著者
井崎 義治
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.115-126, 1981-03-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
14
被引用文献数
1

都市内部のある特定の社会的人口集団,すなわち,少数民族や宗教的人口集団等の空間的分布形態を取り扱った研究が,英語圏の国々の都市地理学や社会地理学の分野で,相当の蓄積を見るようになって久しい.一方,各種の人口集団を総合的に取り扱った研究,たとえば,各民族間における空間的分布パターンの相応関係についての研究などは,現在のところ,著しく少ない.また,ある特定の少数民族について,あるいは,少数民族と多数民族など2, 3の人口集団の比較について検討したものは多いが,調査地域におけるほぼ全人口の空間的パターンを考慮した調査はほぼ皆無である,これは,資料の入手が困難であることと,対象の複雑性に起因すると推察される. そこで筆者は,アメリカ合衆国本土で,最も長い歴史を持つ日本人街の形成をみ,多くの民族集団が居住し,さらに,それらの民族について比較的詳細な資料の整っているサンフランシスコ市を調査対象地域とし,本稿の前半で,各民族集団の居住に関する集中度の測定とその比較,後半で,スペアマン(Spearman)の順位相関係数を用いて,各民族集団間の居住相応関係の解明を試みた. 居住に関する集中度の測定については,立地係数(Location Quotient),ローレンツ曲線比較,および集中指数(Index of Concentration)を用いた.最初の2指標は,各民族集団の居住パターンの概観的な情報を提供するが,民族間の厳密な比較において困難があった.そこで,集中指数を用いて,日系人を含めた7民族について,居住の集中性を判定した,緒果として,黒人,中国系アメリカ人が最も集中した分布パターンを示していること,市内の最大人口集団である白人のそれは,当然のことながら,市人口全体の分布パターンに最も近似していること,その他の少数民族は,この両グループの中間に位置しているが,日系人,アメリカン・インディアン,ラテン系,フィリピン系アメリカ人の順に,居住の集中度が高いことなどが判明した. この研究の主要目的である居住パターンの相応関係については,次のような,三つの関係が指摘される. 1) 日系と中国系アメリカ人の居住パターンは,他の民族の居住パターンの影響を比較的受けていないのに対し,白人,黒人,ラテン系,フィリピン系アメリカ人,およびアメリカン・インディアンの居住パターンは,他の民族の居住パターンに強く影響されている. 2) アメリカン・インディアン,ラテン系,フィリピン系アメリカ人の居往パターンは,相互に非常に強い正の相関関係を示し,これに黒人を含めて,正の居住相応関係を相互に示すグループを形成している.一方,日系人と白人,日系人と中国系アメリカ人の間にも正の相関関係が見られ,結果として,日系,中国系アメリカ人,白人の3民族が,もう一つの正の居住相応関係を示すグループを形成している.なお,白人と正の居住相応関係を示すのは,日系人だけである. 3) 上記の二つのグループの間には,強い負の居住相応関係が存在している.すなわち,アメリカン・インディアン,ラテン系,フィリピン系アメリカ人および黒人は,白人,中国系アメリカ人とは,一緒に居住しない傾向が認められる.ただし,日系人の居住パターンは,他めどのグループとも,統計的に有意な水準での負の相応関係を示さない.
著者
YAMASHITA Akio HATA Tsukasa
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan series B (ISSN:18834396)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.1-17, 2021-07-31 (Released:2021-08-03)
参考文献数
21
被引用文献数
4

This study intended to consider the sustainability of irrigation fruit farming in terms of water supply-demand situation from the viewpoint of tolerance to drought events in Petrolina and its surrounding area in Brazil, where large-scale irrigation projects have been developed for semi-arid regions. Based on the field survey, we analyzed the actual situations of water intake and distribution on the water supply side and irrigation agriculture on the water demand side. The decrease in water resources in this region in recent years has been dramatic. However, this study revealed that the irrigation fruit farming in this region has managed to sustain itself without decreasing the area of cultivation and the harvest of produce even under the water shortage scenario of recent years. The biggest reason for this is the introduction of water-saving irrigation systems in this region in the late 1980s and the spread of these systems among most of the farmers in the region today. Meanwhile, there is also another issue unique to the region; the electricity cost has soared in the event of drought because the region relies on obtaining most of its electricity from hydroelectric power generation. It can be said that irrigation fruit farming in this region carries the dual risk of irrigation water shortage: the direct risk of irrigation water shortage due to recent continuing water scarcity and the indirect risk of insufficient irrigation water due to the restriction of irrigation facility operation with electricity shortage and soaring electricity costs caused by the shortage of power generation water.
著者
新井 正 高山 茂美 高村 弘毅 関根 清 立石 由巳 小林 徹 庄田 正宏
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.412-417, 1975-06-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
6
被引用文献数
1

Geographical distribution and time variation of atmospheric carbon-dioxide in and around Tokyo were investigated. The instrument used in this survey is an ASSA-1 infrared analyzer (0_??_1000 ppm, CO2). The sampling and analyzing systems are illustrated in Fig. 1. Special attentions are taken to eliminate dust and water vapor in the atmosphere by use of a precipitation bottle and a hand-made condenser. Geographical distributions of CO2 are shown in Fig. 2. Fig. 2-A shows the change of CO2 off coast of Tokyo, and Figs. 2-B and C are the distributions in and around Tokyo. The influence of CO2 originated from Tokyo and its vicinity extends more than 100km. Several examples of the diurnal variation of CO2 at Rissyo University (Shinagawa-ku, Tokyo) are shown in Fig. 3. Daily maximum concentration of CO2 usually exceeds 500ppm and sometimes it reaches about 660ppm. These extreme values are observed under a calm and inversion condition, particularly in the colder seasons. In Fig. 4, the seasonal variation of CO2 at Rissyo University, both monthly mean value (circle) and monthly range, is illustrated. The concentration reaches its minimum in summer when combustion of fuel is less than other seasons and photosynthesis of plant is more active. The maximum value is observed in winter, and the extreme maximum is observed under a calm and inversion condition. The winter minimum does not differ largely from that in summer, because strong winter monsoon eliminates high concentration. The annual mean value during 1972_??_1973 is about 350ppm, which exceeds the world average by 25ppm.
著者
北島 晴美
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.31, 2014 (Released:2014-10-01)
被引用文献数
1

1.はじめに 2012年の死亡数は,悪性新生物,心疾患,肺炎,脳血管疾患,老衰の順に多い。高齢化の進行とともに,死因の順位も変化している。老衰を死因とする死亡者は,ほぼ60歳以上に限定され,高齢になるほど老衰を死因とする比率が高くなる。年齢階級別にみると,老衰は95~99歳の死因第2位,100歳以上の死因第1位であり(2012年),これまでの死因の年次推移からみて,今後,高齢化が進行すると,老衰による死亡の比率は現在よりもさらに上昇すると予測される。 発表者らは,高齢者死亡率の季節変化に関して,全国,都道府県別に調べ,全死因,心疾患,脳血管疾患,肺炎死亡率は,夏季に低く冬季に高い傾向を確認した(北島・太田,2011,2013,など)。 本研究では,老衰による死亡数の推移,死亡率の季節変化について,最近の傾向を年齢階級別に調べ,高齢者の中でも,若い層とより高齢な層では,どのような違いがみられるのかを検討した。2.研究方法 使用した死亡数データは,人口動態統計(確定数)(厚生労働省)である。死亡数が多い75~84歳,85~94歳,95歳以上の3年齢階級を対象とし,季節変化を見るために,各年齢階級の毎月の死亡率を算出した。北島・太田(2011)と同様に,各月死亡率は,1日当り,人口10万人対として算出した。人口は各年10月1日現在推計人口(日本人人口)(総務省統計局)を使用した。3.老衰死亡数の推移 2000年以降の,全国の全死因による死亡数が増加傾向にあるのと調和的に,老衰による死亡数も増加している。高齢人口が増加したことを反映したと考えられる。2000年代後半から,増加が加速し,85~99歳で顕著に増えている。10歳階級別では,最も老衰死亡数が多いのは,85~94歳,次いで,95歳以上,75~84歳である。4.老衰死亡割合の推移 75~84歳,85~94歳,95歳以上の年齢階級において,老衰死亡割合(老衰死亡数が全死亡数に占める割合)は,2000年以降では,75~84歳はほとんど変化がない。2000年代後半から,85~94歳はやや増加,95歳以上では増加傾向が見られる。95歳以上の老衰による死亡割合は,2005年には15.3%であったが,2012年には21.3%となり,5人に1人は老衰で死亡している。5.老衰死亡率の季節変化 2009~2012年の年齢階級毎の老衰死亡率は,冬季に高く夏季に低い傾向が見られる(図1)。年齢階級が上がるほど,死亡率の季節変化が顕著になる。75~84歳老衰死亡率の,季節変化は微少である。4年間のデータでは,85~94歳,95歳以上の老衰死亡率は,6月に最も低く,12月に最も高い。
著者
Raelyn Lolohea 'ESAU
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.352-367, 2004-04-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
81
被引用文献数
1 2

The purpose of this study is to examine socio-cultural aspects of international migration from Tonga and its impact based on the behavioral approach, which has thus far been neglected in existing literature associated with the country's migration. An interview and questionnaire survey of 150 households from the three island groups in Tonga was conducted. As a result, the following findings were obtained. Household size has recently decreased due to transformation from the extended family to the nuclear family and emigration from Tonga. Consequently, the number of migrants per household is larger than before. The individual or nuclear family rather than the extended family plays a greater role in migration decisionmaking now. With respect to the reason for migration, an increasing motivation to migrate for study abroad since the 1990s is remarkable. Reliance on remittance is not significant partially due to the increase in student migration. Furthermore, there is an obvious tendency for migrants to marry persons with Tongan nationality, and, thus, they are quite likely to settle in their host countries and not return to Tonga.
著者
北島 晴美 太田 節子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100141, 2011 (Released:2011-11-22)

1.はじめに日本では,1966年に死亡数が最少の670,342人となった。その後,高齢化の進行とともに死亡数が増加 し,粗死亡率も1979年に最低値6.0(人口1000対)を記録したが,その後は上昇傾向にある。一方,年齢調整死亡率は,粗死亡率が上昇に転じた後も低下傾向にある。粗死亡率の上昇は,老年人口の増加,年少人口の減少により,人口構成が変化し,死亡数が増えたことに起因する。今後,さらに高齢化が進行し,粗死亡率の上昇傾向も継続し,医療費や社会福祉など様々な分野での対応が急務とされる。本研究では,高齢者(65歳以上)の月別,年齢階級別,死因別の死亡について特徴を把握した。2.研究方法使用したデータは,2001~2009年人口動態統計年報(確定数),2010年人口動態統計月報(概数)(厚生労働省)である。月別死亡率の季節変化,年次推移を把握するために,1日当り,人口10万人対の死亡率を算出し,月別日数,閏年の日数の違いによる影響を除去した。また,各年の月別死亡率は,推計人口(各年10月1日現在,日本人人口)(総務省統計局)を用いて算出した。高齢者死亡率は,65歳以上と,65~74歳,75~84歳,85歳以上の年齢階級に分割したものを検討した。3.月別死亡率の変化傾向総死亡(全年齢階級,全死因)の月別死亡率は,2001~2010年において,いずれの月も変動しながら上昇傾向にあり,死亡率は冬季に高く夏季に低い(厚生労働省,2006,北島・太田,2011)。高齢者の場合も,65~74歳(図1),75~84歳,85歳以上の年齢階級のいずれにおいても,月別死亡率は,冬季に高く夏季に低い傾向がある。2001~2010年の10年間の月別死亡率年次推移は, 65~74歳(図1),75~84歳では,いずれの月の死亡率も,次第に低下する傾向が見られる。85歳以上の死亡率は,年による変動が大きい。4.4大死因別死亡率の季節変化2009年確定数による,65歳以上,各月,4大死因別死亡率は,悪性新生物には季節変化が見られないが,心疾患,脳血管疾患,肺炎の死亡率は,いずれも冬季に高く夏季に低い傾向がある。冬と夏の死亡率比(65歳以上,最高死亡率(1月)/最低死亡率(7月または8月))は,心疾患1.7,脳血管疾患1.4,肺炎1.6である。
著者
淡野 明彦
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.498-510, 1974-08-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

今日,私鉄資本は単なる鉄道業としてにとどまらず,観光・娯楽・流通・不動産といった第三次産業のあらゆる分野にまで手を拡げ,「私鉄コンツェルン」とよばれるまでに肥大化した.私鉄資本がマーケットを拡大する場合には,工業資本が新しい工場の新設という形をとるのと同様に,鉄道やバス路線の新設といった形をとって新たな地域に進出し,その進出意図にかなったように地域を変容させていく. 本稿では西武鉄道が西武秩父線を建設して秩父地方に進出していった事例をとりあげ,この路線の建設を通しての私鉄資本の進出が秩父地方をどのように変容させていったかを明らかにすることを目的とした.西武鉄道が西武秩父線建設においてめざしたのは,秩父地方の観光開発と天然資源開発であったため,この両面から秩父地方の変容をおさえていった.緒果として,西武秩父線は私鉄資本とセメント資本の中央から地'方へのパイプの役割を果し,「観光の秩父」「セメントの秩父」の性格がさらに強化されていく実態が把握された.
著者
木田 仁廣 川東 正幸
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100307, 2015 (Released:2015-04-13)

はじめに 都市域では、土壌は劇的に人間によって改変される。都市土壌の特徴として、圧密による硬度の増加や、水分および養分供給の低下、高いpHや有機物含量の低さなどが指摘されている。また、人間による土壌改変の一例である土壌被覆は、都市生態系内の土壌機能に太陽放射吸収量や水の浸透量低下や表面流去水の増加、ガス交換の妨害、植生被覆の欠如といった負の影響を与える。このように都市化は様々な悪影響を生態系に与えるが、人間に対して快適で便利な居住地を供給するために、都市面積は拡大し続けている。輸送手段の確保やインフラストラクチャーの整備のため、道路の建設は都市の発展には不可欠である。都市の拡大により道路面積は拡大しており、その舗装形態も様々である。土壌は地上と地下の物質循環において重要な役割を果たしており、舗装は土壌を介した物質循環と土壌機能に影響を及ぼす。そして、この影響により特有の土壌が生成されていくと考えられる。そこで、本研究はアスファルト舗装による鉱質土壌への影響とそれにより引き起こされる土壌生成作用を明らかにし、その土壌生成過程を論じることを目的とした。 調査地と研究方法 一般的なアスファルト舗装の構造は、不透水性のアスファルトと砕石の混合物であるアスファルト表層と基層、および支持力の大きい良質な材料である砕石を用いた砕石層で構成される。砕石層は石灰での安定化処理や時としてリサイクル材のセメント、コンクリートを混ぜた上層路盤と支持力の小さい安価な材料を用いる下層路盤から成る。さらに、路盤下1mが舗装時に支持力を要求される鉱質土壌部分であり、路床と呼ばれる。また、交通量の少ない車道や歩道にはアスファルト基層を設けず、路盤も1層のみの簡易舗装を施す場合もあり、舗装の厚さは交通荷重、路床強度により決定される。調査地点は道路密度データをもとに被覆率の異なる地点を選択した。東京都八王子市の散田町、石川町、南大沢、東京都町田市の図師と山崎、神奈川県相模原市緑区の合計6地点で調査を行った。アスファルト舗装の断面はアスファルト層、砕石層(路盤)、鉱質土壌上層(路床)、鉱質土壌下層(路床)に分けた。鉱質土壌はレキ含量を元に層位分けし、層位ごとに試料を採取した。対照試料として近隣の未舗装土壌の試料も採取した。 新設舗装の試料は道路建設工事(散田町)や下水道管交換(石川町)時の道路復旧用の材料から採取した。試料採取地点は南大沢を除いて土壌図で黒ボク土の分布域に位置し、南大沢は周囲に黒ボク土が分布する人工改変土に位置していた。 採取した試料のレキ含量、pH、電気伝導度、元素組成、全炭素、全窒素、全硫黄、無機態炭素含量、炭素安定同位体比及び非晶質のアルミニウム、鉄含量を測定した 結果と考察 南大沢以外の鉱質土壌下層の主な化学性は対照の未舗装土壌および関東の黒ボク土の化学性と類似性が認められた。但し、電気伝導度は舗装下の鉱質土壌下層では未舗装土壌に比べ有意に高く、舗装による影響と考えられた。鉱質土壌上層は鉱質土壌下層と比べて高い電気伝導度、pH、カルシウム含量、無機態炭素含量と低い非晶質のアルミニウムと鉄含量に特徴づけられていた。砕石層は鉱質土壌上層に比べ高い電気伝導度、pH、カルシウム含量および無機態炭素含量を示しており、非晶質のアルミニウム、鉄はほとんど含まれていなかった。アスファルト層はpH、カルシウム含量、無機態炭素含量は高く、電気伝導度は低く、砕石層と同様に非晶質のアルミニウム、鉄はほとんど含まれていなかった。炭素安定同位体比は新設舗装の砕石層が最も高く、その下の鉱質土壌層は深くなるにつれて、未舗装土壌の値に収束した。 本研究の結果から、アスファルト舗装は鉱質土壌に対し新規舗装材料としてカルシウムの供給、上層への異質物質混合、無機態炭素集積、アルカリ化、水溶性塩類供給の作用を引き起こしていると推測された。また、散田町の新規舗装断面とその他の数十年に及ぶ時間を経過した古い舗装断面との比較から、電気伝導度、Ca含量、pH、無機態炭素含量はカルシウムの水溶性成分溶脱により、低くなることが示唆された。 本研究で示唆されたアスファルト舗装による土壌生成作用はほとんどの道路において生じると考えられ、舗装形態や舗装厚、舗装経過年数、表面状態、交通量、微地形、基盤土壌などの影響により、舗装下の土壌生成過程は変化すると予測される。また、土地の再開発や道路舗装下のインフラの維持管理、道路補修などによる張替工事により、新規舗装材料が再度供給される。道路舗装下の土壌の特徴と道路の状態やその地点の属性、工事頻度などの土地利用状況の関係を整理することにより、都市化による土地被覆が引き起こす環境変遷を土壌の観点から捉えることが可能であると考えられた。
著者
佐々木 彦一郎
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.504-524, 1935-06-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
13
著者
目黒 潮
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.61, 2005 (Released:2005-11-30)

1.はじめに茨城県東茨城郡大洗町(以下,大洗町)は水産加工業が多く立地する地域であるが,近年の小売価格の変遷に伴う賃金の低下によって労働力不足がすすんでいる.このため労働者の確保が困難になった各水産加工会社は,雇用対策として外国人労働者を雇うようになった.その結果,経営難のため倒産する企業が増える一方,大洗町の水産加工業の従業員数は増加傾向にある.2.大洗町の外国人労働者とその国籍および就業職種大洗町の外国人登録者数は1980年以降,急激な増加を示している.2004年1月現在の外国人登録者数は,大洗町の日本人数19,623人に対し,904人であり,国籍別に外国人登録者数を見ると,インドネシア人(444人),中国人(133人),フィリピン人(132人),タイ人(57人),ブラジル人(33人)の順に多い.特にインドネシア人は,北スラウェシ州の出身者であるミナハサ族がほとんどを占めるという点で特徴的である.彼らの流入期は,大きく三つに分けることができる. 第1期: 不法就労者の流入(1980年 ? )1980年代後期,大洗町の水産加工業に就労していた在留外国人はイラン人が中心であったが,1990年代半ばになると,タイ人,フィリピン人の不法滞在者が増加した.しかし1996年になると,各水産加工会社が不法就労助長罪で送検されるようになり,それ以降,不法就労者は減少した. また,1980年代頃から,ある日本人船員と結婚していた北スラウェシ州ビトゥンの女性が,インドネシア人の家族を大洗町の各水産加工会社に紹介していたため,インドネシア人の不法就労者の流入も始まっていた.インドネシア人はその後徐々に増加し,同郷会や教会などのコミュニティを形成するようになった.これらの名簿から延べ人数を推計すると,最多時の2001年当事にはインドネシア人だけで1000人以上が大洗町に居住していたと推定される. 第2期: 日系人の流入(1991年 ? ) 1991年以降,一部の水産加工会社は改正施行された入管法の影響を受け,当事急増していた南米日系人の雇用も行っていた.しかし,南米日系人は業務請負会社を経由して就労するため、高額のマージンが取られるという結果をもたらした.その後,ある水産加工会社の関係者が,インドネシアの北スラウェシ州に日系人が多く居住するという情報を得て,各企業の要請に応じて彼ら紹介することで,雇用の合法化を試みた.1998年から2005年までに,北スラウェシ出身の日系人約180人が,大洗町の企業約20社に就労している.彼らの多くは,周辺の他産業に従事するようになった不法滞在者とも交流を持っている場合が多い. 第3期: 中国人研修生の流入(2003 年? ) 1991年に改正施行された外国人労働者の研修・技能実習制度は,海外への技術移転と同時に,二本の中小企業の雇用対策という,二つの側面を持つ.大洗町では同制度の拡大に応じて,2003年から本格的に中国人研修生を導入するようになった.研修生は二つの団体を経由して受け入れられ,18社に入っている.今後,大洗町では他地域の製造業と同様,徐々に研修生・技能実習生を増加させていく可能性が示唆される.ただしインドネシア人については,不法就労者雇用の経歴を持つ大洗町の水産加工会社に対して研修期間の許可が下りず,難航している.3.大洗町におけるインドネシア人の就業とコミュニティ 不法就労者,日系人,研修生・技能実習生という3つのタイプの外国人労働者の中で最大数を示すインドネシア人は,以下のようなエスニック・コミュニティを形成した. 教会:宗教行事や生活支援,指導などを行う. ● インドネシア福音超教派教会(G_(企)_J) ● 日本福音キリスト教会(GMIM) ● インドネシア・フルゴスペル教団(GISI) ● カソリック 同郷会:仲間同士の相談を行い,葬祭時の費用を出す. ● Langoan ● Kawangkoan ● Kiawa ● Karegesan ● Tomohon ● Sonder ● Sumonder ● Tondono ● Tumpa Lembean 大洗町の行政当局は不法就労者の増加を恐れ,外国人に対する支援策が十分ではない。そのためこれらのコミュニティが彼らの生活に関して指導的な役割を担っているだけでなく,大洗町の水産加工会社と提携してインドネシア人労働者の指導に関わるようになってきている. 本研究でとりあげた事例に見られるシステムは,移民政策や移民産業によって移住労働者の職種や居住を自由自在にコントロールするというトップダウン式のものではない.むしろ,移住労働者のコミュニティと地域産業が自発的に提携し展開していく,ボトムアップ型の事例である.特に,そのコミュニティに対して,民族意識や宗教組織が重要な役割を果たしているという点で特徴的である.このような就労基盤は,今後の移住労働者研究における重要な素材であるといえよう。
著者
森 正人
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.1-27, 2005-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
117
被引用文献数
1 2

本稿は,「節合」という概念を手掛かりとして, 1934年の弘法大師1100年御遠忌で開催された「弘法大師文化展覧会」を中心として,弘法大師が日本文化と節合され,展示を通して人々に広められる過程を追う.この展覧会は,戦時体制に協力する大阪朝日新聞と御遠忌を迎えた真言宗による「弘法大師文化宣揚会」が開催したものであった.この展示には天皇制イデオロギーを表象する国宝や重要文化財が,弘法大師にも関係するとして展示された.また展示会場は近畿圏の会館や百貨店であり,特に百貨店では都市に居住する広い階層の人々に対して,わかりやすい展示が試みられた.このような種別的な場所での諸実践を通して国民国家の維持が図られた.ただし会場を訪れた人々は,イデオロギーの中に完全に取り込まれてしまうのではなく,それを「見物」したり,娯楽としてみなしたりする可能性も胚胎していた.
著者
山崎 憲治
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.623-634, 1979-11-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
17
被引用文献数
1

With the concentration of population in cities in 1960's, there have been drastic but chaotic conversions of agricultural land to urban uses in the suburban areas. This trend brought about the destruction of traditional functions of paddy fields, upland feuds, and coppices, which prevented the occurrence of floods, and the area has come to suffer from a flood even with a small rain shower.In this paper, the writer studies the class differentiation of farmers in relation to conversion of land and ownership in the Kurome River Basin, Niiza City, Saitama Prefecture. This area is often inundated with water. As a result of my interview investigation of twenty farmers in the district of Horinouchi, where the Kurome River has frequently overflowed, the following tendencies were recognized: 1) The area subject to flood, has extended year by year. But farmhouses did not suffer from a flood because they were on a little higher grounds. 2) The conversion of the land use in this area caused the frequent floods but there seems to be a background that the farmers are less concerned about the water and irrigation canals they have been using, as they tend to specialize in producing only vegetables. 3) The buyers of the farmland are mainly these three: public enterprises, real estate sub-dividers, and individuals. The public works such as municipal roads and Kan-Etsu Expressway construction, and river conservation made the land price high and led to the con-version of farmland. Since 1967, the parcels of paddy fields which they had been frequently flooded, were converted into subdivisions. Since early 1960's individuals who wanted residential lots have bought many but small parcels where open field vegetables such as carrots were cultivated. 4) The farmers that obtained funds from disposing their farmlands and reinvested in agricultural sectors such as carrot production and hog raising made themselves owner farmers. But, the farmers that spent the funds on their living or rental houses construction turned to be part time farmers who cultivate vegetables for their own consumption. In this district where farmers have given up rice production and tend to specializein vegetables like carrots, as the urbanization is sprawling, the class differentiation of farmers is determined by both the type of disposal of farmlands (such as its time, scope, destination, and price) and the number of family members engaging in farming. This class differentiation is transitional and it will be surely intensified by the circumstances that are getting worse for agriculture.
著者
石黒 聡士 山田 勝雅 山北 剛久 山野 博哉 松永 恒雄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.253, 2013 (Released:2013-09-04)

1.はじめに浅海域の生態系や水環境の動態を推し量るうえで、生物群の生息場の役割を果たす海草・海藻類をはじめとする海中基質の分布を正確に把握することが重要である。海藻・海草類をはじめとする海中基質の分布調査は潜行による直接調査のほかに、航空写真や衛星画像等の画像を用いた教師付分類手法など、リモートセンシングによる分布の傾向の把握手法が提案されている。しかし,水域の画像解析による基質の把握は,陸域のそれとは異なり、色調の変化が水深に大きく拘束されるため,色調変化の補正が必須となる。特に、船舶が侵入できない浅海域においては正確な水深を面的に効率よく計測することが困難であるため、水深による色調の補正が難しく、従来は水深による色調の変化が誤分類の大きな要因となっていた。国立環境研究所は平成24年11月から12月にかけて東北沿岸の一部において航空機搭載型ライダ(LiDAR)による測深を実施した。本研究では、航空機搭載型測深LiDARにより得られた細密な海底地形を用いて航空写真の色調を補正し、浅海底の被覆分類を試みたので報告する。本研究は平成24年度補正予算、独立行政法人産業技術総合研究所「巨大地震・津波災害に伴う複合地質リスク評価」事業の一部として実施されている。2.航空機搭載型測深LiDAR航空機搭載型測深LiDARは緑色の波長(532nm)のレーザを海面に照射して海底面からの反射をとらえることにより海底地形を計測する技術である。航空機はGPS/IMUを搭載しており、レーザ照射時刻と反射波の時間差から、反射地点の3次元座標が決定される。このときの座標系はWGS84に準拠しており、鉛直方向は楕円体高である。したがって、データ取得後にジオイド高補正し標高を算出する。これにより従来は効率的な海底地形計測が困難であった水深0m~十数mの浅海域において、面的に効率よく計測することが可能である。このシステムを固定翼機(セスナ208)に搭載し、レーザ照射による人体への影響を考慮した安全高度を維持して観測飛行を行う。このシステムは各点における反射波形を記録している。さらに、観測飛行中に毎秒1枚の8ビットRGB画像を撮影するカメラ(RedLake)を搭載している。このカメラの解像度は1600×1200画素で地上分解能は約0.4m/画素(飛行高度3000 ft時)である。なお、観測飛行は中日本航空株式会社によって実施された。3.対象地域と計測および分類手法本研究の対象地域は岩手県山田湾の小島周辺である。この地域は平成23年東日本大震災の前から現地調査が続けられている。震災により東北の多くの湾内で藻場が消失するなどの環境変化が起こった中にあって、震災後も藻場が消失することなく分布していることが確認されており、浅海域の生態系や水環境の動態を理解する上で貴重なサイトである。当該地域の観測は平成24年11月30日に実施された。観測結果(水深データによる陰影図およびRedLake画像)を図1に示す。本研究ではまず、1)RedLake画像を用いた教師付分類法による底質分類、2)細密水深データによる色調補正を施した画像を用いた教師付分類法による底質分類を実施する。2)の色調補正はdark pixel法による大気補正をした上で、Yamano and Tamura (2004)による手法を用いて水深による色調補正を行う。なお、本研究で使用した画像と水深のデータから簡易的に推定したR,G,Bの減衰パターンを図2に、また、これによって色調補正した結果を図3に示す。これらによって得られた画像を用いた分類結果を、現地調査によるグラウンドトゥルースと比較することにより評価する。現地調査は2012年10月に実施した。4.結果と今後の計画本研究では細密な浅海海底地形データを用いて航空写真の色調を補正して分類を行った。その結果、補正前の画像に比べて誤分類の確率が減少することを確認した。今後、色調補正の手法を精緻化することにより、さらに正確な分類が可能になること考えられる。また、航空写真の画像判読と現地調査結果および細密海底地形データの範読から、局所的に凹凸が激しい領域が藻場である可能性が高いことが分かった。今後、地形の凹凸度合いを指標化し、新たな画層としてRGBに追加して教師付分類や、各点で記録された反射波形を指標として考慮した分類手法を試みる予定である。参考文献Yamano, H. and Tamura, M. 2004. Detection limits of coral reef bleaching by satellite remote sensing: Simulation and data analysis. Remote Sensing of Environment 90: 86–103.
著者
杉浦 芳夫
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.566-587, 2006-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
83
被引用文献数
1 3

本稿では,オランダのアイセル湖ポルダ-における集落配置計画と中心地理論との関係を,文献研究を通して考察した.四つの干拓地のうち,当初の集落配置プランに中心地理論がヒントを与えた可能性があるのは北東ポルダーであり,その場合,形態論的側面にだけ限定すれば, Howard(1898)の田園都市論を媒介にしている可能性がある.東フレーフォラントと南フレーフォラントについては,上位ランクの集落配置は,考え方の点で,明らかに中心地理論の影響を受けているTakes(1948)の研究『本土と干拓地の人ロ中心』に基づいてなされた.東フレーフォラントの下位ランクの集落配置については,都市的生活を指向し,車社会に移行しつつあった当時のオランダ農村事情に通じていた社会地理学者らめ意見に基づき,中心地理論が厳密に応用されることなく行われた.ポルダー関連事業で活躍したこれらオランダの社会地耀学者の調査研究成果は,中心地理論研究史の中でも評価されて然るべき内容のものである.
著者
Rosalia AVILA-TAPIES
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan series B (ISSN:18834396)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.47-65, 2016-09-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
72

The formation of the Japanese colonial empire entailed major population movements and important socio-economic and territorial impacts in East Asia. These were particularly relevant in Manchuria, where important Japanese immigration also occurred, especially after the establishment of Japanese-sponsored Manchukuo in 1932. This paper focuses on the location of co-ethnic concentrations of the four major population groups of immigrant background in Manchukuo. The aim of the study is to re-examine the reality of Manchukuo’s inclusive ideology of ethnic harmony and the blurring of ethnic borders from a spatial viewpoint. The location of co-ethnic concentrations of Han Chinese, Koreans, Japanese and Russians was identified by calculating the Location Quotients for each group at national and urban (Mukden’s railway town) scales. The results were mapped, showing uneven ethnic distributions and concentrations at both scales. This analysis confirmed the existence of clusters of affluent co-ethnic concentrations in Manchukuo, including some recent concentrations, such as the Japanese deliberate segregation in the North Manchuria countryside and in the Mukden railway town. Thus, the inclusive ideology of the new State coexisted, paradoxically, with high levels of co-ethnic spatial concentrations. This occurred not only because of group interest in achieving community cohesion, but also because of exclusions and restrictions resulting from official segregationist settlement policies. According to the results of the spatial analysis, the article concludes that Manchukuo’s utopian ideals of equal coexistence and concord among all ethnicities were not realized.
著者
HASHIMOTO Akiko
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan series B (ISSN:18834396)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.47-64, 2014-08-29 (Released:2014-10-03)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

The activity of peddlers and the characteristics of peddlers’ village were analyzed, and the present status of the peddling activities and the features of the peddler’s village were clarified. Discussion focused on the factors of why peddling activities continue today in Kamigamo district, Kyoto. The characteristics of peddling activities in Kamigamo district were: 1) Peddling is mainly carried out by women, and agricultural work is done by their husbands. Both the peddlers and customers pass their work on to their daughters-in-law, making it difficult for men to participate. 2) Peddling activities were important to complement the income from rice farming as the peddlers could get money immediately. 3) Peddling is a single-day activity. The peddling activities in the suburban areas involved production activities in residential areas. 4) A relationship of trust is established between the peddlers and their customers beyond the commercial act. The characteristics of agriculture in Kamigamo district were: 1) Considering the fact that Kamigamo district is a suburban area of Kyoto, the farmlands owned by the peddlers are small. Small amounts of various vegetables are grown. 2) The peddling farmers grow various traditional vegetables. The factors contributing to the continued peddling activities are: the peddling farmers maintain small farmlands and continue their agricultural work while urban land use has expanded; and the traditional vegetables that the peddling farmers grow are closely connected to the daily food of ordinary local people.
著者
森川 洋
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.503-524, 2007-08-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
32

メクレンブルク・フォアポメルン州では職員過剰の現状と将来の人口減少予測や東ドイツ支援資金の廃止予定により, 郡の機能改革だけでなく地域改革をも含めた「行政近代化計画」が進行している. 州は職員支出を抑えるために多くの州職員を郡に移管するので, その受入れのためには, 郡の合併と特別市の郡復帰によって, 面積3,200~7,000km2からなる広域郡を形成する予定である. それは自治体自治の強化を無視し, 規模の経済による行政の合理化だけを意図した改革であり, 基本法や制度法に抵触するといわれ, 郡も特別市も市町村やアムトもこの改革に反対している. この「行政近代化計画」においては, 改革費用の問題をはじめ, 公聴会の開催や現行制度に対する「欠陥分析」, 改革頻度などの問題が取り上げられた. 政治的決着による五つの広域郡についても, 役場の距離や郡域の均等発展のほか, 特別市の郡復帰に伴う問題点, さらには空間整備計画との関係などが論議された. 将来この改革が法的に承認されたとしても, 新連邦州のすべてが本州と同じ道を歩むとはいえないであろう. 本稿の目的は, この「行政近代化計画」を通してドイツにおける行政システムの問題点を検討することにある.
著者
石川 菜央
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.638-659, 2008-11-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
51
被引用文献数
3 4

本研究の目的は, 闘牛開催地が全国的に担い手不足に悩む中, 徳之島において闘牛が盛んに行われ, 若い後継者が続々と現れている要因を解明することである. 具体的には, 闘牛大会の運営方法, 後継者を生み出す仕組み, 担い手にとっての意義の3点に着目し, 娯楽の側面, 行事をめぐる対立, 女性の役割を踏まえなら分析した. その結果, (1) 島内からの多数の観客が大会を興行として成り立たせ, 行政の支援や観光化なしでの運営を可能にしていること, (2) 牛舎が若者を教育する場になる上, 大会での応援を通して牛主以外の多くの人々が闘牛に関わること, (3) 親しい人物のウシとは取組を避け, 取組相手とも友人関係を築く切替えの早さを前提に, ウシの勝敗が日常の社会的評価とは異なる価値基準として島内で確立していることを指摘できた. 担い手は, このような闘牛に強い愛着を持っており, 島に住み続ける大きな動機にもなっている.
著者
Ren'ya SATO
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.349-360, 2008-05-31 (Released:2010-03-12)
参考文献数
119
被引用文献数
1

This paper reviews the major researches on African area studies conducted during the past 20 years by Japanese geographers. Mainly three major trends are reviewed and examined to find common interests and future directions: (1) Studies by physical geographers on late Quaternary environmental history, physical as well as anthropogenic impact on formation or change of landscape, and human response to currently changing environment, (2) Studies on subsistence economy, technology and strategy of local people including concerns of interaction among local groups and historical dynamics, (3) Political economy and political ecology that focus on coping behaviors and strategies of various actors in rural as well as urban areas with unstable environment stemming from global or national political economy.
著者
Toshio KIKUCHI
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.336-348, 2008-05-31 (Released:2010-03-12)
参考文献数
22
被引用文献数
4 6

In this paper we point to “rurality” as an option within “urbanity” in the urban fringe of the Tokyo metropolitan area as well as discuss some ways for recreating rurality and a mechanism for restructuring it within a sustainable rural system. Rural and urban residents have been mixed in the urban fringe, and rurality has been diminishing with the increasing number of urbanites and the decreasing amount of rural land use. In some parts of the urban fringe, however, a sustainable rural system has been restructured through the establishment of farm shops, social networks, and activities connected to the conservation of forestland. These functions as a node to connect rurality with urbanity, and reinforcing this connection over time has led to the development of a sustainable rural system that comprehensively combined characteristics of rural and urban communities. Explaining how a sustainable rural system is restructured through intertwining rurality and urbanity is an important issue for contemporary geographical studies.