著者
加藤 篤子
出版者
学習院大学
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.43-63, 2009-03

本論考ではハイデッガーのDenken、つまり「存在を思索する思考」に対するハンナ・アーレントの批判的観点を、哲学的範囲で考察してみたい。アーレントは周知のように生涯にわたり大哲学者ハイデッガーの哲学的弟子であり続けた。事実、ハイデッガーの80 歳(1969 年)に寄せた文では、アーレントは、ハイデッガーの思考に称賛と敬意を捧げている。存在の思索こそをハイデッガーの生来の住処とみなし、20 世紀の精神的相貌を決定するに与ったのはハイデッガーの哲学ではなくて、その純粋な思考活動であるとする。したがってそこではアーレントの批判的観点は明らかではない。 しかしアーレントの没後、70 年代後半に刊行された『精神の生活』の「思考」の巻において、ハイデッガーの思考に対するアーレントの批判的観点が明確に浮上する。『精神の生活』はカントの批判哲学の新たな解釈なのだが、それに依拠してアーレントはハイデッガーの思考における「意味と真理の混同」を問題視する。そこに基本的仮象と誤謬があるとする。アーレントによればその根拠は精神と身体を持つ人間の逆説的な存在にある。In this paper, I try to clarify Hannah Arendt's criticism of Heidegger's "Thinking"(Denken), which is the elemental activity of his Philosophy. It is well known that she remained a student of Heidegger's all her life. She did honor to Heidegger and appreciated his "Being-Thinking"(Seins denken)on his 80th birthday in 1969. She doesn't seem to have been critical at that time. In fact, Arendt criticized Heidegger clearly in her final work, The Life of the Mind, in "One/Thinking", which was published posthumously in 1975. On the basis of Kant's Philosophy, she problematizes Heidegger's confusion of 'Meaning of Being' with 'Truth of Being'. She says "the need of thinking is not inspired by the quest for truth but by the quest for meaning." Therefore, from Arendt's point of view, there is a basic fallacy in Heidegger's "Thinking". As the ground of Heidegger's confusion, Arendt points out that the human being, itself, is conditioned by both the body and the mind, paradoxically.
著者
加藤 篤志
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.6, pp.73-82, 1993-06-05 (Released:2010-04-21)
参考文献数
8

A concept called “co-dependence” is proposed as describing the social relationships in the modern age. This concept, originally conceived in the field of therapy of addictions, can be available as a sociological concept which presents a model of social relationships. However, this concept is partially problematic for applying to the field of sociology because it is originally conceived in the field of clinics. It will be necessary to solve these problems for the further application of this concept in the theory of social relationships.
著者
赤池 孝章 加藤 篤 前田 浩 宮本 洋一 豊田 哲也 永井 美之
出版者
熊本大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

ウイルス感染病態において誘導型NO合成酵素(inducible NO synthase,iNOS)から過剰に産生されるNOは、共存する分子状酸素(O_2)や酸素ラジカル(活性酸素)などと反応し、パーオキシナイトライト(ONOO^-)などの反応性窒素酸化物の生成を介して、宿主に酸化ストレスをもたらす。一方で、感染炎症における酸化ストレスは、生体内で増殖するウイルスそのものにも加えられることが予想される。RNAウイルスは、一回の複製でヌクレチド残基あたり10^<-5>〜10^<-3>という頻度で変異し、極めて高度な遺伝的多様性を有しており、様々な環境中のストレスにより淘汰されながら分子進化を繰り返している。この様なウイルスの多様性は、これまで主にRNA複製の不正確さにより説明されてきたが、その分子メカニズムは今だに不明である。そこで今回、NOよりもたらされる酸化ストレスのウイルスの分子進化への関わりについて検討した。このため、変異のマーカー遺伝子としてgreen fluorescent protein(GFP)を組み込んだセンダイウイルス(GFP-SeV)を用いてNOやパーオキシナイトライトによるウイルス遺伝子変異促進作用について解析した。その結果、in vitroの系において、パーオキシナイトライトはウイルスに対して非常に強い変異原性を示した。さらにiNOS欠損マウスおよび野生マウスのGFP-SeV感染系において、野生マウスではiNOS欠損マウスの7倍程度高いウイルス遺伝子変異率が認められた。これらの知見は、ウイルス感染・炎症反応にともない過剰に産生されるNOやパーオキシナイトライトが、ウイルスの変異速度を高め、その分子進化に関与していることを示唆している。
著者
佐藤 隆広 石上 悦朗 西山 博幸 絵所 秀紀 加藤 篤行 西尾 圭一郎 長田 華子 宇根 義己 鎌田 伊佐生 内川 秀二 安保 哲夫 上野 正樹 上池 あつ子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

代表のわたしは、日本的生産経営システムの海外移転を評価するハイブリットモデルにもとづく現地調査をインド西部地域で実施することができた。調査を行った8社についての会社記録を作成し、インドにおけるハイブリット調査のデータベースを拡充することができた。また、分担研究者と連携研究者は、バングラデシュ・インドのコルカタの繊維産業調査、インド・アーメダバードとスーラットの繊維産業・共同組合調査、インド・デリー首都圏の繊維産業・自動車産業調査などを行うことができた。研究開始年に相応しいパイロット的な調査を複数実施できたことを特記しておきたい。研究業績としては、代表のわたしは、『商工中金』にインド進出日系中小企業の実態(2013-14年調査)を分析した論文と『経済志林』に経済産業省個票データを利用して1995~2014年度までのインド進出日系企業の動向を分析した論文を公表できた。これら2つの論文によって、インド進出日系企業の歴史的推移とその特徴を明らかにし、本共同研究の土台を構築することができた。また、分担研究者や連携研究者は、国際価値連鎖(GVC)分野においてインドのタイヤ産業や製薬産業に関して複数の論文を執筆し、新新貿易理論に関する理論的・実証的研究も複数本公表している(そのうちの1本はQuarterly Review of Economics and Financeに掲載された)。また、新しい政治経済学(NPE)分野ではインドの地主の政治力に関する実証的な研究が公表された。このほか、経営学分野では『国際ビジネス研究』にインドを事例とした新興国戦略に関する論文が掲載されたこと、地域研究分野ではインドのEconomic and Political Weeklyに縫製産業におけるコミュニティの機能を分析した論文が掲載されたことを特筆したい。
著者
大野 勝巳 安藤 将人 小竹 庄司 長沖 吉弘 難波 隆司 加藤 篤志 中井 良大 根岸 仁
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 = Journal of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.685-712, 2004-10-30
参考文献数
6
被引用文献数
1

<p> 核燃料サイクル開発機構は, 電気事業者などの参画を得て, オールジャパン体制の下, 1999年からFBR (高速増殖炉) サイクルの実用化戦略調査研究を実施している。本研究のフェーズⅠ (1999~2000年度) に引続き, 2001年度より5ヵ年計画で開始したフェーズⅡ研究の前半部分の終了を受け, 本特集では, これまでに検討されたシステム候補概念の設計研究や要素技術に係わる試験結果などについての進捗状況およびこれまでに得られた成果について解説する。</p>
著者
守安 正恭 市丸 百代 西山 由美 加藤 篤
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.659-665, 1993-11-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
10
被引用文献数
6 11

過塩素酸ナトリウムをイオン対試薬としイオン対抽出法とイオン対HPLCを結合して植物からアルカロイド(植物塩基)を迅速に取得する方法を開発した.四級アルカロイドは過塩素酸イオンとイオン対を生成し,酸性条件下1,2-ジクロロエタンで定量的に抽出される.又,三級アルカロイドも定量的に抽出される場合が多いが,抽出率が低い場合もある.得られた塩基の粗過塩素酸塩分画は過塩素酸ナトリウムをイオン対試薬とするHPLCで良好に分離でき,この系は分取への応用が容易である.すなわち分取HPLC後,各ピークのフラクションから有機溶媒を留去し,残りの水相を1,2-ジクロロエタンで振り混ぜるとアルカロイドが抽出され,1,2-ジクロロエタンを留去すると純粋なアルカロイドの過塩素酸塩が得られた.ボウイ,エンゴサク,ナンテンジツの3種の生薬に対してこの方法を適用したところ,いずれの場合もアルカロイドが定量的に抽出されHPLC分離も良好であった.又ボウイについては分取HPLCも行い,シノメニン,マグノフロリンを迅速に取得できた.
著者
加藤 篤子
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.8, pp.43-63, 2010-03-28

本論考ではハイデッガーのDenken、つまり「存在を思索する思考」に対するハンナ・アーレントの批判的観点を、哲学的範囲で考察してみたい。アーレントは周知のように生涯にわたり大哲学者ハイデッガーの哲学的弟子であり続けた。事実、ハイデッガーの80 歳(1969 年)に寄せた文では、アーレントは、ハイデッガーの思考に称賛と敬意を捧げている。存在の思索こそをハイデッガーの生来の住処とみなし、20 世紀の精神的相貌を決定するに与ったのはハイデッガーの哲学ではなくて、その純粋な思考活動であるとする。したがってそこではアーレントの批判的観点は明らかではない。 しかしアーレントの没後、70 年代後半に刊行された『精神の生活』の「思考」の巻において、ハイデッガーの思考に対するアーレントの批判的観点が明確に浮上する。『精神の生活』はカントの批判哲学の新たな解釈なのだが、それに依拠してアーレントはハイデッガーの思考における「意味と真理の混同」を問題視する。そこに基本的仮象と誤謬があるとする。アーレントによればその根拠は精神と身体を持つ人間の逆説的な存在にある。
著者
桑原 博義 布谷 鉄夫 田島 正典 加藤 篤 鮫島 都郷
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.901-909, 1994-10-15
被引用文献数
20

離乳期の子豚に発生した新しい豚病を検索した. 本病は臨床的に元気消失, 発熱,削痩, 発咳などとともに高度な腹式呼吸を特徴とするため俗にヘコヘコ病と呼ばれている. 罹患子豚に共通した病変はび慢性のII型肺胞上皮細胞の増殖を伴った間質性肺炎, 髄膜脳炎, リンパ組織の萎縮などであった. 罹患子豚の諸器官から初代豚肺細胞培養(PLC)に原因ウイルスが分離され, 血清学的に豚生殖器・呼吸器症候群(Lelystad)ウイルスと同定された. 直径約49nmの多数のウイルス粒子が, 分離ウイルスを感染させたPLC培養の肺胞上皮細胞と肺マクロファージの細胞質に検出された. 本病は分離ウイルスをコンベンショナルの子豚に鼻腔内接種することにより再現された.
著者
東郷 賢 加藤 篤史 蟻川 靖浩 和田 義郎 加藤 篤史 蟻川 靖浩
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アフリカ(ケニア、ボツワナ、ガーナ、アフリカ開発銀行)を訪問し、それぞれの国の経済成長における援助の果たした役割についてヒアリングを行った。また、援助供与国の中で最も優れていると言われるデンマークの援助庁も訪問し援助方針についてヒアリングを行った。OECD も訪問し、援助データの詳細について議論をおこなった。これらの内容を踏まえて分析を行っている。その結果、経済成長に関し援助の果たす役割は決定的ではないものの、効果的に利用することは可能であることが判明した。
著者
栗田 昌幸 白松 利也 三宅 晃司 加藤 篤 曽我 政彦 田中 秀明 三枝 省三 SUK Mike
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 : JSME annual meeting
巻号頁・発行日
vol.2005, no.5, pp.283-284, 2005-09-18

Today's head/disk interface design has a wide flying height distribution due to manufacturing tolerances, environmental variations, and write-induced thermal protrusion. To reduce the magnetic spacing loss due to these effects, we have developed an active head slider with nano-thermal actuator. The magnetic spacing of these sliders can be controlled in-situ during operation of the drive. After simulating the heat transfer in the slider and resulting thermal deformation of the air-bearing surface, we fabricated a thermal actuator by thin film processing. The evaluation by a read/write tester showed a linear reduction in magnetic height as electric power was applied to the actuator. The actuator's stroke was 2.5nm per 50mW with time constant of 1 msec. We found no significant impact to the reliability of the read element.