共交通は, 多様な導入形態があり, 高いLOSを担保する事例も確認した. さらに, 買物行動の実態分析と自動車とのアクセス費用比較から, アクセス公共交通の優位性は認められず, チョイス層でも買物行動時の自動車利用が固定化し, 所要時間が公共交通より長くても自動車を選択する傾向を示し, 手段転換が困難であることを示した.