著者
斎川 加奈恵 仁平 義明
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.108, 2015

  本研究では,顔と よくある名前の対連合学習成績に,「似顔絵を描く」,「顔の特徴を言葉で表現する」などの,顔を記憶するための方法がどう影響するか検討した.実験では,「顔」写真とその下部に書かれた“よくある名前”を連合させて記憶する,3つの条件群が比較された。結果では,まず,似顔絵を描くと「氏&名」の正確な記憶をしないことが明らかになった。多重比較では,「似顔絵を描く」条件は「じーっとよく観察して記憶する」条件に比べて有意に記憶成績が低かった.似顔絵を描くことは,名前情報処理のための資源配分を減少させることになり,記憶成績を低下させると考えられた.さらに,似顔絵を描くことが氏名の記憶を阻害することを別な面から確認するために,似顔絵の上手さと氏名の記憶成績の関係が分析された.その結果,最後まで正しい氏名を想起できなかった刺激数(「無答数」)と上手さには,中程度の負の相関が見られた.
著者
菊地 史倫 佐藤 拓 阿部 恒之 仁平 義明
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.103, 2007

本研究では自分が引き起こした不都合な状態を処理するために出来事の起こりやすさ(生起確率)を操作してウソをつくときの2つのウソの目的(信じられること、赦されること)の関係性について検討した。183人の大学生は知人が約束の時間に遅れ、遅刻理由を話すというシナリオを読んだ。参加者は遅刻理由を本当だと思うか、待たされたことをその遅刻理由で赦せるかなどを判断した。その結果、A.出来事の生起確率を高く操作したウソは、信じられやすいがそのウソが信じられた後で赦されにくい。B.出来事の生起確率を低く操作したウソは、信じられにくいがそのウソが信じられた後で赦されやすいとウソをつかれる人が考えていた。これらの結果から出来事の生起確率を操作してウソをつくときには、2つのウソの目的が両立しないことが示唆された。また感情とウソの目的の関係性を検討したところ、感情によって行動の調整が行われている可能性が示唆された。
著者
斎川 由佳理 仁平 義明
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.47-47, 2015

  記憶を補助する外部手段として「手に直にメモを書く行動」について,なぜ ある人はこの手段を用いて,ある人は用いないか,大学生を対象とした質問紙調査によって,その要因をパーソナリティ要因も含めて総合的な視点から分析を行った。その結果,「手にメモをする行動」をとる群の人ほど,他のいくつかの「し忘れ防止手段」も併用していることが明らかになった.また,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの要因については,メモ経験群は,ものごとに現実的に対応する傾向である,「経験への開放性」のスコアが有意に高い傾向があった.すべての結果を総合すると,手にメモをするのは,その人が失敗回避傾向がある気の弱い人だからというよりは,「確実に予定を果たそうとする現実的な行動をとる人」だからというべきだと考えられた.
著者
仁平 義明
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

1)急速反復書字によるスリップの発生メカニズム特に書字速度を独立要因とした実験結果から、急速反復書字によってスリップが発生する原因は、次のようなものから構成されることが明らかになった:(1)急速な書字では、活性化された書字運動プログラムのうちトリガ-すべき運動記憶の選択機構が障害される。(2)活性化された不適切な運動記憶の抑制機構も急速という条件によって同時に障害される。(3)運動記憶のネットワ-クを通じて不適切な運動記憶に波及した活性化の水準が時間的加重によって高進する。従ってトリガ-されやすくなる。(4)反復は自動的なトリガ-部分だけをくりかえすことになるため、選択機構の機能低下が生じる。2)スリップがあらわれるときの書字時間インタ-バルは短縮される傾向があり、「わりこみトリガリング」によってスリップが生じることが示唆された。3)ネットワ-ク内の活性化の波及・活性化は書字対象の文字とリンクしている単一の文字だけではなく、ネットワ-ク全体に波及することがスリップの出現様式から分かる。ネットワ-ク内の書字運動記憶には、このようにきわめて密接なリンクがある。4)文字の運動記憶は、単純なネットワ-ク構造になっているのではなく、文字のための違った種類の運動記憶からなる重層的なネットワ-クを形成している。
著者
鷲見 成正 利島 保 苧阪 直行 後藤 倬男 中谷 和夫 仁平 義明
出版者
慶応義塾大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1992

本研究は、科学研究費補助金総合研究(B)の主旨に則り、研究者相互の情報交換と討議を通じて今後の研究展開に向けての新たな視点をさぐる研究集会開催を中心にして進められた。イメージサイエンス(画像科学)からピクトリアルサイエンス(図像科学)への知覚心理学的展開を目指す本研究の課題は、“見えるもの"が“見えざるもの"の姿かたち・雰囲気・意図などをいかにして写しだしてくるかの解明にある。知覚事像との関連で(1)色・形、(2)空間・運動、(3)音響・触感覚、等各研究班を組織し、図像情報生成の知覚・認知機構ならびに基礎データの提示とそれらについての総合的検討を行なった。とくに研究集会を通じて得られた理工学研究者と実験心理学者間の研究交流は、この種の新しい領域の今後の展開に向けての貴重な貢献といえるだろう。第1次研究集会(東京:平成4年9月17〜19日)研究テーマ「形態知覚と図像情報」基調講演「色、形、視覚」小町谷朝生(東京芸大)形態知覚研究班ならびに参加者全員による研究討議[参加者数:第1日(約40名)、第2日(約90名)、第3日(約50名)]第2次研究集会(開催地:呉、平成4年10月29〜31日)研究テーマ「空間知覚と図像情報」基調講演「サイエンティフィックビジュアライゼーションの現状」中前栄八郎(広島県立大)空間・運動知覚研究班ならびに参加者全員による研究討議[参加者数:第1日(約30名)、第2日(約30名)、第3日(約50名)]第3次研究集会(開催地:大阪、平成4年12月17〜19日)研究テーマ「視覚構造・触知覚・音響と図像情報」基調講演「聴覚における感性情報処理をめぐって」難波精一郎(大阪大)視覚・音響・触・触ー運動研究班ならびに参加者全員による研究討議[参加者数:第1日(約40名)、第2日(約50名)、第3日(約50名)]
著者
樋口 広芳 仁平 義明 石田 健 加藤 和弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究ではまず,都市におけるカラスと人間生活との摩擦の現状について広く調査した.その結果,ゴミの食い散らかし,人への襲撃,高圧鉄塔への営巣による停電,列車や航空機との衝突など,さまざまな種類の摩擦が生じていることが明らかになった.次に,そうした個々の摩擦の事例について,発生の状況や仕組をいろいろな情報収集と野外観察から明らかにした.ゴミの食い散らかしは,カラスが食物として好む生ゴミが手に入りやすい地域を中心に発生していた.具体的には,プラスチック製のゴミ袋に入れられて路上に放置される地域,とくにその状態が朝の遅い時間まで続くところで頻発していた.生ゴミが大量に出され,カラスの食物になることは,カラスの個体数を増加させる根本原因になっており,それがカラスと人間生活とのさまざまな摩擦の発生につながっていることが示唆された.人への襲撃については,5月から6月に集中し,カラスの巣の付近で発生すること,親鳥が巣やヒナを防衛するための行動であることなどが明らかになった.襲撃は人の背後から飛んできて行なわれ,後頭部を足で蹴るという例が多かった.蹴られることによって頭から出血する例もあるが,大部分は大きな怪我には至らない.高圧鉄塔への営巣による停電は,絶縁上必要な距離を保っている,電線と鉄塔の接地部分の間にカラスが造巣したり,はさまったりすることによって発生していた.関東地方では,カラスによる停電事故が毎年40〜50件起きている.列車や航空機との衝突は,時速数100キロの速度で走ってくる新幹線や航空機を鳥がよけきれずに発生していた.空港では,空港が漁港,河口,ゴミの大規模処分場などの付近につくられている場合に衝突が多発していた.そうした場所にカラスなどが数多く生息しているからである.
著者
長田 佳久 西川 泰夫 鈴木 光太郎 高砂 美樹 佐藤 達哉 鷲見 成正 石井 澄 行場 次朗 金沢 創 三浦 佳世 山口 真美 苧阪 直行 藤 健一 佐藤 達哉 箱田 裕司 鈴木 光太郎 櫻井 研三 西川 泰夫 鈴木 清重 増田 知尋 佐藤 隆夫 吉村 浩一 鈴木 公洋 椎名 健 本間 元康 高砂 美樹 仁平 義明 和田 有史 大山 正 鷲見 成正 増田 直衛 松田 隆夫 辻 敬一郎 古崎 敬
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では, 国内で行われてきた実験心理学研究に関連した機器や資料の現状の把握, 保管方法の検討及び活用方法に関して検討した。本研究活動の成果として,1) 国内の研究機関で保管されている機器の状態の把握,2) 廃棄予定の機器の移設,3) 機器・資料のデジタルアーカイブ化,4) 機器・資料の閲覧方法の検討の4つが挙げられる。これらの成果を通じて, 日本の実験心理学の歴史的資料を残し, 伝えるための手法に関する基盤を築いた。
著者
菊地 史倫 佐藤 拓 阿部 恒之 仁平 義明
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.220-228, 2009 (Released:2009-03-19)
参考文献数
21

We investigated how the costs and benefits of telling a lie affect a person who is lying in an attempt to avoid punishment. One hundred and sixty-eight college students were asked to read three scenarios in which the protagonist gave an excuse for arriving late to an appointment. Excuses given for arriving late were: an incredible lie (a lie invoking an unlikely event as an excuse), a credible lie (a lie invoking a plausible event as an excuse), and the truth. Participants then rated the perceived degree of benefit (forgiveness and impression) and the behavioral and emotional costs associated with each excuse, and finally chose the “best” excuse for avoiding punishment. The incredible lie was ranked highest in terms of costs and benefits, the credible lie received moderate ranking, and the truth received the lowest ranking. Participants tended to choose the credible lie, ranked moderately in terms of costs and benefits, as the “best” excuse. The results suggest that people do not act to maximize benefit but rather to avoid high cost when making an excuse to avoid punishment.