著者
中島 敏明 飯田 陽子 大沼 仁 岸田 信也 高野 治人 岩沢 邦明 永井 良三
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.542-548, 2006-05-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
28

男性は女性に比し,心房細動,心筋梗塞などに伴う心室頻拍,突然死などの発症が多く,一方,女性は,男性に比し,QT延長症候群(特発性,薬剤性)の発症が多い.これら不整脈の性差の機序については,現在でも不明な点が多いが,性ホルモンの心筋イオンチャネル,自律神経などへのgenomic,nongenomicな作用が複雑に関与していると考えられる.一方,不整脈治療においては,不整脈に対する直接効果を狙った下流に対する(downstream)治療とともに,近年では,その原因に追るアプローチである,より上流に対する(upstream)治療の重要性が注目されている.本稿では,不整脈の性差の発生機序につき,不整脈のupstreamおよびdownstreamへの性ホルモンの作用の点から概説する.
著者
久田 四郎 羽土 妙子 中島 敏夫
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.76-80, 1960

In mice fed on a vitamin B_6 deficient diet, even in the cases which had no remarkable symptoms of the deficiency, the activity of brain glutamic acid decarboxylase was markedly low. In rats, however, the amounts of glutamic acid, γ-aminobutyric acid and aspartic acid in the brain were not affected by vitamin B_6 deficiency. Addition of chlorpromazine to a cell-free preparation of the brain homogenate caused an increase of the enzymatic activity. The amount of brain glutamic acid decreased by an administration of chlorpromazine, while the substance exerted no effect on the amounts of γ-aminobutyric acid and aspartic acid. In vitamin B_6 deficiency, the hypnotic effect of chlorpromazine was lowered markedly in both mice and rats. These results were discussed in the point of view of central depression due to decarboxylation of glutamic acid in the brain.
著者
栗原 雅博 古谷 勝則 一場 博幸 中島 敏博 加藤 峰夫
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.639-644, 2009 (Released:2010-06-24)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Trampling sensitive vegetation around nature trails is one of the most serious problem of destroying some alpine or sub-alpine grassland vegetation in Japan. And trampling occurs in case visitors don't know the weakness of the vegetation, or avoid some dangerous situation or crowds. To solve this problem, we researched the relationship between the sense & knowledge and the attribution of visitors after climbing Mt. Shibutsu, of which trails are suffered from serious destruction because of trampling and erosions. As a result, we cleared that difficulty on the trail from the peak to Yamanohana was felt regardless of the attribution, and almost all visitor felt the danger on it, and particular age groups and size group had feeling concerning trampling. These suggest there may be potentials of trampling because of it. We concluded this difficulty must be informed to all visitors in order to avoid entering this trail. Similarly we also concluded coordination of flow of large-size visitor groups and on-site lecture are needed to conserve Mt. Shibutu.
著者
中島 敏明 杉本 恒明 川久保 清 戸田 為久 三輪 篤子 村川 祐二 野崎 彰 倉智 嘉久 天野 恵子 坂本 二哉 真島 三郎 伊原 正 田中 博 古川 俊之
出版者
The Japanese Society of Electrocardiology
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.237-246, 1986

肥大型心筋症 (HCM) の再分極異常の成因を知る目的で, QRST isointegral mapを作成し, 安静時および運動負荷後の分布を検討した.対象は, 正常群10例, HCM群35例 (閉塞型HOCM10例, 非閉塞型HNCM15例, 心尖部型APH10例) である.安静時QRST isointegral mapは, 正常群では左前胸部に極大を, 右胸部上方に極小をもつ分布を示したが, HCMでは , HOCM40%, HNCM60%, APH90%に, 左前胸部に極小をもつ異常分布がみられた.極小点は, APHではV<SUB>4, 5</SUB>周辺に, HNCMではV<SUB>5</SUB>に, HOCMではばらつく傾向があり, 各病型による多少の差異をみとめたが, 重複する例も多くみられた.安静時QRST isointegral mapの異常例に対し, 運動負荷後の分布の変化につき検討した.APHでは9例中8例において, 左前胸部の極小は, 右胸部上方に偏位し, ほぼ正常な分布を示した.HNCMでは9例中8例は, 負荷後も安静時と同様の異常分布を示した.HOCM4例では負荷後左前胸部下方に極小が偏位する傾向がみられた.以上より, HCMの再分極異常は主として1次性変化と考える.また, 運動時変化がHCMの病型で異なったことは, 心筋の肥厚形態の他に, 心筋自体の性質の差による可能性があり, HCMにおける再分極異常の成因は単一のものではないことが示唆される.
著者
三森 智裕 中島 敏光
出版者
海洋深層水利用学会
雑誌
海洋深層水研究 (ISSN:13458477)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.23-27, 2001-07-20 (Released:2010-06-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1

近年海洋深層水は水産業, 冷房などの冷熱利用, また淡水などの製品開発に利用されている.汲み上げられた深層水を無駄なく使い切ると言う観点からも, また深層水利用施設の低コスト化という観点からも, 深層水の多段利用システムは重要である.本研究では多段利用システムの構築の際に必要であると思われる, 深層水利用システムの持っ熱エネルギーと栄養塩の供給能力を, 高知県, 富山県, 沖縄県の施設をモデルとして算出した.
著者
山田 研太郎 村尾 茂雄 吉田 秀雄 中島 敏夫 吉井 町子 木村 正治 吉岡 寛康
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.1007-1011, 1981
被引用文献数
3 10

非寄生虫性脾嚢腫は希な疾患であるが,今回我々は副脾から発生したepidermoid cystの1例を経験した.症例は51才,男性.下腹部痛のため来院し腹部単純撮影で左下腹部に環状の石灰化像を認めた.疼痛は速やかに軽快したが精査のため入院.下腹部に軽度の圧痛を認めるも腫瘤は触知せず.臨床一般検査ではγ-GTPの軽度上昇以外著変なし.経静脈性腎盂造影法(IVP)で腎孟腎杯の変形なし.上部消化管透視では腫瘤は胃体部の後方に位置した. CT-scan,超音波断層で膵尾部に嚢腫を認め,血管造影で伸展した大膵動脈分枝が見られた.膵嚢腫の診断で開腹.膵尾部から突出した直径約6cmの嚢腫を認め,膵尾部・脾臓とともに切除.内容は乳白色の液体で,寄生虫,毛髪,細菌を認めず.アミラーゼ・リパーゼは低値であつた.病理所見では嚢腫壁内に脾組織の薄い層が存在し内腔を重層扁平上皮様細胞がおおつており副脾のepidermoid cystと診断した.脾epidermoid cystの成因は明らかでないが,本例では重大な外傷の既往はなく迷入組織から発生したと考えられる.脾epidermoid cystは若年者に多く石灰化は希とされている.本例の石灰化は比較的高年令であることによるものであろう.副脾は10%以上の人に存在するが検索しえた範囲では嚢腫発生の記載はなく,本例が第1例と考える.
著者
濱田 良樹 飯野 光喜 近藤 壽郎 石井 宏昭 高田 典彦 佐藤 淳一 中島 敏文 村上 夏帆 清水 一 渡邊 英継 黒田 祐子 中村 百々子 瀬戸 皖一
出版者
一般社団法人 日本口蓋裂学会
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.286-291, 2000

1994年~1999年の6年間に,鶴見大学歯学部付属病院第一口腔外科ならびに関連施設で施行された顎裂部骨移植に関して臨床統計的観察を行った。その結果,以下のような結論が得られた。<BR>1)総患者数は86例で,11歳以下の症例が22例25.6%,12~17歳が32例37.2%,18歳以上の成人症例が32例37.2%を占めていた。<BR>2)生着率は97.7%で,早期経過不良の2例はいずれも成人症例であった。成人症例への対応として,骨移植後の感染源となり得る歯と歯周病の管理が重要と考えられた。<BR>3)受診の動機としては,顎裂に関する他科からの紹介が86例中80例93.0%で,そのうち矯正歯科からの紹介が最も多く72.5%であった。一方,当初他疾患を主訴に来院したものが6例あり,いずれも顎裂部骨移植に関する知識は皆無であった。今後,関連各科との連携強化と患者への積極的な情報提供が必要と考えられた。<BR>4)顎裂部骨移植に関連する併用手術としては,顎矯正手術のほか,デンタルインプラントの埋入,口唇外鼻修正術などが,主に成人症例に対して施行されており,成人症例における顎裂部骨移植の臨床的意義が示唆された。
著者
中島 敏博 田代 順孝 古谷 勝則
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.579-584, 2007-03-30
被引用文献数
3 8

Open-space conservation activities are popular in the suburban area. But they have an issue to continue their group. New member, especially young people, have not accessed to them. We should understand way to participate the ordinary people in the open-space conservation activities. The paper aimed to clear the relation to the open-space use and the distance between the open-spaces and citizens' neighborhood. We researched the citizens at Matsudo city in Chiba prefecture by questionnaire survey. They answered using the open-space and their neighborhood extend within 2km from their residence. In the results, if planning to manage the open-space by citizens where is 300-500m away from their neighborhoods, we should brush up the quality of open-space. Because, they only use that several time. We should create the chance they want to manage them. Another hand, the open-space within 300m away from their neighborhood, they use the open-space usually. And this situation has high potential to manage the open-space with them. Finally, we suggest a unit of area for open-space planning with open-space conservation activities by citizens.
著者
嶋 啓節 中島 敏
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

脳の最高位中枢である前頭前野は機能的に異なる複数の領域より成り立っている。実生活において、進行中の複数課題の状況が逐次把握され制御・調節、すなわち最適処理されている。申請者らは、脳機能を複数の機能を持つ複数のマルチシステムと捉えて、このような複数の同時並列処理に関わる新しい脳の動作原理を解明することを目標として研究を進めている。この研究では、現在認知行動課題訓練中のサルを用いて、並列複数課題遂行時VS.単一課題遂行時の前頭前野の細胞活動を比較検討することによって上述した目的を達成しようとしている。具体的には、その役割が殆ど明らかにされてない前頭前野前方部、さらに前頭前野中央部から後方部および内側前頭前野などの複数領域、さらにその領域内の異なる機能にかかわる細胞活動を同時に記録し解析する。現在、細胞活動の記録を前頭前野と運動前野から行っている。その結果、単一課題遂行時と並列複数課題遂行時に前頭前野と運動前野から、極めて興味深い領野特徴的な細胞活動を記録している。すなわち、運動前野では同時並列遂行時に単一課題遂行時では認められない複雑な神経活動が多く認められ、それまで遂行していた動作を反映する変調を強く受けていた。一方、前頭前野の細胞活動は、課題中断時に行っていた動作ではなく、より認知的なアクション(連続動作のカテゴリーあるいはパターン)を反映すると思われる活動が多く認められた。この結果は、前頭葉における運動遂行の階層性を個々の細胞活動で明示するものである。さらなる今後の研究の継続により、アクションに関する前頭前野の神経機構を解明できる。
著者
金光 桂二 中島 敏夫 肘井 直樹
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究は、養菌性キクイムシとその共生菌、および穿入樹木の3者間の相互関係の解析を通じて、昆虫と菌との共生の機構を解明することを主たる目的として行われたものである。同一地域(愛知県北東部)に生息する2属4種の養菌性キクイムシ(ミカドキクイムシ(Scolytoplatupus mikado)、サクキクイムシ(Xylosandrus crasーsiusculus)、クスノオオキクイムシ(X.mutilatus)、ハネミジカキクイムシ(X.brevis)の生態を調査し、さらに坑道内および虫体上の胞子貯蔵器官(mycangia)内の菌相を分離試験により明らかにした。また、キクイムシの生育に伴う菌相の変遷とそれらの形態上の変化を明らかにするため、走査型電子顕微鏡(SEM)による直接観察も併せて行なった。本研究で新たに得られたおもな知見は、以上の通りである。1.養菌性キクイムシの材内生存率、穿入材サイズと坑道内産卵数との間にはそれぞれ正の相関関係が成立し、繁殖に好適な衰弱木や枯死木が量的に増加することによって、個体数を急激に上昇させる可能性を持つ。2.養菌性キクイムシの主要栄養源となる共生菌(PAF)は、種特異的なAmbrosiella属の菌であり、穿入樹種ごとに異なった酵母類は、副次的共生菌(AAF)と考えられた。3.養菌性キクイムシがmycangiaに共生菌を取り込む時期は、羽化直後の未成熟成虫期と考えられる。4.本結果で明らかにされた潜在的な繁殖力の大きさと、木質そのものに依存しない生存様式から判断して、4種の養菌性キクイムシとアンブロシア菌との間にみられた繁殖サイクルは、キクイムシ側にとってのより栄養価の高い食物資源の安定的供給と、菌側にとっての選択的な胞子の保護、確実な分散による生息域の拡大という相利共的関係を裏付けるものである。