著者
高山 憲之 白石 浩介
出版者
公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
年金研究
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-37, 2017

<p>1) 本稿では、個人住民税において配偶者控除を見直す場合の増減税効果、および所得税と個人住民税の双方において配偶者控除を同時に見直す場合の増減税効果、の2つを推計した。本稿は所得税のみの見直しを考察した高山・白石(2016)の続編である。</p><p>2) 利用したデータは『国民生活基礎調査』(2013年実施)であり、2012年分の所得データを使用した。個人住民税は2013年の制度を前提とした。ただし、その均等割部分は等閑視した。制度見直しに当たって、全体として増減税同額(税収中立)になるように配慮した。</p><p>3) 高山・白石(2016)では、専業主婦を「収入を伴う仕事をしていない家事専業の妻」と定義していた。本稿では、その定義を最狭義に変更し、夫が被用者であり、かつ「収入を伴う仕事をしていない家事専業の妻」に限定した。ただし、参考計数として高山・白石(2016)と同じ定義をした専業主婦の場合についても推計結果を掲載している。</p><p>4) 個人住民税を単独で見直す場合の主要な推計結果は次のとおりである。</p><p> ① 配偶者控除(配偶者特別控除を含む。以下、同様)を廃止すると、年間6600億円の税収増となる。全体として61%の世帯で税負担の増減はない。税負担が増えるのは39%の世帯であり、妻が専業主婦の世帯ないし非正規で就業している共働き世帯がその中核を占めている。税負担増は平均で年間3万2000円であり、世帯年収が高くなっても、この金額はほとんど変わらない。</p><p> ② 33万円の配偶者控除を廃止し、同額の夫婦控除(所得控除方式:世帯年収600万円までの所得制限つき)を導入すると、全体として15%の世帯が負担増、12%の世帯が負担減となる。負担増が負担減を世帯数で上回っており、所得税の見直し結果とは逆である。負担増が相対的に多いのは、世帯年収600万円以上の専業主婦世帯、および妻が非正規で就業している世帯年収700万円以上の世帯である一方、妻が正規で就業している共働き世帯では負担減組が多数派となる。</p><p> ③ 配偶者控除を廃止し、3万3000円の夫婦税額控除(世帯年収600万円までの所得制限つき)に移行しても、その効果は上記②で述べた所得控除方式の夫婦控除を導入したときと、全く変わらない。個人住民税が10%の比例税だからである。</p><p> ④ 個人住民税が累進税率を採用していれば、夫婦税額控除への移行で負担減組の方を負担増組よりも多くすることができる。</p><p> ⑤ 2017年度税制改正法は所得税と同様、パート主婦特権を中間所得層に限って拡大・強化する性格を有している。</p><p>5) 所得税と個人住民税を同時に見直す場合の主要な推計結果は以下のとおりである。</p><p> ① 所得控除方式の夫婦控除(所得税38万円、個人住民税33万円)に世帯年収制限(所得税800万円、個人住民税600万円)つきで移行する場合、税負担減となる世帯は15%、税負担増世帯14%となり、前者の方が後者より若干ながら多い。さらに、世帯年収400万円以上700万円未満の中間所得層では減税組が増税組を世帯数で圧倒する一方、年収700万円以上では逆に増税組の方が多くなる。また専業主婦世帯では増税組が減税組よりも多い一方、妻が正規または非正規で就業している世帯では総じて減税組の方が増税組よりも多い。</p><p> ② 夫婦税額控除(所得税3万8000円、個人住民税3万3000円)に世帯年収制限(所得税670万円、個人住民税600万円)つきで移行する場合においても、減税組(30%)が増税組(12%)を世帯数で圧倒する。この点は妻の働き方が違っても、質的に変わりがない。また、世帯年収100万円以上700万円未満の中低所得層では減税組の方が増税組より多い。所得税のみを見直す場合と同様に、所得税・個人住民税の双方を同時に見直す場合においても、「負担増=多数派」説「中間所得層=負担増」説は、いずれも事実に反していることが確認された。</p>
著者
佐藤 貢司 安井 基陽 田中 厚子 中村 昭博 中田 守
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第14回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.61-65, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
4

近年、事業戦略に知財情報を活用する動きが活発になってきており、知財活動における情報分析の重要性が高まっている。特許分析は、①発明の評価や特許出願の要否判断、②自社・他社の技術的な強み・弱みの把握、など様々な目的において活用されるようになってきている。分析対象となる特許が数千件に及ぶ場合など課題も散見されてきており、情報分析手法や評価指標などが検討・提案されている。 本発表では、特に被引用情報を用いた重要特許抽出方法の検証を行い、特に平均被引用回数を用いることにより効率化が期待できることを見出した。

2 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1889年09月24日, 1889-09-24
著者
田上孝一編著
出版者
社会評論社
巻号頁・発行日
2017
著者
大北 由紀子 菅沢 深 毛利 宏
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.854, pp.17-00085-17-00085, 2017 (Released:2017-10-25)
参考文献数
9
被引用文献数
2

It has been well known that the drivers' looking aside behavior is one of the cause of traffic accidents. However, it is difficult to investigate the causal relationship between the looking aside and accident. The authors analyzed the features of drivers' looking aside behavior by using the drive recorder data. It is found that this behavior occurs when three conditions stated below are satisfied. The first one is that the time headway is long enough. The second one is that the required deceleration for collision avoidance is supposed to be small. The third is that there is enough time for the drivers to push brake pedal and stop the car safely. Drivers' looking aside behavior under dangerous situation doesn't always lead to an accident, but when the looking aside period is too long, this behavior tends to cause an accident. In addition to the above, it is found that in the low speed range, drivers try to keep a constant headway distance. The mechanism of this trend is clarified.
著者
安倍宰
出版者
明治大学
巻号頁・発行日
2016

終了ページ : 336
著者
大庭 喜八郎 岡田 幸郎 塩田 勇 武藤 淳 岡本 敬三
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.363-371, 1965-10-25

アカマツ、12母樹と8産地およびクロマツ、4産地の種子を施肥量の異なる播種床に直播し、幼苗の生長を調査した。播種床には120×120×18(cm)3の木製枠を用い、底にビニール・シートをしき、放射線育種場構内のアカマツ林地のB層の土壊をつめた。肥料は化成肥料(魯スーパー1号)を使用し、1m2あたり、それぞれ600、300、150および0gを元肥として施肥した。播種約5ヵ月後、幼苗を地際から切りとり、胚軸長、上胚軸長、地上部乾重を測定した。これらの測定値から幼苗単位の平均値を計算し、分散分析をした。母樹別種子のOK・アカマツでは上胚軸長、乾物重について、播種密度、施肥量ともに有意であった。さらに、母樹と施肥量との間に有意な交互作用があった。また産地別種子のProv.アカマツでも上胚軸長、乾物重について、産地と施肥量との間に有意な交互作用があった。しかし、胚軸長については、両アカマツ群とも母樹または産地と施肥量との間の交互作用は有意でなかった。クロマツではいずれの生長形質においても産地と施肥量との交互作用はなかった。これらは直播した幼苗での結果なので、これらの生長反応と樋子重との関係を検討した。胚軸長、上胚軸長および乾物重について、各処理区ごとの繰返し区の平均値と同区内の各子供集団平均値との回帰直線を計算した。この母樹別、産地別の子供集団の回帰係数は各子供集団の肥料反応をしめすものと考えられ、回帰係数が大きいほど肥料に対し鋭敏に反応するとしてよい。そして、回帰係数の信頼限界が互いに重複しない子供集団があった。各子供集団の胚軸長、上胚軸長および乾物重の肥料反応をしめす回帰係数とそれぞれの種子1、000粒重との回帰直線を計算し、回帰係数の検定をしたところ、OK・アカマツの胚軸長および乾物重にのみ種子重が有意にはたらいたことが判り、上胚軸長にみられる母樹、または産地と施肥量間の交互作用には遺伝的な要因が関与しているものと推定される。
著者
大庭 喜八郎 岡田 幸郎 塩田 勇 武藤 惇 岡本 敬三
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.438-443, 1965

約180本/0.1haからなる17年生のスギ人工林において,大,中および小直経級別に,それぞれ, 5本ずつの母樹をえらび, 1963年秋に採種した。この種子を施肥量のちがう播種床に直播し,幼苗の生長を調査した。肥料は化成肥料(〓スーパー1号)を使用し, 1m<sup>2</sup>あたり,それぞれ, 600, 300, 150 および0gr の4段階とした。播種床には120×120×18(cm)<sup>3</sup>の木製木枠を用い,底にビニールシートをしいた。この木粋に関東ロームのやせた土をつめた。播種は線密度とし,長さ50cm, 列間, 6cm, 幅1cm, 深さ約 0.5cm の播種溝に,それぞれ,200粒,100粒および50粒の3段階とし, 4回の繰返区をもうけた。播種約6カ月後,幼苗を地際から切りとり,笛高と地上部乾物重とを測定した。各処理別に発芽率のちがい,または,その他の原因により生存数にちがいがあったので,各繰返し区ごとに密度補正をした。すなわち,母樹別,施肥量別に,乾物重は各繰返し区の生存本数とその平均乾物重の対数とで,また,苗高は各繰返し区の生存本数とその平均苗高とにより回帰直線を計算し,それぞれの回帰直線を用いて50cmの播種溝あたり100, 50および25本の生存数について,平均乾物重,平均苗高の補正値を算出した。施肥量,生存密度の組合せで12の処理区があり,その各処理区に15母樹の実生集団がはいっている。平均乾物重および平均病高について,施肥量,生存密度の組合せの 12処理区のそれぞれの総平均値に対する各処理区内の母樹別平均値を対応させた回帰直線を15母樹について計算した。この回帰係数は母樹別幼苗集団の肥料反応をしめすものと考えられ,回帰係数が大きいほど施肥効率が良いと推定される。直経級別により施肥効率をしめす回帰係数には明らかな関係はないようである。しかし,母樹別には,乾物重,苗高の回帰係数には95%の信頼度でその信頼限界が重複しないものがあった。直播幼苗での生長調査であるため,種子重との関係を,母樹別1,000粒重と母樹別の平均乾物重,平均苗高それぞれの肥料反応をしめす回帰係数との相関を計算し,その回帰係数の有意性を検定したところ,いずれの場合も有意でなかった。
著者
大庭 喜八郎 岡田 幸郎 塩田 勇 武藤 淳 岡本 敬三
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.363-371, 1965

アカマツ, 12母樹と8産地およびクロマツ, 4産地の種子を施肥量の異なる播種床に直播し,幼苗の生長を調査した。播種床には 120×120×18(cm)<sup>3</sup>の木製枠を用い,底にビニール・シートをしき,放射線有種場構内のアカマツ林地のB層の土壊をつめた。肥料は化成肥料(〓スーパー1号) を使用し, 1m<sup>2</sup> あたり,それぞれ600, 300, 150 および0gを元肥として施肥した。播種約5ヵ月後,幼苗を地際から切りとり,胚軸長,土胚軸長,地上部乾重を測定した。これらの測定値から幼苗単位の平均値を計算し,分散分析をした。母樹別種子の, OK・アカマツでは上胚軸長,乾物重について,播種密度,施肥量ともに有意であった。さらに,母樹と施肥重との間に有意な交互作用があった。また産地別種子のProv.アカマツでも上胚軸長,乾物重について,産地と施肥量との間に有意な交互作用があった。しかし,胚軸長については,両アカマツ群とも母樹または産地と施肥量との間の交互作用は有意でなかった。クロマツではいずれの生長形質においても産地と施肥量との交互作用はなかった。<br> これらは直播した幼苗での結果なので,これらの生長反応と種子重との関係を検討した。胚軸長,上胚軸長および乾物重について,各処理区ごとの繰返し区の平均値と同区内の各子供集団平均値との回帰直線を計算した。この母樹別,産地別の子供集団の回帰係数は各子供集鋼の肥料反応をしめすものと考えられ,回帰係数が大きいほど肥料に対し鋭敏に反応するとしてよい。そして,回帰係数の信頼限界が互いに重複しない子供集団があった。各子供集団の胚軸長,上胚軸長および乾物重の肥料反応をしめす回帰係数とそれぞれの種子1,000粒重との回帰直線を計算し,回帰係数の検定をしたところ, OK・アカマツの胚軸長および乾物重にのみ種子重が有意にはたらいたことが判り,上胚軸長にみられる母樹,または産地と施肥量間の交互作用には遺伝的な要因が関与しているものと推定される。
著者
山本 昌木 野津 幹雄
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.150-157, 1972

<i>Taphrina cerasi</i> (FUCKWL) SADEBECKによるソメイヨシノ(<i>Prunus yedoensis</i> MATSUMURA) のてんぐ巣病組織の超薄切片を電子顕微鏡で観察した。本菌は感受体組織の細胞間げき,中層ならびに細胞壁に認められる。菌体が細胞壁に入った場合,細胞壁は厚くなるが,菌体と細胞壁が接触している部分とそうでない部分に厚さの差を認めることはできなかった。また菌体は細胞壁へ侵入することができても,細胞壁を貫通したり,感受体細胞質に接触したりすることなく,吸器様構造も観察されなかった。組織中の菌糸が感受体細胞と隣接している場所には粘質物質様のものが認められるが,中層や細胞壁に侵入した菌体周辺には認められない。組織内の大部分の葉緑体<br>にはインターグラナラメラ,グラナラメラ,好オスミウムか粒が認められる。気孔孔辺細胞にでん粉が認められる以外には葉緑体にでん粉は観察できなかった。病葉は子のうを形成する蒔期になると組織がもろく,折れやすくなるので,組織細胞壁は変性していると思われるが,超薄切片の観察からは,これに関して知見を得ることはできなかった。

2 0 0 0 OA Mapping Science

著者
川村 隆浩 渡邊 勝太郎 松本 尚也 江上 周作 治部 眞里
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第14回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.119-124, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
8

近年,科学技術の関係性や発展を把握するため,さまざまなサイエンスマップが作られている.しかし,ファンディング情報や最新の論文は,十分な引用情報を持たないため,従来の引用分析を用いてマップ化することが難しい.そこで,我々は研究内容の類似度に基づいてマップを作成するため,ニューラルネットワーク技術を用いてプロジェクト概要や論文抄録などのテキスト情報を多次元ベクトルに変換する手法を開発した.文書ベクトル化することによって内容の類似性を定量的に測定することを始め,クラスタリングなどの統計処理や機械学習にかけることが可能になる.本論では,実際に 2012~2016 年の米国 NSF における約 3 万のプロジェクト情報,および同期間の Scopus 収録 IEEE 論文誌・国際会議論文約 27 万編の抄録を文書ベクトル化し,マップとして表した結果を示す.また,マップ上において,いくつかの萌芽領域が形成されていく様子(時系列的な構造変化)が確認できたことを示す.
著者
後藤 晶
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第14回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.143-148, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
15

本研究では,実際には監視されていなくても監視されていると思い込む「被監視感」に着目して,その被監視感が主観的幸福度および社会的価値指向性・認知内省テストに与える影響について検討する.本研究では,クラウドソーシングを用いておおよそ1500名を対象として,主観的幸福度および被監視感に関する調査を行った.利他性や競争性などを示す社会的価値指向性,並びに情報処理スタイル(合理性‐直観性)尺度についても調査を行っており,これらを包括的に報告する. さらに,本研究を支えるための基盤としてのクラウドソーシングサービスおよびクラウドソーシングを用いた大規模経済ゲーム実験の可能性について,計算社会科学の文脈から議論をしたい.
著者
渡邊 勝太郎 大倉 克美 鈴木 至 松邑 勝治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第14回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.101-106, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
1

科学技術文献データベースは特許データベースと異なり、その収録範囲は分野別、用途別、データベースベンダーのポリシーなどによって時に大きく異なる。本稿では総合系のデータベースとして著名なエルゼビア社の Scopus、クラリベイト・アナリティクス社の Web of Science(WoS)と JST の文献情報データベース(JST文献)を比較し、示唆を与えることを目的とする。3 種類のデータベースの収録範囲を ISSN を用いて集計した結果、Scopus と WoS の収録範囲は多くの雑誌(15,000 誌超)で重複しており、JST 文献の収録範囲は他 2 者との重複はさほど多くはないものの、学協会発行の雑誌や大学紀要等の国内の文献の豊富な収録状況(独自の収録13,000 誌超)が明らかになった。さらに、JST が実施している、JST 文献と Scopus とを書誌マッチングした結果を用いて、大学等公的機関と企業の共著関係を検索し、国内学会での発表等 JST 文献以外では収録していない情報から、研究初期の段階にあるテーマ等を追うことができる可能性を示した。