著者
樋口 秀行
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.121-125, 2019-04-19

丁度この原稿を書き始めたころ,嬉しいニュースが飛び込んできた。京都大学高等研究院特別教授の本庶佑先生がノーベル生理学・医学賞を受賞したのであった。日本人として誇らしく思うのは当然であるが,筆者が特に共感したのは本庶先生の「教科書を信じるな」という言葉であった。もちろん,本庶先生と同列に語るのは誠におこがましいことと重々承知はしているが,“我が意を得たり”という気持ちになったのである。筆者がここ最近行ってきた研究は妊娠子宮の左方転位についてであるが,この左方転位は産科麻酔領域の教科書において古くから,お作法,ドグマのごとく遵守しなければならない手技であるかのように記載されてきた。左方転位を施行していなくても教義違反で罰せられることはないものの,軽蔑の目を向けられるか,または不勉強の謗りを免れないのであった。今回,筆者がこのドグマにどのような経緯で挑戦したかを述べたい。
著者
上山 博史
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.7-12, 2019-04-19

最近,術中の医療安全に貢献する重大な発見をした。“昼食後に眠くならない食事法”である。これを日本麻酔科学会関西支部で発行している「近畿麻酔科医界」という新聞に“麻酔科医にとってきわめて重要な発見”というタイトルで投稿したところ,配布直後に行われた関西支部学術集会で多くの先生方(本当に何十人も)から「面白かった」,「ためになった」,「山村賞に値する大発見」(本当にそう言われた)とのお褒めの言葉をいただいたほどである。私はかねがねこの大発見を関西だけにとどめておくのはもったいないと考えており,全国的に発表する機会を虎視眈々とねらっていた。今回,ここにご披露する。
著者
高木 章好 梶田 哲 豊田 典明 山本 明美
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.148-151, 2000-04-15

ウイルス性疣贅の一型である尋常性疣贅の中には液体窒素による凍結法などに反応せず,治療に苦慮する症例がある.今回我々はモノクロロ酢酸による腐食療法を行い,本法が安価で簡単,安全かつきわめて有効な治療と思われ報告する.方法は,少量のモノクロロ酢酸飽和水溶液を楊枝の先で直接疣贅に塗布し(疣贅上に付着した液を数回軽く突くようにして疣贅内に浸透させるが,周囲に流れないように気をつける),乾燥を確認し帰宅させ,処置した日は入浴をさける.原則とし1週間に1度の間隔で施行した.結果は,1998年1月から6月まで総数377例,男171例,女206例に施行し,最年少は2歳男児,最高齢は83歳女性であった.ほとんどの症例で著効または治癒し,不変,悪化は足底で1.8%,手背は0.6%であった.
著者
西村 みずき 川瀬 正昭 江藤 隆史
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1651-1655, 2016-10-01

症例1(56歳女性)。2年前より左中指遠位指節間関節(DIP)に10mm大の単発性角化性結節が出現した。症例2(39歳女性)。3年前より左示指に4mm大の単発性角化性結節が出現した。症例3(51歳男性)。2年前より左足底に15mm大の類円形角化性局面が出現した。いずれの症例も他院にて尋常性疣贅と診断され、液体窒素療法などの治療を受けるも無効で、著者らの皮膚科へ紹介となった。治療として削り処置、液体窒素療法のルーチン処置に加え、ビタミンD3軟膏-50%サリチル酸ワセリン絆創膏連結療法が行われたが効果は乏しく、モノクロロ酢酸塗布療法に変更した結果、治療開始3~6ヵ月で病変の消失がみられた。
著者
毎日がSonntag
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.423, 2021-04-01

「知的」アプローチを「血的」かつ「痴的」観点から紹介する屠蘇をコンビニの安酒で済ませたせいか,あるいは「密」を避けるため初詣に行かなかった罰が当たったのかわからないが,新年早々に難題を抱えることとなった。何を血迷ったか,さほど親しくもないLiSA編集長に時候の挨拶メールを送ったのがそもそもの間違いである。昨年末に出版されたばかりの本の批評文を書かされることになった。 麻酔科医なら知らぬ者の無い(もしあなたがその名を知らないとしたら,それはそれでおめでたいことである)稲田英一先生の『麻酔への知的アプローチ』である。初版から30年,第11版を数えるベストセラー,麻酔科医のマストアイテムといえる書物に,今更批評などがいるのだろうか? 著者の薫陶を受けた教授が全国に星の数ほどいるだろうに,場末の一麻酔科医に過ぎない評者に依頼するとは,編集部の思惑が窺われる。それでなくともコロナ感染爆発で気の休まらない時に,北陸の家々に降り積もる雪のような重荷を背負ったわけである。長時間作用型筋弛緩薬を投与して,Macintosh型喉頭鏡を口の中に突っ込んだら Cormack 分類 grade 4 だった時に匹敵する後悔であるが,スガマデクスがあるのが当たり前の環境で育った過保護な麻酔科医には想像もつかないだろう。
著者
渡邊 祐司 永山 雅子
出版者
学研メディカル秀潤社
巻号頁・発行日
pp.1133-1142, 2019-08-25

頸動脈の動脈硬化のMR画像診断は,time-of-flight(TOF)法によるMR angiography(MRA)と,black-blood法を併用した動脈壁イメージングが基本である.頸動脈プラークの構成成分の判定には,血管内腔の信号を抑制するblack-blood法の脂肪抑制T1強調像と脂肪抑制T2強調像を組み合わせて診断する.プラークの被膜の断裂の有無を判定するにはTOF-MRAの元画像を用いる.どのような所見があれば危険性の高い不安定プラークかを知っておく必要がある.
著者
坪井 良治 田嶋 麿美
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.133-136, 2006-04-01

要約 マラセチア(Malassezia)は,1996年,Guéhoによる再分類やその後のSugitaらによる新菌種の報告などで11菌種に分類されている.鱗屑から直接,菌由来DNA配列を検出することによりマラセチアの同定が可能になったことから,健常人や各種皮膚疾患において複数の菌種が同一部位に定着し,病態に関与していることが明らかになってきた.これまでの研究結果から,癜風やマラセチア毛包炎はマラセチア感染症といえるが,脂漏性皮膚炎はマラセチアが発症に深く関与した疾患であり,アトピー性皮膚炎では増悪因子の1つであると考えられる.また,痤瘡,酒さ様皮膚炎,ステロイド外用薬長期使用中の皮膚炎にも関与している.これらのマラセチア感染症や関連疾患に対して,ケトコナゾール外用薬やイトラコナゾールの内服を,感染症に対しては単独で,関連疾患に対しては従来治療に上乗せする形で投与すると著明に症状が改善することを報告した.
著者
岩野 健蔵 小林 正義
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.403-409, 2018-08-15

要旨:本研究の目的は,統合失調症長期入院患者の認知機能障害を,外来(デイケア)患者との比較によって明らかにすることである.入院群(n=33)は外来群(n=30)より,年齢,累積入院期間,服薬量,簡易版陽性・陰性症状評価尺度(Brief PANSS)の妄想が有意に高く,機能の全体的評定尺度(GAF)と統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS)の言語性記憶,ワーキングメモリ,運動機能,注意と処理速度,遂行機能,総合点が有意に低かった.入院群の認知機能障害には,長期入院や慢性経過を背景とする全般的な心理社会的機能の低下や抗精神病薬服用量などが,関連している可能性が推測された.
著者
Kimura Jun
出版者
日本リハビリテーション医学会
巻号頁・発行日
pp.507-509, 2009-08-18

Effect of Volitional Muscle Relaxation on H reflex To test the effect of volitional inactivity and subsequent voluntary muscle contraction on the excitability of the anterior horn cells in the lower limb, we studied the time course of H reflex recorded from the soleus muscle in 11 healthy subjects after resting the muscle for one and two hours.1) The H-reflex amplitude declined (p<0.05) after rest, remained the same after standardized exercise, and recovered after standing. Statistical analyses showed a significant difference in the degree of suppression induced by one- and two-hour periods of rest. We conclude that the excitability of the spinal motor neurons tested by H reflex undergoes a substantial diminution after a relatively brief cessation of volitional motor drive, recovering quickly upon resumption of normal muscle activity.
著者
渡邉 誠 金村 尚彦 今北 英高 森山 英樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.675-678, 2005-07-10

はじめに 末梢神経障害に対するリハビリテーションは,末梢神経損傷後の再生時にmisdirectionの問題が存在するために,知覚再教育としての知覚のリハビリテーションが必要となる. 末梢神経損傷後の知覚再教育は30 cpsと256 cps音叉の振動刺激および動的触覚のある部分が手掌まで回復してきた段階で開始するのが一般的である.Dellon1)は,末梢神経損傷後の知覚回復に関して,痛覚,動的触覚,静的触覚,振動覚の順に回復が認められたと報告している.この初期の回復段階,30 cpsや動的触覚は,皮膚機械受容器の一つであるマイスナー小体によるものとされる.マイスナー小体が初期に回復する理由として,複数の神経線維により神経支配されるため,神経再支配が起こりやすいと考えられている.機械受容器に関しては,立川ら2)は,日本ザルの前肢を用いた両側固有指神経切除後のマイスナー小体の形態的変化について,Navarroら3)は,坐骨神経の挫滅または切断後1~7週でのマウスfoot padへの感覚と神経再生の時間的順序を報告している.知覚障害に対するリハビリテーションの観点から,末梢神経と機械受容器の変性および再生過程の解明が進みつつある. 本研究の目的は,機械受容器の一つであるマイスナー小体に焦点を当て,ラット前肢の神経切断直後からのマイスナー小体の変性過程を形態および組織学的に検討することにある.とくに,このマイスナー小体の層板細胞より産生される非特異的コリンエステラーゼの分布域を調べることで,神経切断によるマイスナー小体の酵素活性領域の経時的変化を検討した.
著者
井上 義郷
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.395-400, 1964-07-15

ゴキブリの駆除法の一つとして,蒸したジャガイモに,硼酸を混ぜたものを毒餌として適用する方法が一般に広く知られている事実から,ゴキブリの駆除は,個々にはかなり古くから行なわれている事が想像されるが,しばらくの間はその技術的な進展は,全国的に大きくとりあげられたハエ蚊駆除運動のかげにかくれていて,殆んどみられなかった。しかし,その間にあっても,新たな合成殺虫剤の登場に伴ない,近代的な駆除技術の検討は,実験的にすでに実地に進められていたわけであり,たまたまそれが大きく一般にとりあげられるようになったのは,最近のポリオの流行時からと云ってもよいであろう。ゴキブリの疫学的な意義はひとまずおくとしても,当時,ハエと全く同じ意味で不潔な害虫として,その駆除が行政的にも考慮された事がきっかけとなり,一方では,ちょうどそれに答える駆除技術が或る程度完成をみていた事も幸して,ゴキブリの駆除は急速に進展したと云う事が出来よう。 このように,ゴキブリの駆除が俄かに注目されるようになった為か,現在一般に行なわれている駆除法には,まず目につく彼等を追廻し,それらを叩きつぶしたり取り抑えたり,或いは走り廻る彼等をめがけて殺虫剤をふりかけたりする,至って素朴な段階から,蒸したジャガイモに硼酸を混ぜたものや殺虫剤の毒餌を適用する方法とか,くん煙,煙霧や局所重点残留処理法など,技術的にはより高度なものまで,いろいろな段階がみられるわけである。
著者
渡部 達範
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.374-377, 2021-04-01

血管穿刺は薬物の投与,輸液・輸血による循環血液量の補正や貧血の改善,高カロリー製剤の投与,動脈圧や中心静脈圧などの測定を行うために必須の手技である。特に全身管理を行う麻酔科領域では基本中の基本手技である。穿刺法に関しては解剖学的な知識をもとにしたブラインド穿刺が広く行われている。しかし近年,特に中心静脈穿刺においてはブラインド手技に代わって超音波断層像を用いる超音波ガイド下手技が推奨されている。
著者
中尾 弘之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1117-1125, 1963-12-01

I.実験方法 視床下部刺激によるスイッチ切り行動の学習無麻酔,無拘束の状態で,猫の視床下部,辺縁系,視床および大脳皮質の脳波記録と電気刺激が双極的にできるように手術がなされた。 実験箱は簡単なもので,実験箱内の猫は,一定の窓の外にさがつている板を押すことにより,与えられた視床下部刺激電流を中断することができるようになつている(中尾,1958)。このような装置内で,猫視床下部の一定部位を刺激すると,猫は板を押してその刺激を中断する。これをくりかえして行なうと,刺激をあたえてから猫が板をおすまでの潜時はだんだんと短縮し,最後には,試行のたびにほぼ一定の短い潜時を示すようになる。十分に訓練しておけば,数十日間猫を放置していても,猫はこの行動をよく保持している。われわれはこれをスイッチ切り行動とよんでいる。
著者
長野 仁
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.1062-1068, 2019-11-01

うちばり(打鍼)・くだばり(管鍼)・けいはり(経鍼)中国では元代に「子午八穴鍼法」*12が登場するなど,四肢(手足)の要穴を多用するのに対して,日本では五大思想(五輪発生説・諸虫病因論)のバイアスによって体幹(背腹)の要穴を重視するよう変容を遂げた。 日本でいつから「打鍼」(図6)が行われるようになったのかは詳らかでない。正親町天皇・後陽成天皇に仕えた鍼博士・御薗意斎(1557〜1616)の遠祖で,花園天皇(1297〜1348)に仕えた多田次郎為貞を創始者とする説は時代が早すぎて首肯しかねるが,遅くとも戦国期に実施されていた状況証拠がある〔煙蘿子針灸法青樵齋道丹自序;1530〕。「蓋し,牡丹根は甜(甘)うして,螙蟲*13これを損ず。その旁ら,常に小穴あり。すなわち蟲の所為の処なり。花工,硫黄を点して其の樹に鍼し,艾炷を以て其の根に灸す。これ花を医するの法と謂う」は,諸虫の退治を目的とした「打鍼」の隠喩と考えられるが,宋代の園芸書を典拠としている点は興味深い〔洛陽牡丹記三・風土記;1072迄〕。なぜなら,打鍼のアイデアの源泉が法具や神器の延長線上ではなく,園芸からの技術転用という新たな可能性が開けるからである*14。
著者
近藤 喜代太郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.928-929, 1979-06-10

タバコの受難時代 人とタバコとの永いかかわり合いの歴史上,後者の受難がつづく時期は今日を措いてない.私はパイプ党だが,つぎつぎにだされるタバコの有害性の証拠のまえには脱帽するしかない.2月19日の朝日新聞によると,日本でのタバコによる損夫は,火事や病気で年に1兆1千億円をこすというが,これも愛煙家には気分のよくない数字だ,石油蛋白の有害論が盛んだが,もしタバコに永い歴史がなく,新顔の嗜好品だったら,ひとたまりもなく追放されてしまうことだろう. ところが,それほど悪者扱いされるタバコをのむ人々が罹りにくい病気がただひとつだけ知られている.専売公社の喜びそうなこの病気はパーキンソン病で,患者の既往歴を調べると,不思議にもかえって喫煙歴が少ない.パーキンソン病は初老期以降に起き,振戦,筋の固縮,無動症などを呈する病気で,本誌16巻2号の特集でとりあげられている.
著者
小平 潔 柳沢 温
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1165-1166, 1979-12-20

尿道脱とは女子尿道粘膜が外尿道口より反転脱出した状態で,粘膜が全周にわたり脱出した完全(輪状)尿道脱と部分的尿道脱に区別される。いずれも外尿道口にイチゴ状の軟らかい赤色の腫瘤として認められる。時間の経過とともにうつ血,浮腫を来し腫瘤は増大するが,いずれの場合でも膀胱内にカテーテルの挿入可能なことにより診断は容易である。治療として,a)保存的整復術,b) Fritsch氏結紮法,c)切除術,の3方法がある。整復術についてはBalloon catheterを用いて還納整復させる方法が好結果を得ている報告1)があるが,一般には再発しやすく,またFritsch氏結紮法を推奨する報告2)も見られるが,最も普通に行なわれているのは切除術である。
著者
根來 秀樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.46-48, 2014-03-15

目の前にいる青年期の患者さんが、「イジメられている、悪口が聞こえる」と興奮して訴える時、私たち精神医療に従事する者はそれが事実かどうか確かめるだろう。そして家族などからの情報で、現在イジメを受けている事実や悪口を言われているような事実がないとすれば、「幻覚妄想状態」と判断されるのは自然なことかもしれない。幻覚妄想を呈する精神疾患は覚醒剤精神病や気分障害に伴うものもあるし、身体疾患に伴うものもあるが、それらが状況的に否定されれば、このような症例は好発年齢などからも「統合失調症」と診断されることが多いのではないだろうか。 しかしその患者さんは、実は統合失調症ではない可能性がある。現在そのことに警鐘が鳴らされるようになった★1。
著者
久保田 潤
出版者
メジカルビュー社
巻号頁・発行日
pp.112-120, 2019-01-26

画像診断には解剖の理解が重要である。解剖の勉強には通常テキストやイラストなどの平面の情報が使われているが、立体的な理解はしばしば難しい。筆者はRoux-en-Y再建術とPetersenヘルニアを立体的に理解するための模型を製作し、小腸動脈同士の位置関係によりPetersenヘルニアをCTで診断する方法を考案した。模型作りは解剖の空間的な理解を助けるうえに、それを画像診断に応用するためのアイデアの創出に役立つ。
著者
前川 智 新澤 真理 原田 大
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.460-466, 2021-04-20

【ポイント】◆内視鏡的胃内バルーン留置術は,BMIが27 kg/m2以上の肥満患者に対する減量を目的として,内視鏡を用いて胃の中に直径が約10 cmのバルーンを留置する術式のことである.◆物理的な胃内容量の減少と機能的な胃内容の排泄遅延によって,摂食量を減少させることで減量効果を期待する治療法であり,穹窿部にバルーンを留置することが望ましい.◆完全に可逆的な治療法であるため,十分な効果が得られるためには,バルーン留置中および留置後の食事指導が重要となる.*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年4月末まで)。
著者
藤田 郁代
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.968, 2003-10-10

著者のバーバラ・ウィルソンは英国の高名な神経心理学者であり,本邦でも「The Rivermead行動記憶検査」および「BIT行動性無視検査」を通じてなじみの深い方も多いであろう. 神経心理学は医学,認知科学,心理学,言語病理学,作業療法学等からの学際的研究が重要な位置を占める学問領域である.著者の学問的背景は心理学にあり,詳細な症状記述と行動変化の過程の分析にその特徴を見てとることができる.特に,各種の神経心理学的症状にリハビリテーションを行い,その効果を人生の質(QOL)の面から長期に渡り追跡し,記述した書としては他に類を見ないといってよいであろう. 本書では著者が約20年の間に出会い,リハビリテーションを行った600人以上の脳損傷患者の中から特に多くのことを教えてくれた20人が取り上げられている.症状としては記憶障害,失語,失読,失認,視空間無視等を呈した者である.これらの者は治療期間だけでなく治療後も長期的にフォローアップされ,また本書を著すにあたってインタビューも試みられており,その障害が彼らの生活にどのように作用し,著者の治療的介入がその後の人生にどのような変化をもたらしたかが詳しく記述されている.