著者
林 衛
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

東日本大震災以前から市民に提供されていた石巻市ハザードマップでは,新北上川沿いの沖積平野に河口から3.5kmもの津波遡上が予測され,明示されていた。同震災で最大級の被災の現場となった大川小学校は,浸水域予測範囲のわずか0.5km上流に立地していた。地震津波発生のしくみの多様性,潮の干満などを考えれば,高低差のない平野部での0.5kmは「誤差の範囲」といってよい。ハザードマップには,体感する震度に比して巨大津波をもたらす津波地震への注意書きもあった。つまり,公的にマグニチュード8を想定した宮城県沖地震(連動型)においても,大川小学校の津波による浸水は予見の範囲外にあったとはいえないのである。避難訓練やマニュアルの整備の重要性が強調されているが,現実の災害は想定どおりとはならない。想定から想定外が予見できる大川小学校被災の事例などから,地球惑星科学の知見があってもいかされない自然災害の人災的側面に関する教訓を導き出す。文 献林 衛:中学校「理科」で震源モデルを学びたい—大川小児童の思いを語り継ぐためにも,地震学会モノグラフ第4号「学校・社会による地震知識の普及」(2015)地震学会(http://zisin.jah.jp/)出版物・資料ページからダウンロード可林 衛:有権者教育のための理科知識・批判的思考力 : 石巻市立大川小学校津波被災の原因,2015年10月日本理科教育学会北陸支部大会(金沢大学) http://hdl.handle.net/10110/14685 からダウンロード可『市民研通信』(電子版)林 衛:大川小事故検証委員会はなぜ混迷を続けるのかhttp://archives.shiminkagaku.org/archives/2014/01/post-468.html林 衛:大川小事故検証委員会はなぜ混迷を続けるのか(その2)http://archives.shiminkagaku.org/archives/2014/02/2-11.html
著者
林美都子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第56回総会
巻号頁・発行日
2014-10-09

目的 学習心理学の主要理論の一つである条件づけ理論は,教育心理学や臨床心理学等は勿論のこと,今日では行動分析学や行動経済学などにも応用され多岐に渡って展開されている。心理学を学ぶ者であれば必ず理解すべき理論の一つであるといえよう。しかし2009年度に行われた林の調査(林,2013より)によると,学習心理学を受講した学生の73%が条件づけ理論を難しいと感じている。当該理論はパブロフの犬やスキナーの鳩のように動物実験を通じて発展してきた。教科書等の座学のみでは難しいのは当たり前と言える。実際に動物実験を行うことで理解が促進されよう。 しかし,動物実験を行うためには,被験体の購入や飼育,実験場所,実験用具の整備など,多大な資金や時間,手間などの問題をクリアする必要がある。そこで本研究では,山本・獅々見(1994)が提案した実験室外におけるキンギョのオペラント条件づけ手続きを踏まえ,より扱いやすく安価に入手しやすいであろう被験体としてヒメダカを取り上げ,実験室外において,大学生にオペラント条件づけの動物実験を行わせることとし,実験過程においてどのような問題が生じるか検討し,より良い動物実験教材を開発することを目的とした。方法実験参加者 心理学を専攻する大学2年生21名。被験体 実験室で誕生,育成され,実験経験のないヒメダカ7匹(生後11ヶ月)。実験水槽 175×105×105mmの市販のプラスチック水槽。水以外は何も入れなかった。無条件性強化子 イトミミズを原料とする市販のメダカのエサ1~3粒程度。必要に応じて,細かく砕いて用いた。輪 市販の直径1mmの銀色の針金を用いて,直径5cmの輪を作成した。実験手続き 学生3名を1グループとしてヒメダカ1匹を与え,以下のような手順でオペラント条件づけを行うよう求めた。 まず,輪くぐり慣らし訓練を行わせた。5cmの輪を20分間水槽に入れっぱなしにし,被験体が輪をくぐるたびに無条件性強化子を与え,輪をくぐる回数と時間を手元に控えさせた。 次に輪くぐり学習訓練として,輪を水中に挿入後,被験体が輪をくぐったら輪を取り出し強化子を与えさせた。くぐるまでの時間を測定し,これを1試行に3回繰り返すよう指示した。5分以上くぐらないときには一旦輪を引き上げてやり直し,2回連続した場合は日を改めることとした。慣らし訓練も学習訓練もビデオで撮影するよう求めた。結果結果の処理 2日連続して3回の平均輪くぐり時間が20秒以内なら輪くぐり学習訓練クリアと教示したが,条件を満たした班は1班のみであった。そこで40秒以内としたところ,4班はクリア,3班がクリア出来ていなかった。クリアまでの試行数は,6,9,10,37であった。37試行班を除いた3班をクリア群,残り3班を非クリア群として,両群の分析を行った。問題行動の生起頻度 輪くぐり学習訓練開始から5日分について各班75回分すなわち各群計225回分を対象に録画ビデオで観察された問題行動の生起頻度をカウントして分析し,表1にまとめた。直接確率計算を行ったところ,非クリア群は実験中であっても友人と話続けていたり(騒音),メダカの怯えや警戒の様子とは関係なしに輪を出し入れしたり実験を開始したりする(状態無視)などの問題行動がクリア群より多く見られた。考察 クリア条件を緩める必要はあったが,約半分の班はメダカのオペラント条件づけに成功し,本研究の手続きで大学生に心理学的動物実験を体験させることは十分可能であると示された。言語的コミュニケーションの通用しない動物実験を通して,非クリア群の示した問題行動に着目して動物の扱い方を学ぶことは,ヒトを対象とした実験や調査を行う際にも有用であろうと思われる。
著者
成瀬智仁
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第57回総会
巻号頁・発行日
2015-08-07

1.問題と目的 場面緘黙児(以下緘黙児)は他人への迷惑や教室での活動を妨害することもなく,ひっそりと声を出さずにいるために注目されず,問題視されることは少ない。彼らは非社会的傾向を持っているため症状が進行して集団に同調できなかったり,不登校などの症状を示し始めたときに教員達はその問題への対応に苦慮することになる。緘黙の症状にはさまざまな要因がかかわっており,改善への対応は発話だけでなく感情や行動などに長期的にかかわっていくことが必要である(河井 2004,成瀬 2007)。本研究では緘黙児の症状について分析し,小学校教員の指導援助の課題を検討する。2.方 法 ①調査時期と手続き:2012年7月~12月,A市公立小学校24校の教員(教諭,講師)に対して質問紙配布による依頼,後日回収,有効回収率61.7% ②調査協力者:335名(女性231名,男性104名)平均年齢40.1歳(SD=13.10,内訳:20代96名,30代94名,40代26名,50代以上119名) ③調査内容:緘黙についての知識4項目,緘黙児の担当経験項目16項目,基本的特性:性別・年齢。3.結 果 ①担任教諭239クラスの内,緘黙児が在籍しているのは36クラス(15.1%),わからないは7クラス(2.9%)だった。緘黙児担任経験のある教員は158名(46.9%)であり,担任経験のない教員は154名(45.7%),わからない25名(7.4%)だった。教員年代別の緘黙児担任経験は20代(26.8%),30代(38.9%),40代(38.9%)に対し50代(66.7%)や60代(71.4%)であり教員経験が長いほど緘黙児にかかわる割合が高かった(F(8, 337)=39.859, p<.01)。緘黙児担任経験教員より回答されたのは166ケースであり,女子105名(63.3%),男子61名(36.7%)だった。 ②緘黙児童のケースについて緘黙の特徴に関する12項目(5件法)をもとに主成分分析をした結果,「動作表現」と「言語表現」の2成分が取り出された(表1)。また,主成分得点をもとにクラスター分析をした結果,ほとんど話さない「緘黙タイプ」,動かない「緘動タイプ」,話も行動も控えめな「消極タイプ」,少し話せて行動は出来る「寡黙タイプ」の4類型に分けることが出来た(表2,図1)。学年別では高学年ほど緘動タイプが多くなっていた(χ2(5)=11.084, p<.05)。 ③学年別の緘黙症状は高学年ほど「表情」,「交友関係」,「教師との目線」などで現れ,低学年との間に有意差が見られた。「学習の理解」や「文章表現」でも高学年は低評価の傾向が見られた。緘黙症状の変化については「教員との視線」を合わすことが出来るほど(χ2(12)=23.582, p<.05),また,「動作のぎこちなさ」がない児童ほど(χ2(12)=21.201, p<.05)改善されていた。4.考 察 児童の緘黙症状によって4タイプの緘黙類型が見いだされた。また,学年進行により緘黙症状が改善する場合と,より悪化するケースがあり,緘黙児童に対する指導援助にはその児童に合わせた指導の必要性が示唆された。今後は緘黙児童への具体的な教育援助の方法を検討していくことが課題である。
著者
小口 高 早川 裕弌 桐村 喬
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2015年大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

研究者が作成したデータを他の研究者も利用できるようにすることは科学の発展のために重要である。ただし研究者はデータ提供のボランティアではないため、自身の分析が終わるまではデータを公開しないといった選択があり得る。データを公開する場合にも、利用者がデータの出所について論文中で明記することを望んだり、データに不備が見つかったような場合に利用者に連絡できるようにしたいといった要望があり得る。ただし、そのような管理を含むデータの配付を個人の研究者が行うのは労力を要し、個人がデータの配付に利用できるウェブサイト等を運用していない場合もある。さらに、個人の対応ではデータの存在が広く知られにくく、利用が促進されない可能性もある。これらの問題を解決する方法として、第三者的なデータを配付する機関の管理下でデータを公開する形が考えられる。東京大学空間情報科学研究センターは、地理空間情報を用いた研究を行う共同利用・共同研究拠点として活動している。同センターでは「空間データの利用を伴う共同研究」を行っており、センターが入手したデータを一定の規約の下で全国あるいは海外の研究者に配付し、研究の活性化を行っている。データには行政機関や企業が作成したものと、個人研究者が作成したものが含まれる。データの配付の際には利用者の情報や使用目的が登録されるため、データの提供者はデータの使用状況を随時把握できる。また、データ配布のためのプラットフォームを個人が整備する必要がなくなる。本発表では、このような東京大学空間情報科学研究センターの活動を紹介し、個人研究者が作成したデータの公開に関する将来展望を述べる。
著者
高坂康雅 都筑学 岡田有司
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第56回総会
巻号頁・発行日
2014-10-09

問題と目的 近年,全国的に公立小中一貫校の設置が行われている。その目的は,小・中学校間の連携・連続性を高め,「中1ギャップ」を解消し,児童生徒の学校適応感や精神的健康を向上させることにある。しかし,実際に,小中一貫校が非一貫校に比べ児童生徒の学校適応感や精神的健康を促進しているという実証的な検討は行われていない。 そこで,本研究では,学校適応感と精神的健康について,小中一貫校と非一貫校の比較検討を行うことを目的とする。方 法調査対象者 公立小中一貫校に在籍する児童生徒2269名と非一貫校に在籍する児童生徒6528名を調査対象者とした。調査時期 2013年5月~2014年1月に調査を実施した。調査内容 (1)学校適応感:三島(2006)の階層型学校適応感尺度の「統合的適応感覚」3項目を使用した。(2)精神的健康:西田・橋本・徳永(2003)の児童用精神的健康パターン診断検査(MHPC)の6下位尺度(「怒り感情」,「疲労」,「生活の満足度」,「目標・挑戦」,「ひきこもり」,「自信」)各2項目を使用した。結果・考察統合的適応感覚及びMHPC6下位尺度について,学校形態(一貫/非一貫)×学年(4年~9年(中3))の2要因分散分析を行い,交互作用が有意であった場合は,単純主効果の検定を行った。以下では,小中一貫校と非一貫校との間で有意な差がみられた箇所を中心に結果を記述する。 まず,統合的適応感覚では交互作用が有意であり,4年・5年において,非一貫校の方が一貫校よりも得点が高かった(Figure 1)。 MHPCの「目標・挑戦」でも交互作用が有意であり,4年・5年・6年において,非一貫校の方が一貫校よりも得点が高かった。また,「自信」でも交互作用が有意で,4年・5年・6年において,非一貫校の方が一貫校よりも得点が高かった(Figure 2)。 「疲労」,「ひきこもり」,「生活の満足度」では,学校形態の効果が有意であり,「疲労」と「ひきこもり」では一貫校の方が高く,「生活の満足度」では,非一貫校の方が高かった。 これらの結果から,全体的には,小中一貫校よりも非一貫校の方が学校適応感も精神的健康も高いことが明らかとなった。特に,小学校時点では,学校適応感や「目標・挑戦」,「自信」は非一貫校の方が高かったが,換言すれば,非一貫校の場合,中学生になると,適応感や「生活の満足度」,「自信」は一貫校と同程度まで低減する。このような低減が一貫校ではみられないという点では,「中1ギャップ」の解消に一定の効果がある可能性もあるが,一方で,一貫校における小学校時点での学校適応感や精神的健康の低さがなぜ生じているかは今後検討する必要がある。付記:本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号24330858:代表・梅原利夫)の助成を受けたものである。
著者
都筑学 岡田有司 高坂康雅
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第56回総会
巻号頁・発行日
2014-10-09

小中一貫校・非一貫校における子どもの適応・発達(2)-コンピテンスに着目して-○ 都筑 学(中央大学) 岡田有司(高千穂大学) 高坂康雅(和光大学) 問題と目的 学校教育の現場においては,小学校と中学校の連携や連続性の重要性が指摘されているが,それに関する実証的な研究は十分になされていないのが現状である。本研究では,コンピテンスの発達という観点から,小中一貫校と非一貫校の比較検討を行い,得られた実証データから2つの教育制度で学ぶ児童生徒の特徴を明らかにする。方 法調査対象者・調査時期 研究(1)と同じ。調査内容 児童用コンピテンス尺度(櫻井, 1992)を用いた。4下位尺度の内,16項目を使用した(「学業(項目1,5,9,13;α=.85」,「友人関係(項目2,6,10,14;α=.58であったため,項目10を除いて3項目で得点化した(α=.63))」,「運動(項目3,7,11,15;α=.80」,「自己価値(項目4,8,12,16;α=.77)。結果と考察 コンピテンスの4下位尺度について,学校形態(一貫/非一貫)×学年(4年~9年(中3))の2要因分散分析をおこない,交互作用が有意であった場合は,単純主効果の検定を行った。 学業では,交互作用が有意であり,一貫校・非一貫校ともに学年間での差異が見られた。一貫校では4年は6・8・9年より高く,6年は8・9年より高く,4・5年は7年より高かった。 友人関係では,交互作用が有意であり,5・6・9年において非一貫校は一貫校よりも得点が高かった(Figure 1)。 運動でも,交互作用が有意であり,4・5・6年において,非一貫校は一貫校よりも得点が高かった。7・8・9年では,一貫校と非一貫校との間に差は見られなかった。 自己価値でも,交互作用が有意であり,4・5・6年において,非一貫校は一貫校よりも得点が高かった。7年では,一貫校が非一貫校よりも得点が高かった。8・9年では,一貫校と非一貫校との間に差は見られなかった(Figure 2)。 以上の結果をまとめると,おおよそ次のようなことが示された。小学校の段階では,小中一貫校よりも非一貫校の児童の方が,友人関係(5~6年)・運動(4~6年)・自己価値(4~6年)のコンピテンスが高いことが明らかになった。中学校段階になると,小中一貫校と非一貫校との間に逆転現象が生じ,小中一貫校の7年は非一貫校の中1よりも,自己価値が高くなっていた。ただし,友人関係においては,4~6年に引き続いて,非一貫校の中1の方が一貫校の7年よりも高かった。 小学校段階において,非一貫校と小中一貫校との間にコンピテンスに差が見られるのは,小中一貫校では,小学校と中学校が同一の敷地にあって,4~6年生が,すぐ間近にいる7~9年生と自分を相対評価する機会が多いことによるのかもしれない。また,両者の間のコンピテンスの差が,中学校段階で見られなくなるのは,非一貫校での小学校・中学校間の移行にともなう適応等の問題が関係しているかもしれない。今回は横断的なデータによる分析であるために,因果関係を明らかにするには限界がある。今後は,縦断的なデータによって,上記のような推論を実証的に検証していくことが課題であるといえる。付記:本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号24330858:代表・梅原利夫)の助成を受けたものである。
著者
岡田有司 高坂康雅 都筑学
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第56回総会
巻号頁・発行日
2014-10-09

問題と目的 小中非一貫校では小学5~6年生になれば上級生になるが,一貫校ではこうした扱いはなされず人間関係も同様の関係が継続する。こうした環境の違いは子どもの独立心や他者との関係の在り方に差異を生じさせている可能性がある。そこで,本研究では独立性・協調性に注目し小中一貫校と非一貫校の違いについて明らかにする。方 法調査対象者・調査時期 研究(1)と同じ。調査内容 (1)独立性・協調性:相互独立的・相互協調的自己観尺度(高田,1999)を用いた。4下位尺度の内,12項目を使用した(「相互独立性:個の認識・主張(項目1・5)」「相互独立性:独断性(項目3・7・9・11)」「相互協調性:他者への親和・順応(項目2・6・10)」「相互協調性:評価懸念(項目4・8・12)」)。結果と考察 先行研究と同様の4つの因子から捉えられるかを確認したが,同様の因子は得られなかった。そこで,探索的に項目ごとに学校形態(一貫/非一貫)×学年(4年~9年(中3))の2要因分散分析を行い,交互作用が有意であった場合は,単純主効果の検定を行った。以下では,小中一貫校,非一貫校の間で差がみられた箇所を中心に結果を記述する。 独立性に関する項目では,項目1では交互作用が有意であり,4・6年において非一貫校の得点が高かった(Figure1)。項目5でも交互作用が有意傾向であり,4・5・6年で非一貫校の得点が高かった。項目7では学校形態の主効果がみられ,一貫校の得点が高くなっていた。項目11では交互作用が有意傾向だったが,その後の分析では有意差は検出されなかった。協調性に関する項目では,項目2で交互作用が認められ,4・5・6年で非一貫校の得点が高かった(Figure2)。項目6でも交互作用が示され,4・5年で非一貫校の得点が高くなっていた。項目10においても交互作用が有意であり,4年では非一貫校の得点が高くなっていたが,6・7年では一貫校の得点が高くなっていた。項目4では学校形態の主効果が有意で,非一貫校の得点が高いことが示された。項目8では交互作用が示され,4年では一貫校の得点が高くなっていた。 以上の結果から,非一貫校の小学校高学年は一貫校の者に比べ,自分を理解し意見を持つという意味での独立性や,周囲と親和的な関係を築くという意味での協調性が高いことが示唆された。付記:本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号24330858:代表・梅原利夫)の助成を受けたものである。
著者
矢萩 智裕 宮川 康平 川元 智司 大島 健一 山口 和典 村松 弘規 太田 雄策 出町 知嗣 三浦 哲 日野 亮太 齊田 優一 道家 友紀
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2014年大会
巻号頁・発行日
2014-04-07

国土地理院では全国に約1,300点のGNSS連続観測施設(電子基準点)を設置し,1HzサンプリングのGNSS連続観測を実施している.データ取得及び解析系まで含めた一連のシステムはGEONET(GNSS連続観測システム)と呼ばれ,GEONETで得られた観測データや解析結果等は,我が国の位置の基準を定める測量や地殻変動監視,高精度測位サービス等の幅広い分野で利用されており,現代社会を支えるインフラの一つとしての役割を担っている.防災面においても,これまでGEONETは地震や火山活動に伴う地殻変動の検出等で大きな貢献を果たしており,平成23年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)後には,短周期地震計等により推定された地震発生直後の地震規模が過小評価だったことを踏まえ,より信頼度の高い津波警報初期値への利用を視野に,GEONETのリアルタイムデータを用いた地殻変動結果による地震規模の即時推定技術について大きな期待が寄せられているところである.このような背景を踏まえ,国土地理院では,平成23年度から東北大学との協同研究の下,新たなGEONETのリアルタイム解析システム(REGARD:Real-time GEONET Analysis system for Rapid Deformation Monitoring)の開発を進めてきた.REGARDでは,GEONETで収集されたデータをRTKLIB 2.4.1(Takasu, 2011)をベースとした解析エンジンで処理し,RAPiDアルゴリズム(Ohta et al., 2012)又は緊急地震速報(Kamigaichi et al., 2009)を用いて検知された地震発生に伴う各電子基準点の変位量を入力値として矩形断層モデルの即時自動計算(西村, 2010)を実行することで,地震規模が推定される.平成24年度からは東北地方を中心とした143観測点によるプロトタイプ版を開発して連続稼動の試験運用を実施するとともに,GEONET運用後に発生した過去の大規模地震時の観測データ等を利用したシステムの能力評価を行ってきた.一例として,平成23年東北地方太平洋沖地震のケースでは,推定される矩形断層モデルとCMTとの比較では位置及びメカニズムに若干の差異はあるものの,地震発生から約3分でMw8.9を推定可能であること,Mw7.5を下回る規模の地震の場合にはS/N比が低くなり推定精度が落ちること等が明らかとなった.平成25年度には,プロトタイプシステムをベースに,解析範囲を全国の電子基準点に拡大するとともに,解析システムをGEONET中央局内で二重化すること等により冗長性を高めた新たな全国対応システムを構築した.また,解析設定ファイル作成や結果ファイル閲覧等の支援機能についても追加で実装している.同システムについて平成26年4月から本格的な運用に向けた試験を開始している.本講演では,過去の観測データから得られた検証結果及び全国対応システムの概要を報告するとともに,将来的な津波警報への活用に向けた取り組みや課題について報告する.
著者
遠田 晋次
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

1.はじめに 伏在断層による内陸大地震(浅部地殻内地震)が発生するたびに「日本列島どこでも震度6弱以上の揺れに見舞われてもおかしくない」という論調が繰り返される.本当だろうか.グローバルにみると列島全体が沈み込み変動帯に位置しているので,地震から無縁の地はないように見える.検知能力の著しく向上した気象庁一元化ネットワークで地震が捉えられない地域はあるのか.日本列島に「プチ安定地塊」は存在するのであろうか.逆説的であるが,「地震が起こらない」理由を考えることは,地震発生メカニズムを理解するために重要であろう.2.天草上島・下島の地震活動と地質構造,測地歪み1923年〜2018年1月の気象庁一元化震源の浅部地震活動(深さ30km以浅)を調べると,日本列島内陸でも震央が全くプロットされない地域がわずかにある.そのうちの1つが天草諸島の上島・下島である.両島を中心とする約2000km^2の地域ではほとんど地震が発生していない(図1a).日本被害地震総覧(宇佐美ほか,2013)にも両島を震源とする被害地震は全く記載がない.地震活動から見たこの地域の特徴は単に地震活動がきわめて低調であるだけではなく,囲碁の黒石に囲まれた白石のように,熊本地震余震域を含め周辺を地震活動活発域に囲まれているのが特徴である.北〜北西は雲仙岳直下から橘湾,天草灘へ抜ける北東—南東走向の地震帯(天草灘地溝),東には島原湾東部〜熊本平野〜八代〜八代海沿い(八代海地溝)の熊本地震余震域を含む地震帯,南は阿久根市西方沖に広がる多数の北東—南西走向の地震クラスター群に囲まれる.これらの周辺活発域の地震のメカニズムは北東—南西走向の横ずれか,東西走向の正断層解が卓越する.当地域は高重力異常で特徴付けられ,基盤は下島西岸に露出している長崎変成岩類が予想される.ただし,実際に地表に露出している地層としては,主として上部白亜系および古第三系の堆積岩類である(図1b, 産総研シームレス地質図).これらの堆積岩類には主として北北東—南南西の褶曲軸を持つ褶曲構造が著しく,天草褶曲運動とも称される.また,これらの褶曲を胴切りにする西北西走向の多数の高角横ずれ断層が並走する(天草型構造ともよばれる)が,一連の構造は中新世中期頃に形成されたと考えられている(高井・佐藤,1982).少なくとも,上記の西北西走向の断層群沿いに活構造を示唆する変動地形はみあたらない.当該地域には「新編日本の活断層」に活断層が6箇所ほど示されているが,いずれも4km以下で確実度II〜IIIとされている.ただし,上島北部から下島北部には海成段丘が発達し,両島南部はリアス式海岸で特徴付けられることから,第四紀後期に北高南低の地殻運動が続いていると推定されている(町田ほか,2001).なお,国土地理院(2018)による電子基準点による観測では,熊本地震の余効変動の影響はあるものの,当該地域は0.1ppm程度の東西圧縮・南北引張の場にある.日本列島の他の地域と比べて,歪速度が小さな地域に含まれる.3.議論なぜ,天草上島・下島では地震が発生しないのか.第四紀後期を通じて恒久的な非地震域であるかどうかは不明であるが,少なくとも顕著な活断層も分布しない.測地学的にも少なくとも内部での歪みはきわめて小さく,周辺を活発な地震帯に囲まれることから,この部分が内部歪みを生じないようにブロック状に振る舞っている可能性が推測される.テクトニックな観点からは,別府—島原地溝帯外(南側)にあること,天草灘—橘湾沿いに指摘されている沖縄トラフの九州上陸部からも外れていること,日奈久断層帯からある程度の離隔距離があること,などから,すべての主要変動帯から逃れている可能性がある.実際,下島の一部を除いて後期中新世以降に堆積物がほとんどみられず,全域が安定か長期的に緩やかに隆起する傾向にあった可能性がある(ただし,第四紀後期に南部はおそらく沈降している). なお,同様に地震活動域に囲まれる非地震域として面積こそ小さいが,琵琶湖直下がある.日本列島内陸で非地震域を生じるためには,周りを主要活構造に囲まれるのが条件なのかもしれない.そのような地域は超長期的なストレスシャドウに置かれていると考えられる.文献: 活断層研究会(1991)新編日本の活断層;国土地理院(2018)地震予知連絡会会報,99巻;町田ほか(2011)日本の地形「九州・南西諸島」; Mogi, K. (1969) Bull. Earthq.Res.Inst., 47, 397-417; 産業技術総合研究所(2018)日本シームレス地質図;高井保明・佐藤博之(1982)5万分の1図幅「魚貫崎及び牛深地域の地質」;宇佐美ほか(2013)「日本被害地震総覧」.
著者
十文字快 佐藤義 髙夘瑞稀
雑誌
サイエンスキャッスル2018
巻号頁・発行日
2018-11-21

<考察・展望>実験結果から、粉じん爆発の規模の違いによって「薄力粉」と「強力粉」は分別することができることがわかった。また,「薄力粉」と「強力粉」では、粒子直径が「薄力粉」の方が小さいが、規模は「強力粉」の方が大きい。このことから、爆発規模の違いは小麦粉に含まれるタンパク質の含有量の違いと考えられる。今回の実験は、気温30.5~33.0℃、湿度49~59%での測定なので、気温、湿度の異なる条件での実験を行うとともに、タンパク質含有量と爆発規模の関係を明らかにしていきたい。