著者
中川 仁 Jin Nakagawa
巻号頁・発行日
pp.1-67, 2012-01-01
著者
田中 康雄
出版者
北海道大学大学院教育学研究科附属子ども発達臨床研究センター
雑誌
子ども発達臨床研究
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-10, 2007-03-30

児童精神科医の視点から子どもたちの生きづらさについて、考察した。 生きづらさを問い続けるためには、生きるということ、さらには「豊かに生きる」ということを思索する必要がある。その意味で、生きがい感を持ちながら「生きる」ということを総括し、精神医学全体がもつ不確実性について言及した。故に近年問題視される発達障害という定義について、より熟考する必要性があることも強調した。 実際の子どもたちが抱える「生きづらさ」について提示しながら、解決に向け試みた。結果として、根源的にある、他者の意識について推量する想像力を行使することで、異質な他者を排除せず、認めあう自由を相互に手に入れることができるための「思いやり」の重要性を指摘した。 子ども発達臨床研究センターが、学際的に分野横断性と当事者性とをバランスよく持ち続け、鳥の目と蟻の目をもって、現在の社会状況に向き合える機能を持つことに期待したい。
著者
平野 郁子
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.132, pp.45-57, 2018-08-30

昨今,自閉症スペクトラム者への自己理解支援が重視されているが,当事者にとっての自己理解の意義や支援方法が十分に整理されているとは言い難い。そこで本稿では文献検討により自己理解支援の課題を整理した。自己理解には多様な意味があるが,支援は障害特性に焦点化しやすく,問題の原因を脱文脈的に本人に帰属しやすい問題があり,トータルな個人としての自己を捉える必要があると考えられた。一方,当事者の語りを重視するナラティヴアプローチや当事者研究では,応答的な語りが当事者の自己の回復や生きにくさの軽減につながることが示唆されている。ここからは当事者性を広義に捉えれば立場の違う同士であっても対話を通じて自己理解が展開される可能性が考えられる。しかし,当事者にとっての自己理解の意義や立場の異なる者とのかかわりのなかでどのように自己理解が紡がれるのかは明らかではなく,さらなる質的検討が必要である。
著者
作田 佳奈美 湯浅 哲也 加藤 靖佳 SAKUTA Kanami YUASA Tetsuya KATO Yasuyoshi
出版者
Special Needs Edudcation Research Center, University of Tsukuba
雑誌
筑波大学特別支援教育研究 = THE JAPANESE JOURNAL OF SPECIAL NEEDS EDUCATION RESEARCH (ISSN:1883924X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.83-94, 2018-03

聴覚特別支援学校小学部の音楽科の授業では,音楽の諸能力を伸ばすとともに,音楽を愛好する気持ちや楽しむ気持ちを育むためにさまざまな実践が行われている。聴覚特別支援学校に在籍している多くの聴覚障害児は聴覚活用に制約があることから,音楽科の指導の難しさが課題とされている。そこで,本研究では,聴覚特別支援学校小学部の音楽科担当教員を対象に,質問紙調査を通して音楽科の授業の工夫や取り組みについて検討した。その結果,音楽科の授業を行うにあたっての注意点や考慮すべき点として,「音楽は楽しいという気持ちを育てる」といった回答が最も多く見られた。また,個々の児童の聴こえへの配慮とともに,(1) 音楽を理解するために歌詞表示など視覚的な情報や補助教材の確保,(2) 歌唱における自由な発声表現や個々の聴こえや嗜好に合わせた器楽や楽曲の選定,が聴覚障害児にとって音楽科の授業を楽しむための留意点であることが示唆された。
著者
井手 裕子 IDE Yuko
出版者
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
雑誌
名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学 (ISSN:13461729)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.57-65, 2015-12-28

This paper focuses on mirroring as an intervention in language development and, through reconfirmation of its definitions and an overview of studies on approximate concepts, examines effects of the mirroring. The mirroring is defined as becoming synchronized with emotional conditions of infants and reflecting them like a mirror. This is considered to serve an important role in encouraging infants to increase their self-awareness by functions of giving feedback, controlling emotions, maintaining communication, and sharing feelings. During language development of a child, imitation by his/her mother plays a role in enhancing the child’s understanding of language and nurturing his/her sociality. The mirroring is always accompanied by the mother’s behavior for attracting the child’s attention. As preceding studies show, for drawing attention of young infants, more salient behavior is needed. The above-mentioned knowledge suggests that in order to make the mirroring more effective it is necessary to give guidance to attract children’s attention as well as recommending the mirroring itself. Therefore, further study on a role of the attention-attracting behavior in the mirroring is expected.
著者
吉田 雄介
出版者
千里地理学会
雑誌
ジオグラフィカ千里 = Geographica Senri
巻号頁・発行日
vol.1, pp.31-49, 2019-03-30

イマニュエル・ウォーラーステインの世界システム論から多大な影響を受けたグローバル・ヒストリー研究やワールド・ヒストリー研究が,過去十年ほどの間に著しい発展をみせている。そして,グローバル・ヒストリーやワールド・ヒストリーの分野では,空間や地域に関連する諸概念が重要度と影響力を増し,その概念の解釈を発展させたり,空間に関連する用語の使用が激増している。これが人文科学・社会科学の分野での空間論的転回や空間論的革命の結果であることは明らかである。ただし,グローバル・ヒストリーやワールド・ヒストリーで使用される空間や地域に関わる用語の使用には,若干の問題があるように思う。そこで,本稿では,世界システム論やグローバル・ヒストリー,ワールド・ヒストリーの分野での,空間に関する用語の最近の解釈と使用について検討する。
著者
杉山 崇 Sugiyama Takashi
出版者
心理相談センター
雑誌
心理相談研究 : 神奈川大学心理相談センター紀要 (ISSN:21855536)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.3-16, 2015-03-31

Current studies have revealed that 5-httplr gene would impact emotional and affective pattern through serotonergic neuron system, and have found that SS type of this gene would cause negative emotional response pattern. So SS type of 5-httplr would be reported as “negative gene” by some mass media. But, the word of “negative” as a personality trait means not only emotional response, but also behavioral and thinking patterns and social attitude. In the context of psychotherapy, behavioral and thinking patterns and social attitude would be regarded as phenomena to depend on experiences and learnings, too. This article would try to consider whether or not we could call SS type of 5-httplr gene “negative gene” in psycho-education on Japanese psychotherapy. The result of this article would be that we can do partially.