著者
中村 亮一 石瀬 素子 杉森 玲子 佐竹 健治
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

1. はじめに1855年(安政二年)安政江戸地震の深さは,未だよく分っておらず,太平洋プレートで発生した深い地震とするものから極浅い地殻内地震であるという説まで様々ある.その根拠は震度分布の他,史料から推定されるS-P時間がある.後者のS-P時間については,歌舞伎役者中村仲蔵の記述が有名である.萩原(1990)はこれに基づき10秒程度と読取り~100kmの深さとした.中村・他(2003)は仲蔵史料に他の記事も含め5-10秒としフィリピン海プレート内の地震と推定した.宇佐美(1983)は,仲蔵の記事から3-5秒と読み取った.これによると前の2研究よりも浅い地震となる.これらいずれも,「日本地震史料」(武者,1951)に記載された内容から推定されたものである.これに対し我々は今回「日本地震史料」の記述とは異なる記載の仲蔵自筆の原本(崩し字)が国会図書館古典籍室に存在することを明らかにした(以降「国会本」と称する).これは2018年8月9日に国会図書館に古書店から納品されたものである.郡司(1944)によると仲蔵の自筆本は散佚したとされているが,「国会本」は,その一部である可能性がある.本発表は,この発見を報告するものである.2. 中村仲蔵記事の資料間の比較 中村仲蔵の記事は,上述「日本地震史料」と「国会本」の他,『手前味噌』という題目で「歌舞伎新報」(明治十二年創刊:ブリタニカ国際大百科事典.国会図書館で閲覧可能)に掲載されている.「国会本」は全16冊あり第9冊と第10冊に安政江戸地震のことが書かれているが,両者の記述内容は異なっている.すなわち中村仲蔵による安政江戸地震の記述が4種類存在することになる.「国会本」の翻刻は著者の一人である杉森により行われてきている.その第9冊と「日本地震史料」のS-P時間の推定に該当する記載部分を表1に示す.この太字部分が異なっている.最初の部分を見ると「日本地震史料」では地面が下から持ち上がる「動き」が描かれているのに対して,「国会本」第9冊では「音響」が描かれていることがわかる.音響としては地鳴りや建物の振動等によって生じたもの等が考えられるが,安政江戸地震では地鳴りが記述されている史料が他にも多くあることから地鳴りの可能性が高い.さらに,「日本地震史料」と「国会本」第10冊および「歌舞伎新報」の記載内容は似ている一方,これらと「国会本」第9冊とは異なることがわかってきた.「歌舞伎新報」の記事は,仲蔵自筆の記録を基に,狂言作者久保田彦作が補綴・省略し掲載されたということである.実際,「歌舞伎新報」は読み手がいることを意識した書き方がなされている.また,これら4種類の史料が書かれた年代については,記述内容の分析から,「国会本」第9冊は他の3史料よりも以前に書かれたものである可能性が高いことがわかった.「国会本」第9冊は一次史料に近い(地震発生時により近い時期に作成された)ものと考えられ,今後,地震の検討を行う際には,「国会本」第9冊の内容を用いることが望ましい.3. S-P時間推定に与える影響「日本地震史料」と「国会本」第9冊は,音響(地鳴り)から始まるか,動きから始まるかの違いがあった(表1).地鳴りはP波の振動が空気に伝わり生じたとするとP波到達時刻推定には大きな影響がないと考えられる.一方,S波主要動については,「日本地震史料」では歩き出すと揺れはじめたことが記されているのに対して,「国会本」第9冊では立ちあがると揺れはじめとなっていて,これからS-P時間は若干短くなると考えられる.また,大きな地震では,震源の破壊開始からいわゆる強震動発生領域(SMGA)に達するまでに時間遅れがあることが知られ,その場合はS波初動の振幅が小さく,大きく揺れ出すまでに時間がかかることがある.つまり,実際のS波到達と体感でのS波到達時時間差が生じると考えられる. これらのことを踏まえると,実際のS-P時間は,これまでよりも短くても説明が可能と考えられる.4. S-P時間から考えられる深さ S-P時間が仮に5秒として全国を対象としたJMA2001走時表を用いると,震央距離が20kmの場合の震源深さは40kmとなる.しかし,厚い堆積層に覆われた関東地方では,JMA2001走時表を用いた震源より浅くなると考えられる.どの程度浅くなるかを検討するため,図2に仲蔵が被災した両国からさほど離れていないK-NET猿江(TKY021)で観測されたS-P時間が5秒の地震波形を示す.これは羽田沖の深さ23㎞(2015/12/26,M3.4, 震央距離20 km)の地震であり,この程度の深さである可能性も考えられることがわかる.
著者
Akio Tanikawa
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.95-101, 2013-12-31 (Released:2014-02-07)
参考文献数
23
被引用文献数
3 7

After examining many specimens identified as Cyrtarachne inaequalis Thorell 1895 from various localities in Japan, females from Okinawajima Is. were found to be morphologically distinguishable from those from the Mainland and to be the independent species, while unidentified male specimens from Okinawajima Is. were found. A comparison of mt-DNA COI gene sequencing data revealed that the males and females from Okinawajima Is. belonged to the same species. The female specimens from the Mainland and Okinawajima Is. were compared with syntypes of C. inaequalis, but neither of the two species could be identified using this approach. Consequently, it was concluded that both of these species are new to science. They are described under the names C. akirai n. sp. (from the Mainland) and C. jucunda n. sp. (from Okinawajima Is.).
著者
松永 暁子 貝沼 圭二
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.653-659, 1981-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
25
被引用文献数
5

1) β-アミラーゼ-プルラナーゼ法により澱粉糊, および米飯の糊化度を測定した.2) 本法では糊化澱粉と生澱粉, 老化澱粉の分解率の差が大きいため, 従来法に比較し, 初期の老化から測定することが可能であった.3) 5%コーンスターチの場合, 低温保存による老化の進行は5%米澱粉に比べ速やかで特に冷凍保存の老化は顕著であった.4) 米飯の老化は保存条件によって異なり, 冷蔵 (5℃) >室温 (20℃) >冷凍 (-18℃) >電子ジャー (70℃) の順で進行した.とくに冷凍米飯の糊化度は長く安定で, 適切な凍結, 解凍方法を用いれば米飯保存として最適と考えられる.
著者
山田 峰彦 柿崎 藤泰 渋谷 まさと 中山 秀章 廿楽 裕 田中 一正 鈴木 一 本間 生夫
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.646-652, 1996-06-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20
被引用文献数
1

呼吸筋ストレッチ体操 (RMSG) プログラムを作成し, 肺機能, 運動能力, 呼吸困難感, 生活の質 (QOL) に与える効果について4週間のトレーニングの前後で検討した. 13名の慢性閉塞性肺疾患患者 (平均FEV1: 1.24L) を対象とし, 4週間にわたりRMSGを1日3回実施した. 12名が検討終了した. FRC (前4.19±1.27, 後3.88±1.03L), TLC (前5.98±1.35, 後5.66±1.20L), RV (前3.29±1.16, 後2.89±0.89L), 残気率 (前53.9±11.2, 後50.6±9.74%) はそれぞれ有意 (p<0.01) に低下した. 6分間歩行距離 (6MD) は平均43±30m (+15%, p<0.01) 延長した. 6MD終了時の呼吸困難感 (150mm VAS) は (前65.1±40.8, 後36.1±36.8mm) と有意 (p<0.05) に低下した. QOLは Guyatt らの The Chronic Respiratory Disease Questionnaire により評価し, 有意な改善が認められた. RMSGは呼吸リハビリテーションとして有用性があると考えられた.

3 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1912年02月26日, 1912-02-26

3 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1895年10月31日, 1895-10-31

3 0 0 0 OA 棠陰比事 3卷

著者
(宋) 桂萬榮 撰
巻号頁・発行日
1600

中国、古来の裁判事例集。南宋の桂万栄が、建康(南京)の司理参軍(裁判長)在任中の嘉定4年(1211)に編集を終えた。裁判官の心得となるべき144件を4字の韻文に詠み、2件ずつ1組として対比させ、72類に分けてある。日本への伝来の最初は朝鮮版3巻本とも伝えられる。和刻本のほか、註釈書、和訳本も刊行され、江戸文学に影響を与えた。本版は寛永年間(1624-43)木活字印本。古活字版。寛永元年印行の「祥刑要覧」と同種の、朝鮮古活字の字様に似た大型の活字を用いている。
著者
神谷 文子
出版者
東京女子大学
雑誌
史論 (ISSN:03864022)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.30-48, 1986
著者
野田 稔 長尾 文明
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集 第22回 風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
pp.85-90, 2012 (Released:2013-09-04)

2012年5月6日に発生した北関東広域突風被害の原因である3つの竜巻のうち、最も北側を通過した竜巻によって栃木県益子町において農道の厚さ50㎜のアスファルトが長さ27m、幅4mに渡って剥離飛散した。このようなアスファルトが剥離・飛散した事例は日本国内では数が少なく、またアメリカの事例ではF5やEF5といった非常に強い竜巻の被災例として見つけられるのみであり、アスファルトの飛散から風速を推定した例はない。そこで、竜巻による圧力低下や局所的な地形を考慮した数値流概解析を用いて、アスファルトを単純に飛散させるのに必要な圧力低下量から風速を推定することを試みた。その結果、40m/s~60m/s程度の風が吹いていた可能性があることが明らかになった。ただし、周辺の雑草などの影響は考慮されておらず、さらに推定風速は上がる可能性がある。

3 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1919年06月07日, 1919-06-07
著者
種村 純
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.312-319, 2008-09-30 (Released:2009-10-27)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

遂行機能とは活動を計画し,周囲の人々と調整して社会的問題を解決していくことに関係し,その障害は前頭前野を中心とした脳損傷により出現する。関連障害としてaction disorganization syndrome があり,多くのステップを含む課題に困難を示す。遂行機能の評価法として,構造化されていない,手がかりもない課題,流暢性検査,概念形成検査などが用いられる。ワーキングメモリの研究法である2 重課題を遂行機能障害者に適用し,2 つの課題を単独で行う場合に比べ両課題を同時に行うと課題の遂行時間が延長する。遂行機能の治療では,複雑な活動の実行,特定の場面への適応方法,問題の解決法などを教育する。携帯情報端末(PDA)を用いて,実際場面で目標活動に含まれるステップを表示することもできる。遂行機能障害者の評価・治療成績を見ると,注意,記憶などの障害を併せ持ち,注意や記憶の訓練の後に遂行機能の訓練が行われていた。