著者
倉田 賢一
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.231-243, 2013-10-10

シェイクスピアの『ハムレット』は『十二夜』に次いで書かれたとするのが通説的であるところ,両者の構造的対比から得られるところは大きい。ジャック・ラカンは『ハムレット』を,ガートルードの欲望の対象の位置がクローディアスによって過剰に占められており,そのことがハムレットを精神的に動揺させる劇として解した。これを『十二夜』に適用すれば,オリヴィアの欲望の対象の位置が,過剰な喪によって逆に空位のまま保たれていることで劇が展開している,という構造が明らかになる。さらにマルヴォーリオいじめのサブプロットをトービーのハムレット的状況として解すれば,この二つの劇はちょうど裏返しの関係にあることになる。このように,中心となる女性の欲望をめぐって,一方では対象の位置を占めるものが破壊される悲劇が描かれ,他方では対象の位置を占めようとする人々が奔走する喜劇が描かれ,後者の喜劇のただなかに,前者の悲劇を予告する主題が含まれているのである。
著者
島谷 二郎 中村 泰
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2018-HCI-176, no.5, pp.1-6, 2018-01-15

空耳は,歌詞 ・ 言葉が別の言葉に聞こえる現象であり,日本ではユーモア,娯楽として親しまれている.人手による空耳文生成において使用する単語の種類を限定することでユーモアを向上させる手法がある.空耳の自動生成に関する研究は過去に行われてきたが,限定された単語のみを用いる状況は想定されてこなかった.使用できる単語の種類が限られる場合,日本語文を適当に区切り各パートに対する類音語を当てはめるという手法では,精度の高い空耳文の生成することが難しいという問題がある.そこで,動的計画法により文章の区切り方を含めて最適化することにより,音韻がより元の文章に近い空耳文を自動生成するシステムを開発した.Web アンケートを通じた評価により,文節で区切った場合よりも動的計画法を用いて最適化した場合において,音韻の類似性が主観的に向上することを示唆する結果を得た.
著者
長嶋 洋一
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2016-MUS-110, no.11, pp.1-8, 2016-02-22

主としてリラクセーション (メンタルのエクササイズ) のために開発された脳波センシング・ヘッドバンド "MUSE" について,Computer Music における新楽器/新インターフェースとしての応用という視点から検討した.MUSE は額に 5 電極,耳朶に 2 電極を持ち,さらに 3 次元加速度センサ情報とともに Bluetooth でホストに生体情報を伝送する小型軽量廉価な装置であり,Bluetooth の設定として UDP を指定すると OSC 互換となるため,既存の Computer Music システムとの親和性に優れている.本稿では,時定数の大きさから音楽演奏情報に適さないとされてきた脳波パターン認識,ノイズ除去の状況,加速度による首振りセンシング,そしてアーティファクトを表情筋/外眼筋センサとして活用する可能性について報告する.