著者
中澤 高志 荒井 良雄
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.162-174, 2004-06-30
被引用文献数
1

本稿では,地方圏における情報サービス企業の起業について,創業者個人の移動経歴に焦点を当てて分析し,創業者の移動経歴によって,起業にかかわる事象やその後の経営のあり方が異なっていることを示した.地方圏で誕生した情報サービス企業の多くは,その道県の出身者が創業したものであり,出身地以外で企業を経営している他地域出身の創業者は,全体の2割程度にとどまる.一方Uターンの創業者のほとんどが東京大都市圏で他社に勤務した経験を持ち,地元定着の創業者についても,出身地外の高等教育機関に進学した者が多いなど,創業者の移動経歴の空間は広範囲にわたる.最大の顧客の立地場所を創業者の移動類型別にみると,地元定着創業者の企業では,もっぱら周辺の企業と取引している場合がほとんどであるのに対し,Uターンや他地域出身の創業者の企業では,ともに最大の顧客を東京大都市圏内に有する企業が約3割に上る.また,他地域出身の創業者の企業では創業資金が相対的に多く,自宅以外にオフィスを構える例が多いほか,創業者の右腕となる社員がいる割合も高い.これに対してUターンでは,十分な創業資金が得られないまま自宅で創業に至る例が多く,創業者の右腕となる社員を欠く企業も多い.創業者の移動経歴ごとにみられるこうした違いは,他地域出身者の企業において売上高の伸び率の高い企業が多いこと,Uターン者の企業では売上高の少ない事例が目立つといった経営状態に反映している可能性がある.
著者
木本 喜美子 千葉 悦子 宮下 さおり 勝俣 達也 高橋 準 中澤 高志 萩原 久美子 野依 智子 早川 紀代
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、地方圏における女性労働史の実態調査による事例研究から、戦後日本の<女性労働と家族>の史的再構成への視座を得ることをめざしている。方法的関心は、近代家族論と階級・階層論を女性労働史に接合することにおかれる。具体的には、大手機業場を擁した福井県勝山市の織物産業における女性労働者に焦点をおき、その生活史の考察が中心となる。すでに調査を終えている零細機業場の集積地帯、福島県川俣町の事例も比較検討の対象として取り上げる。以上を通じて、主婦化が進展したとされる高度成長期に、結婚・出産後も継続的に就業する女性のライフコースが成立していたこと、およびその家族的諸条件および地域的特性を明らかにした。
著者
中澤 高志 荒井 良雄
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.218-229, 2003-06-30
被引用文献数
2

本稿では,東京都区部における調査との比較を踏まえつつ,九州におけるインターネット関連産業の実態を,特に労働力に焦点を当てて分析した.東京都区部と九州のインターネット関連企業および従業員の属性を比較した結果,企業の設立時期や企業規模,従業員の年齢構成などに若干の差異があるが,大枠では共通性が認められた.続いて九州のインターネット関連企業従業員の属性や経歴,年収水準などを分析した.地元定着者のうち転職を行った者では,学卒直後にインターネット関連産業あるいは情報サービス産業とは無関係の職に就いていた者が過半数を占める.これに対して還流移動者では,還流移動前に情報関連産業のシステムエンジニアやプログラマーの職に就いていた者が多い.学歴も地元定着者に比べて還流移動者の方が高い傾向にある.年齢と年収の関係を見ると,地元定着者では加齢とともに年収が上昇する傾向が見られるが,還流移動者ではこの傾向が不明瞭である.
著者
木本 喜美子 笹谷 春美 千葉 悦子 高橋 準 宮下 さおり 中澤 高志 駒川 智子 橋本 健二 橋本 健二 萩原 久美子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、長期雇用、年功賃金などの日本的雇用慣行が適用される「男性職」とは区別される形で、いかにして「女性職」が形成されてきたのかを探ることを通じて、女性労働史を再構成することを目的としている。そのために、女性労働の集積地域である福島県北・川俣町の織物産業に従事した女性労働者を調査対象としてとりあげ、そのライフヒストリー分析を軸に、雇用労働と家族生活とがどのように接合されてきたのかを明らかにした。
著者
川口 太郎 中澤 高志 佐藤 英人
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

高齢化がすすむ大都市圏の郊外住宅地の持続可能性を住民特性の面から検討し,内郊の「街なか化」する住宅地,外郊の「地元化」する住宅地,アッパーミドルの「孤立化」する住宅地を見出した。また,第二世代の居住地選択は,働き方や家族の在り方が多様化するなかで,単線的・画一的にとらえることが難しくなったものの,そのなかで実家との関係性が選択に際して大きな位置を占めていることが明らかになった。
著者
由井 義通 若林 芳樹 神谷 浩夫 古賀 慎二 宮内 久光 加茂 浩靖 中澤 高志 久木元 美琴 久保 倫子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

労働の女性化の実態を把握するために,労働市場,就業先における労働状況,終業後の生活時間,家族状況などの相互の側面を関連づけながら,労働力の女性化の実態について多面的な解明を試みることによって,経済のサービス化とグローバル化を原因とした労働の女性化について明らかにした。研究の意義としては,労働力の女性化に対して多様な女性就業の実態を捉えるとともに,住宅問題や保育問題を関連させて分析した点である。