著者
健山智子 小原伸哉 田中泰史 桶川萌 古川顕 金崎周造 若宮誠 韓先花 陳延偉
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.255-262, 2011-07-20

統計形状モデルは医用画像データから統計解析に基づいて人体臓器の個体間における大きさ,形状のバリエーションを記述したものであり, 計算解剖学や術前計画など多くの医療分野において幅広く利用されている.一方,統計形状モデルを構築する場合,各症例間における表面点の対応付けを行うためには複雑でかつ膨大な計算を要するだけでなく,統計形状モデル構築の際に用いられる学習用症例数が限られているため,症例数に対し形状特徴ベクトルは膨大な次元を要してしまう.そのため,少数症例からでも汎化能力の高いモデルを構築するためには臓器の形状情報を効率的に取り扱う必要がある.本研究では新たな統計形状モデル作成法として, 人体臓器の3次元形状を球座標により形状間における表面点対応を回転のみで行い,得られた形状表現を球面調和関数に展開することで形状情報ベクトルの次元を抑えることが可能な統計形状モデルの構築法を提案する. 提案法は球面調和関数に展開された係数により3次元形状情報を効率的に扱えることから,サンプル数に依存することなく高い汎化能力を持つ統計形状モデルの構築が行われ,そのモデルは未知のデータに対しても高い再現率で再構成が行えることを示す.
著者
松本 隆
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.e21-e25, 2021-07-15

盗まれた個人情報は多様な犯罪者コミュニティに拡散されていく.筆者はデジタル・フォレンジック調査の中で,サイバー犯罪者が攻撃にかけるコストに注目し,盗まれた個人情報を売買するダークマーケットの調査を行った.その結果,氏名/性別/住所/生年月日など4情報が羅列された名簿データではなく,Fullzと呼ばれるような,複数の情報ソースを組み合わせた,より深く「他人になりすます」ための情報により高い値が付く傾向にあることが分かった.また,具体的な悪用のしやすさや,悪用者の安全性に考慮された「商品」が,ダークマーケットにおいてはより評価され,価格に反映されていることが分かった.
著者
広田 康生
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.43-61, 2016-03-15

本稿は、新宿大久保、百人町における新来住者、エスニシティと旧住民との「場所形成」をめぐる衝突と融合の諸相の社会学的実態報告を目指している。エスニック・コミュニティへの統合圧力あるいは「排外主義」が強まる中、「積極的主体」から「ネガティブな主体」へとイメージの逆転が進行しだしたといわれる移民、エスニシティと対応する旧住民との「場所認識」の衝突と融合過程と、「推移空間化」を背景に、移民、エスニシティ側からの連携を模索する姿を描こうとしている。以下、1では本稿における問題意識について主に「共生」の逆転現象について問題提起をし、2で、現在のエスニック・コミュニティを分析する分析地平について、トランスナショナル・コミュニティ視角と、推移空間化、及び昨今のヘイトスピーチに代表される統合圧力の現状について説明し、3では、こうした「場所形成」同士の衝突と融合を、背景としての新宿の「推移空間化」の現状の中で説明し、4において筆者の聞き取り調査のなかに、場所認識の実相を見ていく。本稿は、「排外主義」の中でも「共生」の契機を探ろうとする移民、エスニシティと日本人住民の活動を描くことを目的にしている。
著者
坂田 達紀
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要
巻号頁・発行日
no.68, pp.7-29, 2019-09-25

" 村上春樹の「とんがり焼の盛衰」は、伊勢丹デパート主催のサークル雑誌に1983 年に発表された、3600 字程度の分量の短編小説である。その後、単行本3 冊、文庫本1 冊、全集のうちの1 冊(いずれも短編集)に収載され、現在では高等学校国語教科書にも採録されている。 この作品もまた、他の多くの村上の短編作品と同様、字面を追って書かれていることそれ自体(たとえばストーリーなど)を理解することは容易いが、結局のところ作品全体として何を言わんとしているのか(たとえばテーマなど)を把捉することの困難な作品である。言い換えれば、ただ単に表面ないし表層を読むのみならず、内側ないし深層までをも読むことが求められる作品なのである。 本稿では、まず、作品「とんがり焼の盛衰」がどのように読めるのか、いわば読みの可能性を、本作品から読み取れる寓アレゴリー意に着目しながら考察した。ついで、本作品の文体的特徴を分析し、最後に、いわゆる村上文学全体の中での本作品の位置付けを論じた。 明らかになったことは、まず、読みの可能性としては、様々な寓意が読み取れることはもとより、その奥に、現代の人間社会に対する作者・村上春樹の批評精神が読み取れる、ということである。この批評精神のゆえに、この作品の価値は高まるのではないか、ということも指摘した。ついで、本作品からは、次のような四つの文体的特徴が析出された。 ⑴ 非現実を現実化する仕掛け(「炭取が廻る」仕掛け)が仕組まれている ⑵ 様々な意味(寓意)が読み取れるアレゴーリッシュな文体である ⑶ ユーモアの要素が見られる ⑷ 遊離したシニフィアンが秩序をもたらす文体である これらのうち、⑷の特徴は、この作品を特異なものにする重要な文体的特徴であった。最後に、作品「とんがり焼の盛衰」は、村上が「デタッチメント(かかわりのなさ)」を大事にしていた時期に書かれた、「デタッチメント(かかわりのなさ)」の考え方を色濃く反映した作品として、村上文学全体の中に位置付けられることを指摘した。併せて、本作品中の「とんがり鴉」は、後に書かれた長編小説『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』( 1985 年)に登場する「やみくろ」の原型と考えられる可能性についても言及した。 本稿のこれらの考察・分析の結果は、本作品を国語教材として用いる際にも参考になるのではなかろうか。"
著者
宮腰 隆 松田 秀雄 増野 武裕 畠山 豊正 山淵 龍夫 中嶋 芳雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第51回, no.ハードウェア, pp.65-66, 1995-09-20

NANDゲートのみによる論理回路の設計は構造の一様性から集積回路化に適し,重要である.(文献[1])では,一線入力多段NANDゲート回路の一設計法(以下MA法と略)を述べているが,そこでは,関数を積和項表現で与え様々な操作を行っている.今回は,積和項表現の代わりにBDD(二分決定グラフ),あるいは,SBDD(共有二分決定グラフ)を用いて効率化できるところは効率化し,多出力関数も扱えるように,拡張している.