- 著者
-
齊藤 知範
- 出版者
- 日本犯罪社会学会
- 雑誌
- 犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, pp.25-41, 2018-10-20 (Released:2020-03-20)
アグニューは,マートンの古典的な緊張理論を改訂し,一般緊張理論(GST)として再生した.それ以来,人々がなぜ犯罪へと追い込まれるのかを説明する有力な枠組みとして,一般緊張理論は幅広い支持を集めてきた.一般高齢者と初回の万引きにより検挙された高齢被疑者をマッチドペアにしたデータセットを用いて,一般緊張理論における2つの種類の緊張が高齢者の万引きリスクに影響するかを分析した.ひとつの緊張は目標を達成することができないことであり,もうひとつの緊張は価値あるものを失っていることである.また,対処スキル,社会経済的地位,セルフコントロール,ソーシャルサポートの供与が高齢者の万引きのリスクを低減させるかについても,分析した. 主要な結果は,以下に示すとおりである.1 目標を達成することができないことは,高齢者による万引きのリスクの高さに影響する.2 価値あるものを失っていることは,高齢者による万引きのリスクの高さに影響する.3 社会経済的地位,セルフコントロール,ソーシャルサポートの供与は,高齢者による万引きのリスクを低減させる. 結果にもとづき,理論的含意,実践的含意についても議論する.