著者
北島 正人 水野 康弘 有木 永子 浅川 けい 津川 律子 張 賢徳 KITAJIMA Masato MIZUNO Yasuhiro ARIKI Nagako ASAKAWA Kei TSUGAWA Ritsuko CHO Yoshinori
出版者
秋田大学教育文化学部附属教育実践研究支援センター
雑誌
秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 (ISSN:13449214)
巻号頁・発行日
no.36, pp.193-203, 2014-05-31

自殺のリスク評価の視点から、風景構成法(LMT)と、2つの心理検査との関連を検討した。研究1では、LMTの「構成の型」「色彩の程度および種類」と、自己評価式抑うつ性尺度(SDS)の総得点および第19項目(SDS_Q19)の希死念慮頻度得点との関連を検討した。研究2では、LMTの「構成の型」「色彩の程度および種類」と、精研式文章完成法テスト(SCT)の刺激語「自殺」および「死」への記述内容との関連を検討した。その結果、研究1では、LMTのアイテム「石」の彩色に「灰色」を用いた者が、「黒色」を使用した者や彩色しなかった者よりもSDS_Q19で高い希死念慮頻度を示した。単色で60%以上という高い出現率を占める「灰色」の選択には、希死念慮頻度の高い者と低い者の双方が含まれていたと推察され、結果の解釈には慎重を要すると考えられた。研究2では、LMTとSCTの2つの刺激語との間に有意な関連は見出されなかった。2つの研究を通じ、今後に向けて主に次のような課題が提出された。先行研究同様、本研究においてもLMTのアイテム彩色が自殺のリスク評価に関与することが示唆されたが、詳細な分析のためには、臨床群データだけでなく健常者データの蓄積が急務と考えられた。また、SCTに関しては、臨床実践に応用できる形で、なおかつ統計上も有用な群分けができる分類法をさらに工夫する必要があると考えられた。
著者
平部 正樹 藤後 悦子 藤城 有美子 北島 正人 藤本 昌樹 竹橋 洋毅
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.412-424, 2021-06-15 (Released:2021-06-25)
参考文献数
28

目的 私立広域通信制高校の生徒を対象に質問紙調査を行い,通信制高校選択に関わるストレスから生徒を分類し,そのタイプごとに精神健康度に関わる要因を抽出した。方法 私立A広域通信制高校の全国11キャンパスに所属する全生徒3,888人を対象とした。調査期間は2015年10月から2016年1月であった。クラスごとの一斉ホームルーム時に,担任教員が,調査票を直接配付・回収した。調査票は,基本項目,精神健康関連項目,ライフスキル項目から構成されていた。精神健康関連項目については,通信制高校入学前のストレス,入学後のストレス,通信制高校選択に関わるストレスについて,「学業」,「友人関係」,「教師との関係」,「部活動」,「学校行事」,「家庭環境」,「健康状態」,「バイト・仕事」の8領域から尋ねた。精神健康度を計る指標として,Kessler 6(以下,K6)を用いた。結果 2,424人からの有効回答を得た(回収率,62.3%)。通信制高校入学前と入学後のストレスの変化については,男女ともに,「バイト・仕事」領域以外で入学後にストレスが低下していた。通信制高校選択に関わるストレスの8領域の得点により大規模クラスタ分析を行った結果,6群が抽出された。各群におけるK6得点に関わる要因を抽出したところ,すべての群で健康状態が強く関わっていた。加えて,学業ストレス高群,友人関係ストレス高群,家庭・健康ストレス高群については,通信制高校選択の理由となったストレスが,入学後も精神健康度の低さに結びついていた。学校関連ストレス複合群については,友人関係に加え,家庭環境が精神健康度の低さと関連していた。全ストレス高群は,とりわけ学業との関連が強かった。ライフスキルについては,ストレスマネジメントスキルや意志決定スキルの高さが精神的健康度の高さと関わっていた。結論 通信制高校生徒の精神健康度の向上のためには,そのニーズを把握し,そのタイプに応じた支援を行うこと,その際にストレスへの対処と,ライフスキルを伸ばすことが重要であることが示された。今後,通信制高校生徒への支援実践につながることが期待される。
著者
平部 正樹 小林 寛子 藤後 悦子 藤本 昌樹 藤城 有美子 北島 正人
出版者
学校法人 三幸学園 東京未来大学
雑誌
東京未来大学研究紀要 (ISSN:18825273)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.135-144, 2017-03-31 (Released:2018-12-03)

本研究では、通信制高校の生徒を対象として質問紙調査を行い、入学形態と入学理由の関連、およびそれらと精神健康の関連について明らかにした。対象は、私立の広域通信制高校2キャンパスに所属する全生徒1,086人であった。調査票については、入学形態や通信制高校に入学した理由、精神健康を測る指標としてKessler-6が含まれていた。結果として、男女ともに「学力上の理由」は新入学で、「年齢上の理由」は編入学で、「前校での不適応」は転・編入学で高かった。女性では、転入学で「友人関係上の理由」が高かった。精神健康との関連では、男性で「学力上の理由」、「友人関係上の理由」、「前校での不適応」、「心の病気」等の入学理由や入学形態が精神健康に関わっていた。女性では、「友人関係上の理由」、「心の病気」等の入学理由が関わっていた。これらの情報は、生徒への支援の際に、重要な情報になりうることが示された。
著者
奥村 太一 森 慶輔 宮下 敏恵 西村 昭徳 北島 正人
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.323-332, 2015
被引用文献数
4

In this study, we developed a Japanese version of the Maslach Burnout Inventory - Educators Survey (MBI-ES). We also examined the reliability and validity of the scale, based on data from Japanese schoolteachers. Because some items related to depersonalization showed a floor effect, the reliability of the MBI-ES was evaluated using item response theory (IRT), which can evaluate the difficulty of the items. The IRT analysis showed that scores of emotional exhaustion and personal accomplishment had high reliabilities among the wide range of distribution of the latent scores around the means. However, the reliability of the depersonalization items was estimated to be moderate when it was implemented among highly depersonalized teachers, whereas the reliability was lower for relatively healthy teachers. Correlations with the General Health Questionnaire, frequency of emotional labor, and job satisfaction were mostly consistent with previous research and the current theory of burnout, supporting the high validity of the Japanese version of the MBI-ES.
著者
北島 正人 平部 正樹 藤城 有美子 山極 和佳 桑田 有
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.143-149, 2012-09-10 (Released:2012-09-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1

青年期における牛乳摂取状況とパーソナリティ特性との関連について検討した.大学生840人に対して無記名自記式質問紙を配布し,760人から回収 (回収率91.1%),うち,基準に該当する755人分を分析対象とした.牛乳が身近にある環境であるか否かと,摂取頻度3水準の組み合わせから,対象者の牛乳摂取状況を6群に分けた.本論では,牛乳が身近にある環境要因は共通しているにも関わらず,摂取頻度が大きく異なる「環境あり× 高頻度摂取」群と「環境あり× 低頻度摂取」群の2群で比較を行った.高頻度摂取群の健康行動では,食生活と歯の健康に気をつけている人が多かった.パーソナリティについては,主要5因子検査を用いて両群の比較を行ったところ,低頻度摂取群において協調性と勤勉性がより低いという傾向が見られた.望ましい健康習慣のひとつである牛乳摂取の維持・促進にあたっては,対象者のパーソナリティの違いを考慮に入れたアプローチの検討が有用であることが示唆された.
著者
宮下 敏恵 北島 正人 森 慶輔 西村 昭徳
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

小・中学校教師におけるバーンアウト尺度の因子構造については、小学校、中学校ともに3因子構造が適切ではないかという結果がみられた。小学校、中学校の教諭においては、個人的達成感の後退が著しく進んでおり、脱人格化得点もやや高いという結果が得られた。学校現場においてメンタルヘルスの悪化は深刻だといえるだろう。その中でも小学校よりも中学の教諭の方がバーンアウト得点は高いという結果がみられた。また教職経験年数により、バーンアウトの進行が異なるという可能性が示唆された。若手教師は情緒的消耗感から進行し、脱人格化、個人的達成感の後退というプロセスを進むという結果が示された。中堅以降の教師は個人的達成感の後退がバーンアウトプロセスの始発点になり、脱人格化、情緒的消耗感と進むという結果が示された。バーンアウトの予防を考える際には教職経験年数を考慮に入れたモデルを考える必要があるといえる。バーンアウト予防の介入のためには、教職経験年数に応じて、教師自身が多忙な中で自分自身の状態をチェックし、どう対応したらよいか振り返ることが必要ではないかと考えられる。バーンアウト低減のためにパソコン上で簡単にチェックでき、結果を振り返ることができる予備的プログラムを作成した。本研究は小・中学校のバーンアウト尺度の因子構造を明らかにし、教師におけるバーンアウトのプロセスを明らかにしたという点が画期的である。さらにバーンアウト予防の介入のために、予備的プログラムを作成したことから、今後バーンアウトのプロセスモデルを精緻化していくことによって、バーンアウトの予防が可能になると言える