著者
土村 成美 Tsuchimura Narumi ツチムラ ナルミ
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
言語文化共同研究プロジェクト
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.19-29, 2018-05-30

テクストマイニングとデジタルヒューマニティーズ 2017木研究ではイギリスの女性ミステリー作家Agatha Christieの作品の語彙的特徴に関して,他作家の作品との比較を通して分析を行うことを目的とする。比較対象として, Christieと同じくイギリスミステリー黄金時代に活躍した作家であるDorothy SayersとMargery Allinghamの作品を用いる。機械学習の一手法であるRandom Forestsを用い, 3作家の作品の分類を行うと共に,各作家の特徴語を抽出した。長編・短編作品全てを用いた分類を行うと誤分類が発生するものの,分類対象を長編作品に限定すると,正確に分類を行うことが可能であった。固有名詞が分類に大きく寄与した変数として抽出され,固有名詞が分類精度を向上させている可能性も考えられたが,固有名詞を除外して分類を行なっても,正確な分類結果となった。Christieの特徴語としてまずは-ly副詞が多く見られ,-ly副詞を用いてChristie が登場人物の言動の様子を詳述しているのではないかと考えられる。またyesやsure, youのような会話文に特徴的な語が多く抽出された。Christie作品は会話文を中心として物語が進められる作品が多く,そのことを反映した結果となっていると言える。This study investigates characteristic words of works by Agatha Christie, a female mystery writer in the UK, comparing with other authors'ones. The selected authors for the comparison are Dorothy Sayers and Margery Allingham. All of them are famous female mystery writers during Britain's golden age of crime fiction. This study applied Random Forests, a machine learning method, for classifying the three authors'works and extracting characteristic words from each author's works. The accuracy of classification was a little low when short stories were included in the data for the analysis, but when only long novels were used in Random Forests, all the texts were correctly classified into three different groups with an accuracy of 100%. First, the extracted characteristic words from Christie's works are -ly adverbs. Christie might use these words to describe how the characters in her works acted or said something. Second, spoken vocabularies like yes, sure, and you are also extracted as characteristic words of Christie's works. This result should be because Christie's novels contain a lot of conversations between characters.

2 0 0 0 OA 麻疹肝炎の3例

著者
川上 万里 梅川 康弘 西下 千春
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.285-291, 2010 (Released:2010-07-02)
参考文献数
19

2008年3~4月にわれわれは3例の成人麻疹を経験し,そのいずれもが肝障害を伴っていた.症例は19歳女性,26歳男性,33歳女性で,発熱と全身倦怠感のため受診し,初診時あるいは経過中全身に紅斑が認められ,麻疹と診断した.3例とも血液検査においてAST,ALT,LDHの増加とIgM型麻疹ウイルス抗体の出現が認められた.成人例は小児例とは異なり,高率に肝障害を伴うといわれている.急性肝障害の鑑別診断にあたり麻疹も念頭におく必要がある.
著者
川崎 厚史 橋田 徳康 金山 慎太郎 小川 憲治
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.732-736, 2003-05-15

要約 鉄欠乏性貧血の3症例に網膜中心動静脈閉塞症が併発した。いずれも女性で,年齢は29歳,44歳,51歳,すべて片眼発症である。受診の動機は急性の視力低下または霧視であり,初診時の患眼の矯正視力は,0.02,1.0,0.8であった。眼底所見として桜実紅斑,動脈周囲の糸状網膜浮腫または限局性浮腫があり,蛍光眼底造影で網膜内の循環遅延があり,一過性の網膜中心動脈閉塞症と診断した。その後,視神経乳頭の発赤浮腫,網膜静脈の拡張蛇行,火炎状の網膜出血が生じ,網膜中心静脈閉塞症の所見を呈した。全例に血清鉄,フェリチン,ヘモグロビン,ヘマトクリット値の低下があった。鉄欠乏性貧血の原因である拒食症,胃潰瘍,不正性器出血がそれぞれにあった。鉄剤などの投与で貧血は軽快した。これに続いて視力と眼底所見は速やかに改善し,最終視力として0.3,1.5,1.2を得た。初診時視力が良好なほど視力転帰がよかった。
著者
都築 繁幸
出版者
愛知教育大学特別支援教育講座・福祉講座
雑誌
障害者教育・福祉学研究 (ISSN:18833101)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.19-27, 2018-03

我が国では,障害者差別解消法が2013年に制定され,2016年から施行されている。我が国の障害者高等教育が発展していく要件を考えていくために,米国の大学入試の現状と判例及び我が国の日本語能力試験と大学入試センター試験における配慮を示し,障害学生の大学入試の米国と我が国の現状及び展望を述べた。そして,日米比較の観点から我が国の展望として,1)高校からの接続を検討する,2)高校での学びの保障,3)入試時の配慮のモデル化,4)在籍率を増加する,5)セルフ・アドボカシーのスキルの修得,6)障害学生支援担当部署の設置の素地作り,7)障害の定義-法律は絶えず見直す,等を論じた。
著者
竹中 信介
出版者
麗澤大学大学院言語教育研究科
雑誌
言語と文明 : 論集 (ISSN:21859752)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.131-151, 2014-03

「三種の神器」とは、日本神話に登場し、日本皇室に伝わる三種の宝物(「八咫鏡」「草薙剣」「八尺瓊勾玉」)のことである。「三種の神器」を構成する「鏡」「剣」「玉」の象徴的意味は、皇位継承のシンボルとしての役割ほど広く一般的に認知されていない。わが国では、歴史上、「三種の神器」の解釈論はいくつか存在するが、その中で展開されたのは主として天皇論との関わりにおける解釈であったものの、その解釈には単なる皇位継承のシンボルというだけでなく、その解釈者の宗教的、思想的背景を反映して形而上学的な多様性が認められる。さらに、本論では神道以外の諸宗教(仏教・道教・キリスト教)や文明圏(遼河文明)にも目を向け、シンボルとしての「鏡」「剣」「玉」に備わる多義性にも注目し、「三種の神器」の象徴的意味を比較文明・文化的視点から検討する。
著者
鈴木 浩明 田中 綾乃 小美濃 幸司 白戸 宏明
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.323-332, 1999-10-15
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

鉄道車両がカント (横断勾配) のついた曲線区間に停止した際に生じる床の傾斜角と乗客 (乗員) の不快感との関係を検討するための基礎実験を行った. モックアップ車両の床面の傾斜角度を0~12度まで2度刻みで変化させ, 被験者に傾斜の強さや不快感の評価を求めた. 乗客 (乗員) の一般的な姿勢や行動を考慮して, 着座姿勢, 停立姿勢, 通路歩行時, 車内販売用ワゴン操作時の各条件を検討対象とした. 歩行実験では履物の違いが評価に及ぼす影響も検討した. その結果, 着座・停立条件の不快感は歩行・車内販売条件より高いこと, 靴の違いは歩きにくさの評価には影響するが, 傾斜に起因する不快感の評価には影響しないこと, 車内販売作業では傾斜角が6度を超えると急速に不快感が高まること, などが明らかになった. 最後に, 傾斜角度を独立変数, 不快感を従属変数とする回帰式の作成を試みた.

2 0 0 0 OA 本朝編年録

著者
林道春 撰
巻号頁・発行日
1600

漢文で書かれた編年体の日本通史。本書編修の幕命をうけた儒学者林羅山(1583-1657)は、三男鵞峯、四男読耕斎の助力を得て、慶安3年(1650)夏までに神武朝から宇多朝までを編修し終え、幕府に進献した。この進献本が明暦の大火で焼失したため、幕府はその続修を鵞峯に命じ、寛文10年(1670)に神代から後陽成帝までが完成した。書名は「本朝通鑑」と改められたが、正編40巻には本書を増修したものが使われている。本書の内題が「本朝編年録」とある上に紙片が貼られ「本朝通鑑」と訂正されているのはこうした事情による。内容は「仁明天皇上」の部分。林読耕斎旧蔵本。