著者
上村 清 倉井 華子 忽那 賢志
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.49-55, 2020-09-25 (Released:2021-09-25)
参考文献数
33

イノシシが引き起こす人獣共通感染症のうち,ウイルス病である日本脳炎,SFTS,狂犬病,E型肝炎,豚インフルエンザ,ニパウイルス感染症,細菌・リケッチア病である日本紅斑熱,寄生虫病である回虫症,旋毛虫症,猪オンコセルカ症,顎口虫症,肺吸虫症,有鉤条虫症,クリプトスポリジウム症について解説した.イノシシから感染する人獣共通感染症が多くあるので,ジビエ料理には衛生管理が欠かせない.
著者
上村 清 荒川 良
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.161-162, 1986
被引用文献数
2 5

チョウバエ科昆虫によるハエ症は泌尿生殖器, 消化器, 気道, 眼瞼内より少数報告されている。著者らは今回富山市在住の69歳女子膀胱炎患者の泌尿生殖器系に寄生していたと思われる1虫体を尿中に検出し, オオチョウバエTelmatoscopus albipunctatusの成熟幼虫と同定したので報告する。
著者
松瀬 イネス倶子 武田 カチア美知枝 上村 清 吉田 政弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.117-122, 1997
参考文献数
6
被引用文献数
5 8

セアカゴケグモは1995年9月に大阪府の高石市で発見され, 大阪湾沿岸地帯, 三重県四日市市などでも生息が確認された。また1996年3月上旬の現地調査ではセアカゴケグモの越冬が確認され, 春夏秋冬のいずれの調査において成成虫, 若虫, 卵嚢のいずれもが採集できた。採集したクモと卵嚢は研究室に持ち帰り, 25℃, 60% RH, 14時間照明で, 50ml容量のガラス瓶内で, ショウジョウバエを餌とし, 個別飼育を行った。その内, 卵嚢より脱出した若虫を用いて, セアカゴケグモが寒冷期に, 冬期と同様の低温条件下の飼育によって生存できるかどうかを検討した。その結果, 5℃においては最長47日間生存し, 10℃及び15℃ではそれぞれ175及び270日生存した。この間の発育零点は15℃前後であった。セアカゴケグモを含むゴケグモ類が日本に分布していなかった主因は気温によるものと推定されているが, 飼育実験の結果, セアカゴケグモは日本に定着し, さらにより広範囲に広がる可能性があることが示唆された。
著者
上村 清
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.25-54, 2004-05-31
被引用文献数
2

蚊は,日本から100種余り記録されているが,衛生上重要な種は限られている.主な媒介蚊であるアカイエカは下水溝よどみ,雨水ますなど,チカイエカは地下の湧水槽など,コガタイエカとシナハマダラカは水田,湿地,ヒトスジシマカは放置タイヤ,花立,竹筒,空缶などから発生する.蚊に刺されて痒いのは即時型のアレルギー反応である.雌成虫は通常1ヶ月ほど生き,一生に3〜4回吸血して産卵するが,再吸血時にマラリア,フィラリア症,西ナイル熱,日本脳炎,デング熱,黄熱などの感染症を媒介する.これら感染症はいずれも日本でも流行することが危惧され,その早急なる対応が望まれる.蚊の感染症対策は,対象種が発生しないように発生源対策をするのが効果的で,また,国外から持ち込まないようにし,蚊に刺されないようにすることである.
著者
渡辺 護 荒川 良 上村 清
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.51-58, 1990-03-15 (Released:2016-08-26)
被引用文献数
8 4

In an attempt to predict the epidemic incidence of Japanese encephalitis in human population, a long-term surveillance on Culex tritaeniorhynchus, the vector of Japanese encephalitis virus, has been carried out at several observation stations in Toyama Prefecture since 1969. The numbers of the mosquito captured by the light trap had been decreasing since 1965 until 1977,and then began to reverse from 1978. This increasing trend appeared clear in 1982,although some decreases in the numbers were observed in 1984,1986 and 1988 in comparison with the previous years. The major cause of increase in the numbers of the mosquito may be attributed to the acquisition of insecticide resistance. Aerospray of agricultural pesticides or fungicides may not inhibit the appearance of the mosquito. In fact, the resistant/sensitive ratios for fenthion, fenitrothion and malathion of a resistant strain of C. tritaeniorhynchus, established in Toyama Prefecture, were 6,557,5,272 and 2,454,respectively. In an exposure experiment with the pesticide aerospray over a paddy field lethalities ranging from 7.6 to 71.6% were observed with the resistant strain of C. tritaeniorhynchus; these percentages could not be compared with the complete death of a sensitive strain.
著者
松瀬 イネス倶子 上村 清 吉田 政弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.71-73, 1999
被引用文献数
1 7

大阪府下で採取したセアカゴケグモの耐寒性について調べた。成体および幼体を4∿-10.5℃の温度範囲下に置き, その生死を確認した結果, 耐寒性は齢期, 雌雄などで異なり, 雄成体が最も低温に強く, 本実験で約半数が-10℃において30分間耐えられた。2齢幼体がそれに次いで, ほぼ半数が20分強耐えられた。従って, 本種は北海道を含め, 日本における分布拡大の潜在能力を持っている。
著者
高須 俊明 WAGUR M.A. YASMEEN Akba SHAHANA U.Ka AKRAM D.S. AHKTAR Ahmed 五十嵐 章 上村 清 土井 陸雄 石井 慶蔵 磯村 思无 吉川 泰弘 山内 一也 近藤 喜代太郎 SHAHANA Kazmi U. AKHANI Yasmeen AHMED Akhtar M.A.WAQUR SHAHANA U Ka D.S.AKRAM 橋本 信夫 高島 郁夫 WAQUR Anwar AKBANI Yasme AHMED Akhtar
出版者
日本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

1 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)多発の動向と原因(1)多発の動向:(i)パキスタンのカラチではなお(1991〜93年)SSPEの多発が続いており、カラチ市民病院では3年間に総計36例(毎年9〜16例)が登録された(人口100万対年間1.3)。そのうち36%は2歳未満罹患麻疹(early measles)から、64%は2歳以上罹患麻疹(late measles)からの発生であった(高須)。麻疹罹患者のSSPEの罹患率は10万対22、early measles 罹患者からは10万対22、late measles罹患者からは10万対21となり、late measles罹患者からの発生が多い傾向が続いている(高須)。(ii)麻疹の発生は減少傾向にあり、1978年には15歳未満人口10万対2888であったのが、1987年には15歳未満人口10対380であった。カラチにおける地域調査では麻疹流行期には麻疹罹患年齢が高年齢側に広がり、非流行期の麻疹では比較的低年齢層に罹患年齢が集中する傾向がみられた(磯村)。麻疹ワクチンの普及は進みつつありカラチの調査地域では15歳未満児で66%、5歳未満児では82%に達しているが、臨床的有効率は比較的低く(76%)、ワクチン接種者で麻疹未罹患である児の中和抗体保有率は75%に留まっていた(磯村)。以上のように多発はなお続いているが、麻疹ワクチンの普及、麻疹発生の減少に伴なってSSPEが果して、いつごろから減少し始めるかに強い関心が持たれる。(2)多発の原因:(i)ケースコントロールスタディでは妊娠母体の異常および分娩時の合併症、新生児期の異常、early measlesおよびSSPE発病前の疾患罹患がリスクファクターと考えられた(近藤)。(ii)カラチの小児の免疫能の検査によって、麻疹ウイルスと他の病原微生物の混合感染の頻度が高く、免疫系の初期発達に対する過度の負担のため麻疹合併症や麻疹ウイルスの持続感染が成立する可能性の高い低生活環境レベルの小児が多く存在すること、および種々の病原微生物との接触機会が少なく、免疫系の発達が不十分なままlate measlesに罹患した場合ある種の接続感染が成立する可能性が考えられる高生活環境レベルの小児が存在することの両方がカラチにおけるSSPE多発の要因である可能性が示唆された(吉川、寺尾)。(iii)麻疹ウイルスの遺伝子変異が持続感染の可能性を高めたり持続感染後のSSPE発病を促進したりする可能性が考えられるが、これらは今後実証されるべき課題として残っている。このように多発の原因には生活環境のレベルが関与している可能性が強くなってきたと考えられるが、なお今後SSPE多発とのつながりを解明して行く必要があり、麻疹ウイルスの遺伝子変異と共に大いに興味が持たれる。(3)その他:(i)インド亜大陸のいくつかの地域(ボンベイ、バンガロール、ベロール、マドラス)では一つの病院で毎年5〜36名のSSPE患者の新患があり、多発を推測させる(高須)。(ii)タイの疾患サーベイランス制度はそれなりに機能しており、特に下のレベルほど統計が生きており、事務的な保健統計よりもはるかによく活用されていることがわかった。パキスタンのシンド州の調査により、疾患サ-ベラインス制度を樹立する可能性について肯定的な結果が得られた(近藤)。2 日本脳炎(JE)様脳炎の病原(i)1992年に採取した急性脳炎髄液からPCR法により24検体中それぞれ8検体、1検体に西ナイルウイルス、JEウイルスの核酸塩基配列を検出した。IgM-ELISAでも1989〜92年に集めた39髄液検体のうち7検体で両ウイルスに対する抗体が陽性であり、9検体は西ナイルウイルスにのみ陽性であった。これらの結果から、カラチでは1989年以後の急性脳炎の病原として西ナイルウイルスが重要な役割を果しているが、JEウイルスも急性脳炎の病原の小部分となっていることが示唆された(五十嵐)。(ii)1990〜92年にカラチとカラチから87kmの所にあるハレジ湖岸の野外で採集したコダタイエカ118、756匹(779プール)からの西ナイルウイルス、JEウイルス分離は陰性であった。このことは急性脳炎の病原となるウイルスがカラチおよび周辺地域に常在はしないことを意味するものと考えられた(上村)。以上のようにカラチのJE様脳炎の病原の本態がようやく明らかになってきたが、今後ウイルス分離によって知見をより確実なものにする必要がある。
著者
上村 清
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.181-185, 1998-09-15 (Released:2016-08-18)
参考文献数
15
被引用文献数
13 9

The incidence of Japanese encephalitis (JE) in Japan has decreased in recent years as a secondary consequence of modernization of the agricultural system in this country. The population of the vector mosquito, Culex tritaeniorhynchus has decreased in ricefields where new methods for rice cultivation have been applied. Nowadays, ricefields have small amounts of water due to technology which controls the management of intermittent water supply, new varieties of rice have been developed to shorten the period of cultivation, and pesticides are extensively used. These facts have transformed the ricefields into inadequate places for mosquito breeding. The following reasons also contribute to the drastic reduction of the vector mosquito with consequent decrease in incidence of JE : very few teams of animals are raised in the farms, the large-scale pigsties are located far from human habitation, and modern construction methods of houses and pigsties hamper the entrance and feeding of mosquitoes. Recently, projects for development of ricefields and pig breeding are promoted in Southeast Asia with the purpose of increasing food production. Such promotion is giving rise to spread of JE in Southeast Asia and this is, therefore, imported to Japan. Moreover, the global warming, the changes in environment and emergence of insecticide-resistant mosquitoes increase the risk of epidemic in Japan and other Asian countries at any time. Therefore, the development of additional methods for vector control and strengthening of the alert attitude by health professionals and scientists are needed.
著者
奥谷 喬司 上村 清幸
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.39-_47-2_, 1973-07-31 (Released:2018-01-31)

房総半島勝浦沖南東10∿20浬に形成されるスルメイカ漁場から, 当業者が"アブライカ"と通称しているイカが屡々混獲される。著者の一人, 上村が1972年8月, 10月, 12月に同漁場の漁獲物中から見出した"アブライカ"の9標本(5♂, 4♀)につき研究した結果, これが日本未記録属Nototodarus PFEFFER, 1912に属する未記載の一種と判明したので, ここにNototodarus nipponicus n. sp.の新名を与え記載した。和名にはアブライカを採用したい。Nototodarus属とした根拠は, (1)漏斗溝に, 縦襞しかない(Todarodinaeの特徴), (2)側腕大吸盤角質環上の歯のうち最外縁の1歯が他のものより著るしく大きい, (3)両腹腕とも交接腕として変形していることである。同属には4既知種(N. sloani (GRAY)=属模式, ニュージランド∿フィジイ;N. gouldi (MCCOY)タスマニア∿オーストラリア;N. hawaiiensis (BERRY)ハワイ;N.philippinensis Vossフィリッピン∿南シナ海)があるが, 本新種は, それらとは(1)外套膜表面に一種のモザイク様又は小鱗様の彫刻がある, (2)外套膜が太短い, (3)鰭幅が外套長の70%に及ぶ, (4)鰭の後縁角が著るしく大きく, 120°∿130°であるなどの点から容易に区別される。なお, これらの特徴のうち(1)は, 本種の属するアカイカ科Ommastrephidae中には他の例を見ない。本新種に関して生物学的知見はほとんどない。しかし, これが勝浦南東沖を中心とする10∿20浬の大陸棚縁辺部に形成されるスルメイカ漁場から混獲される所から見ると, 1972年は黒潮の接岸傾向が強く, 魚群の滞泳する深度100∿250mの範囲は夏冬を通じて20°∿11℃(中心15℃)にあったので, 本新種もほぼこの付近に分布するものと考えられる。
著者
上村 清
出版者
日本環境動物昆虫学会
雑誌
環動昆 (ISSN:09154698)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.120-126, 1999-07-31
参考文献数
17
被引用文献数
1
著者
松瀬 イネス倶子 武田 カチア美知枝 上村 清 吉田 政弘
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.117-122, 1997-06-15 (Released:2016-08-20)
参考文献数
6
被引用文献数
7 8

セアカゴケグモは1995年9月に大阪府の高石市で発見され, 大阪湾沿岸地帯, 三重県四日市市などでも生息が確認された。また1996年3月上旬の現地調査ではセアカゴケグモの越冬が確認され, 春夏秋冬のいずれの調査において成成虫, 若虫, 卵嚢のいずれもが採集できた。採集したクモと卵嚢は研究室に持ち帰り, 25℃, 60% RH, 14時間照明で, 50ml容量のガラス瓶内で, ショウジョウバエを餌とし, 個別飼育を行った。その内, 卵嚢より脱出した若虫を用いて, セアカゴケグモが寒冷期に, 冬期と同様の低温条件下の飼育によって生存できるかどうかを検討した。その結果, 5℃においては最長47日間生存し, 10℃及び15℃ではそれぞれ175及び270日生存した。この間の発育零点は15℃前後であった。セアカゴケグモを含むゴケグモ類が日本に分布していなかった主因は気温によるものと推定されているが, 飼育実験の結果, セアカゴケグモは日本に定着し, さらにより広範囲に広がる可能性があることが示唆された。