著者
橋本 高志良 江藤 正通 堀場 匠一朗 津邑 公暁 松尾 啓志
雑誌
先進的計算基盤システムシンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.162-169, 2013-05-15

マルチコア環境では,一般的にロックを用いて共有変数へのアクセスを調停する.しかし,ロックには並列性の低下やデッドロックの発生などの問題があるため,これに代わる並行性制御機構としてトランザクショナル・メモリが提案されている.この機構においては,アクセス競合が発生しない限りトランザクションが投機的に実行されるため,一般にロックよりも並列性が向上する.しかし,Readafter-Readアクセスが発生した際に投機実行を継続した場合,その後に発生するストールが完全に無駄となる場合がある.本稿では,このような問題を引き起こすRead-after-Readアクセスを検出し,それに関与するトランザクションを敢えて逐次実行することで,全体性能を向上させる手法を提案する.シミュレーションによる評価の結果,提案手法により最大66.9%の高速化を確認した.
著者
浜崎淳 繁内宏治 坂本寛和
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2013-EC-28, no.13, pp.1-3, 2013-05-10

本校では 5 年の教育課程のうちの 4 年次前期において,「ものづくり実習」 という実習時間がある.この実習では担当教員に複数の学生が配属され,設定課題 (または自由課題) にしたがってものづくりをおこなう.本研究室では倒立振子ロボットを作製する課題を設定し,学生が主体的に 2 輪型および慣性ロータ型のロボットを作製した.2 輪型および慣性ロータ型の 2 台のロボットはともに平面上での倒立は 10 分以上可能であった.本報告では実践的にものづくりのできる専門教育課程,ロボットの制御方法および作製したロボットついて述べる.
著者
池田 緑
雑誌
大妻女子大学紀要. 社会情報系, 社会情報学研究 = Otsuma journal of social information studies
巻号頁・発行日
vol.13, pp.25-41, 2004

女子大学はその学生を女性に限定していることによって,すでにジェンダー・ポリティックスの実践の場となっている。とくに女子大学に勤務する男性教員は,この女子大学のもつ政治性ゆえに,政治的な存在であらざるをえない。男性教員による女子学生への監視の視線,男性教員による言説の女子大特有のジェンダー・ポリティックスに伴う政治的効果,女子大における男性性およびホモソーシャリティの再生産の政治的効果など,を考えることにより,良妻賢母思想と女性解放思想の間で揺れ動いてきた女子大の政治性と,そこに勤務する男性教員のポジショナリティを問う枠組みを示したい。そのうえで,男女共同参画時代に女子大において男性教員の存在が果たしうる政治的な効果と,社会への貢献の可能性について考える。
著者
藤原 康宏 村山 優子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.77-89, 2011-01-15

ネットワークサービスを利用する際には,外部からもたらされる危険や情報発信時のヒューマンエラーに対する気づきが重要である.本研究では,危険に対する気づきを支援するために,可視化した危険を,利用者に不快感をもたらすことで伝えるユーザインタフェースの開発を行った.まず,不快なインタフェースを設計するために,コンピュータ利用時の不快感の要素を収集し,質問紙調査および探索的因子分析によって不快感を構成する7因子を明らかにした.次に,不快感の7因子を用いて,警告インタフェースのプロトタイプとして,危険なwebサイトおよび電子メールの誤送信に対して警告を行うインタフェースを実装した.評価の結果,不快なインタフェースにより,注意を引き付けられることが示唆されたが,警告内容や推奨される行為を伝える機能も必要があることが分かった.
著者
田中 陽 亀山 幸義
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SIG12(PRO34), pp.67-67, 2007-08-15

本研究は、関数型言語 Scheme における動的環境と限定継続の共存について検討し、形式的意味論を定義し、それに基づく実装を与えたものである。動的環境はプログラム実行時に動的に決定される環境で、Scheme では、プログラム中の手続きが一定の動的環境を持つことを保証するための機構として、dynamic-wind が用意されている。限定継続は、「計算の残りの一部」のことである。Scheme の標準手続き call/cc が、「計算の残り」全体を操作するのに対して、本研究で扱う shift/reset はこの限定継続を操作し、種々の探索問題などがより簡潔に記述できるようになる。すでに知られているように、dynamic-wind と call/cc の共存は容易ではない。Scheme の仕様書 R5RS の形式的意味論はこれらの共存に対応しておらず、後の研究で修正された。我々は、shift/reset を Scheme に追加し、記述力を向上させる研究を行っている。本研究はその一環として、dynamic-wind と shift/reset の共存について取り組んだものである。まず、R5RS の表示的意味論を拡張して、shift/reset に対応した意味論を与える。次に、プログラムの実行が dynamic-wind の性質を保証することを示すために、その意味論に対応する抽象機械を導く。またあわせて、この意味論に基づいた Scheme インタプリタを作成し、shift/reset と dynamic-wind を含むプログラムが正しく動くことを確かめた。
著者
小川 真 矢崎 俊志 阿部 公輝
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2012-MUS-94, no.10, pp.1-7, 2012-01-27

VOCALOID 「初音ミク」 の発売以来,ユーザが自由に歌声ライブラリを制作できるフリーの歌声合成器 UTAU が開発されるなど,歌声合成への関心が高まっている.これら歌声合成器は主にアマチュアの音楽制作に使用されるが,ユーザが声色を任意時刻に混ぜて指定する機能がない.また,声色操作を行うことで処理時間やデータ量が大きくなる.本研究では音声合成分析系 WORLD を用い,メルケプストラムと Vorbis による励起信号からなるコーパスを声色別に収録し,各音素間を時間伸縮関数で接続することで,ユーザがモーフィング率を指定し声色を操作できる歌声合成器 v.Connect を開発した.提案手法を用いて歌声コーパス 「波音リツコネクト」 を制作した.このコーパスの容量は波形の 2 倍程度であった.合成速度は 1.7~2.2 倍と改善され,圧縮による劣化は主観的には感じられなかった.
著者
椋木 大地 高橋 大介
雑誌
ハイパフォーマンスコンピューティングと計算科学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.148-156, 2011-01-11

本研究では 4 倍・8 倍精度演算に対応した BLAS (Basic Linear Algebra Subprograms) 関数を GPU (Graphics Processing Unit) 向けに実装し評価を行った.4 倍・8 倍精度演算には double 型倍精度数を 2 つ連結して 4 倍精度数を表す double-double (DD) 型 4 倍精度演算,および 4 つ連結して 8 倍精度数を表現する quad-double (QD) 型 8 倍精度演算を用いた.NVIDIA Tesla C2050 による性能評価では,Intel Core i7 920での同一処理と比べ,4 倍精度 AXPY が約 9.5 倍,8 倍精度 AXPY が約 19 倍高速化された.また 4 倍精度 GEMM は CPU に比べて約 29 倍,8 倍精度 GEMM は約 24 倍の高速化を達成した.さらに Tesla C2050 では 4 倍精度 AXPY が倍精度演算の高々 2.1 倍の演算時間となり,GEMV,GEMM でも倍精度演算に対する計算時間の増大が CPU の場合と比べ大幅に削減された.一方で PCI-Express (PCIe) によるデータ転送時間を考慮した場合,倍精度 GEMM は PCIe データ転送性能に律速される傾向が見られたが,4 倍・8 倍精度 GEMM ではこれがほぼ解消されることが示された.本論文では 4 倍・8 倍精度 BLAS 演算が GPU に適しており,CPU に比べ実用的な性能が得られることを示す.
著者
原田 季栄 半田 哲夫 橋本 正樹 田中 英彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.2130-2147, 2012-09-15

従来のアクセス制御は,主体であるアプリケーションとそれがアクセスしようとするファイルなどの客体の組合せによってアクセス可否を判断していた.そのためアプリケーションの処理の内容およびアクセスを認めることにより情報システムに与える影響を考慮することができなかった.本稿では,アプリケーションが実行される状況に基づき,各アプリケーションが行おうとしている処理の内容を考慮することができるアクセス制御方式について提案する.提案方式を用いることにより,不正アクセスや誤操作などによるリスクを軽減することが可能となる.本稿では,提案システムの概念と実現方法について紹介し,そのLinux上の実装であるTOMOYO Linuxにおける評価結果を報告する.
著者
鷹津 冬将 建部 修見
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2012-HPC-133, no.17, pp.1-8, 2012-03-19

本稿では,SSD などの高速なストレージにおける効率的なファイルシステムの実現に向けて,Log Structured File System をベースにストレージへの書込が逐次書込となるよう mylfs の設計を行い、プロトタイプ実装を用い様々なアクセスパターンによる評価を行った。逐次書込の評価では、mylfs は raw device の性能に対し、HDD で書込は 94%、読込は 97% の性能を達成し、SSD で書込は 79%、読込は 98% の性能を達成した。ファイル更新の評価では、逐次更新、ランダム更新ともに mylfs は他のファイルシステムに比べ高い性能を示し、もっとも性能の良かった ext3 と比較して、逐次更新では HDD で 138%、SSD で 121%、ランダム更新では HDD で 572%、SSD で 135% の性能を達成した。