著者
松本 和也 マツモト カツヤ
出版者
神奈川大学人文学会
雑誌
人文研究 = Studies in humanities (ISSN:02877074)
巻号頁・発行日
no.201, pp.1-42, 2020-09-25

The aim of this paper is to examine the stage version of The Curtain Rises from multiple perspectives such as plays and performances. In particular, I focused on Oriza Hirata, who was involved in writing the script. In Chapter 1, I introduce his work and organize the comments of the people involved in the workshop that took place prior to the movie and the stage play. In Chapter 2, I examine how the transition from novel to film, and from film to theater, was based on the mixed media of The Curtain Rises. In Chapter 3, I discuss the story, pointing out theatrical features based on particular scenes, and highlight the theme of the growth of the characters. Finally, in Chapter 4, I focus on the episode dealing with the Great East Japan Earthquake and the characters of Nakanishi, which were added in the stage version of The Curtain Rises, and consider its effects on the entire play.
著者
藤本 勝義 フジモト カツヨシ Katsuyoshi FUJIMOTO
出版者
清泉女子大学人文科学研究所
雑誌
清泉女子大学人文科学研究所紀要 (ISSN:09109234)
巻号頁・発行日
no.36, pp.31-48, 2015

源氏物語では重要な人物で死ぬ者が多い。それは、長編物語のためだけでなく、死そのものの意味があり、死で終わるのではなく、そのプロセスと、死後に残された者の思いが重視されているからと言える。本稿では、死のもたらすものと、死者の救済について考察し、仏教的な救済はもとより、源氏物語独自の救済の論理を把握しようとするものである。先ず、物の怪に憑依された人物を取り上げる。夕顔は、その死が娘などには知られないため、菩提を弔われることが少なく、成仏することがかなり遅れた。葵の上は、嘆き悲しむ光源氏の心からの哀悼により成仏したと考えてよい。しかし、光源氏がそこまで葵の上を愛していたとも思われない。別の理由も考えられる。死者の往生のためには、生前の本人の仏道への帰依と、残された者の供養が要請された。勤行の経験がほとんどなかった主に若い死者には、残された者の心からの追善供養が必要である。六条御息所を光源氏が、心をこめて菩提を弔うことはなかったと言ってよい。それは、死霊となる六条御息所の物語とも深く結びついていた。源氏物語では、死者の冥福に関して、追善供養と精神的救済が要請されているかのようである。紫の上は厚い信仰心と光源氏の心底からの供養によって極楽往生した。次に、亡霊として夢枕に立つ人物の救済だが、桐壺院は、光源氏による大々的な追善供養によって救われ、極楽往生したと考えられる。藤壺救済の道筋は、身代わりになってでも救いたいという光源氏の強い思いなどで、はっきりとつけられた。八の宮は、中の君が「幸い人」路線を進むことで、心の平安を得て成仏したと考えられる。源氏物語以外の作品では、光源氏など個人が、心の底から菩提を弔うといった、あくまで物語の精緻な展開に密着した描写は限られており、盛大な葬儀を行うことが、当事者の権勢を示すことに直接関わったり、源氏物語には決して描かれなかった挿話を記すなど、その質の違いが際立つのである。
著者
武蔵 勝宏 ムサシ カツヒロ Musashi Katsuhiro
出版者
大阪大学大学院国際公共政策研究科
雑誌
国際公共政策研究 (ISSN:13428101)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.11-27, 2013-03

This paper analyzes why the Democratic Party of Japan (DPJ) failed to achieve key policies in its 2009 election manifesto. The data are based on case studies about major legislation under the DPJ–led administration. The optimistic foresight of funding measures and the lack of ability to manage the government in the Hatoyama and Kan Administration was found to be related to nonattainment of the pledges. After the ruling parties lost the majority in the House of Councilors at the Kan Cabinet, it became more difficult for the government to enact bills. Therefore, the Noda Administration has adopted the cooperative business in the Diet by which it forms consensus through negotiations with the opposition parties. This study concludes that the execution of the manifesto by the DPJ–led administration was not fully completed, but it realized the passing of important legislation, such as a consumption tax hike.
著者
木口 学 (2012) 榎 敏明 (2010-2011) RAJEEV KUMAR Vattakattu Ramacrishnan RAJEEVKUMAR VattakattuRamacrishnan ラジーブ・クマール バッタカツ・ラマクリシュナン
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

酸化活性炭素繊維(ACFs)の磁化率、磁化を測定し、磁性の評価、NEXAFSの実験から磁性の起源となるFermi準位付近に存在する非結合電子状態の解析を行った。NEXAFSのスペクトルでは、ACFsを酸化して行くと次第にがバンドとエッジ状態の寄与は減少し、代わって、新たな非結合電子状態が発生し、この酸素誘起の状態は酸化の進行により強度を増して行く。π*バンドの酸化による減少は、酸化によりπ共役系がナノグラフェン内部まで破壊されて行くことを示唆しており、エッジ状態の減少もこのことによってもたらされている。代わって形成される酸素誘起の非結合電子状態は、グラフェン面の共役系が破壊され、酸素誘起の欠陥がグラフェン面に形成された結果、酸素誘起の欠陥領域に生じる非結合状態と理解される。未酸化ACFsでは、測定された磁化過程はS=1/2の挙動で基本的には記述され、スピン間相互作用は小さく、エッジ状態スピンは互いに独立に振舞う挙動を示している。酸化が進行すると磁化過程はS=1/2の挙動からずれだし、次第にS=3/2の挙動の近くなって行く。酸化ACFsにおいては前述のように磁性を担うスピンは酸素誘起の非結合状態に存在するスピンであり、S=3/2に近い磁化過程の挙動は酸素誘起の局在スピンが互いに強磁性相互作用により結合をしていること理解される。内部磁場がACFs試料中でGauss分布をするものと仮定してフィッティングを行った結果、最も酸化の進んだACFs(0/C=0.6)では、内部磁場は反強磁性(負領域)から強磁性(正領域)に渡って分布していることが見出された。また、内部磁場の平均値は強磁性α=2830 Oe.emu^<-1>.g.と見積もられた。
著者
小林 益江 中嶋 カツエ 田中 佳代
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.370-374, 1998-12-01
被引用文献数
4
著者
古賀 勝郎 コガ カツロウ
巻号頁・発行日
pp.1-78, 2006-03-01

古賀勝郎編著
著者
牧野 カツコ 山根 真理
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.7-12, 2003

届出に象徴される社会的制度としての結婚が日本では一般的なものとなっているが, しかし, 晩婚化や婚姻外の性関係の広がり, 子どもをもたないカップルの増加, 中高年の離婚の増加などは, われわれに結婚とはなにかを問うている。われわれは, 性別分業にささえられた近代家族型の結婚の揺らぎを体感しつつも, その次にくる脱近代家族のイメージを確立することができずにいる。シンポジウムでは, この領域で活躍されている4人の論者を迎え, 近代社会における婚姻制度とそれを支える理論に対する立場を軸として, 討論が展開された。 (1) 近代結婚理論と脱近代的家族論との対峙が本格的になされたこと, (2) 同性間パートナーシップに関する議論が, 家族社会学会のなかで初めて本格的になされたこと, (3) 2者パートナー関係に特権的な位置を与えない未来社会の可能性が示されたこと, の3点において, 意義のある成果がみられた。<BR>今後, 脱近代社会における子どもの位置や親密関係について, 議論が深まることが期待される。
著者
加藤 邦子 石井クンツ 昌子 牧野 カツコ 土谷 みち子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.30-41, 2002-04-20
被引用文献数
5

本研究の目的は,3歳児の集団場面における社会性の発達に及ぼす父親・母親の影響について,父親の育児かかわり要因,母親の育児不安要因をとりあげてモデルを仮定し,バス解析によって関連を明らかにすることである。その際,父親の生活において,最近家族とともにすごす時間が多くなったとされていることから,背景の異なる2つの時期の親子,つまり1997〜1998年のデータ(コホート2)と1992〜1993年のデータ(コホート1)とを比較する。その結果,3歳児の社会性に関しては,父親の育児かかわり要因がどちらのコホートにおいても有意な関連を持つことが明らかとなり,子どもの社会性の発達に父親の育児かかわりが直接的な影響を与えていた。間接的要因として夫婦の会話の頻度が父親の育児かかわりに関連を示しており,夫婦関係による影響が示唆された。
著者
徳増 克己 トクマス カツミ Katsumi TOKUMASU
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture bulletin
巻号頁・発行日
vol.10, pp.179-188, 2010-03-31

以下に紹介するのは、20世紀前半のアゼルバイジャンを代表する民族運動の指導者マンメド・アミン・ラスルザーデ(1884-1955)の晩年の著作『あるトルコ民族主義者のスターリンと革命の回想』の冒頭部分の翻訳である。この回顧録は、もともと1954年にトルコの新聞《デュンヤ》紙に連載された。著者ラスルザーデは、20世紀の初めからロシア帝国内の産業都市バクーで政治活動に入り、その中で労働運動の組織化に携わっていたボリシェヴィキの活動家スターリンとも接触をもつようになった。彼はアゼルバイジャンのみならず、イランやオスマン帝国(とトルコ共和国)、さらにはヨーロッパでも幅広い活動に従事したが、今回はまず、スターリンとの出会いにいたるまでを扱った、回顧録の冒頭部分を訳出した。