著者
丸山 昭子 鈴木 英子 安梅 勅江
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.53-61, 2002-10-31 (Released:2017-09-15)

本研究は、認可保育所を利用している子どもの発達に対する、保育時間(通常・長時間)、育児環境との関連を明らかにし、今後の保育サービスの課題を検討することを目的とした。全国の認可夜間保育所及び併設の昼間保育所(全41ヵ所)のうち20ヵ所の保育所にて、1988年10月に保護者を対象とし保育時間・育児環境に関する質問紙調査を行い、経年的な子どもの発達との関連を検討するために2000年3月に担当保育士による客観的指標を用いた子どもの発達評価を実施し、解析可能な551組を本研究の対象とした。本研究の結果を要約すると以下の通りである。(1)一定基準の質が確保されている認可保育所において、長時間保育と子どもの発達との関連がないことから、質の高い長時間保育サービスが子どもの発達に影響を及ぼさない可能性が示唆された。(2)育児環境と子どもの発達とは、既存研究と同様に関連が認められたことから、育児環境の重要性が再認識された。(3)長時間保育の利用者では社会的な繋がりが希薄で、特に育児相談者が得難い状況にあることが明らかになり、社会的サポートのあり方への検討が必要である。(4)今後さらに保育サービスの質の向上を目指した取り組みが求められる。
著者
デッカー 清美 丸山 昭子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.718-724, 2015-11-30 (Released:2016-01-06)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

近年, 日本では父親の育児参加が叫ばれるようになり, 父親自身も役割行動を担おうとする動きがみられる。しかし, 多くの父親はその役割に戸惑い, 育児に関われないストレスを感じているといわれている。その背景には, 父親としての認識が大きく関与していると考えられる。そこで本研究では, 父親認識に関する国内外の文献を検索し, その動向や内容から父親認識を育む上で大切な要因について検討した。「父親 (father)」を固定とし,「認識 (recognition)」,「意識 (consciousness)」,「親役割 (paternity)」,「育児行動 (childcare)」,「育児満足度 (childcare satisfaction)」をキーワードとして, 国内では医学中央雑誌, 諸外国ではSCOPUS, CHINALを用いて, 2001年以降の文献を検索した。最終的に, 和文献 (専門書3冊含む) 27件, 英語文献34件を対象文献とし, 内容ごとに分類した。その結果, 対象文献の内容は, 1) 父親像, 2) 父親の育児参加, 3) 夫の関わりにおける夫婦の認識, 4) 父親の役割, 5) 父親意識の形成の五つのカテゴリーに分類され, サブカテゴリーとして20項目が抽出された。父親認識を育むには, 夫婦間の親密度を高め, 子育てへの教育支援, 子育てしやすい社会・職場環境を整えていくことが大切であることが示唆された。
著者
篠原 百合子 山口 恵 大澤 優子 五十嵐 愛子 丸山 昭子 福田 里美
出版者
東都大学
雑誌
東都医療大学紀要 = Tohto University bulletin (ISSN:21861919)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.45-50, 2015-03

在宅で緩和ケアを受ける対象のスピリチュアルペインに対する看護援助の実際を村田理論をもとに検討した。緩和ケア病棟で勤務する看護歴10年以上30代看護師1名、緩和ケア病棟癌認定看護師歴5年以上の看護師1名を対象とした。患者は癌ターミナル期にあり、スピリチュアルペインを意識して言語的・非言語的シグナルを捉えてケアしていた。村田のスピリチュアルな考えを参考に半構成的面接ガイドを作成し、これに沿って面接を実施した。面接内容を逐語録にし、スピリチュアルペインが潜んでいると思われる部分を抽出し、村田理論の軸に沿ってデータを時間軸に沿って分類した。看護師は対象患者の苦痛に対して傾聴・反復を行い、苦痛の緩和を図っていた。さらに看護師は対象患者の過去を振り返るという関わりを行っていた。看護師は傾聴・反復を通し、今、患者自身がどのような状態にいるか理解と患者が他者にゆだね、他律の中の自立を見出すことができるよう関わっていた。
著者
鈴木 英子 吾妻 知美 丸山 昭子 齋藤 深雪 高山 裕子
出版者
一般社団法人 日本看護管理学会
雑誌
日本看護管理学会誌 (ISSN:13470140)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.36-46, 2014-07-15 (Released:2018-08-10)
参考文献数
28

本研究では,新卒看護師が先輩看護師に対し,職務上アサーティブネスになれない状況と理由を明らかにした.102名の新卒看護師にアサーティブネスの定義を説明した上で「過去1年間に職場でアサーティブにしたかったけれども出来なかった状況」と「理由」を尋ねる自記式質問紙調査を実施した.分析はKrippendorffの内容分析を参考にした.有効回答数は73名で,平均年齢は23.7±4.9歳であった.アサーティブになれない状況は,1.業務分担の依頼を断れない,2.統一されていない指導に対する困惑が言えない,3.仕事に関する叱責や注意に対して反論できない,4.先輩の気になる言動について発言できない,5.自分や新卒看護師に対する言動に反論できない,6.仕事に対する不安が言えない,7.先輩のミスによる濡れ衣に反論できない,8.私的な依頼が断れない,9.その他,に分類された.理由は,1.人間関係を重視した,2.指導を受ける身であるため,3.面倒を避けたいと感じた,4.先輩に育ててもらっているという思い,5.自分が出来ないことを知られたくない,6.仕事を教えてもらえなくなる恐怖,7.やるべき仕事をしないと思われたくない,8.慣れない環境で疲れ切っていた,9.自分に責任が有る,10. 恐怖心を感じた,であった.新卒看護師は,先輩看護師に職務上多種多様な状況で言いたいことを言えないでいた.
著者
岸本 信一 田辺 俊哉 丸山 昭吾 岸下 明弘 永嶋 伸也
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.750-755, 1996-07-10
参考文献数
8
被引用文献数
1

エタノール-水混合溶媒中での晶析によりエタノール和物結晶を形成する, ヒスチジン・ケトイソカプロン酸塩について, 工業的な製法開発を前提とした脱エタノール法の検討を行った.<BR>ヒスチジン・ケトイソカプロン酸塩のエタノール和物結晶は, 高湿度条件下 (例えば313K, 60%相対湿度) で, 結晶転移を伴って速やかにエタノールが離脱し, 無溶媒和型の結晶となった.なお, エタノール和物結晶において, 粉末X線回折の2θ= 9.0° (CuK<SUB>α</SUB>) のピーク高さが比較的高い場合には, 高湿度条件下において結晶転移終了と同時に脱エタノールが完了したが, このピークが低い場合には転移終了後も1wt%程度のエタノールが残留し, 以降緩慢な低下傾向を示した.脱エタノール性に優れる, 結晶性の高い結晶を再現性良く得るためには, 晶析時にエタノール添加によって大過飽和を急激に生成するよりも, 冷却操作によって過飽和生成速度を緩やかに制御することがより効果的であることを見いだした.
著者
丸山 昭 野村 茂雄 河井 雅吏 高荷 智 太田 芳雄 厚母 栄夫
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.327-338, 1984-04-30 (Released:2010-01-08)
参考文献数
32
被引用文献数
2 8

For the design of the liquid metal fast breeder reactor, the corrosion behaviors of austenitic stainless steels SUS 304, 316 and 321 were investigated in high temperature flowing sodium.Such factors as sodium exposure time, downstream factor, sodium temperature and oxygen content in sodium are considemed as main factors of sodium environment which influence the corrosion behavior of structural materials. The empirical corrosion equation derived by statistical analysis of available corrosion data isCR=3.08×105·O20.8·exp(-22, 000/RT-0.0059(L/D))where CR: Corrosion rate (μm/yr), O2: Oxygen content in sodium (ppm)R: Gas constant (1.98cal/mol·K), T: Sodium temperature (K)L/D: Downstream factor in length/diameter ratio.This equation is applicable to austenitic stainless steels at oxygen content of 1-10ppm, temperature of 500-650°C, downstream factor below 200 and velocities of 2-4m/s.
著者
丸山 昭生 小杉 敏勝 小西 明
出版者
上越教育大学
巻号頁・発行日
vol.26, pp.399-420, 2007-02

特別支援学校は,障害児に対する教育が必要不可欠であるという先人達の固い信念と熱意に基づいて,盲学校,聾学校,養護学校として誕生した。本稿では,新潟県内の盲・聾・養護学校4校の誕生に際し,どのような経緯があったのか,どのような多くの人々の苦労があったのかを明らかにした。そして,開学以来,今日まで営まれてきた各学校の教育基盤と,それを支えてきた精神は何であったかを明らかにした。結果,新潟県の特別支援学校の開学のきっかけは,障害のあるこどもたちの近くに存在していた人々の思想や行動が大きいことが分かった。とりわけ,親や祖父母を始めとする家族,教師,医師,地域の人々等の身を削るような努力があった。その思想や努力は,何らかの形で受け継がれ語り継がれなければならないと考えた。
著者
丸山 昭子 安梅 勅江
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.41-47, 2000-10-31
被引用文献数
1

少子化時代における保健福祉サービスとして、夜間保育サービスヘの期待が高まっている。本研究は、夜間保育に関する顕在ニーズならびに潜在ニーズを、グループダイナミックスを応用した手法により体系的に把握し、深夜保育における課題を明らかにするとともに、今後の総合的な夜間保育のあり方への一助とすることを目的とした。対象は、夜間保育所の施設長6名、保育専門職(主任クラス)12名である。方法は、対象者の発するニーズをもとに支援の向上を図る質的な情報把握の方法論であるグループインタビュー法を用いた。その結果、施設長グループから、1)保護者の精神的援助の必要性、2)多様なニーズに対応可能なサービスの提供、3)学童保育の体制整備、4)十分な保育専門職の確保、5)地域に根ざした育児支援システムの整備、6)子育てに関する社会システム変革の必要性、の6点が課題としてあげられた。また、保育専門職(主任クラス)からは、1)子どもの生活リズムの調整、2)環境調整の工夫、3)異年齢保育の有効性、4)保護者に対する時間的・精神的サポート、5)保育専門職処遇の改善、6)一時保育のための体制の整備、の6点が課題として明らかにされた。これらの課題を今後の夜間保育に反映させ、さらにサービスの利用者である子ども・保護者、双方のウェルビーイングを社会全体で保障するシステムの構築が早急に求められる。
著者
安梅 勅江 田中 裕 酒井 初江 庄司 ときえ 宮崎 勝宣 渕田 英津子 丸山 昭子
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.9-17, 2004-03-30

子どもの3年後の発達に影響を与える要因について、長時間保育を含む保育形態、育児環境、属性等の関連を明らかにした。全国87園にて保護者と園児の担当保育専門職に質問紙調査と訪問面接調査を実施し、追跡可能であった485名を有効回答とした。その結果、1)3年後の子どもの発達への年齢・性別調整後の関連要因は、<対人技術>で一緒に買い物に連れて行く機会が乏しい、きょうだいがいる、基準年の運動発達がゆっくりである、<粗大運動><理解>で基準年の運動発達がゆっくりである場合、有意にリスクが高くなっていた、2)全変数投入の多重ロジスティック回帰分析では、<粗大運動>で本を読み聞かせる機会がめったにない、基準年の運動発達がゆっくりである、<対人技術>できょうだいがいる場合、有意にリスクが高くなっていた、3)3年後の子どもの発達への有意な関連要因として、「保育時間」はいずれの分析でも有意とならないことが示された。
著者
丸山 昭生 小杉 敏勝 奥泉 祥子
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.119-135, 2008-02-28

新潟県立高田養護学校は,昭和43年5月1日に創立された知的障害児のための養護学校である。新潟県内においては,知的障害児の養護学校としてすでに新潟県立月ヶ岡養護学校(三条市)が開校(昭和40年9月1日創立)していた。知的障害児のための最初の養護学校創設について,当時の塚田県知事は当初上越地区を考えていたが,その後の政治的な動きの中で三条市に決定した。このような動きの中で,「上越地区にも養護学校を」と,その創立に中心となって活躍したのが上越婦人協議会長をしていた徳山ミサヲである。徳山は,脳性まひ児である孫の就学への叫びを直接の引き金とし,上越地区連合婦人会の組織を背景に養護学校創立のために壮絶な運動を繰り広げ,その夢を実現させた。この運動が成功した要因は多々あるが,徳山の自己犠牲の精神(捨身の願い),小さな力(一粒の麦)の結束力,誰もができる運動(米1升運動),労を厭わないねばり強さ(執念),共感し運動を手助けしてくれる人との出合い(仏恩)などである。その結果,新潟県立高田養護学校の開学を迎えることとなり,徳山は子どもらの殿堂(学校)の創立に喜びの極みの涙を流したのである。徳山のこの活動は,新潟県特別支援学校の開学に尽くした大森隆碩(高田盲学校),金子徳十郎(長岡聾学校),結核療養教師の笹川芳三ら(柏崎養護学校)に勝るとも劣らない功績であるといえる。Takada school for children with intellectual disabilities was established on May 1st 1968. At the time, Niigata prefecture had already Tsukigaoka school for children with intellectual disabilities in Sanjo city, which was set up on September 1st 1965. People made a movement toward the foundation of the school for children with intellectual disabilities in Joetsu area. MISAWO TOKUYAMA, the president of Joetsu Women's Council was playing an important role in that action. She had a grandchild with cerebral palsy. She made the movement for learning opportunities for him and similar children. She expanded the acts for foundation of the school with Joetsu Women's Council. Finally their dreams came true. There were some factors for this success, which were the mind of self-sacrifice, solidarity of power of Women's Council, Movement of Kome Issho everyone could do easily, her tenacity, encounter with many supporters and so on. When the first anniversary of a founding of the school was held, she made tears of joy. It was founded that her actions are equivalent of achievements of pioneers who served to establish special schools in Niigata prefecture, RYUSEKI OOMORI, TOKUJURO KANEKO and YOSHIZO SASAGAWA.
著者
安梅 勅江 田中 裕 酒井 初恵 宮崎 勝宣 小林 昭雄 天久 薫 枝本 信一郎 伊藤 澄雄 篠原 亮次 杉澤 悠圭 澤田 優子 童 連 田中 笑子 冨崎 悦子 望月 由妃子 渡辺 多恵子 恩田 陽子 徳竹 健太郎 平野 真紀 森田 健太郎 AMARSANAA Gan-Yadam 川島 悠里 難波 麻由美 呉 柏良 丸山 昭子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

経年的な子どもの発達、社会適応、健康状態、問題行動の発現への影響を踏まえ、科学的な根拠に基づく「気になる子ども支援プログラム」の開発を目的とした。全国の0~6歳児と保護者約36,000組の12年間パネルコホート調査を用い、子どもの特性別に発達の軌跡と関連要因について分析した。その結果、家庭環境要因、子ども特性要因、家族特性要因、地域サポート要因の子どもの発達への影響の大きさと軌跡を明らかにした。