著者
山岡 泰造 松浦 清 並木 誠士 中谷 伸生 張 洋一 井渓 明
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

これまで積極的に評価がなされず、研究の余地を大いに残している大坂画壇の絵画について調査研究を行った。主として関西大学図書館所蔵の絵画作品約550点を調査し、それらの写真撮影、法量などのデータ整理、関連文献の収集を行った。また、大阪市立博物館、堺市立博物館、大阪市立近代美術館(仮称)の所蔵作品約200点を調査し、それぞれのデータをカード化した。さらに、大阪、京都を中心にして、美術商及び個人所蔵の約100点を同じくカード化した。加えて、京都工芸繊維大学他、各研究機関所蔵の文献資料を調査し、重要な文献を複製等を通じて収集した。これらの調査は、主として大坂画壇の中でも最も重要な位置にいた木村蒹葭堂と、その周辺で活動した画家たちを中心に進められた。たとえば、愛石、上田耕夫、上田公長、岡田半江、葛蛇玉、佐藤保大、少林、墨江武禅、月岡雪斎、中井藍江、中村芳中、長山孔寅、西山芳園、耳鳥斎、浜田杏堂、日根野対山、森一鳳、森二鳳、森徹山らである。調査研究の結果、これまで生没年すら不明であった画家たちの生涯や活動歴及び作風と所属流派などがかなり明らかになり、大坂画壇研究の基礎研究として大きな成果があった。つまり、大坂の狩野派、四条派、円山派、文人画派、風俗両派(及び浮世絵派)、戯画などの系統が整理され、基礎資料の蓄積がなされた。今回の調査研究によって、大坂画壇研究の基礎研究が充実し、研究上の新局面を切り開くことができたと自負している。
著者
木村 泉
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

「練習の巾乗法則」は広く知られ信じられているが、実験データに当てはめてみると、案外よく合わないことが多い。この法則の基本形は「両対数方眼紙の横軸に練習回数を、縦軸に毎回の作業時間を取ってグラフを描けば直線になる」というものであるが、その「直線」というところに留保がつく。直線的であるはずのグラフが両端ではしばしば平坦になっているように見える。Seibel(1964)およびNewell & Rosenbloom(1981)は、その平坦化の成因を「初期学習」および「人の能力の限界」に求めている。そのような留保がつくことは、法則の予測能力をそぐとともに、背後のメカニズムを読み取ることへの障害になっている。「なぜそうなのか」という疑問から出発して、報告者は過去7年半にわたり、主として折り紙(実験参加者延べ13名、ほかにあやとり、組木パズル)を題材とする長期的練習実験を実施してきた。その結果今回の補助金受給期間(平成12〜14年度)においては次のことが判明した。1.得た練習曲線はいずれも実験参加者に、好調と不調の波として認識される波動を含む。従来の「初期学習」および「人の能力の限界」に基づく当てはめは、波動の両端を平坦化部分と誤認した可能性がある。2.過去の研究が主にデータの平均的推移を論じていたのを改め、画期的新記録(一定の定義のもとに「見晴らし台」と呼ぶ)の推移に着目した。従来方式の当てはめがとかくデータの一部に過敏に反応して不安定に変化し、信頼しがたい結果を生じていたのに対し、この方法によれば常に個々の実験データの特徴をよく反映した要約データが得られる。3.練習曲線上で、各試行の所要時間が、見晴らし台をつなぐ線(見晴らし線)の何倍に当たる高さにあるかを調べ、その倍数をグラフに描くと、顕著で規則的な波動が現われる。この波動は、参加者に共通の「好・不調」のパターンを示している可能性がある。
著者
石塚 晴通 白井 純
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

研究計画に基づいて平成13〜16年度に以下の研究を実施した。1.シナ大陸の古印刷資料の原本調査を、大英図書館、フランス国立図書館、中国国家図書館、天津図書館、台湾故宮博物院、台湾国立中央図書館に於て実施した。2.朝鮮半島の古印刷資料の原本調査を、韓国誠庵古書博物館、同湖巖美術館、同延世大学校図書館、東洋文庫、京都国立博物館等に於て実施した。3.日本の百万塔陀羅尼及び古印刷資料の原本調査を、大英図書館、東洋文庫、京都国立博物館、高山寺、個人宅等に於て実施した。4.印刷資料及び関連する典籍をテーマとする「典籍の国際的交流・受容(訓読)」(平成14年度、於北海道大学)、「日本学・敦煌学・漢文訓読の新展開」国際学術会議(平成16年度、於北海道大学)の実行委員長として、国際会議を推進した。5.研究成果を国際会議及び国内学会に於て発表した。以上の如く、シナ大陸、朝鮮半島及び日本の古印刷資料の原本調査を実施して、東アジアに於ける正式印刷本の確認は9世紀後期まで下ること、日本の百万塔陀羅尼は「刷る」行程の無い集成印本であることを明らかにして、国際会議等の場に於て積極的に発表した。
著者
浦 昭二 宮川 裕之 眞鍋 龍太郎 細野 公男 福川 忠昭 神沼 靖子
出版者
慶応義塾大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

本研究の目的は、情報システム学の概念を確立することと、それに基づいた教育カリキュラムを構築することである。本年度は、前年度にまとめた、情報システムの定義・目的・特徴・機能・性格,情報システムの問題を考える際の留意事項、情報システム教育の方向などに関する基本的な考え方に基づいて、情報システム学の体系、情報システム教育のカリキュラム、当該カリキュラムに含まれる各科目の内容を検討し最終案をまとめた。まず情報システム学の体系は、情報システムの「企画」、「開発」、「運営」、「概念」、「社会的影響」の5つの側面から構成されるとし、それぞれの特徴と相互関連を明らかにした。このうち最初の3つは、情報システムの構築・活用に直接結びつくことが多い側面であり、後の2つは情報システムの基本概念およびそれと社会との関わりを扱い、それぞれ前の3つの要素とは異なった側面(次元)をもつものである。この体系に基づいて、情報システム教育の中心となるコア領域と参照学問領域の2つの領域から構成される教育カリキュラムを構築した。このうち参照学問領域は、情報システムの人間・社会的側面に接近するために既存の学問領域に属する知識・技術を情報システム学の視点から捉えた科目群と、情報システムの構築・把握などに関わる各種の自然科学・工学的な知識・技術を扱う科目群とに大別した。カリキュラムを構成する科的としては、コア領域に属するもの29科目、参照学問領域に属するもの32科目の合計61科目を設定した。さらに、情報システム教育の実学的特徴に配慮して、上述の領域を横断的に捉える「事例調査」と「プロジェクト研究」の2つを設けた。これらの科目は、動機付けのための基礎科目(19科目)と専門科目(43科目)とに分けられている。また、各科目の概要を、位置付け、狙い、アプロ-チ、内容、レベルの観点から記述し、さらに具体的なコ-ス例を複数個作成した。
著者
伊理 正夫 真鍋 龍太郎 森戸 晋 田辺 國士 刀根 薫 今野 浩
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1987

本研究は, 1988年夏に東京で開催される第13回国際数理計画法シンポジウム(13th International Symposium on Mathematical Programming)に向けてわが国の学界および産業界の研究者と実務者たちを糾合し, 数理計画法の理論と応用を総合的な立場から研究することを目的に行なわれた.理論に関しては, 線形計画問題の新解法, 計算幾何学, ネットワーク理論, 非線形最適化のアルゴリズム, ファジイ計画法, 均衝計画法, アルコフ決定問題などの研究グループが組織され, 様々な研究を行なった. また, 応用上は, 化学プロセス, 金融・投資, 鉄鋼業, 石油精製, 人工知能, ロボット工学, 通信ネットワークの最適設計, FMSなどへの応用に見るべきものが多数得られた. これらはすべて日本の研究者がオーガナイザーとなり, 今夏の国際会議の特別セッションとして企画を進めている.また, 1987年10月には, 2日間にわたって広島において第8回数理計画法シンポジウム, Japanを開催した. この会議は上記の国際会議の準備会として実施されたもので, 発表件数は約20件, 参加者は150人に達し活況を呈した. また, この会合には, 国際会議の組織母体の1つである国際数理計画法学会の現会長M.Balinski教授が特別参加し, 特別講演を行ったほか, 日本側関係者と国際会議に関する重点的な打合わせを行なったことを付け加えておく.
著者
山本 幹雄 乾 孝司
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、高精度かつ長距離のフレーズ並び替えを可能とするルールの抽出手法を開発した。抽出されたフレーズ並び替えルールの特徴は、フレーズの並び替えに重要な働きをする機能語(助詞など)の対訳関係を中心に語彙化されている点である。これにより、翻訳対象である文構造を的確に捉えながらフレーズの並び替えが可能となる。日英の翻訳実験において、提案ルールによって翻訳性能を改善できることを明らかにした。
著者
戸田 任重 沖野 外輝夫 鈴木 啓助 茂木 信太郎 藤井 恒男 土田 勝義
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

わが国における環境コミュニティ・ビジネスの先進事例として,(1)新聞紙のリサイクルに関するビジネスモデル(福岡)及び(2)廃食用油のリサイクルに関するビジネスモデル(秋田)の二つの事例を取り上げた。前者は、地域ぐるみでの共生型社会システムの構築の実験例であり、後者は、公的な事業に比べて自由度の高いベンチャー企業の特性を生かしつつ,地域内のBDFに関するエネルギー循環システムを確立しようと試みている点が注目された。諏訪湖・天竜川流域の地域社会の発達過程を、統計データや人工衛星データ(LANDSAT TM)を用いて解析した。有料道路ビーナスラインが約30年前に開通し、平成14年に無料化され、霧ヶ峰観光の増大とそれに伴う収入の増大、その他周辺各地の観光地化、大量の観光客の到来に伴う草原破壊、ゴミ、尿尿問題などの環境問題(いわゆるオーバーユース問題)、霧ヶ峰の草原生態系の変化(景観の変化、森林化、植林地化、外来植物の繁茂)などが引き起こされてきた。これらの様々な問題への対処には、行政ばかりでなく、NPOや地元市民の協力が不可欠であると考えられた。諏訪湖、天竜川流域における物質循環調査では、天竜川水系小黒川源流域における河川水質変動の解析、天竜川隣接市町村における地下水の硝酸塩汚染の実態把握、遠州灘海岸の海浜砂の粒度変化と漂砂系の調査を実施した。また、人工衛星データ(Aster)を用いて、諏訪湖流域に存在する多数のゴルフ場がその周辺の自然環境に与える影響を調べた。さらに、固体29Si-NMRによる底泥中の生物態シリカ(BSi)の定量法の開発も行った。諏訪湖内の生物、環境に関する調査では、諏訪湖底泥柱状試料中における光合成色素を用いた藻類組成変遷の解析、トリブチルスズ(TBT)の水平分布、ミジンコの生活史に応じた殺虫剤(カルバリル)耐性の解明、底生生物相の変動解析を行った。底生動物のアカムシユスリカの発生時期には水温が大きく影響していること、成虫発生量は年変動が大きいが,減少傾向にあることが判明した。環境改善技術として、シクロアルカン類の光分解反応の解析、気相におけるクロロアセトンの光反応の解析、ベンズアルデヒドの粘土鉱物アロフェンへの吸着特性の解明、製材残滓充填カラム内における汚染物質の浄化特性の解明、硝酸性窒素による地下水汚染源の解明とモデル化を行った。