著者
黄 明霞 藤田 素弘
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_70-I_78, 2014

本研究では,カウント表示式信号機下の車両挙動特性として,中国の冬季と夏季の8交差点の季節観測データを用いて,カウント表示有無などの条件が,青から赤への信号切り替わり時における,特に冬季(路面積雪時)の減速停止走行挙動に与える影響の比較評価を行った.最大減速度モデルの比較分析や冬季での停止確率分布の特性分析等の結果,冬と夏ともにカウント表示等は赤信号切替わり時に減速停止傾向を強めるが,冬季ではよりカウント表示の減速停止挙動への効果が高いことが分かった. 対象交差点特性として監視カメラによる赤信号無視の取締まり交差点が多いことや全赤時間が設定されていないこと及び,90m手前から情報板でカウント表示が確認できるという条件の下で,カウント表示式信号機の冬季における減速停止特性を確認できた.
著者
土屋 純
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.22-42, 2000-03-31
被引用文献数
6

近年, コンビニエンス・ストア(以下, CVSと略)は, 物販だけでなく様々なサービスを供給する代理店として各方面の業界から注目されている.このような注目を受けるのは, CVSが全国的に広がり, かつ消費者に近接して分布しており, さらに情報・配送システムによってネットワーク化されているからである.しかし, CVSの地位的展開を考察した従来の研究は, ミクロスケールで行われたものが中心であり, 全国スケールで検討したものは少ない.そこで本研究では, CVSチェーンの全国展開パターンを検討し, CVSチェーンの発展とCVSの全国的普及過程との関わりについて考察した. 日本のCVS業界は上位集中化が進んでおり, 上位チェーンによる店舗展開がCVS全体の普及に大きく関わっている.よって本研究では, 出店戦略が特徴的な代表チェーン(セブンイレブン, ローソン, ファミリーマート, セイコーマート)を取り上げ, 全国展開のパターンについて検討した.その結果, 全国展開パターンとして, (1)大都市圏からの虫食い的展開, (2)拠点的展開, (3)エリアフランチャイズ方式, (4)特約店の支援の4つを指摘できた.しかし, これらのパターンには, 配送システムへの初期投資を円滑に回収する, あるいは運営コストを低レベルで押さえるという共通の要因が関わっており, ドミナントエリア(密度の高い店舗網)の形成という点で共通していた. このようなCVSチェーンによる全国展開によって, CVSの全国的分布には地域間, 都市階層間の偏在が形成されていることが明らかとなった.さらに, JITを前提としたルート配送が必要なことから, 都市遠隔山村, 半島部や離島へのCVS普及が進んでいないことも明らかとなった.
著者
小牧 奈津子
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.11-22, 2017

<p>本稿では,自殺対策基本法制定以降の政策過程を検討し,そこでNPOが与えた影響を明らかにするとともに,その影響力の源泉の導出を試みた.NPO法人ライフリンク代表の清水康之へのインタビューと,2つの諮問機関での議論の分析から,ライフリンクは,遺族とのつながりを通じて自殺の実態に関する貴重な情報を取得するだけでなく,国会議員とのつながりを構築・強化してきたことが明らかとなった.この国会議員との関係性が,ライフリンクの政策提言の影響力を高める源泉として機能したといえる.ただしNPOが政策過程でそうした大きな影響を及ぼすことには,弊害や危険性を指摘する声も少なくない.実際,本稿からも諮問機関での議論をバイパスし,NPOが政策過程に直接,強い影響を与えている様子が浮き彫りになった.この影響を検証・評価するためには,その後の政策過程を含めて更なる検討を行っていくことが必要であろう.</p>
著者
小島 道生
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

発達障害者を対象として、自尊感情と主観的幸福感(well-being)に関して、アンケート調査を実施した。その結果、自閉スペクトラム症者27名と同年代の対照群60名との比較を行ったが、自尊感情と主観的幸福感について違いはなかった。ただし、自閉スペクトラム症の学生の主観的幸福感は、社会人に比べて低いことが示唆された。そして、自閉スペクトラム症者と同年代の対照群に共通して自尊感情が高いと主観的幸福感も高くなることが明らかとなった。したがって,自尊感情を高めることが主観的幸福感をも高める可能性があり,自閉スペクトラム症の学生について,特に心理的支援を行っていく必要性があると考えられた。また、青年期ASD者を対象として、自尊感情と主観的幸福感にかかわる影響要因を明らかにするために、面接調査を実施した。その結果、主観的幸福感の測定とともに、幸せに感じている事柄について尋ねた。その結果、回答理由に関して家族関係や友人関係などの対人関係にかかわる言及は少なく、源泉においても定型発達者よりも偏っている可能性が示唆された。また、中学生や高校生においては、友人とのかかわっている時や良い成績をとった時などに主観的幸福感は高まることが示唆された。逆に、他者よりもうまくできないという経験や友達がいないといった孤独感が主観的幸福感を低下させている可能性も明らかとなった。したがって、青年期ASD者も成功・失敗経験と他者との比較、さらには孤独感が主観的幸福感の高低に影響をしていると考えられる。学校教育現場などでは、孤独感を抱かないように他者とつながる支援が求められると言えよう。これら研究成果の一部については、国内や国際学会において発表を行うとともに、学術雑誌に投稿中及び投稿準備中である。
著者
田中 雅文
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.95-110, 2005-05-30 (Released:2011-03-18)
参考文献数
57
被引用文献数
1 1

Previous research findings show that voluntary activities carried out by NPOs (nonprofit organizations) enhance learning and self-development among volunteers. Meantime, it has become difficult for post-adolescents to form a selfidentity. Can NPOs reduce this difficulty?This report discusses the above-mentioned issue, by adopting the concepts of reflexivity and public space. First, it discusses how the human relationships nurtured in voluntary activities can provide the self as a “reflexive project” with opportunities to form an identity. Second, it proposes a concept of public space produced by NPOs and examines the possibility of a reflexive transformation of the self and society promoted by voluntary activities within the public space. Finally, it discusses the significance of that kind of space for the formation of identity in post-adolescence, by combining two concepts, namely, public space and learning.The following findings are obtained. Voluntary activities nurtured within the public space produced by NPOs promote the reflexive transformation of the self and society based on concrete human relationships, experience and outcome of activities, and therefore liberates the participants from the formation of an identity dependent on abstract information. Such public spaces are filled with various kinds of learning, and therefore are nothing less than “learning spaces.” The learning emerging there can be called “reflexive learning.” At present in Japan, it is important for post-adolescents to understand that social transformation and self-development are part of one united body. Through that process they can recognize their own position and power in actual society and gain an identity as a member of society. Meanwhile, it may lead us to evade a “risk society.” Therefore, “reflexive learning” has the potential to achieve simultaneously the formation of identity in post-adolescence and the liberation of our society from risk.
著者
酒井 潔
雑誌
東洋文化研究 (ISSN:13449850)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.356-326, 2014-03-01

Literature on Philosophy or the history of religion sometimes suggests that Leibniz's Monadology (1714) and Kegon-Gyô - also known as the Buddhist philosophical tradition introduced into Japan from China in the eighth century - present almost the same content in many respects. However, no text-orientated precise analysis of the theme was made until Toshie Murakami (1871-1957) wrote Raibunittsu-shi to Kegon-shû (Mr. Leibniz and Kegon\Buddhism) as his graduation thesis, originally presented to the Imperial University of Tokyo in 1896. The first and only contribution to the topic by Murakami, however, remained unknown until his paper was collected in Kegon Shiso (The Thought of Kegon), edited by Hajime Nakamura in 1960. At that point, for the first time, one realized the solid contribution Murakami had made not only to Leibniz Studies but also to Philosophy of East-West Dialog. Murakami concludes in his article that there is no difference between Leibniz's concept of "monad" and the Buddhistic idea of "Jijimuge"(事々無礙) or the doctrine of the Kegon school that every individual already comes out from itself and that, at the same time, it goes into each other without any barrier.
著者
守岡 知彦
雑誌
じんもんこん2008論文集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.13-18, 2008-12-13

近年、人文系資料のインターネット上での公開が進んでいる。しかしながら、こうした人文系情報サービスが持つデータ量の増加に比べて、情報サービスの種類の増加、ひいては、その質的向上は進んでないと思われる。これは、現在の人文系情報サービスの多くが互いに連係しておらず、孤立したデータが散在していて、データがデータを生み出すような環境が実現されていないからだと思われる。ここでは、こうした問題を改善するための方策を、ツールチェーンや基盤データの整備、WWWサービスの問題、データベースのリファクタリングといった観点から議論する。
著者
山本 佐恵
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.63-72, 2009-07-31 (Released:2017-06-29)
参考文献数
64

1940年のニューヨーク万博の展示館「カヴァード・スペース」に、日本は写真壁画《日本産業》を展示した。それは「造船」、「手工芸」、「紡績」、「機械工」、「航空」というテーマの5面から構成され、写真のモンタージュに加え、写真への着色や、金属、絣綿布、木綿紐、ガラス、加工ベニヤ板等を写真に組み合わせて構成するなど、造形的処理が施されていた。こうした手法は、欧米の模倣や追従ではない独自の表現方法として、当時、日本の批評家から高く評価された。《日本産業》に使われた写真は、土門拳など当時の新進写真家たちが撮影した「報道写真」だった。5面を連結させて一つのテーマを構成する方法は、「報道写真」における「組写真」の形式にならったものだった。その背景には、当時ドイツから移入された新即物主義と、そこから生まれた「リアル・フォト」の表現があった。また、報道写真家パウル・ヴォルフの写真から、構図や表現に多くの示唆を受けた可能性が指摘できる。
著者
山本 佐恵
巻号頁・発行日
2010

筑波大学博士 (芸術学) 学位論文・平成22年3月25日授与 (甲第5448号)
著者
山田 洋次
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1403, pp.42-45, 2007-08-06

問 「男はつらいよ」シリーズの「寅さん」は、今で言えばフリーター。失恋すると時々ニートにもなります。日本人はそんな寅さんをずっと愛してきました。 答 全くその通り。役立たずで力もカネも能力もなくって、顔も良くない。そういう人間を許容する世の中に、自分たちが「ほっとする」時代でした。