著者
深沢 潔 安藤 弘 中山 孝一 高橋 比路美 新保 敏和
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.31-37, 1987-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
35

NK細胞は生体内で腫瘍細胞やウイルス感染細胞などの破壊に働くと考えられている.したがって, NK細胞も他のリンパ球サブセットと同様に生体内の免疫監視機構の制御を受けていると推察されるので, NK細胞への抑制因子の検討を行った.白血球混合培養(MLC, one-way)の上清中には種々のリンパ球活性に対する抑制因子が含まれているが,培養72時間のMLC上清にNK抑制活性が検出された.この抑制はMLCの反応細胞とautologousなNK細胞に対して,またはallogeneicなNK細胞に対しても同等な活性であった.泌尿器系癌患者から得たMLC上清を健康成人のNK細胞に加えてその影響をみたところ,前立腺癌(M0)と腎癌(M0, M1)でそのNK抑制活性が低下していた.一方,健康成人由来のMLC上清に対する癌患者NK細胞の感受性は膀胱癌,前立腺癌,腎癌のほぼ全例において欠如していた.
著者
近澤 宏明 西谷 皓次 橋本 浩三
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.57-63, 1998-02-28 (Released:2009-02-13)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

症例は46歳女性. 31歳時頃から両眼の異物感,口腔内乾燥感,レイノー現象,多発性関節痛を自覚していた.最近,起立・歩行時のふらつき,発汗異常,顔面や頚部に発作性の紅潮などが出現するため,精査加療目的にて入院となった.入院時検査にて,乾燥性角結膜炎,耳下腺造影にて末梢導管の消失,小唾液腺生検で導管周囲に単核細胞浸潤を認め,抗SS-A抗体が陽性であり,原発性シェーグレン症候群(SjS)と診断した.同時に,感覚優位の多発性単神経炎型の末梢神経障害,起立性低血圧, Adie瞳孔,発汗テストで脊髄髄節に一致する分節性の無汗領域を認めた.本例はSjSに末梢・自律神経障害を伴った稀な一例と考えられた.
著者
戸田 佳孝 竹村 清介 森本 忠信 小川 亮恵
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.44-51, 1997-02-28 (Released:2009-02-13)
参考文献数
18
被引用文献数
3 4

慢性関節リウマチ(以下, RA)患者に対する経口II型コラーゲン(以下, C II)の効果をHLA-DRB 1*0405遺伝子を有する群(0405群)とそれを有しない群(非0405群)に分類して評価した. 38例のRA患者を1日32mgのC IIを含む鶏軟骨スープを3カ月間投与した群(C II群)と,プラセボスープを投与した群(placebo群)に分類した. 0405/C II群は11例, 0405/placebo群は11例,非0405/C II群は9例,非0405/placebo群は9例であった. C II群では, placebo群に比べて,有意に抗ヒトC II IgG抗体値が低下し(p<0.0001),抗ヒトC II IgA抗体値が有意に増加した(p=0.003).腫脹および疼痛関節数の変化は, 0405/C II群と0405/placebo群間(腫脹関節数p=0.03,疼痛p=0.03), 0405/C II群と非0405群/C II群間(腫脹p=0.006,疼痛p=0.01)に有意差があっため, HLA-DRB 1*0405遺伝子陽性の症例では経口C II療法が有効であると結論した.
著者
日高 利彦 針谷 正祥 鈴木 王洋 石塚 俊晶 原 まさ子 川越 光博 中村 治雄
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.203-210, 1991-04-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
22

症例: 27歳,女性.昭和63年9月,紫斑,多関節痛,咳嗽が出現した.平成元年3月症状増悪し,当科に入院となった.入院時,低酸素血症,顕微鏡的血尿,低色素性貧血,高γ-グロブリン血症,低補体価,免疫複合体高値,胸部X線上,両下肺野の網状影を示した.肺機能検査にて閉塞性換気障害,肺拡散能力障害,腎生検にて糸球体への補体,免疫グロブリンの沈着を認めた.また,皮膚生検にてleukocytoclastic vasculitisの所見を得た.過敏性血管炎と診断し,プレドニゾロン60mg/dayの投与を開始したが,肺出血を合併したため,急速な免疫複合体除去を目的として免疫吸着療法を行った.その後,血中免疫複合体の低下と諸症状の改善を認めた.本症のような,免疫複合体高値かつ多臓器障害を伴う過敏性血管炎に対し,免疫吸着療法は有効な補助療法と考えられた.
著者
鈴木 厚 大曾根 康夫 美田 誠二 小花 光夫 松岡 康夫 入交 昭一郎
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.21-29, 1997-02-28 (Released:2009-02-13)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

膠原病,感染症,悪性腫瘍など様々な疾患が不明熱の原因として知られているが,不明熱の中には最後まで診断が不明のままである症例を経験することはけっして希ではない.不明熱における診断不明例,つまり様々な検査をおこなっても最終診断がつかない症例は不明熱患者全体の7~35%を占めるとされ,過去30年の医学の進歩にも関わらず減少していない.今回,われわれは1991年9月より3年間に当院内科に入院した4596例を調査し,ステロイド剤が著効を示した診断不明の不明熱例について検討した.まず4596例の中でPetersdorfの不明熱の定義を満たした症例は25例(0.5%)であった.この25例の中には膠原病6例,感染症5例,悪性新生物2例,その他2例が含まれており,最終診断不明例は10例であった. 10例にはウイルス感染を思わせる自然寛解例が3例,原因不明のまま死亡した例が1例含まれており,残り6例が診断に難渋しながら平均30.8病日目にステロイド剤を投与し発熱の改善を認めた診断不明の不明熱例(steroid responsive undiagnosed fever of unknown origin: SR-FUO)であった. SR-FUOは高熱とともに重症感を認めること,著明な炎症所見を示し各種検査にても原病不明であること,成人発症スチル病やリウマチ性多発筋痛症など既知の疾患を示唆する所見がないこと,発症年齢が58歳から77歳(平均67歳)と高齢であること,抗生剤,抗結核剤,抗真菌剤の投与にて改善がみられないこと,臨床的に非ステロイド性消炎鎮痛剤が無効であること,薬剤によるものを否定し得た症例であること,ステロイド剤の投与により自他覚所見の著明な改善を認めること,ステロイド剤の減量,中止により再発を認めず比較的予後良好であること,などの特徴を有していた.不明熱の診断には医師の診断能力に差があること,安易なステロイド剤の投与は診断をさらに困難にしてしまうこと,感染症が原因である場合症状の悪化をきたすことなどよりステロイド剤の投与は慎重でなければいけない.しかし,不明熱の診断および治療に難渋する症例の中には,既知の疾患では説明のつかないステロイドが著効を呈する疾患群SR-FUOがあると考えられた.
著者
南部 光彦 八田 和大
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.135-140, 2000-04-30 (Released:2009-02-13)
参考文献数
23

高IgM血症,血小板減少症,脾腫を有した1女児例を経験した.フローサイトメーターにて血小板表面にIgG抗体のみならずIgM抗体も検出された.また直接クームス試験は陽性であり,赤血球表面にもIgG抗体が認められた.摘脾により血小板数は正常化し,高IgM血症も改善した.唾液腺生検にて導管周囲にリンパ球の浸潤が確認され,シルマーテストでも軽度ながら涙液の分泌低下がみられ,シェーグレン症候群が潜在している可能性が示唆された.
著者
菅井 進
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-14, 1996-02-29 (Released:2009-02-13)
参考文献数
38
被引用文献数
5 5

全身性エリテマトーデス,慢性関節リウマチなどの全身性自己免疫疾患やSjögren症候群(SS)などの臓器特異的自己免疫疾患に悪性リンパ腫,特にB細胞性リンパ腫が多いことが注目されている. SSにおいてわれわれは種々の方法を組み合わせて検討したところ, 306例の患者の中に61例(20.0%)に単クローン性の非悪性リンパ増殖性病変(LPD)を認め,悪性リンパ腫13例,マクログロブリン血症2例を加えると76例(24.8%)にLPDがみられた.悪性化へ進展する要因として,リウマトイド因子遺伝子Vgなどの活性化やbcl-2プロト癌遺伝子の病変局所での活性化などが重要と考えられる.自己免疫疾患におけるLPDの好発は持続する病変局所での自己免疫反応によるリンパ球分裂がプロト癌遺伝子,癌抑制遺伝子などの種々の遺伝子の異常を引き起こし,これらが積み重なって多段階的に腫瘍化するものと考えられる.
著者
前田 裕弘 松田 光弘 森田 恵 正木 秀幸 白川 親 堀内 房成 小山 敦子 濱崎 浩之 藤本 卓也 入交 清博 堀内 篤
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.118-125, 1993-04-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17

成人T細胞白血病(ATL)患者の血清を健常人の末梢血単核細胞(PBMC)に添加し,そのPBMCのCD 3抗原の発現を観察した. CD 3抗原の発現が低下している急性型ATL患者の血清を添加したときのみ健常人PBMCのCD 3抗原の発現が低下した.しかし, CD 3抗原の発現が正常の慢性型ATL血清では,この現象はみられなかった.同様の結果が細胞培養上清添加時にもみられた.細胞培養上清をSephacryl S-200を用いて分画し,健常人PBMCのCD 3抗原を低下させる活性を分子量40-60 kDの分画に認めた.各種抗サイトカイン抗体を用いた中和実験および各種サイトカイン添加実験より,この可溶性因子が既知のサイトカインとは異なる因子と考えられた.この因子が臨床的に急性型ATLに認められ,くすぶり型および慢性型ATLに認められないことより, crisisに関与している可能性も考えられた.
著者
井上 文彦 古川 裕夫 内野 治人
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.31-36, 1986-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
20

潰瘍性大腸炎患者大腸粘膜におけるラクトフェリンの分布を,螢光抗体法を用いて検討した.また,同時にペルオキシダーゼ染色を施行し,両者の分布を比較した.患者大腸粘膜の内視鏡的正常部では,ラクトフェリン陽性細胞とペルオキシダーゼ陽性細胞は,ともにほとんどみとめられず,内視鏡的境界部では,両者とも散在性にみられ,内視鏡的病変部では,両者とも多数みとめられた.正常対照者大腸粘膜では,両者ともほとんどみとめられなかった.また,ギムザ染色により,ペルオキシダーゼ陽性細胞は好中球であることが強く示唆された.静菌的,殺菌的作用を有する強力な鉄結合性蛋白の1つであるラクトフェリンは,主要な局所粘膜防御因子であるs-IgA系の減少した潰瘍性大腸炎大腸粘膜で,いわば代償的に出現,増加し,局所粘膜における感染防御機構の面において,何らかの意義を有するものと考えられた.
著者
塚本 浩 上田 尚靖 堀内 孝彦
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.361-368, 2011-10-31
参考文献数
24
被引用文献数
2 6

TNF receptor-associated periodic syndrome(TRAPS)は常染色体優性遺伝形式の家族性周期性発熱疾患である.TRAPSではI型TNF受容体(TNFRI)をコードするTNFRSF1A遺伝子について100以上の遺伝子変異が報告されており,かつ浸透率は85%以上と高い.本邦からはC30R, C30S, T61I, C70S, C70G, C88Y, N101Kの7種類の変異が報告されている.変異TNRIは小胞体内に停滞し,ミトコンドリアからの活性酸素産生を介してMAPキナーゼを活性化状態にする.ここに細菌感染等でToll様受容体からのシグナルが付加され,炎症性サイトカイン産生誘導が起こることが本症の病態形成に関与していると考えられている.臨床所見として発熱期間は平均21日間,発熱間隔は1から数ヶ月である.発作期には,発熱と共に,皮疹,筋痛,関節痛,腹痛,漿膜炎,結膜炎,眼窩周囲浮腫などの随伴病変を伴う.治療としては,副腎皮質ステロイド剤とTNF阻害薬エタネルセプトが発作の重症度や発作期間の短縮に有効である.エタネルセプトでは発作頻度も減少するが無効例も存在する.最近では,IL-1受容体拮抗薬アナキンラやIL-6受容体拮抗薬トシリズマブの有効性も報告されている.厚生労働省のTRAPS研究班(代表者:堀内孝彦)は2010年に,本邦のTRAPS患者の病態に即した診断基準を作成するため全国の実態調査を行い,現在遺伝子解析が進行中である<br>
著者
塚原 智英
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.299-299, 2014

癌免疫は,癌に対する免疫応答の理解と癌の免疫制御を目指す学問であり,癌抗原の同定によって飛躍的に発展した.よって癌免疫の理解には癌抗原の理解が重要である.癌免疫の存在は1990年代に自家細胞傷害性T細胞(CTL)クローンに認識されるヒト癌抗原のクローニングにより,主にメラノーマで証明された.これらの発見にはforward immunology approachといわれる腫瘍反応性ヒト自家CTLクローンの樹立とcDNAライブラリ発現クローニング法の開発が大きく貢献した.さらに既知の候補抗原からCTLエピトープを求めるreverse immunology approachも盛んに行われ,メラノーマ以外からも多くの抗原が同定された.これらの知見はペプチドワクチンや抗原特異的リンパ球大量輸注療法の開発につながっている.また昨年は抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体などのチェックポイント抗体による活性化T細胞制御がメラノーマに対して有効性を示して一世を風靡した.チェックポイント抗体がメラノーマでよく効いた理由として(1)癌抗原が皮膚のランゲルハンス細胞に取り込まれてCTLを効率よくプライムできる,(2)高い免疫原性を持つ変異抗原が多く発現してる点が重要と考えられる.今後は高い腫瘍特異性をもち,かつ造腫瘍能を制御する癌の根源に迫る癌抗原の同定が重要となる.また自家CTLが認識する抗原の同定は,時に我々の想像がおよばないようなセレンディピティを与えてくれる.
著者
中嶋 蘭 三森 経世
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.71-76, 2013-04-28
参考文献数
17
被引用文献数
34

抗MDA5抗体は皮膚筋炎特異的抗体であり,同抗体陽性例は筋症状が少なく,高率に急速進行性間質性肺炎を併発し予後不良であること,高フェリチン血症・肝胆道系酵素上昇を伴うなど特徴的な臨床像を呈する.抗MDA5抗体陽性患者と陰性皮膚筋炎患者の治療前血清サイトカインを比較したところ前者では有意にIL-6, IL-18, M-CSF, IL-10が高値を示し,IL-12, IL-22は低値を示した.これらのことから,抗MDA5抗体陽性例においては単球・マクロファージの異常活性化が病態の背景に存在すると考えている.抗MDA5抗体陽性例は一旦酸素投与が必要な呼吸不全状態になると極めて救命率が低いため,診断後可及的速やかに治療介入が必要であると考えられる.ステロイド大量療法・シクロスポリン内服・シクロホスファミド間歇静注療法(IVCY)の3剤を併用した強力免疫抑制レジメンを用いることで,同抗体陽性例の予後が改善した.特に疾患活動性を反映することが報告されている血清フェリチン値は,IVCY投与約2週後に低下する傾向を認め,IVCYが同抗体陽性例の治療においてキードラッグとなることが示唆された.<br>
著者
山本 相浩 河野 正孝 茎田 祐司 藤岡 数記 永原 秀剛 村上 憲 藤井 渉 中村 薫 妹尾 高宏 角谷 昌俊 川人 豊
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.334b-334b, 2012

Allograft inflammatory factor-1(AIF-1)はラット異所性心移植モデルにおいて同定された分子量約17 kDのポリペプチドである.これまでに我々は,関節リウマチ患者の関節滑膜組織において,AIF-1の発現が滑膜細胞,単核球,線維芽細胞で亢進していることや,AIF-1が滑膜細胞の増殖,及び滑膜線維芽細胞やヒト末梢血単核球(PBMC)のサイトカインIL-6産生を促進することを報告している.前回,健常人のCD14陽性単核球において,RNA MicroarrayでAIF-1刺激による発現遺伝子を網羅的に検索し,ケモカインCCL2, CCL3, CCL7が高発現することを示した.また,これらケモカインのELISAでの定量的評価や,Cell Migration Assayでの細胞遊走能の評価も行った.今回さらに解析を進め,CCL2, CCL3, CCL7以外にもIL-6やCCL1の発現が亢進していることを明らかにし,定量的評価や細胞遊走能の評価も行った.関節リウマチにおけるAIF-1のサイトカイン・ケモカイン産生能および細胞遊走能について,考察を交えて報告する.<br>
著者
久野 千津子 中村 稔 真弓 武仁 林田 一洋 加治 良一 長澤 浩平 仁保 喜之 福田 敏郎 恒吉 正澄 大島 孝一
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.256-264, 1995-04-30
被引用文献数
8 3

症例は20歳,女性. 1993年2月,高熱,関節痛,サーモンピンク様皮疹が出現し,白血球増多,脾腫を認め,成人スチル病と診断された. γ-globulin製剤およびprednisolone(PSL)の投与にて症状は改善した.同年9月より全身倦怠感,微熱が出現し,当科に再入院.成人スチル病の再燃を疑われ, PSL 15mg/day投与にて経過観察していたが, 10月2日,高熱と下肢にサーモンピンク様皮疹が出現. 10月7日にはGOT 3,270IU/<i>l</i>, GPT 1,880IU/<i>l</i>, LDH 5,480IU/<i>l</i>と肝障害が出現し,急速に肝不全状態となったため, methylprednisoloneによるpulse療法,血漿交換を開始した. hemophagocytosisが原因と思われる汎血球減少を合併し, VP-16による化学療法も施行.しかしDICが進行し, 11月2日死亡した.剖検所見では,肝臓は組織学的に肝細胞の広範な壊死を認め, histiocyteの浸潤を認めた.本症例はhemophagocytic syndrome(HS)により成人スチル病や急性ウイルス性肝炎と鑑別困難な症状を呈した興味ある症例と考え報告する.
著者
中嶋 蘭
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.283-283, 2012

【背景】抗MDA5抗体は皮膚筋炎特異抗体であり,急速進行性間質性肺炎の頻度が高く予後不良であるなど特徴的な臨床像を示す.血清フェリチン高値・肝胆道系酵素上昇・血球減少・血清IL-6高値などからマクロファージ活性化が本抗体陽性例の病態に関連する可能性が示唆される.そこで本抗体陽性例における血清サイトカインの特徴を調べるとともに,多剤併用免疫抑制療法(新規レジメン)による効果を検討した.【方法】抗MDA5抗体陽性例(n=24)と陰性DM(n=23)の治療前血清サイトカインをELISAで測定した.抗MDA5抗体陽性例に新規レジメン(ステロイド大量・シクロスポリン・シクロホスファミド大量静注(IVCY))併用治療を適応し(n=12),従来治療群(n=14)と生存率を比較した.【結果】抗MDA5抗体陽性例は血清IL-6,IL-10,M-CSFが有意に高値を示し,IL-12,IL-22は低値を示した.同抗体陽性例において,新規レジメン治療群の生存率は従来治療群に比べて有意に高かった(6ヶ月生存率:75.0% vs. 28.6%,p=0.038).新規レジメン治療群ではIVCY後に血清フェリチンが一時的に低下し,生存例は連用により安定して低下した.【結語】抗MDA5抗体陽性例ではマクロファージ活性化病態が示唆され,早期にIVCYを中心とする多剤併用免疫抑制療法を施行するべきである.<br>
著者
新井 万里 水野 慎大 南木 康作 長沼 誠 金井 隆典
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.289a-289a, 2015

ヒト腸管には多種多様な腸内細菌が生息し,生体の恒常性維持に重要な役割を担っている.次世代シークエンサーを用いた解析により,炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)・過敏性腸症候群などの腸管疾患のみならず,生活習慣病・自閉症など様々な疾患で,腸内細菌叢の構成の異常(dysbiosis)が示されている.特にIBDでは腸内細菌叢の深い関与が明らかになっており,プロバイオティクス投与による腸内細菌叢の制御メカニズムも科学的に解明されつつある.我々のグループでも,プロバイオティクスとして知られるクロストリジウム・ブチリカムが,マクロファージ・樹状細胞を介して腸管炎症を抑制する機序を明らかにした.さらに,ヒト由来の複数種のクロストリジウム属細菌が制御性T細胞を誘導して腸炎を抑制することも報告されており,複数菌種の投与がより効率よくdysbiosisを改善すると考えられている.これらの流れを受けて健常人の糞便を投与する糞便微生物移植(Fecal micro: FMT)が脚光を浴びている.難治性クロストリジウム・ディフィシル感染症に対するランダム化比較試験でFMTが著しい再発抑制効果を示したことも相まって,IBDにおけるFMTの有効性が検討されている.これまで評価は二分されており,我々のグループは本邦初となるIBDに対するFMTを開始した.新たな治療戦略につながる可能性も含め,腸内細菌とIBDの関係性およびFMTの現状を報告する.
著者
大村 浩一郎 山本 奈つき 寺尾 知可史 中嶋 蘭 井村 嘉孝 吉藤 元 湯川 尚一郎 橋本 求 藤井 隆夫 松田 文彦 三森 経世
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.310a-310a, 2012

Myelin basic protein(MBP)は神経ミエリン鞘を形成する主要なタンパクであるが,関節リウマチ(RA)において,myelin basic proteinに対する自己抗体が高率に認められることを我々は以前報告した(PLoS One 2011; 6: e20457).ヒト脳由来抽出タンパクを抗原として用いた場合,抗MBP抗体はRAの約65%に認められ,特異度は膠原病患者を対照として83%であり,またその対応抗原は主にMBPタンパク自身ではなく,シトルリン化MBPに対する抗体であることも明らかにした.一方,MBPは神経系に発現するclassic MBPと神経系のみならず血球系にも発現するGolli-MBPのアイソフォームがあり,それぞれにまたいくつかのアイソフォームが存在する.RAで認められる抗MBP抗体の対応抗原がclassic MBPなのかGolli-MBPなのかは不明であったことから,classic MBPおよびGolli-MBPのrecombinantタンパクを作成しin vitroでシトルリン化し,ELISAで抗MBP抗体を検出したところ,その感度,特異度に差は認められなかった.現在Golli-MBPのアミノ酸配列(304アミノ酸)を15種類の25アミノ酸ペプチドでカバーし,それぞれのペプチドをシトルリン化して抗原とし,12人の抗MBP抗体陽性RA患者血清を用いてELISAにてエピトープマッピングを行っている.<br>