著者
藤野 正行 何 普明
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.618-623, 1998-10-15
参考文献数
17
被引用文献数
8 5

食用キノコであるタモギタケの加工にともなって生じる煮汁の有効利用に端を発した研究の一環として,熱水抽出物(煮汁)の血糖値抑制効果を調べた.<BR>タモギタケの熱水抽出物は,経口投与により,II型糖尿病モデルマウスKK-A<SUP>y</SUP>の血糖値上昇を抑制し,耐糖能を改善した.<BR>熱水抽出物をβ-グルカナーゼ処理した後,3倍容のエタノールで処理して得たエタノール処理画分は,KK-A<SUP>y</SUP>マウスの血糖値を一時的に抑制したが,作用は微弱であった.<BR>熱水抽出物を対照動物(C57BL/6Jマウス)に投与したが,血糖値および耐糖能に変化はみられなかった.<BR>今後,有効成分の特定と作用機序の解明が必要であるが,本研究は,副生物の有効利用の可能性を示唆した.
著者
伊藤 智宏 伊藤 裕子 水谷 峰雄 藤城 克久 古市 幸生 小宮 孝志 樋廻 博重
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.339-344, 2002-05-15
被引用文献数
1 15

アズキ熱水抽出物(アズキ煮汁)の抗腫瘍活性及びその作用機構の一つであるアポトーシス誘導について検討を行った.<BR>アズキ熱水抽出物をDIAION HP-20で処理した後,蒸留水,40%エタノール,60%エタノール,80%エタノールと順に溶出溶媒を切り換え,各溶出画分を得た.これらの溶出画分を用いてヒト胃癌細胞(KATO III cells)の形態学的変化,増殖抑制作用及びアポトーシス誘導により生じるDNAフラグメントの検出を行った.その結果,40%エタノール溶出画分に小球状のアポトーシス小体が観察され,さらにアポトーシス誘導により生じるDNAの断片化を示した.<BR>また,40%エタノール溶出画分によるアポトーシス誘導についてDNA断片化の濃度及び培養時間依存性に関して検討した.その結果,アポトーシス誘導は濃度及び培養時間依存的であることが判明した.また,40%エタノール溶出画分によるヒト正常細胞に対する影響は観察されなかった.以上より,40%エタノール溶出物による抗腫瘍活性機構にはアポトーシス誘導が関与していることが示唆された.
著者
杵淵 美倭子 関谷 美由紀 山崎 彬 山元 皓二
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.323-328, 1999-05-15
被引用文献数
8 36

1. コシヒカリの原料玄米中の遊離アミノ酸<BR>コシヒカリの原料玄米からは6.4mgのGABAが抽出された.特に多く含まれていた遊離アミノ酸はアスパラギン,アスパラギン酸,グルタミン酸であった.<BR>2. 圧力処理による玄米の水分変化<BR>400MPaの圧力処理によって玄米中の水分の吸収が早まった.700MPaの場合は圧力処理直後の水分吸収が顕著であった.しかしそれ以降の吸水は無処理のものと比較して大きな差が認められなかった.<BR>3. 圧力処理および浸潰時間による玄米中へのGABAの蓄積<BR>(1) 400 MPaで圧力処理を施し,25℃で浸漬した玄米からは10時間で13.0mg,18時間で18,3mgのGABAが抽出された.200MPa,700MPaでは400MPaよりGABAの蓄積量が少なく,無処理では更に少なかった.<BR>(2) 玄米と水が1:1(w/w),1:0.3(w/w)の場合とも10時間後に玄米中へ蓄積されたGABAの量に違いは認められなかった.<BR>4. その他の遊離アミノ酸の変化(1) 玄米を浸漬することによって多くの遊離アミノ酸が増加したが,400MPaで圧力処理を施した後に浸漬をした場合にはそれが顕著であった.GABAの基質であるグルタミン酸も増加した.しかし圧力処理の有無にかかわらず浸漬中にアスパラギンとアスパラギン酸は減少した.<BR>(2) 圧力処理後浸漬を施した玄米中には無処理に比較して制限アミノ酸であるリジンの増加が認められた.
著者
中川 致之 田村 真八郎 石間 紀男
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.19, no.10, pp.475-480, 1972
被引用文献数
2

味の異なる20種の緑茶の浸出液について,苦味,渋味,うま味,甘味など味要素別の強さと総合的な味の強さを官能検査により測定し,構成味要素の強度のパターン(呈味構造)とし好度との関係を究明した。<BR>(1) 苦味,渋味,総合的な味の強さが強過ぎても弱過ぎてもし好度が低下し,中程度の近辺でし好度の高いものが多かった。<BR>(2) うま味,甘味は緑茶としてのイメージが損なわれない範囲内では強いほどし好度が高かった。しかし,味要素としてのうま味がある程度以上になると異質感が生じ,その増加に伴ってし好度が低下した。<BR>(3) 苦味,渋味が強くなるとうま味,甘味が弱く感じられること,また,うま味,甘味が強くなると苦味,渋味が弱く感じられることが認められた。
著者
浅野 三夫 大久保 一良 山内 文男
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.375-379, 1990-05-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

温水浸漬による不快臭味成分低減効果をより詳しく検討するため,大豆を種皮,胚軸および子葉の各部位別に分け,それぞれ温水浸漬しん出物中の配糖体成分をTLCおよびHPLC分析を行って検討した. (1) 温水浸漬によってしん出した各重量あたりの配糖体成分含量は胚軸が最も多く,その量は対照(70%エタノール抽出から調製された配糖体成分)の53%であった. (2) 温水浸漬による不快味成分低減効果は,豆類などのアク抜き剤として用いられているNaHCO3 (1~5%)添加とほぼ同じ効果であった. (3) 温水浸漬によってしん出した配糖体成分のTLC分析の結果は対照に比べて,イソフラボノイド系のバンドが少なく,サポニン系のバンド,特に不快味の強い,サポニンAグループ成分が主体であり,それは胚軸で顕著であった. (4) 同上配糖体成分のHPLC分析からAグループ成分中でも不快味の強いAaおよびAb成分が胚軸に顕著に検出され,また胚軸にはU1 U2を含む未確認成分も多かった. (5) 温水浸漬から調製した胚軸配糖体成分をセファデックスLH-20で分画し, TLCとHPLCで分析した.さらに標品との同定を試みた結果,未確認成分のU1およびU2は,それぞれ不快味を持つグリシティン7-β-Oグルコシドとダイジンであることが明らかになった.
著者
松木 順子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, 2010-05-15
被引用文献数
4

1982年,Englystらは,アミラーゼ耐性澱粉を難消化性澱粉resistant starch (RS)と名付けた.現在では,1992年EURESTA (RS摂取の生理学的意義に関するヨーロッパ農産業食品関連研究共同作業部会)で定められたRSの定義「健康なヒトの小腸内での酵素消化作用を逃れる澱粉および澱粉分解産物の総量」が広く受け入れられている.<BR>Englystらは澱粉を消化性別に3種に分類し,さらにRSを要因別に3種<SUP>1) </SUP>(後にBrownらにより4種<SUP>2) </SUP>)に分類した(表).RS<SUB>1</SUB>は細胞壁などで物理的に閉じこめられて,消化酵素が接触できない状態のものである.RS<SUB>2</SUB>はX線結晶回折図形がB型を示す生澱粉である.澱粉粒に穴が少ない,結晶部分のアミロペクチンの側鎖長が長く分岐が少ないことなどがRS<SUB>2</SUB>の難消化性の原因と言われるが,詳細は未解明である.RS<SUB>3</SUB>は,一度糊化した澱粉が再結晶して安定な構造をとるようになった老化澱粉である.湿熱処理澱粉,パーボイル加工澱粉,プルラナーゼ処理澱粉なども含まれる.RS<SUB>4</SUB>は化工によりエステル架橋,エーテル架橋などを施して消化性を低くしたものであり,食品加工後も難消化性を保つことができる.<BR>RSの定量は,消化性の澱粉を取り除いた後に残る非消化性澱粉を定量して行う.Megazyme社が販売しているRS測定キットは,AOACおよびAACCの公定法として認められている.<BR>RS<SUB>2</SUB>, RS<SUB>3</SUB>, RS<SUB>4</SUB>は市販されており,これらは一般的に無味,白色で,糊化温度が高く,エクストルーダー加工性,フィルム形成性がよい.非水溶性食物繊維に比べても保水性が低く,食品素材として小麦粉などと一部置換したときの加工性への影響も少ない.また,焼成品へのカリカリした食感や歯ごたえの付与が可能となる.<BR>RSの生理作用として,血糖応答性およびインスリン応答性の改善,腸機能の改善,血中脂肪に関する症状の改善,プレバイオティクス,シンバイオティクスとしての機能などが注目されている.RSを多く含む食品からのグルコースの遊離は緩やかであり,短期的には食後血糖値上昇の抑制,食後インスリン応答の抑制,満腹感の持続などが報告されている.また,インスリン応答の抑制により,貯蔵脂肪の消費促進が期待され,長期的には,2型糖尿病や耐糖能異常などの症状の改善と予防,肥満や体重の管理に役立つことが期待される.消化を免れて大腸に達したRSは,腸内微生物により酪酸を中心とした短鎖脂肪酸(SCFA)となる.SCFAは大腸上皮細胞の主要なエネルギー源となり,上皮細胞の増殖速度を上げて細胞数を維持する.また,消化管の血流量増加,空腸の蠕動運動の促進,結腸内pH低下,炎症反応の抑制,ガン細胞の増殖抑制など,腸の機能に影響を及ぼす.RSの種類別の効果,ヒトでの長期的な効果の検証が待たれる<SUP>3) </SUP>.<BR>RSは,アレルギー反応を起こすという報告もない.食品中の澱粉の一部をRSで置き換えることにより,食事の質を保ちながらカロリーを減らし,さらに食品からのグルコースの遊離を遅くすることができる.生活の質を高め,疾病リスクを低減する機能性食品の素材として,多岐にわたる応用が期待される.
著者
藤井 淑子 団野 源一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.684-690, 1988-10-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
9
被引用文献数
4 2 6

鶏卵(全卵)と砂糖の等量を泡立てたフォームに種々の量の小麦粉または小麦デンプンを混和して,ケーキバッターをつくり,スポンジケーキの体積とその品質評価から,ケーキにおける小麦粉の役割を検討した.(1) 小麦粉を小麦デンプンに置き換えたケーキは,小麦粉のケーキに比べ,体積も大きく,内相のスポンジのきめも均一で細かくなり,より高い品質評価が得られた.フォームに小麦粉を重量比で1/2量(33.3%)混和すると,フォームの体積は52%に減少し,ケーキバッターの粘度は約5倍に増加した.しかし,同量の小麦デンプンでは,フォーム体積が78%に減少したに過ぎず,また,ケーキバッターの粘度の上昇も僅かであった.(3) オーブンの中でのケーキの高さと経時変化を測定した結果,最大の高さは小麦粉と小麦デンプンで著しく異なるが,ケーキバッターの高さに対する比は約2,5となり,その差は認められず,ケーキの体積は主として,ケーキバッターの体積で決まる結果となった.一方,焼き上げたケーキの体積を保つためには相当量のデンプンを必要とする.(4)小麦デンプンは水を添加しても凝集性がないため,小麦粉に比べてケーキバッターへの分散性が良く,フォームの破壊も少ないため,よりきめの細かいよく膨れたケーキが得られた,
著者
沖谷 明紘 大根田 弥生 久保 友人 石井 剛志 鈴木 理世子 粟田 隆之 砂田 泰志 山下 幸恵 右田 光史郎 松石 昌典 畑江 敬子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.170-176, 2008-04-15
被引用文献数
2 5 1

(1) スルメイカ外套膜を真空調理したとき,官能による測定では煮えたものの食感をもつ,軟らかい煮イカが得られる加熱時間は,50℃と55℃では4~5時間,60℃では1~4時間であった.この加熱時間で皮(表皮の第3層と第4層の膜で構成)が消失したので筋肉内コラーゲンも可溶化したと推察された.<BR>(2) 60℃で1時間真空調理したイカ肉と80℃で1時間真空加熱したイカ肉の破断強度は,環状筋筋線維に直角および平行に破断したときのいずれの場合も前者のイカ肉の方が小さかったが,両イカ肉間の差は平行に破断したときの方が著しく大きかった.<BR>(3)SDS-PAGE分析の結果,加熱によってイカ肉の筋原線維からアクチンが不可逆的に離脱することが明らかとなった.この反応は60℃で著しく進行し,2時間後でもアクチンは可溶化したままであった.80℃でもこの反応はわずかに認められたが,可溶化アクチンの出現は2分までであった.<BR>(4)(2)と(3)の結果より,60℃で1時間真空調理した煮イカが80℃で1時間加熱した煮イカより軟らかい原因の1つとして,筋肉中で加熱によって起るアクトミオシンからのアクチンの離脱可溶化度合が,前者でより大きいことが推察された.<BR>(5)すべての結果から,真空調理スルメイカ筋肉のソフト化は筋肉内コラーゲンの可溶化と筋原線維からのアクチンの離脱可溶化現象によって惹起されると示唆された.
著者
辻田 隆廣 高久 武司
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.102-108, 2008-03-15
参考文献数
17
被引用文献数
4 5

カンキツ類の未熟果,成熟果果皮及びじょうのう膜に含まれる脂肪分解活性を測定し,比較検討した.未熟果と成熟果の果皮及びじょうのう膜に脂肪分解活性が認められたが,果汁には認められなかった.未熟果の活性が最も高く,じょうのう膜は果皮の約30%であった.果皮ではフラベドがアルベドより約3倍高い活性が認められた.田中の分類によるダイダイ区(イヨカン,アマナツ等)やミカン区(ウンシュウミカン,ポンカン等)のカンキツには強い脂肪分解活性が認められたが,ライム区(タヒチライム等),シトロン区(レモン等)及びザボン区(土佐ブンタン,グレープフルーツ等)のカンキツには強い脂肪分解活性は認められなかった.以上のことより,カンキツの種類により脂肪分解活性は大きく異なり,未熟果,果皮及びじょうのう膜でもその傾向は同じであった.未熟果のシネフリン含量と脂肪分解活性の間には正の相関関係が認められた.<BR>以上のことより,カンキツジュース製造過程の廃棄物である搾汁粕(果皮やじょうのう膜)は,抗肥満作用やコレステロール低下作用を有する機能性食品素材としての利用が考えられる.
著者
金 哲 宿野部 幸孝 種谷 真一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.10-17, 1997-01-15
被引用文献数
1

回転膜ろ過システムで,連続的に酸カゼインをプロテアーゼMにより加水分解を行い,その分解物を膜ろ過し,運転条件を把握した.<BR>(1)酵素プロテアーゼMによる加水分解物の膜透過液は,運転時間(0~6時間),および(基質濃度S/酵素濃度E)比に関係なく,分子量300~600のペプチドが多い.<BR>(2)反応槽中に酵素液を入れ,その酵素が濃縮される途中の酵素濃縮液および透過液の酵素活性を調べた結果,漏れはごくわずかであった.また透過流束の変化から酵素の膜面付着を調べたが,付着は微量であった.<BR>(3)回転膜ろ過システムでの反応速度が,ミハエリスーメンテンの理論式に従うとすると,ミハエリス定数は2.94%,最大反応速度は33.56%・h-1であった.<BR>(4)透過流束は圧力とともに,増加するが,圧力200kPaで,S/E=3.0%/0.25%,およびS/E=5.0%/1.0%では,運転時間が長くなるほど,透過流束は減少する傾向があった.透過流束量の減少の少ないS/E=3.0%/1.0%が最も良好であった.<BR>(5)反応槽の固形分濃度に対する透過液固形分濃度の割合を基質変換率と定義した.基質変換率は圧力の増加に対して低下する傾向をもち,またS/E比にも関係し,S/E=3.0%/0.25%で低く,S/E=3.0%/1.0%およびS/E=5.0%/1.0%では同じ傾向を示し,35kPaの圧力で最大基質変換率0.85を示した.<BR>(6)平均滞留時間は,圧力の増加につれて減少する.35kPaではS/E=5.0%/1.0%で35kPaのとき13.5hの最高値,S/E=3.0%/1.0%で200kPaのとき1.82hの最低値を示した.<BR>(7)膜回転数に関係するテーラ数と透過流束との関係から,圧力100kPaの場合,透過流束はテーラ数450(1000rpm)で最も低く,678(1500rpm)で最大になり約30.5kg・m-2・h-1の高い値を示し,その後は減少した.<BR>(8)酵素重量に対する膜透過分解物の重量割合で表す生産性からみて,S/E=3.0%/0.25%が最も良好な生産性を示した.
著者
神山 かおる 畠山 英子 小林 知子 八城 正典 東 輝明 境 知子 鈴木 建夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.822-827, 2000-11-15
被引用文献数
5 6

おやつ昆布の咀嚼機能食品としての特性を明らかにするために,引っ張り試験機による破断測定,官能評価,咀嚼筋筋電位ならびに咀嚼圧計測を行った.今回用いた4種の昆布では,破断応力は変化しないが,厚みが異なるため,破断荷重は異なった.官能評価では,破断に大きな力を要したものが噛みにくいと判断された.筋電位計測では,噛みにくいと判断された試料では,咀嚼時間や咀嚼回数,全咀嚼筋活動量が大きくなった.昆布のように咀嚼圧よりも高い破断応力をもつ試料の力学特性は,ヒトの嚥下までの咀嚼挙動に影響し,破断荷重の高い試料を,ヒトは咀嚼回数を多くし,長時間をかけて咀嚼し,噛みにくいと感じることが示唆された.一方,一回目の咀嚼に要する咀嚼圧や感圧面積等には,試料の力学特性の影響は観られなかった.
著者
西堀 すき江 並木 和子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.144-148, 1998-02-15
被引用文献数
6 5

野菜ジュースの<SUB>O2</SUB>-消去能を2種類の測定法(NBT法・ルミネッセンス法)で比較した.<BR>(1) NBT法において実験に供した20種類の生ジュースはいずれもO<SUB>2</SUB>-消去能を有していた.特にブロッコリー・キャベツ・ピーマン・ニラ等は強い活性を示した.しかし,ルミネッセンス法ではニンジンの生ジュースに活性は認められなかった.<BR>(2) 加熱処理によりキュウリ・カボチャ・レタスの活性が最も低下した.1O<SUB>2</SUB>消去能が高いと報告されているカロテノイド系の色素を含むトマト・ニンジンも,加熱により活性が低下した.特に,加熱後のニンジンはほとんどO<SUB>2</SUB>-消去能が認められなかった.タマネギ・モヤシ等のフラボノイド系野菜も加熱により活性が低下した.<BR>(3) クロロフィル系野菜は品種によって幅があるが,比較的加熱後もO<SUB>2</SUB>-消去能が持続した.クロロフィル類縁体の存在比率は,生・加熱に関わりなくクロロフィルaが圧倒的に高く,加熱によってクロロフィルaは減少するものの,1/2~2/3量残存した.逆にフェオフィチンaは1.5~2倍に増加した.<BR>一般的に,野菜の色素の中ではカロテンの活性酸素消去能が高いと報告されているが,実際に野菜ジュースにおいて,特に温野菜においてはクロロフィル系の色素を含む野菜に,活性酸素消去能の活性が持続することがわかった.
著者
Toshihide NISHIMURA
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology International, Tokyo (ISSN:13417592)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.241-249, 1998-11-25 (Released:2009-08-14)
参考文献数
81
被引用文献数
18 42

It is well known that muscle is converted to meat as food during postmortem aging. Meat flavor as well as texture are improved during postmortem aging. The improvement of meat taste in flavor is involved in the increase in free amino acids and peptides in meats during postmortem aging. Especially, the increase in free amino acids is thought to contribute to the enhancement of brothy taste including umami, while the increase in peptides is responsible for giving mildness. The increase in peptides is caused by the action of cathepsins B and L, and calpains on muscle proteins, while the increase in free amino acids is caused by the action of aminopeptidases C, H and P on the peptides during postmortem aging.
著者
Miku Miyoshi Isao Kimura Tadao Inazu Hirotoshi Tamura Ken Izumori Kazuya Akimitsu
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
pp.FSTR-D-23-00175, (Released:2024-01-11)

Three tsukudani seasoning liquid models of soy sauce and amino acid seasoning liquid mixed with rare sugar syrup (RSS, main rare sugars: D-allulose, D-sorbose, D-tagatose, D-allose), glucose-fructose liquid sugar (GF), and white sugar (WS) were heated in a headspace sampler to create a delicious aroma. The aroma components generated were then analyzed using HS-GC/MS. As a result of the Maillard reaction, brown color intensity measured at absorbance 420 nm in the RSS liquid was significantly higher than in the GF and WS liquids. Principal component analysis of the quantitative data of the aroma compounds revealed 1.1–4.5 times more furans such as furfural, furfuryl alcohol, 2,5-diethyl tetrahydrofuran, and 3-phenylfuran were released from RSS than from GF and WS, which contributed to the characteristic aroma components of the tsukudani seasoning liquid. These results suggest that the four main rare sugars in the RSS are involved in the aroma formation.
著者
Mitsuyo Hori Yusuke Kawai Koichiro Noguchi Kohei Nakamura Masaya Shimada Hitoshi Iwahashi Tomoyuki Nakagawa
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
pp.FSTR-D-23-00098, (Released:2024-01-10)

From traditional Gifu ayu-narezushi, Leuconostoc, Latilactobacillus, and Enterococcus were isolated as dominant genera. Isolated strains of Leuconostoc mesenteroides showed high growth inhibition activity against Staphylococcus aureus and Escherichia coli. The isolated strain, Enterococcus lactis EC52, could produce γ-aminobutyric acid (GABA). These results indicated that Enterococcus lactis and Leuconostoc mesenteroides were lactic acid bacteria, which have GABA-producing and antimicrobial activities, respectively, in traditional Gifu ayu-narezushi.
著者
Chen-Yu Lin Koshiro Futada Phyo Htet Htet Kyaw Shota Tanaka Mohamed El-Telbany Yoshimitsu Masuda Ken-ichi Honjoh Takahisa Miyamoto
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
pp.FSTR-D-23-00186, (Released:2024-01-09)

In this study, the dnaK gene-deletion mutant strain of Escherichia coli BW25113 showed a higher susceptibility than the wild-type strain of E. coli BW25113 to phage S127BCL3. Flavonoids, myricetin and quercetin which had been reported to suppress the role of DnaK were tested to examine their effects on the phage susceptibility of E. coli BW25113. A 6-h pretreatment with 500 µmol/L myricetin or quercetin increased the phage susceptibility of E. coli BW25113. A similar result was observed in E. coli O157:H7. Real-time quantitative polymerase chain reaction (qPCR) was conducted to investigate the effects of flavonoids on the transcription of chaperone genes (dnaK, dnaJ, groEL, and grpE) in E. coli. Pretreatment of wild-type E. coli BW25113 with flavonoids decreased the transcription of chaperone genes. This is the first report demonstrating the enhancement of the phage susceptibility of both E. coli BW25113 and E. coli O157:H7 by flavonoids. The results of this study on the combined effects of flavonoids involved in foods and phages on E. coli provide scientific bases for development of a novel biocontrol method of foodborne bacteria.
著者
Kota Kera Shohei Makino Risako Takeda Aoi Shimeno Masaya Hojo Sadahiro Hamasaki Akihito Endo Masumi Iijima Tsutomu Nakayama
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
pp.FSTR-D-23-00189, (Released:2023-12-27)

The astringency of persimmon fruits is a significant factor for consumers and the nutritional industry. To date, astringents, such as polyphenols, specifically persimmon condensed tannins, have been assessed using polyphenol quantification assays, such as the Folin–Ciocalteu method, based on their reducing power. However, these methods are influenced by the presence of other reducing substances. In this study, we developed a cost-effective liposome turbidity analysis using a portable visible spectrophotometer based on the interaction between liposomes and astringents. Authentic astringents, such as catechins and theaflavin-3-O-gallate, were analyzed, and their half-maximal effective concentrations (EC50) were calculated. These results indicated that the affinity to the membrane was similar to that of astringency, as determined by sensory analysis. Additionally, the EC50 values of partially purified tannins from non-astringent and astringent persimmons were calculated. In conclusion, we determined the application methods to assess astringent persimmon fruits with and without the removal of astringency.
著者
Kiyota Sakai Masamichi Okada Shotaro Yamaguchi
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
pp.FSTR-D-23-00182, (Released:2023-12-26)

Despite considerable research and developments in the color properties of plant-based meat analog (PBMA) products, their color changes during the grilling process are one of the main unsolved challenges. Recently, it was reported that a novel browning system for PBMA products containing a red pigment (betanidin) and a multicopper oxidase (laccase; LC) can simulate the color changes (red to brown) of animal meat. However, the reaction products in PBMA using this system have not been analyzed in detail. Thus, this study aimed to clarify the reaction products of betanidin oxidized via LC-catalyzed reaction. It was found that LC-catalyzed oxidation in the PBMA patties degraded betanidin to betalamic acid and cyclodopa, subsequently polymerizing these degradation products to produce unknown brown polymers. These findings provide suggestions for the browning mechanism of PBMA patties containing betanidin via LC-catalyzed oxidation.
著者
Yoshimasa Sugiura Shouta Misumi Yoichi Kinoshita Hiroaki Yamatani Kazuma Yoshizumi Hirotaka Katsuzaki Yuichi Hayashi Noboru Murase
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
pp.FSTR-D-23-00153, (Released:2023-12-25)

We investigated the antiallergic effects of 80 % methanol (80M) extracts obtained from Ecklonia cava subsp. stolonifera, harvested along the coast of Nishinoshima Town, Oki Islands, Shimane Prefecture, Japan, at different stages of algal powder manufacturing (involving heating operations). The radical-scavenging activity of the extracts increased during the manufacturing process. The extracts could mitigate allergic inflammation in mice and degranulation in rat basophilic leukemia-2H3 cells. The contents of typical algal polyphenols, such as phlorotannins (eckol, 6,6′-bieckol, 8,8′-bieckol, dieckol, and phlorofucofuroeckol-A), in the 80M extracts were analyzed via high-performance liquid chromatography and liquid chromatography-mass spectrometry, which revealed that eckol and dieckol were more abundant than the other three phlorotannins throughout the manufacturing process, while an increasing trend in the contents of all five phlorotannins was observed in later stages of the manufacturing process. Furthermore, measurement of the total polyphenol content revealed the probability of polyphenol polymerization during manufacture.