著者
森 信介 山地 治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.2191-2199, 1997-11-15

本論文では,形態素単位のn?gramモデル(1〓n〓16)による日本語の情報量の上限の推定方法とその結果を示す.各n?gramモデルは,データスパースネスの問題に対応するため,低次のn?gramモデルとの補間を行ってある.補間係数は,最も有効であると考えられている削除補間法により求める.実験ではEDRコーパスの約9割からモデルのパラメータを推定し,残りの1割に対して情報量を計算した.その結果,n=16のときに1文字あたりの情報量は最小の4.30330ビットであった.また,学習コーパスの大きさとモデルの次数による情報量の変化を調べた結果,モデルの次数を上げることによる情報量の減少量は微小であるが,学習コーパスを大きくすることによる情報量の減少量はかなりあるということが分かった.さらに,パラメータ数とエントロピーの関係についても議論する.これは,実際の日本語処理にn?gramモデルを応用する際に,適切にnの値を選ぶ指標となる.
著者
新居 智将 鈴木 泰成 徳永 裕己
雑誌
量子ソフトウェア(QS) (ISSN:24356492)
巻号頁・発行日
vol.2022-QS-5, no.27, pp.1-10, 2022-03-17

表面符号は現在量子誤り訂正符号として最も注目されているものの 1 つである.表面符号の復号方法の 1 つに,エラーの推定を最小重み完全マッチング問題に帰着して復号する方法がある.量子ビットによってエラーが起きている確率が均一でない場合,重みが不均質な最小重み完全マッチング問題を解くことで復号の精度が向上することが知られている.しかし,その際に必要な計算量は確率が均一である場合に比べて大きくなってしまう.この発表では,一定の仮定の下でフェニック木を用いることで,最小重み完全マッチング問題による表面符号の復号で必要となる計算量を削減する方法を提案する.
著者
金沢 幾子
出版者
実践女子短期大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 = The bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.143-161, 2013-03-19

明治・大正・昭和初期の近代経済学者、社会政策学者、また大正デモクラシーの先駆者である福田徳三博士は、明治期の経済学者、「東京経済雑誌」の創刊者の田口卯吉から影響を受けた。 福田の母・信子は、田口の姉・木村鐙子を深く尊敬し、たえず話題にした。 田口の「東京経済雑誌」の後継者・塩島仁吉は、福田の結婚相手を仲介。 「東京経済雑誌」の投稿者・布川孫市は早くから福田の学問を評価した。後年、福田を東京高等商業学校から退職させた松崎蔵之助の学術上の誤謬を指摘した。
著者
土屋 雅稔 中村 純哉
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.879-894, 2022-03-15

大学を含む公的機関にとって, 各種の異常事態に対する事業継続性の確保は, 重要な課題の1つである. 本論文では, 2つの観点から認証基盤システムの事業継続性について検討する. 第1に, 大規模災害に対する事業継続性について検討する. 大規模災害に対する事業継続性を確保するには, 情報システムを安全な遠隔地に設置するだけでなく, 異常時の挙動について十分に検証する必要がある. 本論文では, 認証基盤システムを遠隔地に設置する場合の設計上の留意点と, 平常時の停電を利用して異常時の挙動を定期的に検証する運用経験について述べる. 第2は, 感染症によるロックダウンに対する事業継続性である. キャンパスがロックダウンされた場合, 従来は対面形式で行われていた各種手続きをオンライン化する必要がある. しかし, 安全な認証という前提を保ちつつ, 各種手続きをオンライン化することは, 決して容易なことではない. 本論文では, 複数の多要素認証手段を組み合わせることにより, できるだけ安全に各種手続きをオンライン化する方法と, COVID-19パンデミックにおける対処経験について述べる.
著者
江川 美紀夫
出版者
亜細亜大学国際関係研究所
雑誌
亜細亜大学国際関係紀要
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.81-105, 2006
著者
村山 弘明 富永 浩之
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2018-CE-147, no.7, pp.1-6, 2018-11-24

近年,議論や評決のシミュレーションとして,トークゲームが注目を集めている.本研究では,「語彙大富豪」 を題材として,チャットアプリ上での運営ツールを開発している.このゲームは,プレイヤが選んだ単語を手札とした,トランプの「大富豪」のようなゲームである.単語の強弱は,手番のプレイヤの理由説明の後,プレイヤ間の協議と多数決で決定する.本論では,語彙の参照先となるオンライン辞書を提供し,ゲームの打手を支援する付加機能を検討する.
著者
竹田 隆一 長尾 直茂
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 教育科学 = Bulletin of Yamagata University. Educational Science
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.51(145)-68(162), 2003-02-17

剣道の技術に関する名辞は, 非常に難解であり, 円滑な技術指導の障害となることも考えられる。しかし, それは, 剣道のもつ身体観や技術観などの文化的特性のあらわれととらえることができる。そこで, 剣道技術指導書の先行形態である近世の武芸伝書を取り上げ, 技術に関する名辞を考察することによって, 剣道の文化的特性を明らかにすることを目的とした。 本稿では, 一刀流の伝書である『一刀斎先生剣法書』取り上げたが, それは, 一刀流が現代剣道の源流の一つに数えられるためである。ただ, 流祖伊藤一刀斎みずからが書いた伝書というものは現在伝わらず, 一刀流を理解するためには, その門人達の伝書によるしかないのである。そこで, 一刀斎の門人古藤田俊直を祖とする唯心一刀流の伝書『一刀斎先生剣法書』を現代語訳し, 技術に関する名辞をスポーツ教育の視点から考察することにした。その結果, 従来から使用されている「事理」, 「水月」,「残心」,「威勢」の意味内容が明らかになった。なお, 今回の考察は, 全16章のうち5章までである。
著者
竹田 隆一 長尾 直茂
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 教育科学 = Bulletin of Yamagata University. Educational Science
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.45(237)-58(250), 2004-02-16

承前 : 研究の目的・意図等については前稿(『山形大学紀要(教育科学)』第13巻・第2号所収。pp145-162。2003年2月刊)の冒頭に記したので, ここに贅言を重ねることはしない。ただし, 凡例のみは便宜上, 今一度載せることとした。今回の考察は第6章から10章までの5章である。 凡例 ◎訳注の底本には, 今村嘉雄『日本武道大系』第二巻・剣術(2)(同朋舎, 1982)に収録された, 京都鈴鹿家所蔵本『一刀斎先生剣法書』を用いた。但し, 句読点は適宜に改めた箇所がある。また, 参考資料として杉浦正森『唯心一刀流太刀之巻』を用いたが, これも『日本武道大系』第二巻所収のテキストに拠る。ちなみに『一刀斎先生剣法書』は寛文四年(1664)に, 『唯心一刀流太刀之巻』は天明三年(1783)に稿成ったものである。 ◎本書は16章から成るが,これを適宜に段落に分かち,そこに語注,現代語訳,そして必要に応じて補説を加えた。 ◎語注は長尾が担当し, 補説は竹田が担当した。現代語訳は両者で検討, 吟味した上, ここに掲出した。なお, 抄訳ではあるが, 本書の現代語訳を試みたものに, 吉田豊『武道秘伝書』(徳間書店, 1968)があり,適宜に参照した。
著者
竹田 隆一 長尾 直茂
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 教育科学 = Bulletin of Yamagata University. Educational Science
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.1(251)-12(262), 2005-02-15

承前 : 研究の目的・意図等については前稿である(1)(2)(『山形大学紀要(教育科学)』第13巻・第2, 3号所収。2003年2月及び2004年2月刊)の冒頭に記したので,ここに贅言を重ねることはしない。ただし,凡例のみは便宜上,今一度載せることとした。今回は第11章から最後の第16章までの5章を取り扱う。 凡例 : ◎訳注の底本には,今村嘉雄『日本武道大系』第二巻・剣術(2)(同朋舎,1982)に収録された,京都鈴鹿家所蔵本『一刀斎先生剣法書』を用いた。但し,句読点は適宜に改めた箇所がある。また,参考資料として杉浦正森『唯心一刀流太刀之巻』を用いたが,これも『日本武道大系』第二巻所収のテキストに拠る。ちなみに『一刀斎先生剣法書』は寛文四年(1664)に,『唯心一刀流太刀之巻』は天明三年(1783)に稿成ったものである。 ◎本書は16章から成るが,これを適宜に段落に分かち,そこに語注,現代語訳,そして必要に応じて補説を加えた。 ◎語注は長尾が担当し,補説は竹田が担当した。現代語訳は両者で検討,吟味した上,ここに掲出した。なお,抄訳ではあるが,本書の現代語訳を試みたものに,吉田豊『武道秘伝書』(徳間書店,1968)があり,適宜に参照した。
著者
玉利 祐三 土屋 和幸 宇野澤 景子 吉川 之菜 Yuzo Tamari Kazuyuki Tsuchiya Keiko Unozawa Shina Yoshikawa
出版者
甲南大学
雑誌
甲南大学紀要. 理工学編 = Memoirs of Konan University. Science and engineering series (ISSN:13480383)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.167-188, 2005-12-25

The trace lithium content of different kinds of samples was determined by flame photometry using the atomic absorption spectrophotometer with air-acetylene flame at the optimum instrumental conditions, after the decomposition of a sample with nitricperchloric acid mixture or the decomposition of a freeze-drying food sample with nitric-perchloric-hydrofluoric acid mixture. In the highpurity chemicals lithium content as impurity was considerably higher in calcium salt (metal: 39500ng/g, oxide: 21500ng/g, carbonate: 13700〜14400ng/g) than in magnesium (11〜67ng/g), sodium (198〜634ng/g) and potassium salt (196〜361ng/g). In the carbonate minerals the content was higher in aragonite (av. 21970ng/g) and calcite (av. 14100ng/g) than in dolomite (av. 9959ng/g) depending on calcium content as a matrix component. In the table-salt samples of sea-, lake- and rock-salt the content was 934, 724 and 870ng/g, respectively, and the lithium content was summarized to be 900ng/g as mean for all the 34 samples. In the rice the content was three times higher than in unpolished rice av. 12.7ng/g than in polished rice av. 5.2ng/g. Finally in the cow's milk the content was almost constant to be av. 23.7ng/g regardless with the different fat-content, pasteurized temperature and manufactured district (Prefecture in Japan). In addition to an annual variation of the lithium content of a same brand of cow's milk the content was also almost constant to be av. 24.3ng/g, regardless of four seasons.
著者
井手 広康
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.e41-e59, 2022-03-15

令和7年の大学入学共通テストに「情報」が追加されることが正式に決定した.大学入試センターは,共通テストを想定した「情報」の問題として,これまで試作問題とサンプル問題を公開している.現在,上記以外に共通テストの参考になる「情報」の問題は少ないが,当分の間は「情報関係基礎」の問題が活用できるだろう.本稿では「情報関係基礎」の過去問のうち,2005年度の第2問「じゃんけん大会」を取り上げ,解答のための手順とポイントについて解説する.
著者
竹内 彬 Akira Takeuchi
出版者
東京音楽大学
雑誌
東京音楽大学大学院博士後期課程 2018年度博士共同研究A報告書《モデル×変容》 = Class Essays from Doctoral Cooperative Research Seminar A, 2018, The Model and The Mutation
巻号頁・発行日
pp.28-42, 2019-03-31

2020年10月16日以前のタイトルは「パリ音楽院おけるクラリネットの学習教材の変容 : ――イアサント・クローゼをモデルとして――」
著者
徳水 博志
出版者
岩手大学地域防災研究センター
雑誌
災害文化研究 = Journal of research on disaster culture
巻号頁・発行日
vol.4, pp.17-32, 2020-03-27

2011年3月11日に発生した大川小学校事故では児童74名、教職員10名が亡くなった。事故の要因は、避難マニュアルに不備があり、避難場所が明記されていなかったことにある。しかし、なぜ裏山ではなくて、津波がやって来る堤防道路に向かって避難を開始したのか、それが最大の謎である。筆者は、大川小学校の教師たちが判断を誤った要因を北上川越流津波のイメージを持っていなかったからではないかと推測した。つまり、当時の教師は筆者も含めて、津波の知識をよく知らなかったと言える。大津波警報10mとは「平均的な値」であり、実際の到達津波は1/2 ~ 2倍の幅があること、津波は海岸地形や陸上地形で増幅して地域を襲うこと。このような新しい知見を持っておれば、自分の地域を襲う津波を具体的にイメージできて、迅速な避難行動がとれたはずである。津波防災能力とは、①津波についての新しい知見➡②情報の収集力➡③災害をイメージする想像力➡④想定外に対処できる迅速な判断力である。この能力を身に付けるための「津波防災教育プログラム」の概要について述べる。