著者
窪田 崇斗 森田 泰智 太田 雅文 古谷 聡 家田 仁
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.641-646, 2008-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
4

東京圏における鉄道ネットワークは輸送力増強が講じられ、最混雑率は年々低下傾向にある。一方で、夜間・ピークサイドにおける混雑が顕在化し、第2フェーズの混雑対策が求められているが、改善の検討が今後ますます重要になってくる。しかしながら、大都市交通センサス等の既存の交通統計調査は、過去のデータの蓄積が豊富で交通流動量といった量的データが充実しているものの、抽出率が5%程度と低く、夜間・ピークサイドにおける混雑緩和の検討に使用するにはデータの精度が粗いため、詳細な分析は困難である。そこで本研究では、自動改札機・車両応荷重データを用いた時間帯別混雑率の推定方法の検討を行った。
著者
知野 泰明 大熊 孝 石崎 正和
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.123-130, 1989-06-20 (Released:2010-06-15)
参考文献数
17
被引用文献数
1

In Japan, before river improvement works began from the age of civil strife wars in the 16th century, people had been allowing free floods on alluvial plains. It was construction of embankments in the river improvement projects that had gradually thrusted floods in river ways. In modern ages, embankments had become higher and stronger. Therefore, general people at present have naturally thought that rivers don't overflow their banks. Nowadays, if once we allow floods from rivers, it may cause heavy damages.In Japan, it is said that the river improvement works by using high embankments to protect cultivated lands against overflow have begun since the Kyouhou period (1716-1736) in the Tokugawa era.Nowadays, we can understand Water use and Control technologies at that time from literatures of the Tokugawa era. In order to know the change of river improvement methods of those days, we have tried to find out development of embankments in the Tokugawa era by using these existing literatures.
著者
高橋 彌
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.25-32, 1990-06-25 (Released:2010-06-15)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

日本3大急流の一つに数えられる富士川の下流部は、1500年代までは左岸岩本山下から東に向かって流れ、現在の田子の浦港方向に乱流し、扇状地を形成していた。しかし、1621(元和元)年から1674(延宝2)年まで、実に53年の年月を要して、総延長約3, 000mに及ぶ大堤防が建設された。この堤防によって富士川東流は岩本山と水神の森間で締切られ、流れは現流路方向で固定された。工事は古郡氏3代にわたる執念とも言うべき努力と洪水観察を含む当時の最新土木工事の成果であり、雁堤として現存し、逆L字の特異な形状で知られている。この成果は富士川左岸一帯の地域を洪水から守り、加島平野として豊かな田園地帯とする事を可能にした。これはまた、誕生間もない徳川幕府が全国支配のため企画した重要施策実現の一環となった。本工事完成により可能になった施策と影響は次の通りである第一に元和偃武、即ち、武士帰農の一助になり、多くの入植者を迎え入れることができ加島新田6, 000石の開発が可能となり、新旧37ケ村が栄えた。第二は、富士川の流路が定まることにより、東海道の「富士川の渡し」が定着し、幕府体制下の交通網の整備が可能となった。第三として、甲府や、諏訪、松本と言った内陸とも、富士川の船運を開発することにより交易が盛んになり、幕府財政を支えると同時に地域の経済発展をもたらす事になった。一方、自然の流れを強固な左岸築堤で締切った結果、対岸には洪水流れが流入し易くなり、しばしば右岸蒲原町方面に氾濫が繰り返し発生するようになった。雁堤はこれまで特異な形状と、治水面の効果のみが評価されていたが、本研究の結果、周辺地域に大きな影響を与えたと同時に、当時の日本の社会体制や経済を支えるうえに極めて重要な役割を果たしていたことが明かになった。
著者
越沢 明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.181-192, 1989-06-20 (Released:2010-06-15)
参考文献数
14

戦前の昭和期 (1930年・40年代) は戦時色が強くなる時代の特徴から、都市計画はあたかも何の進歩もなく、暗い時代であったかの印象を持たれているが、これは事実に反する。むしろ日本初の本格的な都市計画事業である帝都復興事業の完成の後、その経験を生かし、また欧米都市計画の動向を踏まえて、日本の都市計画は新たな展開が図られている。函館は1934年の大火を契機として、全市街を広幅員の防火緑樹道路によって分断する構想が樹てられ、実現をみた。またこれは都市計画事業によってつくられた初の本格的なブールバールである。札幌はすでに既成市街地の街路が完成していたが、1936年、公園系統の考え方にもとづき、広幅員の放射環状道路を配置する雄大な街路網が計画された、また合わせて風致地区も計画されたが、これらの計画は戦後廃止されてしまった。帯広では1944年、街路網が決定された。これは斜路と広場を配置するなど従来の帯広の都市形態を発展させた都市デザインであったが、この計画も戦後、ほとんど継承されなかった。これらの市街地構成の原理と街路設計の思想は今日、なお学ぶ点が少なくない。
著者
二渡 了 楠田 哲也 粟谷 陽一 古賀 憲一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境問題シンポジュウム講演論文集 (ISSN:09134093)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.66-71, 1987 (Released:2010-06-04)
参考文献数
10

In the Rokkaku basin, paddy fields have spread over extensively reclaimed lands and the water requirement surpasses the river water utilization capacity. Then many irrigation ponds and deep wells were constracted, and traditional water control systems have been kept for some 400 years by regional inhabitants. The farmland improvement project and constraction of the river mouth reservoir are in effect, and they will change inhabitant consciousness about water quantity and quality. It is necessary to reform the water control system with quantity and quality according to the improvement of irrigation and drainage establishments and the development of rural communities. The water environment in the rural area has to be independently managed by the organization mainly composed of local inhabitants, and the administrative organizations have to provide sewage treatment system at cities for the preservation and improvement of water quality in this basin.
著者
遠藤 光一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.221-226, 1997

二級河川夏井川の中流部に位置する磐域小川江筋取水堰 (福島県いわき市) は1654 (慶安4) 年に築造され、河川の曲線部で平面的には斜形、縦断的に多段式、構造的に木工沈床という国内に現存する数少ない大規摸な「斜め堰」であり、歴史的にも最も古いものである。これをケーススタディーとして、史料や「斜め堰」の類似例 (第十堰吉野川 (1752) 年、山田堰筑後川 (1790) 年) から河川工学的に比較評価し、流れを見極め、流れに逆らわない河川構造物の設計視点を提言したい。
著者
家田 仁 赤松 隆 高木 淳 畠中 秀人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.177-184, 1988-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
14
被引用文献数
9 10

Evaluation of train scheduling is an important step for efficient use of restricted transportation facilities to improve the severe congestion in metropolitan area. This paper proposes a method for evaluating train scheduling from the view point of user's benefit. First, we formulate the model which represents a train diagram as a time-space network and explains user's behavior on the diagram network. Next, the criteria for evaluation of train scheduling is presented. This model is applied to a railway in Tokyo metropolitan area, and the applicability is validated. Finally, some train schedulings in Tokyo metropolitan area are evaluated by the method.
著者
永井 邦彦 家田 仁 下大薗 浩 志田 州弘
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.149-156, 1991-11-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
10

Mowadays the improvemont of train goheduting to reliev congestion comes to be more important. Recause there are a huge number of feasible alternatives, the development of a method to narrow down the pattern of train scheduling is required. At First, typical sections of seventeen lines in reality are drawn and their characteristics are analyzed. Then four nonlinear programming problems are solved. The results are referenced, demand pattern models and train scheduling pattern models are set up. User's disutility on each case is evaluated by user's equilibrum assignemnt on time-space network. Then relationship between demand pattern and adequate train scheduling pattern is made to be clear.
著者
橋詰 豊 塩井 幸武 毛呂 眞
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.694, pp.117-130, 2001-12-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
16

1994年三陸はるか沖地震における青森県八戸市の建物等の構造物被害, 水道被害と地盤の振動性状の関係を, 常時微動測定及び一次元重複反射理論に基づくモデル計算の結果を用いて検討した結果, 次のような相関関係が得られた. 1) 地盤振動のスペクトル形状はN値50程度の基盤より上の, ごく浅い地層の影響を強く反映している. 2) 水道被害は地盤のスペクトルや加速度レベルによる影響よりも主に傾斜地や切土・盛土等の人工的なものも含めた地層境の影響を受け易い. 3) 構造物の被害は, 地盤の卓越周期に影響され易い. これらの事より, 常時微動測定は構造物被害を推定するのに有効と考えられる.
著者
Shigeki MATSUURA
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.669-676, 1996-06-05 (Released:2010-06-15)
参考文献数
4

工部省の高官・大鳥圭介が1882 (明治15) 年、アメリカの技術書「堰堤築新按」を翻訳して出版した。290ページからなる大著で、図・絵がふんだんに盛りこまれ、分かりやすく書かれている、大鳥の翻訳の意図は、それほど知識はないが実際に現場で工事を行う農民や村職人でも分かる技術書の出版であった。工部省は、政府の官営事業を直轄し、殖産興業政策を行ってわが国産業の近代化を推進する機関であり、そのために外国人を招聘し、欧米に留学生を派遣し、大学校を立して専門家の育成を図っていた。この機関の高官が、専門家ではない一般技能者の技術向上を目的として、このような書物を翻訳していたのである。ここに近代化を目指す明治新政府の懐の深さを強く感じさせる
著者
五島 寧
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.93-104, 1993-06-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
44
被引用文献数
1

本論文は, 李氏朝鮮王朝時代からの既存の都城であった「京城」(現: ソウル) が日本帝国の植民地統治下において, 物理的あるいは空間的にどのように変容したのかという点を, 街路整備の観点から明らかにすることを目的としている。植民地時代の朝鮮半島の都市建設については, 全体を総括した既存研究が存在するが, 具体的な整備の展開について平面図上での検討は省略されているため, 本研究では街路整備の面的展開を明らかにし, 土地利用の変化から街路の機能の変化を考察した。結果として, 既存大街路の, 形態に担保された機能の積極的活用と展開, 及び事業費低減の取り組みの中での既存細街路の消極的利用を示した。
著者
大石 希 浅岡 朝泰 高木 朗義 北浦 康嗣
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_197-67_I_208, 2011

プロサッカーチームはJリーグが掲げる百年構想に従い,サッカー以外の活動を行うことで,地域の魅力向上など地域活性化に貢献している.その一方,チーム運営には厳しい現状があり,プロサッカーチームの存在意義が問われている.本研究ではプロサッカーチームがもたらす市場価値のみならず,非市場価値を評価し,プロサッカーチームが地域活性化に貢献していることを明らかにする.具体的には,FC岐阜に対するアンケート調査を実施し,大分トリニータのデータも用いて,CVMや機会費用,消費者余剰法によりプロサッカーチームによる地域活性化の便益を評価する.その結果,試合開催時における便益以外にも,生涯体育や社会貢献などの地域貢献活動に対する便益が小さくないことを示す.
著者
森杉 壽芳 林山 泰久
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.440, pp.71-80, 1992-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

本研究は, 現代的手法である費用便益分析を応用して, 明治・大正期鉄道網形成の国民経済的便益を計測することを試みた. 本研究の対象とする便益は, いわゆる直接効果である輸送時間・費用の節約のみならずその波及効果をも含み, 波及効果はGNPへの貢献である所得の増大効果のみならず, 鉄道網整備により便利になったことによる国民の福祉向上を貨幣タームで表現した福祉効果を計測している.
著者
原口 泉
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.623-628, 1997-06-05 (Released:2010-06-15)
参考文献数
10

鹿児島市の甲突川に架かる五つの石橋、150年にわたって鹿児島の歴史的景観を形作ってきた4連、5連の石橋群は、本年1997年1月までに完全撤去された。そして五大石橋と同時期に架けられた甲突川最後の石橋、河頭太鼓橋も本年秋から冬にかけて撤去される運びとなっている。本稿では、河頭太鼓橋の歴史的、文化的価値について論じつつ、石橋撤去の持つ意味を提起したい。
著者
野口 竜也 西原 正典 西田 良平
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.206-213, 2007 (Released:2010-11-22)
参考文献数
8

鳥取県内の50観測点で得られた 1464地震 (延べ 4833個) の計測震度データの分析を行った. 各観測点において, 距離減衰式による推定震度と観測による震度の差の平均を求め, 地盤増幅による増幅効果の指標とした. この指標と地盤特性を比較し関係を調べた. 地盤の深さ 30mまでの平均 S波速度 (AVS30) とは良い相関がみられ, AVSが小さいほど揺れやすい地点である関係がみられた. より深い地盤構造を反映している重力異常との比較では, 特に相関がみられなかった. また, 従来から境港市の近接 2地点で震度差が生じる地点においては, AVS30がほぼ同じあるにも関わらず, 今回の分析による増幅効果の指標においても同様な差異がみられた.
著者
兵頭 知 吉井 稔雄 高山 雄貴
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_1027-I_1033, 2015
被引用文献数
2

時間的に明るさが変化する薄暮/薄明,空間的に明るさが変化するトンネル周辺などの状況下では,視環境に影響を与えることから事故発生リスクが高くなることが想定される.そこで,本研究では,走行時間帯における明るさおよび走行時において空間的に変化する明るさが交通事故発生リスクに与える影響を明らかにする.具体的には,2007年~2010年における4年間に四国の高速道路において記録されたデータを用いて,ポアソン回帰モデルを用いた事故発生リスク要因分析を行う.分析の結果,夜間時において有意に事故発生リスクが高まること,昼間時・薄明時のトンネル出口部において物損事故発生のリスクが高まることなどの知見を得た.
著者
馬場 俊介
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.205-218, 1994-06-09 (Released:2010-06-15)
参考文献数
7

木曽川・読書発電所の建設工事用の吊橋として1922年に架設された桃介橋は、4径間、全長247m、わが国に現存する最大・最古の木製補剛吊橋である。桃介橋は1978年の被災以降は放置されてきたが、1992年度の自治省の「ふるさとづくり特別対策事業」による起債を用いて修復・復元が進められた結果昔日の姿を取り戻し、1993年10月17日2度目の渡り初めが行われた。土木史的な観点から見た桃介橋の意義は、「文化財にふさわしい復元」のあり方を、近代土木構造物に対し初めて正面切って論じた点にある。吊橋のような複雑な構造物の場合、力学的な安全性の照査は多枝にわたり、しかも荷重、形状・寸法、発生応力は互いに線形関係にない (少しでも前提が変われば全て再計算となる) ことから、中間段階での安全性照査はどうしても簡略計算に頼らざるを得ない。桃介橋の保存・修複に係わる委員会では、こうした推定値に従って修復方針を決定し、それを受けてより正確な推定値が計算され、さらに異体的な修復工程が詰められていった。本論文では、こうした力学的な検討の変遷を詳らかにすることにより、技術的検討のもつ重要性とそれに伴う責任の重さについて分析を加える。
著者
三上 卓 君島 康太 時沢 英明 笹田 修司
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.661-668, 2009
被引用文献数
1

平成16年に発生した新潟県中越地震では,約1万7千世帯の家屋が全半壊し,ピーク時には約10万人が避難所を利用していた<SUP>1)</SUP>.一方で,避難所での生活を避け,自家用車内で生活し,エコノミー症候群によって亡くなる人が出るという事態が生じた.その理由の一つとして,避難所の設備等に不十分な点が挙げられる.本研究では,避難所設備の重要度をアンケート調査から設定し,重要度に応じて避難所設備の現状を評価した.さらに,その結果に基づき避難所設備の効率的な改善方法を検討した.
著者
福島 二朗 西片 守
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.103-109, 1986-06-25 (Released:2010-06-15)
参考文献数
14

本研究は、京と東国との大動脈であった東山道をとりあげ、古代から近世に至る間、その果たしてきた役割を時代ごとに明らかにすると共に、地方の地域社会発展にどのような影響を及ぼしたかを、東山道の経路に位置した栃木県足利市を例として考察したものである。今回は第2報として鎌倉~室町時代をとりあげたが、この時代は前代までの皇室・公家政権から武家政権へと移行した時代であり、鎌倉に幕府が置かれたことによって、従前の京都周辺に集中していた政治・経済・文化・交通が、鎌倉をも円心として二元化された時代であった。律令制下においては主に国家への貢納物輪送として使われてきた東山道は、中世に至って、荘園年貢物の輪送、さらに中央諸都市の発達と地方の領主層の成長に伴う地方産業の勃興により、商品輪送路としての役割を果たしたのである。又、前代末期に興った新仏教である時宗や禅宗が東漸したのもこの時代である。このような状況の中足利は、前代の郡衙・駅家が位置し東山道が近傍を通っている周辺に寺院が建立され、又市が立つなど、この地方の主邑として発展してきたが、このことは東山道を媒介とした文化や技術の伝播・交流が繁く行われてきたことを物語っているものと思われる。本稿ではこれらについて詳述した。[中世・道路・地域開発]