著者
中村 潤 玉田 春昭
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.454-473, 2020-02-15

大量のプログラムからソフトウェアの盗用を発見するために,ソフトウェアバースマークが提案されている.バースマークは,プログラム中の特徴を抽出し比較を行い盗用を発見する技術である.従来のバースマークで想定している対象のプログラム数は数百から数千程度であり,それを超えて比較する場合,現実的な時間では比較できない場合もある.そこで本稿では,対象となるプログラムの大幅なスケールアップかつ,盗用検出に要する処理時間の短縮を目的とする.そのために,対象プログラムの比較の前に,精度は高くないが高速に比較できる手法を用いて,無関係なプログラムを除外することを考える.これを絞り込み段階として,従来の抽出段階,比較段階の間に導入する.提案手法に基づき,バースマーク絞り込みシステムMitubaを構築し,実験を行った.評価項目は所要時間,絞り込み率,誤検出,検出漏れ,精度,そして,保存性の6項目である.結果は,盗用か否かを判定するための閾値が0.2のとき,所要時間は従来の40%以下に抑えられ,80%以上のプログラムが無関係と判定された.残ったプログラムのうち,誤検出は90%程度と非常に高いものの,検出漏れは0%であり,精度も70%以上となっている.また保存性評価においても,一番強力な難読化が施された場合であっても80%以上のプログラムを見つけ出せ,良好な結果を示している.これらの結果をもとに最適な閾値を議論した結果,標準的には0.6程度の閾値が最適であるが,ユーザの問題設定によっては,閾値が0.2でも本手法は有効であることを示した.
著者
尾崎 タイヨ
巻号頁・発行日
no.8, pp.27-53, 2019-03-10

本分析は所得格差を中心に、各種政策がどのような特徴を持ち、影響をもたらすか、マクロモデルを構築して実証的に明らかにする。格差を対象とする分析では、家計における消費、収入等の構造が所得階級によって異なることをモデルに内生化する必要があり、「家計調査」の所得階級別データに依拠しながら、世帯を単位として階級別世帯収入、有業者数などを推計し、消費支出や労働供給を定式化する。一方、企業の分析では「法人企業統計調査」に依拠しながら、生産・販売、賃金や雇用の決定、投資等を製造業、非製造業に区分して定式化する。これらは、家計、マクロ経済と相互にリンクし、雇用、消費、GDPなどを決定する。このモデルを使って、最低賃金の引き上げ、教育費無償化、女性の労働参画、医療費負担軽減、従来型の公共投資政策という5つの政策を検証し、これらの政策が世帯収入、賃金、消費支出、GDP、雇用、格差にどう関わるかを評価する。
著者
北島 滋
出版者
旭川大学短期大学部
雑誌
旭川大学短期大学部紀要 = The journal of Junior College, Asahikawa University (ISSN:21861544)
巻号頁・発行日
no.49, pp.9-16, 2019-03-31

In previous journal number 48th of our junior college, my thesis dealt with the declining or impoverishment of living standard concerning elderly people, and analyzed their factors. Firstly, it focused that impoverishment of elderly people was due to failure of the regulationin social security system according to regulation theory. Secondly, Aging in Japan was possible to predict such situations based on demographics since 1980's, therefore, and possible to do that fiscal expenditure of annuity insurance, medical insurance and care insurance would increase with aging. That reason why, government could get out of the trap of economic growth strategy, or not tried to get out of it. As result, government had to get debts deficit bonds beyond trillion yen. I called such situations "failure of regulation" in that thesis.This paper deal with a problem of national budget concerning elderly people in journal number 49th of our junior college. Especially I focus on a problem of reduction and restraint of the budget distributed to the Ministry of Health, Labour and Welfare. It's analyzed about a possibility of the reorganization of national budget concerning elderly people. When government is keeping reducing and restraining budget allocation to elderly people, persons with disabilities and people who need support, their life won't consist any more the near future. By a relation with failure of a regulation of a social security system, I refer about the theory of Prof. Taro Miyamoto's community which cooperates each other. I think his theory claims attention very in formation of citizen autonomy.
著者
八亀 五三男
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 言語・文化篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; LANGUAGE and CULTURE (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.39-51, 2017-10-31

ゲルマン諸言語では,ウムラウト現象が大きな言語的特徴になっている。中でも,北ゲルマン語に属するアイスランド語には,他のゲルマン語に見られないような複雑なiウムラウト,uウムラウトが観察できる。ウムラウトという音韻現象を分析することによって,共時的言語現象を新たに通時的な視点から見直してみることがいかに重要であるかを明らかにするのが本稿の目的である。
著者
蔡 注國
雑誌
白鴎女子短大論集 = Hakuoh Women's Junior College journal (ISSN:03874125)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.24-39, 1986-03-01
著者
川崎 典子
出版者
東京女子大学論集編集委員会
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.271-282, 2014-03-13

Verb agreement in sign languages shows properties very different from agreement in spoken languages. Unlike in spoken languages, in which subject-agreement is more common, in sign languages, verbs agree with their object and not the subject. Only a subset of the verbs however show agreement, and the similarities in the meaning of agreeing verbs across sign languages cannot be accidental. No sign language has been reported to lack verb agreement, while spoken languages vary in this respect. The present article argues that the necessity of verb agreement in sign languages stems from the fact that sign languages employ not only the signer’s hands but also the signer’s face and gaze for non-manual marking, so that the signer’s presence as a cognizer can never be ignored. Without agreement, sentences with a verb taking an animate object misrepresent the participants of the events described. Modeled on an Optimality Theoretic analysis of verbs of coming/going in four spoken languages, the articulation of agreeing verbs in sign languages can be seen as a way of avoiding misrepresentation of the relation between the signer and the event.
著者
森 哲彦
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.167-192, 2012-12-21

ヨーロッパ哲学は、古代ギリシアに始まる。古代ギリシア哲学の3つの時期区分のうち、ホワトヘッドは「プラトン的」立場から、プラトンを含む第二期に注目し、第一期のソクラテス以前哲学者達を顧慮しない。これに対し、第一期ソクラテス以前哲学者達を高く評価する哲学者達が、数名挙げられる。本論では、西洋哲学の起源は、その哲学者達が指摘するように、第一期ソクラテス以前哲学者達に有ると考え、それらの第一期哲学者達の解明を、試みるものである。なお本論では、副題で示すように、ディールス-クランツ『断片』とカント批判哲学の論述を用いるものとする。本論文の構成について、哲学の兆候を示す哲学以前、前期自然哲学で自然の原理を問うミレトス学派、また別個にピュタゴラス学派、ヘラクレイトスを取り上げる。更に存在と静止のエレア学派、後期自然哲学の多元論と原子論、そして認識論のソフィスト思潮の特質をそれぞれ論述する。この試論は、「哲学的自己省察」の一つである。
著者
武智 峰樹 徳永 健伸 松本 裕治 田中 穂積
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SIG12(TOD19), pp.51-63, 2003-09-15

要素技術としての文書分類は,質問応答やWeb ナビゲーションにおける主要な構成要素である.特に表層的なテキストの特徴を主に利用する質問応答では,与えられた質問のタイプに応じて適切な回答候補を抽出できる分類エンジンが重要である.またWeb ナビゲーションにおいては,従来の質問応答が扱ってこなかった質問も扱う必要があり,そのような質問に対しても適切な回答候補を選び出すための分類技術が求められる.本研究は,Web ナビゲーションが扱う質問のうち,特に手順に関する質問を取り上げ,その回答候補の分類に有効な特徴量を明らかにすることを目的とする.その試みとしてWeb ページにおいてHTML のリストタグが付与されたテキストを記事集合として,それを手順について書かれたテキストとそれ以外のテキストに分類するタスクを考える.検索エンジンを用いて箇条書きを収集し,機械学習の一手法であるSupport Vector Machine を用いた文書分類を行い,その結果の観察に基づいて手順について書かれた箇条書きの抽出に有効な特徴量を考察した.N-gram や語の頻度情報をベースにした手法により,コンピュータ分野に関しては90%以上の精度で分類可能な特徴量の組合せを得た.
著者
曽根 由希子 吉田 尚史 清木 康
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.68(2005-DBS-137), pp.607-614, 2005-07-15

本稿では精神医学分野データベースを対象とし 病名・症状の抽象度と因果関係性を反映した検索の実現方式を示す.本方式は事象の上位・下位概念といった抽象度依存検索や原因・結果といった因果関係検索などの 特定の方向を有したベクトル空間による検索を可能とする.本方式により 特定の方向性に関する計量を実現することにより 利用者の検索目的に応じた事象やその文書データを検索可能となる.本稿では 精神医学データベースを対象とし 本方式の実現可能性を検証する.
著者
図子泰三 吉田 尚史 清木 康
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.43, no.SIG02(TOD13), pp.216-230, 2002-03-15

本論文では,ドキュメントデータ群を対象とした文脈依存動的クラスタリングの再帰的適用による意味的知識発見方式を提案する.本方式の特徴は,次の2 点にまとめられる.文脈に応じて動的にドキュメントデータ群のクラスタリングを行い,さらにクラスタ群からの知識発見を実現する点,および,共通の性質を有するより多くのドキュメントが含まれるクラスタの抽出を可能とする点である.本方式により,分析対象であるドキュメントデータ群を対象として,文脈や視点に応じた意味的分析結果を動的に得ることが可能となる.応用分野として,医療ドキュメントデータ群を用いたシステム構築,および,実験結果を示し,本方式を適用したマイニングシステムの実現可能性および有効性を明らかにする.
著者
香取 智宜
出版者
学校法人松商学園松本大学
雑誌
教育総合研究 = Research and Studies in Education (ISSN:24336114)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.139-154, 2019-11-30

「税務会計」という学問が、如何なる形で大学・短期大学で教授されているかを考察するために本稿を執筆した。この学問は、現在の学問領域において複雑な位置付けにあり、つまり、法律的分野の学問なのか、それとも会計的学問に属するものなのかが、研究者の中で意見が分かれるものである。したがって、教授する大学教員がどちらのスタンスを重視して授業に臨まれているかを、使用されている教科書に基づいて検討するものである。
著者
松前 ひろみ 長谷 武志 清水 健太郎
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2020-CH-122, no.2, pp.1-5, 2020-01-25

ヒトのゲノム情報からは,人類の系統や混血などの歴史を詳細かつ統計的に推定することができる.そうしてゲノムから推定される民族集団史の系統関係と,文化,とりわけ言語の分類には,一定の関連があると考えられてきた.しかし言語の分類のうち,言語族という語彙レベルで近縁な言語間の関係を除くと,遠い言語同士の関係(例えば日本語,アイヌ語,韓国語)を定量的に分析することは,これまで困難であった.私たちは文法の比較法である言語類型論の研究者とともに,文法のデータベースから定量的に語族を超えた言語の特徴の類似性を抽出し,ゲノムに基づく民族集団の関係との関係性を分析することに成功した.データベースに蓄積された文化と生物学の情報を統合的に解析する方法を提案する.