著者
入江英嗣 山中崇弘 佐保田誠 吉見真聡 吉永努
雑誌
研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.2013-ARC-206, no.5, pp.1-10, 2013-07-24

プロセッサの性能向上の基本戦略は,2000 年頃からはマルチコア構成の拡張が主流となり,トランジスタ資源をコア数の増加に利用することで,効率的に TLP 性能を向上させてきた.しかしこのアプローチも,TLP の収穫逓減やダークシリコンの増加など,継続的な成長には限界が指摘されている.この限界を打ち破り,高性能なメニーコアプロセッサを実現するための課題の一つとして,一つ一つのコアの実行性能と電力効率の双方を高める実行アーキテクチャの開発が挙げられる.ここではピーク ILP 実行幅よりも,コンスタントな高性能と高効率が求められる.3 次元実装技術に代表されるように,パッケージ内トランジスタ数の増加は堅調であり,容量を用いて処理レイテンシと電力を削減するアーキテクチャへの転換が今後のプロセッサ成長の鍵と考えられる.本論文では,ライト・ワンス・マナーに基づいた大きな論理レジスタ空間を導入することで,レジスタリネーミング処理を取り除き,更にはバックエンド幅の増加なく実行性能を増加させる STRAIHGT アーキテクチャを提案し,実現のための技術と性能の見積もりを述べる.STRAIGHT アーキテクチャに見立てたパラメタを用いた初期評価では,同じワークロードに対するエネルギー消費を 12% 削減しながら,同時に約 30% の IPC 向上が得られ,性能/パワー比を改善する新しい実行方式として有効であることが示された.
著者
CHEN Stacey H. CHEN Yu-Kuan WU Huey-Min
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.17-03, 2017-05

Datasets of schools or hospitals often include an urban.rural divide drawn by government. Such partition is typically determined by subjective thresholds for a few variables, such as access to transportation and local population size, leaving aside relevant factors despite data availability. We propose to measure ‘remoteness’ by mapping a comprehensive set of covariates onto a scalar, and define an objective score of remoteness using a standard selection model. We apply the proposed method to data from Taiwanese public elementary schools. Our method replaces 35% and 47% respectively of the current official list of ‘remote’ and ‘extra-remote’ campuses, shifting the remoteness designation to those furthest from train stations, having the highest teacher vacancy percentages, and located in the least populous areas with the least well-educated populations. The campus- and district-level variables used are publicly available and periodically updated in most advanced economies, and the statistical model can be easily implemented.
著者
安斎 芳高
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.229-235, 2001-12-25

今, 保育所を悩ましているのが保護者からの与薬依頼である.病気の回復期や慢性疾患をもつ子どもにとって, 薬は欠かせない.本来, 保育所では, 子どもへの薬の服用は親が行うことを原則としているが, 働いている親は会社を休むわけにもいかないため, 保育士に与薬を頼むことになる.しかし, 医師でないものが親に代わって薬を飲ませることは医師法による医行為に触れるという法的な問題が絡む.保育所には, 嘱託医を配置することが義務付けられているが, そのほとんどが常駐ではないため, 随時対応できる状況にはない.また, 保育所における看護婦等の配置率は未だ2割弱にすぎず, 保育所の保健対応体制は十分ではない.そのため保育所は, これら保護者のニーズに対しそれぞれ独自の判断で対応しており, 様々な薬の扱いに対する混乱と事故を招いている.一方, 平成12年改訂された保育指針では, 積極的な保健対応策を打ち出した.病気の子どもの保育については, 「乳幼児健康支援一時預かり事業」の活用を推奨すること, 保育中に体調が悪くなった子どもには, 嘱託医などに相談して適切な処置を行うよう特に書き加えるなど, 従来の保育機能に加えて保健対応機能の必要性を示したものと言えよう.そこで本稿では, 保育所が行う与薬を安全かつ適切に行うための与薬行為のあり方とその対応策について, その実態と法的側面, また保育サービスの機能的側面から考察をした.結論として, 保育所の保育士が与薬を子どもにする場合, 医師や看護婦等の協力が条件となること.また, これからの保育所のあり方として福祉サービスと保健・医療は一体的に捉え, 切り離すべきではないことなどである.したがって保育所における保健・医療体制の早期確立が望まれ, 少なくとも嘱託医に加えて看護婦等医療関係者の配置を全保育所に義務づけることがぜひ必要である.
著者
宮本 一夫
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.151, pp.99-127, 2009-03-31

夫余は吉長地区を中心に生まれた古代国家であった。まず吉長地区に前5世紀に生まれた触角式銅剣は,嫰江から大興安嶺を超えオロンバイル平原からモンゴル高原といった文化接触によって生まれたものであり,遼西を介さないで成立した北方青銅器文化系統の銅剣であることを示した。さらに剣身である遼寧式銅剣や細形銅剣の編年を基に触角式銅剣の変遷と展開を明らかにした。それは吉長地区から朝鮮半島へ広がる分布を示している。その中でも,前2世紀の触角式鉄剣Ⅱc式と前1世紀の触角式鉄剣Ⅴ式は吉長地区にのみ分布するものであり,夫余の政治的まとまりが成立する時期に,夫余を象徴する鉄剣として成立している。前1世紀末から後1世紀前半の墓地である老河深の葬送分析を行い,副葬品構成による階層差が墓壙面積や副葬品数と相関することから,A型式,B型式,C・D型式ならびにその細分型式といった階層差を抽出する。この副葬品型式ごとに墓葬分布を確かめると,3群の墓地分布が認められた。すなわち南群,北群,中群の順に集団の相対的階層差が存在することが明らかとなった。また,冑や漢鏡や鍑などの威信財をもつ最上位階層のA1式墓地は男性墓で3基からなり,南群内でも一定の位置を占地している。異穴男女合葬墓の存在を男性優位の夫婦合葬墓であると判断し,家父長制社会の存在が想定できる。A1式墓地は族長の墓であり,父系による世襲の家父長制氏族社会が構成され,南群,北群,中群として氏族単位での階層差が明確に存在する。これら氏族単位の階層構造の頂点が吉林に所在する王族であろう。紀元後1世紀には認められる始祖伝説の東明伝説の存在から,少なくともこの段階には既に王権が成立していた可能性が想定される。夫余における王権の成立は,老河深墓地の階層関係や触角式銅剣Ⅴ式などの存在から,紀元前1世紀に遡るものであろう。沃沮は考古学的文化でいうクロウノフカ文化に相当する。クロウノフカ文化の土器編年の細分を行うことにより,壁カマドから直線的煙道をもつトンネル形炉址,さらに規矩形トンネル形炉址への変化を明らかにし,いわゆる炕などの暖房施設の起源がクロウノフカ文化の壁カマドにある可能性を示した。さらにこうした暖房施設が周辺地域へと広がり,朝鮮半島の嶺東や嶺西さらに嶺南地域へ広がるに際し,土器様式の一部も影響を受けた可能性を述べた。こうした一連の文化的影響の導因を,紀元前後に見られるポリッツェ文化の南進と関係することを想定した。
著者
鶴﨑 美徳
出版者
横浜市立大学医学会
雑誌
横浜医学 = Yokohama medical journal (ISSN:03727726)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.585-589, 2017-03-30

₂₀₀₅年以降,次世代シークエンサー(Next Generation Sequencer,NGS)が順次市場に登場し,主にメンデル遺伝性疾患(単一遺伝子疾患)の責任遺伝子が次々と同定されている.特に,NGSを利用した全エクソーム解析(Whole Exome Sequencing,WES)により,様々なメンデル遺伝性疾患の解明が,その周辺技術の開発とも相まって,現在も精力的に行われている.本総説では,筆者が携わった遺伝性難治疾患のうち,原因不明なメンデル遺伝性疾患のWESを用いた責任遺伝子の同定,および病態解明の自験例(Coffin-Siris 症候群,脊髄性筋萎縮症,習慣性流産)を紹介する.
著者
岸本 千佳司
雑誌
AGI Working Paper Series
巻号頁・発行日
vol.2017-08, pp.1-32, 2017-03

本研究は、サービスロボット・ベンチャー企業のテムザック社の事例分析である。限られたリソースしか持たない同社が、業界そのものの立ち上げをリードする先駆者としての役割を果たしていることに注目する。そのカギとなるのは大学研究者等とのオープンイノベーション・ネットワークである。同社をその中核たらしめているコアコンピタンスは、インテグレーション(総合化)と実用化(製品化)の能力である。これを支える経営上の特徴として、基本的に“本社/社長~関係会社・子会社/「方面軍司令官」~一般社員”の3 層からなるシンプルな企業組織を土台に、限られた自社資源を豊富な「外部兵力」(提携する大学研究者・学生等)の活用で補う共同研究開発、および複数の専門領域を理解し調整できる「プロデューサー的」人材の成長を促す仕組みがある。加えて、自社の必要に迫られて「産業の関連インフラ」構築(部品サプライヤー開拓、量産拠点の構築、販売ルート開拓、サポートサービスや保険の整備、実証実験の場の開拓など)に取組むことが、先駆者としての存在感をさらに高めることに繋がっていることを示す。
著者
松川 智義 中村 順一 長尾 真
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.40(1989-NL-072), pp.1-8, 1989-05-19

自然言語処理のシステムを構築する際に用いられる単語の分類を客観的なデータ解析から得る方法がいろいろと提案されている.その中には,単語の共起に関する実例データ(共起データ)を用いて単語を分類するというアプローチがある.ところが,それらの多くが前提としている単語間の「距離」(意味的な遠さ)だけで,多様な単語の意味を表現することには限界がある.また,実際の共起データには様々な「雑音」が混ざっている.本研究では,共起データに基づいた,「距離」という考え方を用いない,「雑音」に強い,単語のクラスタリング・アルゴリズムを作成した.
著者
伊藤亮介 駒谷 和範 河原 達也 奥乃 博
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.14(2002-SLP-045), pp.107-112, 2003-02-07

ロボットとの音声対話をより円滑にするためには,言語的情報だけでなく話者の心的状態感情を取り扱う必要がある.本研究では,親近感,喜び,困惑の感情を対象として,WOZ 方式によって収集された子供とロボットとのリアルな対話データを用いて,韻律的特徴に基づく分析・判別を行う.特に,対話であるという状況を考慮して,それらの特徴量の発話ごとの変化量や,発話間の時間間隔を利用する.これにより,事前学習を必要としないリアルタイムな判別を可能にする.判別にはSVM 及びC により学習した決定木を用い,困惑で,喜びで,親近感での判別精度を得た.この感情判別を導入した音声対話機能を実ロボットRobovie に実装し,動作の確認を行った.
著者
服部真之 駒谷和範 佐藤理史
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.517-518, 2013-03-06

ロボットに搭載されたセンサから得られる情報のみを使用するような音声インタラクションでは,音源定位誤りや音声認識誤りに起因する誤動作が生じやすい.ロボットに誤動作が生じるとインタラクションの進行が妨げられる.本研究では,ロボットの誤動作時の参加者の反応に着目し,その分析に基づいて誤動作の自動検出を行う.まず,ロボットと参加者のインタラクションを記録し,誤動作発生時の典型的な参加者の反応を分類する.次に,ロボットが顔を向けた直後や返答の直後などの,参加者の各反応が生じている区間に現れるシステムのログから,誤動作を自動検出する.評価実験によって,本研究で見出した典型的な参加者の反応を用いて,誤動作を自動検出できることを示した.
著者
比企野純太 中野有紀子 安田清
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.195-196, 2011-03-02

近年,我が国における認知症患者は年々増加傾向にあり,患者数に対して介護者の数が全く足りていないという現状がある.本研究では,会話エージェントが患者に対応することにより認知症患者の精神安定,介護者の負担軽減を目指している.そのための基礎的な検討として,本稿では,簡単な質問を認知症患者に行うとともに,患者の発話に対して適当なタイミングで頷く会話エージェントを実装し,認知症患者複数名による評価実験を行った結果を報告する.特に,会話エージェントの静止画を用いた場合,テレビ番組を視聴した場合と比較して,開発した会話エージェントが聞き役になることによって,患者がどの程度落ち着いた様子でいられたかを定量的に評価するとともに,それによる介護者の負担の軽減について考察した結果を報告する.
著者
住澤 知之 河井 一明 スミザワ トモユキ カワイ カズアキ Tomoyuki Sumizawa Kazuaki Kawai
雑誌
南九州地域科学研究所所報 = THE BULLETIN OF THE INSTITUTE
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-5, 2014-03-14

In many previous reports, it has been suggested the daily ingestion of dried-bonito broth (DBB) might improve various symptoms related to fatigue. To (re)confirm these effects of DBB, 24 healthy young female subjects ingested DBB for 40 or 42 days. Measurement of fatigue score on the profile of mood states (POMS) questionnaire, critical flicker-fusion frequency (CFF) and physical fitness using bicycle ergometer were performed before and after the ingestion periods. The urinary amount of 8-hydroxy-2’-deoxyguanosine (8-OH-dG) and creatinine were also measured before and after exercise stress using bicycle ergometer. Although the analysis for fatigue score on the available POMS data didn’t significantly decreased, 7 subjects with high fatigue score (more than 20 points) before the ingestion periods revealed the significant improvement of the score. Also significant increase of CFF showed the recovery from the mental fatigue by DBB ingestion. On the other hand, since the results for measurement of physical fitness and urinary 8-OH-dG level corrected with creatinine amount didn’t change significantly, we couldn’t observe the anti-fatigue effect against physical fatigue in this study. All things considered, our results suggested that the daily ingestion of DBB might show the tendency for the improvement against at least some type of fatigue.
著者
角本喜紀 西島 英児 水津 宏志 先崎 隆 薦田憲久
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.209-216, 2006-01-15

LSI 技術の進歩にともない,監視制御系システムにおいても汎用製品の利用や効率的なソフトウェア開発が浸透しつつあり,鉄道運行管理システムにおいてもソフトウェア開発の効率向上がこれまで以上に強く要求されている.本論文では,鉄道運行管理システムにおいて,様々なシステム構成に共通に適用可能とするソフトウェアアーキテクチャとこれを実現するミドルソフトを提案する.提案ミドルソフトは,受信データのバッファリングと提示処理を1 つの処理モジュールにて実行することにより排他制御のない高信頼な構造を実現する.また運行情報をシステム構成に依存せずつねに鉄道路線全体の情報として鉄道運行管理アプリケーションに提供する共通データインタフェース機能を持つ.