著者
松尾 圭三 中山 樹一郎 七隈ロラタジン研究会
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.616-623, 2009-12-01
被引用文献数
1 1

小児の皮膚そう痒性疾患患児(15歳以下)91例に対し, 第二世代抗ヒスタミン薬であるロラタジンドライシロップ1%による臨床効果および薬剤の使用感等の検討を行った。主要評価項目であるそう痒・皮疹の程度は, ロラタジン投与開始1週後から有意な改善がみられ, 投与2週後もその改善効果は維持された。また, VASによるそう痒のスコアも同様の臨床効果を示した。全般改善度(改善以上)は91.3%であった。また, 安全性の面においては, 1例に鼻出血が認められたのみであり, 良好な忍容性を示した。さらに, 薬剤投与後の使用感等に関する調査では, 回答が得られた患児の90%以上が嫌がらずに飲み, 飲み忘れが全くなかったかほとんどなかった割合は94%であった。服用後, 数時間以内に効果が現れたと回答した割合は81%であり, 72%の患児または保護者が, 今後もこの薬剤を希望すると回答し, 希望しないと回答したのは5%であった。これらの結果により, 本剤は小児の皮膚そう痒性疾患に対する治療において, 極めて有用な薬剤であることが示唆された。
著者
谷口 彰治 幸野 健 細見 尚子 東 奈津子 山本 直樹
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.389-391, 2000
被引用文献数
1

液体窒素凍結療法や電気焼灼術などの通常の治療にて軽快しない難治性の尖圭コンジロームに対し,ヨクイニンによる漢方治療を行い有効性を評価した。計11症例にヨクイニンエキス錠1日6.0gを12週間投与したところ,有効以上は36.4%,やや有効以上(有効率)は72.7%であった。副作用として一過性の軟便が1例に認められた。以上よりヨクイニンは尋常性疣贅や青年性扁平疣贅と同様に,尖圭コンジロームに対しても抗疣贅作用を期待できると考えた。
著者
中山 樹一郎 古賀 哲也 占部 篤道 堀 嘉昭 桐生 美麿 野間 健 渕 曠二 安田 勝 八島 豊 吉利 優子 徳永 三千子 川野 正子 仁位 泰樹
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1055-1064, 1994
被引用文献数
2

アトピー性皮膚炎患者69例に対し, ヒスタグロビン<SUP>®</SUP>(Histaglobin<SUP>®</SUP>: 以下HG)適量療法〔初回1 vialで4回投与後, 効果不十分例(軽度改善以下の症例)に対し, 2 vialに増量し4∼6回の投与を行う方法〕を実施し, その治療効果の検討を行うとともに, 同期間中のアレルギーパラメーター(血中好酸球数, 血中ヒスタミン値, 血漿ロイコトリエンB4(LTB4)値, 血清eosinophilic cationic protein(ECP)値)の変動を検討した。HG 1 vial投与における1st stage終了時の全般改善度は, 「中等度改善以上」42例, 60.9%であった。また, 1st stageでの効果不十分例, 即ち「軽度改善以下」の症例22例(脱落症例は除く)に対し, 2 vial投与を行った2nd stage終了時での全般改善度は, 「中等度改善以上」18例, 81.8%で, 2 vialに投与量を増量することにより改善度の上昇が認められた。試験期間中の副作用は1例も認めず, 概括安全度についても全例問題はなかった。1st stage終了時の有用度は, 「有用以上」で62.3%, 2nd stage終了時では72.7%と高い有用率が認められた。試験期間中, 測定しえた全症例のアレルギーパラメーターの推移では, 血中好酸球数, 血中ヒスタミン値, 血漿LTB4値には, HG投与前後に全体としては有意の変動は認められなかった。血清ECP値に1st stage終了時, 有意(P<0.05)の上昇が認められた。血清ECP値は好酸球数, 重症度に相関するようにみられたが, HGの臨床効果とは関係なかった。また, 試験開始時の血漿LTB4値が100pg/ml以上であった18例においては, 1st stage終了時きわめて有意(P<0.01)な低下が認められた。
著者
木村 達 深水 大民 中村 猛彦 小野 友道 園田 頼和
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.52-54, 1993

酪農家の牛舎の屎尿処理槽と連結した簡易トイレで発生したメタンガス引火による熱傷の1例を報告した。後日同様条件下で, この処理槽より燃焼濃度に達するメタンガスを検出し得た。家畜の屎尿から発生するメタンガスに対し, 充分な安全対策はとられておらず, 適切な指導が必要と思われた。
著者
大森 睦美 占部 和敬 辻田 淳 内 博史 幸田 太 師井 洋一 古江 増隆
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.17-20, 2009

73歳,女性。初診の8ヶ月前,顔面中央に青灰色の色素沈着が出現し,次第に体幹,手掌に拡大した。受診時,顔面,胸部,上背部,両手掌外側に青灰色の色素沈着を認めた。病理組織学的に汗腺や毛包周囲に黒褐色粒子の沈着を多数認めた。詳細な問診により初診の3ヶ月前まで約3年間,口内炎に対して連日硝酸銀を含む口腔含嗽液を使用していたことが判明し,銀皮症と診断した。診断後,外来にて3年間の経過観察を行っているが全身の色素沈着は軽快していない。
著者
篠田 英和 関山 華子 西本 勝太郎
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.38-43, 2007-02-01
被引用文献数
6 8

高校生198名,中学生258名,幼稚園児と小学生(以下,園児・小学生と略す)187名,計643名の柔道部員について<I>Trichophyton tonsurans</I>(<I>T. tonsurans</I>)感染症の集団検診を行った。高校生198名(男170,女28)では培養陽性者50名(男46,女4)で,この中には,頭部白癬単独例9名(4.5%),体部白癬22名(単独例15,頭部白癬合併例3,hair brush<HB>法陽性合併例4),手白癬1名,無症候性保菌者18名(9%)を含んでいた。全体部白癬22名中7名(31%)が頭髪にも菌を有しており,高校生の露出部位の体部白癬を診た場合にはHB法を含む頭髪の入念な検索が必要である。また高校生の頭部白癬例と保菌者に対し,検診3~4カ月後,治療内容についてのアンケート調査と,同時に2回目のHB法を行った。頭部白癬では抗真菌剤内服期間が1.5カ月以上で菌は陰性化し,保菌者では初回HB法コロニー数3以下の症例では抗真菌剤内服治療を受けなくても抗真菌剤含有のシャンプーによる洗髪のみで菌は陰性化することがわかった。中学生では258名中14名(5.6%,HB法陽性例11名,頭部白癬2名,体部白癬3名,保菌者3名,重複あり),園児・小学生では187名中2名(1%,体部白癬2名)から<I>T. tonsurans</I>が見出され,園児・小学生への感染の拡大が確認された。本感染症では保菌者になりやすいことや,体部白癬の発疹が非定型疹を呈しやすく湿疹と誤診されることなどからKOH鏡検,培養,HB法を積極的に行なうことが重要である。
著者
久保田 由美子 中山 樹一郎
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.141-146, 2005
被引用文献数
1

市販鎮痛剤による多発性固定薬疹の2例を報告した。症例1は31歳の女性。12歳頃より生理痛にて市販鎮痛剤を毎月内服していた。29歳頃より四肢,肛囲の同じ部位に内服後痒性紅斑が出現し色素沈着を残すということを繰り返していた。皮疹部のパッチテスト(PT)でイブ<sup>®</sup>A,ニューカイテキ<sup>®</sup>Z,アリルイソプロピルアセチル尿素(AIAU)が陽性。DLSTはニューカイテキ<sup>®</sup>Zで陽性。以上よりAIAUを原因と確定した。症例2は33歳の男性。23歳頃より片頭痛にて月に1回,バファリン<sup>®</sup>,30歳より新セデス<sup>®</sup>錠を内服していた。初診の半年前より内服後,口腔内と両手に痛痒い紅斑が出現し,色素沈着を残すということを繰り返し,2日続けて内服後,重症の粘膜症状が出現し,ステロイド内服を必要とした。皮疹部のPTで新セデス<sup>®</sup>錠,セデリン<sup>®</sup>,エテンザミドが陽性。DLSTは新セデス<sup>®</sup>錠で陽性。以上よりエテンザミドを原因と確定した。2症例とも病歴より原因薬剤は特定できたが,原因成分の特定には皮疹部PTが有用であった。
著者
山崎 亜矢子 山田 七子 吉田 雄一 山元 修 大藤 聡
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.405-407, 2009

39歳,女性。初診の3ヵ月前から頭頂部に脱毛斑が出現し,徐々に拡大した。近医受診前夜,洗髪中に髪の毛が絡まりほぐれなくなったため当科に紹介された。絡まった毛髪を実体顕微鏡で観察すると毛髪表面に白い結晶状物質が不規則に分布付着し,走査型電子顕微鏡による観察ではキューティクルが毛の表面から浮き上がり逆立ったような像を呈していた。エネルギー分散型X線分析では,毛髪表面に異常成分は検出されなかった。不適切なヘアケア(毛髪の手入れ)によって生じたものと思われた。
著者
中山 樹一郎 堀 嘉昭
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.447-454, 1996

ヒノキチオール配合ハンドクリーム, リキッドソープ, ハンドウォッシュが新たに開発, 製品化された。これらの製品はヒノキチオールにアルミニウムジステアレートあるいは塩化アルミニウムが配合されヒノキチオール·アルミニウム錯体として安定性, 抗菌活性の強化がなされている。抗菌活性の基礎的検討をヒノキチオール50, 500, 1000各ppmで行い, 50ppmヒノキチオール·アルミニウムジステレート配合溶液がMRSA, MSSA, <I>P. aeruginosa</I>, <I>E. coli</I>に最も殺菌効果があることを見い出した。またハンドクリームのクリームベースに0.1%ヒノキチオールと0.5%アルミニウムジステアレートを配合したものはクリームベースあるいはクリームベースに0.1%ヒノキチオールを配合したものより統計学的に有意に高い抗菌活性を有していた。製品化されたハンドクリーム, リキッドソープ, ハンドウォッシュも抗菌活性を明らかに有しとくにリキッドソープ, ハンドウォッシュは極めて高い抗菌活性を示した。以上より細菌感染が重要な役割を演じている皮膚疾患のスキンケアーあるいは皮膚洗浄に本製品が有用であると思われた。

2 0 0 0 類上皮肉腫

著者
石井 明子 中山 秀夫 池上 博泰 森永 正二郎
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.734-739, 1994
被引用文献数
1

30歳のロシア人男性の類上皮肉腫を逆行性橈骨動脈皮弁法にて治療した。8年前に左手関節屈側に潰瘍が出現し, 手術を4回受けたが再発を繰り返していた。病理組織学的に, 真皮内にエオジン好染の豊かな胞体を持ち, 核に異型性を示す腫瘍細胞が増殖し, 大部分が類円形で, 上皮様の胞巣を形成していた。電顕的には切れ込みの目立つ核と豊富な細胞質を持つ腫瘍細胞が多く, 胞体内に中間径フィラメントを認めた。免疫組織化学的にEMA, vimentin, keratinに対する抗体を用いた染色にて腫瘍細胞は陽性であった。本症の治療にあたっては, 発病初期の正確な病理診断と最初から十分な広範囲切除が必要と思われた。
著者
高島 巌
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.566-570, 1991

育毛作用を有する数種の植物抽出液, プラセンタエキス, 酢酸トコフェロール, センブリエキス, サリチル酸およびエチニルエストラジオールを配合した女性用育毛剤コラージュリッチを女性型脱毛症患者12例に使用し, 抜け毛(自然脱毛数)に対する効果, 再生毛の有無, 抜毛試験について検討した。自然脱毛では7例(58.3%)が減少し, 抜毛試験でも7例(58.3%)が抜けにくくなった。再生毛については, 3例(25.0%)に終毛が, 4例(33.3%)に軟毛が認められた。副作用としてそう痒感とフケの増加を認めた症例がみられたが, 使用中止にいたる例はなく, 長期に使用しても安全な育毛剤であると考えられた。
著者
高橋 省三 諸橋 正昭
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.360-367, 1991

富山医科薬科大学附属病院皮膚科外来を受診した女性の瀰漫性脱毛症患者16名に対し, プラセンタエキス, 酢酸トコフェロール, サリチル酸, センブリエキスおよび数種の植物抽出液などの成分の他に, エチニルエストラジオールを配合した女性用育毛剤コラージュリッチを使用し, 臨床症状に対する影響および安全性について検討を行い, 下記の結果を得た。<BR> 1) 瀰漫性脱毛症患者(瀰漫性脱毛症を主訴とし円形脱毛症を併発している症例3例, 脂漏性湿疹併発症例3例を含む)16例に対し, 全般改善度では「中等度改善」以上改善した症例は2例(12.5%), 「軽度改善」以上の症例は12例(75.0%)であった。<BR> 2) 概括安全度については, 全例に副作用を認めず, すべての症例に対し「問題なし」との評価であった。<BR> 3) 有用度の判定では, 「かなり有用」以上の有用症例が2例(12.5%), 「やや有用」以上が14例(87.5%)であった。<BR> これらの成績から, コラージュリッチは女性の瀰漫性脱毛症に対し有効かつ安全な育毛剤であると考えられた。
著者
近藤 直子 花田 勝美 榊 幸子 松中 浩
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.173-178, 2005
被引用文献数
1

皮膚の乾燥症状を有するアトピー性皮膚炎または乾皮症の患者26例に対し,オリゴマリン<sup>®</sup>をそれぞれ含んだ3種類のスキンケア製剤(ローション,ボディクリーム,ハンドクリーム)の使用試験を実施し,その安全性と有用性を検討した。オリゴマリン<sup>®</sup>は,海水からナトリウムなどを減量し亜鉛やセレンなどの微量元素を多く含む化粧品(医薬部外品)原料である。8週間の使用において,ボディクリームを使用した乾皮症の1例に軽いそう痒と炎症を認めたが,それ以外のすべての症例で安全性を確認した。また有用性は,皮膚所見,表皮角層水分量および角層細胞の形態観察にて評価した。その結果,本試験に供した3種類のスキンケア製剤は,乾燥性皮膚に対し安全に使用でき,かつ皮膚症状を改善するとともに,角層のバリア機能を向上させ得ることが明らかとなった。
著者
前田 学 藤沢 智美 日置 加奈 永井 美貴
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.7-10, 2005-02-01
参考文献数
24

症例は両下腿の丘疹・紅斑及び紫斑などを主訴とする16歳の女学生。2001年8月より両下腿に痒みを伴った丘疹及び紫斑が出現し,上肢にも拡大した。初診の1週間前より再燃し,2002年5月7日当科を受診した。既往歴・家族歴には特記すべきことはなかった。血液検査ではWBC 10300/mm<SUP>3</SUP>とやや上昇,赤血球528万/mm<SUP>3</SUP>とやや多血症傾向で,IgE上昇(950IU/ml)以外は異常所見はなかった。左下腿部の病変から皮膚生検を施行したところ,表皮は不規則に延長肥大し,表皮内に海綿状変化を認め,真皮には上層に限局して好酸球を混じた単核球の細胞浸潤が目立った。自験例が使用していた靴下止め糊(ソックタッチ<SUP>®</SUP>)の皮膚貼布試験は48,72時間共に小水疱を伴う紅斑を形成し,本邦判定基準で陽性(+++)と判定したが,各成分別の同試験は患者の同意が得られなかったために未施行。躯幹の皮疹は自家感作性皮膚炎(イド反応)として矛盾しないものと考えられた。ソックタッチ<SUP>®</SUP>は白元(株)製のアクリル系粘着剤の液体靴下止めで,スティックのり状になっており,接着剤成分としてポリアクリル酸ナトリウム・トリエタノールアミン塩の混合物(CH<SUB>2</SUB>・CH・COONa)n,(CH<SUB>2</SUB>・CH・COON(C<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>OH)<SUB>3</SUB>)nのジュリマーを5~15%含有し,局方エチルアルコール10~30%,グリセリン15%以下,香料微量,精製水残量から構成されていた。
著者
有馬 優子 岩田 賢治 濱崎 洋一郎 片山 一朗
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.63-65, 2001
被引用文献数
4

55歳の男性。カルバマゼピン(テグレトール<sup>®</sup>)とハロペリドール(ハロステン<sup>®</sup>,セレネース<sup>®</sup>)の内服開始後に発赤,水疱が出現しておりその両方を原因薬剤と疑った。貼布試験で両者は陽性反応を示し,組織学的にも初診時と同様の皮疹を誘発できたため,この2剤を原因薬剤と考えた。2剤の間に化学構造的類似は認められなかった。
著者
半田 芳浩 羽渕 知可子 日比 泰淳 安江 敬 柴田 真一 富田 靖
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.36-40, 2002

64歳,男性。経過中に両耳·右前腕·両手背に6個の日光角化症,右耳·左手背に2個の有棘細胞癌,右手背·左耳·右前腕に4個のBowen病および右手背に単発の基底細胞癌を認めた症例を経験した。砒素摂取歴や職業上で染料,切削油,コールタール,農薬などの発癌物質への曝露歴はない。UVAの最少反応量,UVBの最少紅斑量の低下はなかったが,皮疹はいずれも露光部に出現しているため,日光の刺激により誘発されたと推測した。右耳の日光角化症には液体窒素療法を施行し,他の腫瘍は全て切除した。局所再発は認めていないが,現在も両手背~前腕にBowen病の初期病変もしくは日光角化症と思われる褐~紅色斑が多発しているため,慎重に経過観察している。多種の皮膚悪性腫瘍が多部位にわたり発症した例は稀と考え報告した。
著者
野田 俊明 川田 暁 比留間 政太郎 石橋 明
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.287-291, 1993
被引用文献数
1

サンスクリーン剤の紫外線防御効果を従来のsun protection factor(SPF)の測定に加え, 遅延型黒化(delayed tanning, DT), 即時型黒化(immediate pigment darkening, IPD)の防御効果により検討した。被験試料: ECRAN TOTAL UVA-UVB-IR(RoC S. A., France)。実験方法: 健康成人男子10名を対象とし, 被験部位は背部, 塗布面積50cm<SUP>2</SUP>, 塗布量2mg/cm<SUP>2</SUP>とした。光源にはsolar simulator WXL-50 C-5-UV(WACOM, Japan)を用い, 照射波長域はUVA+B, 照射率は34.8mW/cm<SUP>2</SUP>とした。結果: 試料非塗布部位のminimal erythema dose(MED), minimal delayed tanning dose(MDTD), minimal immediate pigment darkening dose(MIPDD)は, それぞれ132.8KJ/m<SUP>2</SUP>, 146.7KJ/m<SUP>2</SUP>, 16.7KJ/m<SUP>2</SUP>であった。試料塗布部位のMED, MDTDは最大照射量でも測定できなかったが, MIPDDは1422.8KJ/m<SUP>2</SUP>であった。試料塗布部位のMED, MDTDをその最大照射量で計算したprotection factor(PF)値は, それぞれ15以上, 12以上と算定され優れた効果を示した。IPDより計算したPF値は85.3であったがさらに検討が必要と思われた。
著者
富田 靖 吉村 達雄 根東 義明 五十嵐 裕 伊藤 祥輔
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.473-479, 1992

6ヵ月男児のメンケス病の一例を報告した。本例は低血清銅値と低セルロプラスミン値, 発育不良, 筋痙攣発作などの典型的症状を示した。皮膚症状としては, 頭髪の低色素ないし白髪と捻転毛を示した。これら諸症状は, 銅利用の先天的な欠陥が引き起こした銅酵素群の活性低下によるものである。頭髪のユウメラニンおよびフェオメラニン含量は健常人の半分程度で, 銅酵素であるチロシナーゼの活性低下が示唆された。乳幼児に白髪や捻転毛を示す疾患は限られており, これら頭髪の症状の出現は本症の診断に重要な意味を持つと考える。
著者
宇宿 一成
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.217-219, 2004
被引用文献数
1

10歳, 男児。胸に飛んできたカメムシを潰し体液が付着。30分後には疼痛を伴う紅斑を生じた。患者の持参した虫体からミナミアオカメムシと同定。カメムシ皮膚炎と考えた。患者がパッチテストを拒否したため, 患者の持参した虫を細切して健常人8人にパッチテストを行った。1名が48, 72時間後ともに (+) の反応を示した。この被験者はかつて腕にカメムシが這った跡に線状の紅斑を生じたことがあるということだった。この被験者ではアレルギー性の反応を生じたと考えた。その後, 筆者は同種の虫を採取し, 生きたまま左前腕部に圧抵したところ紅斑を生じた。一次刺激性接触皮膚炎と考えた。通常カメムシによる皮膚炎では一次刺激性のものが多いが, アレルギー性接触皮膚炎も生じうるものと考えた。
著者
中村 猛彦 小野 友彦 丸尾 圭志 荒尾 龍喜
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.21-23, 1989

掌蹠膿疱症の姉弟例を経験した。姉: 56才, 約3ヵ月前より発症し, 慢性扁桃炎と仙腸関節部の疼痛が認められた。弟: 44才, 約3年前に発症し, 慢性扁桃炎と左鎖骨部の疼痛が認められた。弟に対しては骨シンチを施行し疼痛部への異常な取り込み像を認めた。また扁摘術も施行し, 経過を観察中である。掌蹠膿疱症において骨関節症状(pustulotic arthro-osteitis)の合併頻度は高く, その病態は慢性扁桃炎などの病巣感染の関与と考えあわせると, 強直性脊椎炎のようなHLA関連疾患としての可能性が考えられるが, 姉弟間にHLA抗原検索の結果共通性はなく, 疾患との関連性も認めなかつた。いずれにせよ本症において家族内発症の報告はきわめて少く, 今後の検討が待たれる。