著者
小山 洋 佐藤 雅彦 遠山 千春
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.624-635, 2003-01-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
90
被引用文献数
2 1

As the last manuscript in our series of review articles on cadmium (Cd) and health effects, we reviewed research articles on epidemiologic and experimental studies on exposure levels of Cd in occupational and environmental settings in various countries, disposition and body burden of Cd, critical concentrations of Cd in the kidney of humans and animals with a focus on biomarkers for renal dysfunction, and life expectancy in Cd-polluted areas and reference areas. After this manuscript was compiled, cadmium levels in rice crops received significant attention, since the risk assessment of cadmium is now under review and discussion by the Joint Expert Committee of Food Additives and Contaminants organized by the Food Agricultural Organization and World Health Organization in 2003. We hope that the information compiled in this review may provide directions for future studies on the health risk assessment of Cd.
著者
徳本 真紀 李 辰竜 藤原 泰之 佐藤 雅彦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第44回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-50, 2017 (Released:2018-03-29)

【目的】カドミウム (Cd) は、鉄の体内動態に影響を及ぼすことが報告されているが、その機構はほとんど検討されていない。そこで本研究では、Cdを慢性曝露したマウスにおける肝臓中鉄濃度および十二指腸中の鉄輸送関連遺伝子の発現変動を検討した。【方法】5週齢の雌性C57BL/6Jマウスに300 ppmのCdを含有した餌を21ヶ月間自由摂取させた。経時的に血清、肝臓および十二指腸を採取し、各種解析に用いた。十二指腸は胃の直下2 cmとした。【結果および考察】Cd曝露によりGOT・GPT活性およびBUN値が有意に高値を示したため、肝毒性並びに腎毒性が出現していることが示された。Cd曝露群の肝臓中Cd濃度は300 µg/g以上となり、投与期間に依存して増加したが、肝臓中の鉄濃度は対照群の50%以下となり顕著な低値を示した。次に、十二指腸における鉄輸送関連遺伝子の発現レベルを測定した。非ヘム鉄 (Fe3+) は十二指腸刷子縁膜上でDuodenal cytochrome b (Dcytb) により二価に還元され、Divalent metal transporter 1 (DMT1) により小腸上皮細胞内に取り込まれる。CdはDMT1 mRNAレベルに影響を及ぼさなかったが、Dcytb mRNAレベルを曝露期間を通じて有意に減少させた。また、葉酸輸送体であるHeme carrier protein 1 (HCP1) はヘム鉄 (Fe2+) の輸送にも関与することが知られているが、HCP1 mRNAレベルはCdの曝露期間を通じて有意に低下した。以上の結果から、Cdは十二指腸における鉄吸収機構に影響を及ぼしてヘム鉄・非ヘム鉄の吸収をともに阻害し、生体内鉄蓄積量を減少させることが示唆された。
著者
佐藤 雅彦 秋吉 亮太
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

述語論理を史上初めて整備し、分析哲学の源流となったフレーゲがその著書『Grundgesetze der Arithmetik』で構築した論理体系は、ヒルベルトの形式主義への道を切り拓いた極めて重要なものであったがラッセルのパラドックスを含んでいた。本研究は矛盾の根本原因を証明論的および意味論的手法により解明することを目指す。本年度はフレーゲ論理学に関して、(i)フレーゲの無矛盾性証明の分析 (ii)フレーゲの『概念記法』における記号法の分析、という二つの課題に取り組んだ。(i)については引続き、伝統的証明論の手法を適用することでフレーゲの無矛盾性証明の矛盾の原因を明らかにすべく取り組んだ。分担者である秋吉はパリ第一大学科学史・科学哲学研究所(IHPST)で、ドイツにおける伝統的証明論の手法であるΩ規則に関するレクチャーを昨年に引続き行い、パリ第一大学アルベルト・ナイーボ准教授と討論を行った。今後は、より抽象的な仕方で証明を捉えるフランス証明論の概念(具体的にはフランスのジラールによるlinear logicやludics)を用いることで,まずはΩ規則の理解を深めることを目標とすることで合意を得た。また,本研究の成果として, 2018年出版予定の著書『よくわかる哲学・思想』 (納富信留,檜垣立哉,柏端達也編, ミネルヴァ書房 ) に「論理学」の項目を執筆した。(ii)については、普遍限量子の論理的振舞いを分析するために、λ項の代数的構造を分析した。この結果、変数の概念を経由せずに、普遍限量子の導入および除去の規則を記述できることを解明した。
著者
佐藤 雅彦
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.317-325, 2004-07-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
73
被引用文献数
4 3

In many research groups including our laboratory, metallothionein (MT)-I/II null mice have been used to clarify the biological function and physiological role of MT. Recent studies with MT-I/II null mice concerning the role of MT in the toxicity and distribution of metal, oxidative stress and chemical carcinogenesis were reviewed. Some reports, including our findings, showed that MT-I/II null mice have an increased sensitivity to harmful metals such as cadmium, mercury, zinc and arsenic. Moreover, it was clarified using MT-I/II null mice that MT plays a major role in the retention of cadmium, mercury and zinc in target tissues. MT-I/II null mice were found to be much more sensitive than wild-type mice to the toxicity caused by free radical-inducing factors, which include paraquat, acetaminophen, ethanol, X-ray, ultraviolet B, carbon tetrachloride, cisplatin, doxorubicin, cerulein and streptozotocin. In addition, MT-I/II null mice were highly susceptible to skin carcinogenesis induced by 7, 12-dimethylbenz[a]anthracene and bladder carcinogenesis caused by N-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine. These results suggest that MT is an important protective factor against metal toxicity, oxidative stress and chemical carcinogenesis.
著者
佐藤雅彦著
出版者
中央公論新社
巻号頁・発行日
2017
著者
佐藤 雅彦 茂木 幹義
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.1-6, 2015-03-25 (Released:2015-09-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1

西表島に生息するイリオモテコキクガシラコウモリRhinolophus perditus に寄生するクモバエ科の1新種,Phthiridium sawadai を記載した.本種は,雄交尾器のphallobase上に細かな鋸歯を持つ突起を備えることから,アジアから記録があるP. szechuanum およびP. ornatum と近縁と考えられるが,その突起が他種と比して顕著に小さいこと,雌のgenital plateが他種の正方形と異なり,丸みを帯びた長方形であることにより明瞭に識別される.本種を含めたこれら3種の検索表,および疑問種を除いた日本産クモバエ科11種の検索表を作成した.
著者
福井 大 前田 喜四雄 佐藤 雅彦 河合 久仁子
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.39-43, 2003-06-30
被引用文献数
3

北海道函館市において,これまで青森県以北には分布しないとされていたアブラコウモリ Pipistrellus abramus を捕獲した.捕獲個体は妊娠しており,本種が北海道内で繁殖をしていることも確認された.また,外部形態やエコロケーションコールの構造は本州産の本種とほぼ同じであった.今後,本種の北海道内における分布の拡大が注目される.
著者
竹安 邦夫 竹安 邦夫 KRISHNA Sanj MEAD John C. BAUMANN Otto FAMOROUGH Do 佐藤 雅彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

最近「各種オルガネラや生体膜の構築・機能分化に必ず膜ATPaseが関与していること」が世界的に確立されてきた。遺伝子クローニングにより、リン脂質フリッパーゼ、生体異物排出ポンプ、重金属イオンポンプ等の新しいタイプの膜ATPaseが無脊椎動物で次々と同定され、次いで脊椎動物においてもその存在が確認されだした。更に、これら膜ATPaseの発現・機能障害は、ヒトにおいては重篤な疾病の原因となることも判明した。本研究では、これら膜ATPaseの原点である無脊椎動物に焦点をあて、新しいタイプの膜ATPaseを探索し、それら膜ATPaseの機能・発現調節機構を分子・細胞レベルで解明することを目的とした。1.Baumann(ポツダム大学)との共同研究により、ショウジョウバエの光受容細胞(視細胞)におけるNa/K-ATPaseの局在・細胞骨格(例えば、スペクトリン、アンキリン等)との関連を共焦点レーザー顕微鏡、免疫電子顕微鏡等を用いて明らかにした(1999年度米国細胞生物学会において発表;Yasuhara et al.,Cell Tissue Res.,印刷中)。2.全P-型ATPaseを線虫(C.elegans)およびショウジョウバエ(D.melanogaster)においてクローニングし、C.elegansでは20種のαサブユニットと3種のβサブユニットが、D.melanogasterでは14種のαサブユニットと6種のβサブユニットが存在することを示し、それぞれの染色体上での位置を決定した(1999年度第9回Na/K-ATPase国際会議で発表;Yasuhara et al.,The Na/K-ATPase and related ATPases,Elsevier,印刷中)。3.上記で得たアミノ酸配列をもとに系統樹解析を行い、ウアバイン感受性とβサブユニットとの会合能を持たないNa/K-ATPaseとH/K-ATPaseとの共通祖先型ATPaseが存在することを明らかにした。また、これらのことから、ウアバイン感受性とβサブユニットとの会合能の起源が明らかとなった(Yasuhara et al.,投稿準備中)。Krishna(ロンドン大学)との共同研究により、マラリアにおいて全P-型ATPaseをクローニンングした。それらのアミノ酸配列に基づいて、新型ATPaseの系統関係を明らかにした(1999年度第9回Na/K-ATPase国際会議で発表予定;Krishna et al.,The Na/K-ATPase and related ATPase,Elsevier,印刷中)。
著者
風間 健太郎 佐藤 雅彦
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.30-32, 2008-05-01 (Released:2008-05-21)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
新名 庸生 佐藤 雅彦 馬谷 誠二 八杉 昌宏 湯淺 太一
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.31-31, 2010-12-10

プログラミング言語Zには簡潔で厳密なセマンティックが与えられており,将来的にはZで記述したプログラムついてもその数学的,論理的性質を素直に記述,証明できる言語になることを目指している.今回はZのコア言語となるpure Zと,Javaで書かれたLisp処理系JAKLDを基にしたpure Zの実装を紹介する.JAKLDは携帯電話でも動くコンパクトさと改造しやすさからpure Zの実装に適している.今回のpure Zの実装は今後の拡張に備え,コンパクトさと改造のしやすさを引き継いだ実装になっている.The programming language Z is given a simple and strict semantics, and we expect we will be able to easily describe mathematical and logical properties of programs written in Z in the future. In this search, we introduce a core language of Z called pure Z and its implementation based on JAKLD, a Lisp system written in Java. JAKLD is suitable for the purpose because it is so compact that some versions of it runs on mobile phones and designed so that it will be easy to add, delete, and modify its functionalities. Our implementation of pure Z keeps the compactness and easiness for the next extension.
著者
佐藤 雅彦 高橋 玄 渡部 英 根上 直樹 斎藤 徹也 山田 正樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.1039-1043, 2009 (Released:2009-10-05)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は36歳,男性.平成19年5月より嘔吐あるも自然に軽快した.同年10月再び嘔吐あり水分摂取も不可能となり入院精査となった.内視鏡検査では胃前庭部に約10cm大の粘膜下腫瘍が認められ,上部消化管造影では同部に境界明瞭な陰影欠損があり造影剤の通過は不良であった.腹部CTでは胃の前庭部に嚢胞性病変が認められた.絶飲食後の内視鏡検査で腫瘍は6cm大にまで縮小し,同時に施行した腫瘍穿刺では無色漿液性の液体を吸引し,細胞診はclassI,アミラーゼ19,588IU/l,CEA 253.9ng/ml,CA19/9 184716.0U/mlと異常高値を呈し,異所性膵,胃嚢胞などを疑った.症状の増悪軽快を繰り返し,また悪性疾患の合併も否定できず同年12月に手術を施行し,病理検査は胃の異所性膵であった.胃の異所性膵によって前庭部での狭窄をきたした症例は比較的稀であり,文献的考察を加えて報告した.
著者
眞鍋 勝司 佐藤 雅彦
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

7日目の黄化エンドウ芽生えから抽出し、ほぼ純粋になるまで精製したフィトクロムA分子を原子間力顕微鏡によって観察した。生の溶液試料をマイカ板に載せ窒素パージによって軽い乾燥状態にしたフィトクロムを観察した結果、像が時間的に変化するので余りはっきりした像は得られなかった。これはAFMのプローブの位置検出に用いている赤色レーザーが試料のフィトクロムの光変換をもたらす結果と考え、軽く固定した分子を観察することにした。Pfr状態で0.1%グルタルアルデヒドにより固定した試料は碁石のような円盤が2個つながった全体として上から見れば雪だるま、あるいは殻つきピーナッツのような像を与えた。像の大きさプローブの大きさが10nmと仮定して計算すると約250kDaになり、フィトクロム・ダイマーの分子量と一致するし、水力学的に測定した値とも矛盾しない。一方Prの状態で固定した試料は碁石状の円盤が2つ重なった、全体として1つの厚い球に近い楕円体の像を与えた。PfrにフィトクロムのN末端から354番目からのDAVLという配列に結合することが分かっている抗エンドウフィトクロムA単クローン性抗体Mep-1をつけてAFM観察した。雪だるま像に1個の抗体が付いた像は観察されたが2個同時に付いたものは観察されなかった。これは抗原に1個の抗体が付いた状態ではもう1個は立体的に結合できなくなっているものと推定される。IgGでなくMep-1のFab'断片を用いた場合も同様に1個しか付かなかった。以上より、フィトクロムAはPrでは薄いほぼ円盤型のものが2個重なった形を形成し、Pfrになるとその円盤が開き、雪だるま型になる。雪だるまを構成する個々の円盤はフィトクロムの単量体に対応するのではなく、2つの円の付け根付近にエピトープ部分が2つ存在する可能性が大きいと解釈している。
著者
佐藤雅彦編
出版者
ポプラ社
巻号頁・発行日
2008
著者
山中 淳彦 佐藤 雅彦
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.388-401, 1997-07-15

本論文では、代入を持つ関数型言語Λを提案する.この言語の定義を示し、操作的意味論がChurch-Rosser性や参照透明性のような良い性質を持つことを示す.次に、Λと[5]で提案された同様の関数型言語Λ94とを比較し、両者の間に成り立つ関係を調べる.Λの操作的意味論はΛ94のそれよりも簡潔に与えられており、そのためΛに対しては決定的な操作的意味論を自然に定義することができる.
著者
永山 友和 佐藤 雅彦 亀山 幸義
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.100-100, 2001-11-15

仕様からプログラムを開発する際,抽象的な仕様を具体的なプログラムへ変換することが行われている.抽象的な仕様には,用いるプログラミング言語では与えられていないデータ構造が含まれている可能性があり,具体的なプログラムとは,それらのデータ構造が実現されたプログラムである.このような変換のことを"詳細化"と呼ぶ.Honsellは,Pre Logical Relationを用いる,詳細化の正しさの証明技法を提案した.本研究では,定理証明システムCoqを用いて彼らの技法を形式化した.このことより,計算機上でプログラムの詳細化の正しさを厳密に証明することができる.In developing programs form specifications, we transform abstract programs (specifications) into concrete programs. Abstract programs may have data, which are not available in our programming languages. In concrete programs, these data are represented by data which are provided. We call these transformation data refinement. Honsell suggest proof method of data refinement which use pre-logical relation. In this paper, we formalize their method with Coq. As a result, we can strictly prove the correctness of data refinement on computer.