著者
永井 陽太 松原 克弥
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2019-IOT-44, no.47, pp.1-6, 2019-02-28

筆者らは,教室 PC の余剰計算資源を活用するコンテナ型クラウドシステムの実現を目指している.本システムでは,授業での利用やクラウド管理者の意図しないシャットダウンによって,利用できる計算資源が動的かつ頻繁に変化することが想定される.この課題に対しては,実行中のコンテナを動的にマイグレーションすることによって再配置を行うことが有効である.しかし,任意ノードへの再配置を想定した既存コンテナマイグレーション機構は,インスタンス状態の保存や転送にかかるオーバヘッドが大きい.本研究では,コンテナマイグレーションの際,遷移元ノードにチェックポイント状態を一定期間保持しておき,再び再配置が必要となった際の遷移先ノードとして優先的にそのノードを選択し,さらに,過去のチェックポイントとの差分のみを抽出して転送することでネットワーク転送量を削減する 「残身型コンテナマイグレーション機構」 を提案する.本稿では,OCI 標準コンテナランタイムである runC を対象として,提案する残身型コンテナマイグレーション機構の実現手法について述べる.
著者
藤田 大樹 中野 亜希人 羽田 久一
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-10, 2019-02-28

氷の造形物は彫刻で作るのが一般的だが,スキルや材料の調達などの問題で誰もが簡単に製作できるわけではない.本稿では,氷の造形物を素早く印刷するための新しい3Dプリンタの手法を提案する.水とフロンガスを個別に噴霧する2つのエアーブラシを3Dプリンタに組み込むことにより,既存の3Dプリンタと同じ操作で氷の造形物を出力できる.この氷プリンタを使うことで,誰でも高速に氷の造形物を作ることが可能となる.本システムの評価として,氷のラインをパラメータを変えながら印刷し関係性を調査した.この結果から,氷の造形物を印刷するのに適したパラメータを発見した.また,既存のGCodeを氷プリンタ用のGCodeに変換するソフトウェアを実装した.これにより,ユーザは特別な知識がなくても氷プリンタ用のGCodeを作ることができる.氷の造形物は,時間の経過で溶けて完全に消失する性質を持っており,これは3Dプリンタに新しい表現を与える.
著者
小島 嘉津江 森田 純恵 若本 雅晶 宗像 一樹 鷲崎 弘宜
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE) (ISSN:21888825)
巻号頁・発行日
vol.2017-SE-195, no.30, pp.1-8, 2017-03-05

ソフトウェア品質の向上に関しては,古くから様々な技術が提案・実用化されてきており,ソフトウェア開発方法の進歩に伴う新たな技術の開発も進んでいる.一方,ソフトウェア品質を客観的に評価するための尺度についても研究が進んでおり,ソフトウェア品質モデルおよび品質特性が国際規格として規定されている (ISO / IEC 25000 シリーズ).これら個々の品質技術と,ISO / IEC 25000 シリーズで規定された各品質特性の間には,たとえば,この技術はこの特性の向上に特に効果があるといった関係性が当然存在し,これはソフトウェア開発において重要な情報となり得る.しかし,これまで,このような関係性を網羅的に明確化する試みは行われておらず,品質要求に基づく効率的な品質技術の選択の難しさ,品質技術の研究開発が必要な方向 ・ 領域の不透明さなどの課題があった.本稿では,個々の品質技術が品質特性に与える効果を網羅的に見える化することを目的として,品質技術と品質特性のマッピングを試みた.マッピングに当たっては,品質技術の網羅 ・ 体系化が必要となるが,世界で初めてこれを実現した日本発のガイドである 「ソフトウェア品質知識体系ガイド (SQuBOK ガイド)」 を参照することとした.SQuBOK ガイドと ISO / IEC 25000 シリーズをベースにしたマッピングの結果,品質向上に寄与する技術を品質特性ごとに効率的に選択できるようになり,ツールとしても有効であることがわかった.また,マッピング結果の分析を通して,品質特性による品質技術の偏りからわかる拡充すべき技術領域,データ品質に関する技術の体系化不足,OSS 活用の技法など最新技術の追加 ・ 体系化の必要性など,今後の課題も明確になった.
著者
小野 諒人 神薗 雅紀 笠間 貴弘 上原 哲太郎
雑誌
研究報告セキュリティ心理学とトラスト(SPT) (ISSN:21888671)
巻号頁・発行日
vol.2018-SPT-27, no.18, pp.1-6, 2018-02-28

ダークウェブとは主に匿名ネットワークを利用してインターネット上にオーバーレイネットワークで構築された Web サイト群のことを指す.ダークウェブはその高い匿名性からプライバシ保護や検閲回避等の目的で利用されている一方,違法薬物の販売サイトなどの違法サイトの構築にも悪用されている.ダークウェブに存在する Web サイトを把握することは容易ではなく,仮にその存在がわかったとしても実際の Web サーバの IP アドレスは秘匿されているため,不正サイトの摘発などの直接的な対策につなげることは難しい.そこで本稿では,Tor 秘匿サービス上のダークウェブを対象とし,HSDir の Snooping による Onion アドレスの収集と,秘匿サービスを利用しているサーバヘのスキャンを組み合わせたダークウェブ分析システムを提案 ・ 実装し,観測結果について報告する.
著者
長谷川 将規
出版者
湘南工科大学
雑誌
湘南工科大学紀要 = Memoirs of Shonan Institute of Technology (ISSN:09192549)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.103-116, 2018-02-01

本稿は、経済制裁への理解を深めるため、経済制裁をめぐる以下の4つの問いを考察する。経済制裁は有効なのか。なぜ国家は経済制裁を利用するのか。どのような状況下で経済制裁は有効になるのか。経済制裁の成否はどのような基準によって評価されるべきなのか。従来の研究は、経済制裁は有効なのかという不毛な問いに焦点を当てる傾向があった。また、経済制裁を「強制」(ターゲットの譲歩や行為の修正)という観点からのみ考察し、「強制」に成功したか否かという基準だけから制裁の有効性や妥当性を評価しがちであった。本稿は、経済制裁には他にも重要な目的――「シグナリング」と「封じ込め」――が存在することを指摘し、こうした傾向を批判する。さらに、これら3つの異なる目的が、どのような状況下で成功しうるのかを考察する。最後に本稿は、経済制裁の有効性と妥当性をどのように評価すべきなのかを考える。経済制裁の成否は、「強制」の成否によってではなく、制裁を利用する国家の戦略状況の改善という観点から評価されるべきである。
著者
宮川 久美
出版者
奈良佐保短期大学
雑誌
奈良佐保短期大学研究紀要 = Bulletin of Nara Saho College (ISSN:13485911)
巻号頁・発行日
no.22, pp.1-13, 2014

この作品は,国語の教材としても道徳の教材としても,心から友を思う友情・真の友情を主題としていると考えられている.そして,「互いに」とは言いつつ,むしろ青おにの,友達のために自己を犠牲にする行為の方に主眼が置かれているようである.しかし,本稿ではこの作品の主題について再検討し,主人公は赤おにであること,青おにの行為は善意から発したものではあったが,真に赤おにの気持ちを理解したものではなかったことを明らかにした.この作品は,「おに」として生まれてきた主人公の赤おにが,「私はおにに生まれてきたが,おにどものためになるなら,できるだけ,よいことばかりをしてみたい.いや,そのうえに,できることなら,人間たちのなかまになって,なかよくくらしていきたいな.」という望みを持ちながら,「おに」は乱暴者である,という偏見差別から自らも自由になれなかったがゆえに,その願いを叶えることの出来なかった悲しみを描いていると考えた. このような,「おに」と「人間」との関係性は,子どもたちの身の回りでも多々あり得ることである.大は,国家間でも民族間でも,村のような共同体の間でも,小は,家と家との関係でも,友達集団同士の関係でも,身近にあるだろう.真の友情,真の融和とは何かを考えるのに適した教材として扱ってこそ,この作品の主題が活かされるだろう.
著者
宗形 敦樹 佐藤 真平 中原 啓貴
雑誌
研究報告システムとLSIの設計技術(SLDM) (ISSN:21888639)
巻号頁・発行日
vol.2019-SLDM-186, no.4, pp.1-6, 2019-01-23

画像認識の分野で広く利用されている畳込みニューラルネットワーク (CNN : Convolutional Neural Network) は重みの数や乗算数が多いという問題がある.これらを解決するため,本論文では雑音付加と point-wise (1 x 1) 畳込みを組み合わせた雑音畳込み層を用いる.既存研究の解析から,雑音畳込み層だけでは入力データは偏っているため認識精度が低下することが判明している.本論文では,k 層までを既存の畳込み層で実現し,k +1 層以降を雑音畳込み層で実現する Noise Convolutional Neural Network (NCNN) を提案する.これにより,大部分の畳込み層を 1 x 1 畳込み層に換えることで重みの数と乗算数を削減しつつ,雑音を加えることで認識精度劣化を抑えることができる.NCNN と既存 CNN の認識精度とパラメータ (重み) 量の比較を行った.CIFAR-100 データセットに関して,AlexNet ではパラメータを 88%,ResNet - 18 では 96.2% 削減できた一方,認識精度に関しては AlexNet では 2.2%,ResNet - 18 では 1.8% に抑えることができた.また,本論文では提案する NCNN を効率よく実行するアーキテクチャについて述べる.NCNN では k + 1 層以降は point-wise 畳込みのみ行われるため,複雑なメモリアクセスアーキテクチャは不要であり,単純かつ高速なアーキテクチャで実現可能である.提案 NCNN を Xilinx 社 ZCU102 FPGA 評価ボード上に実装した結果,クラス分類タスクに関しては Binary CNN と比較して同程度の速度を達成しつつ,認識精度が約 10% 優れていた.
著者
皆川 晶
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学紀要 = Bulletin of Sojo University (ISSN:21857903)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.109-123, 2015

大学生が父親や母親に対してどのような呼称をしているのかを、アンケート調査した。直接呼びかけるとき、友人に親のことを話すとき、目上の人に親のことを話すとき、楽しいとき、怒っているときなど、さまざまな場面を設定し、場面によって親への呼称に変化はあるのか、また、その選択基準について調査し考察した。親に対する呼称は、話す相手や場面によって使い分けをしていることがわかった。また、特に怒っている場面では、女子学生の父親、母親に対する呼び方に、通常とは違いがみられた。よって、大学生は親への呼称はいつも同じではなく、場面や話す相手によって使い分けをしていることがわかった。
著者
森崎 雅稔
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.985-988, 2018-10-15

ディープラーニングにより,Javaのソースコードの美しさ(可読性や保守性の良さ)を学習させた.実現方法の最大の特徴は,学習時に与える教師データの加工方法である.美しさの観点で格付けしたソースコードを独自の方法でいったんカラー画像に変換し,その画像を畳み込みニューラルネットワークで学習した.学習済のニューラルネットワークで美しいコードと美しくないコードの識別が行えるようになり,この仕組みを使って,ソースコードの可読性や保守性のような潜在的リスクとなる品質問題を検出するレビュー支援ツールを開発した.このツールはアジャイル開発の現場などでソースを美しい状態に保つ手段としても活用できる.
著者
松浦 悠 小泉 直也
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.318-327, 2019-02-15

本論文では,水中および水上に直立表示した映像を,素手で水ごとすくいあげることのできるシステムScoopiritを提案する.古来より水は空間設計に欠かせない重要な物質である.情報技術が発達した現代では,公共空間の水辺におけるインタラクティブな視覚表現システムが多数存在するが,ユーザが直接水に触れて情報を操作することは実現されていない.筆者らは,空中に結像した映像である空中像を表示する光学系に,反射素材として水面を導入した.また水面の高さを超音波センサによりトラッキングし,素手で映像をすくい上げるインタラクションを可能とした.