著者
大村 英史 柴山 拓郎 寺澤 洋子 星(柴) 玲子 川上 愛 吹野 美和 岡ノ谷 一夫 古川 聖
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.467-478, 2013-09-01 (Released:2017-06-02)

本稿では,音楽情動に関わる研究を歴史,測定,心理的知見,生理的知見,理論の五つの項目から横断的に概観し,音楽の知覚と情動に関わるメカニズムについて考察を行う。従来の音楽情動の研究では,メロディやリズムなどの音に関する要素と情動の関係に焦点を当てた研究が中心であったが,最近では音楽が持つ背景や聴取環境などの音以外の要素と情動の関係の知見も多く報告されている。これらは,音楽情動を引き起こす原因が音に関する事象だけに存在しているのではなく,他の事象も多く存在することを示している。本稿ではこれらの事象をひとまとめにして,音楽と聴取者の間に存在する,音楽情動を引き起こすための「媒体」と呼ぶ。音楽情動に関係する複数の媒体は互いに影響を与え合い複雑な関係になっていることが考えられる。
著者
田中 翼 古川 聖
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1308-1318, 2013-04-15

本稿では,多声音楽の自動作曲において新しい旋律スタイルを自動生成する手法を提案する.本手法において旋律スタイルは,書き換え規則の集合からなる文法として表され,その文法規則は遺伝的機械学習システムであるクラシファイアシステムを用いて生成される.これまでの文法的なアプローチの自動作曲研究においては,多声音楽をいかに文法的に扱うかという問題や,オリジナルな旋律スタイル自体を自動生成する問題はあまり重点的に研究されてこなかった.そこで本稿では,多声音楽の生成過程を,各旋律が互いに参照し合いながら,声部間での書き換え規則の非同期的な適用によって成長していくプロセスとしてモデル化を行う.そしてモデルの要素としての文法規則をクラシファイアシステムを用いて自動生成することで,新しい旋律スタイルを創発させる手法を提案する.生成楽曲の評価実験の結果,文法ルール数を小さく設定することが複数の観点からの高評価につながることや,各声部が別々のルールに基づく「複数スタイル」の楽曲が「旋律の動きの豊かさ」において高評価を得ることが明らかになった.
著者
寺澤 洋子 星-芝 玲子 柴山 拓郎 大村 英史 古川 聖 牧野 昭二 岡ノ谷 一夫
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.112-129, 2013-03-01 (Released:2014-11-20)
参考文献数
34
被引用文献数
2

Music induces a wide range of emotions. However, the influence of physiological functions on musical emotions needs further theoretical considerations. This paper summarizes the physical and physiological functions that are related to musical emo-tions, and proposes a model for the embodied communication of musical emotions based on a discussion on the transmission of musical emotions across people by sharing move-ments and gestures. In this model, human with musical emotion is represented with (1) the interfaces of perception and expression (senses, movements, facial and vocal expressions), (2) an internal system of neural activities including the mirror system and the hormonal secretion system that handles responses to musical activities, and (3) the musical emotion that is enclosed in the internal system. Using this model, mu-sic is the medium for transmitting emotions, and communication of musical emotions is the communication of internal emotions through music and perception/expression interfaces. Finally, we will discuss which aspect in music functions to encourage the communication of musical emotions by humans.
著者
大村 英史 柴山 拓郎 高橋 達二 澁谷 智志 岡ノ谷 一夫 古川 聖
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.954-966, 2012-10-15 (Released:2012-11-05)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

本稿では,人間の認知バイアスのモデルを用いた音楽生成システムを提案する.音楽は期待の満足や裏切りによって情動豊かな作品として構成されている.このような音楽における期待の形成とその期待に対する満足や裏切りのダイナミクスを実現するために,緩い対称性(LS)モデルを使用した.このモデルは人間の思考や推論に特徴的な非論理的な対称性バイアスと相互排他性バイアスに基づいた確率モデルである.本システムは,(1)音から音への遷移を音楽におけるメロディの最も単純なイベントとみなし,既存の楽曲から音の遷移の特徴量を抽出し,(2)LS モデルにより「人間的な」改変,汎化を行い,(3)新たなメロディを生成する.メロディ生成に用いられる汎化後の確率分布の平均情報量を調べた結果,LS モデルがほどよい複雑性を作り出していることが確認された.さらに,生成されたメロディの評価のために心理実験を行い,LS モデルが期待に関する満足(音楽的まとまり)と裏切り(意外性)をバランスよく含んだメロディを生成していることを確認した.この結果は,音楽生成における期待感生成に関する認知バイアスの適用の有効性を示唆する.
著者
田中 翼 古川 聖
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1308-1318, 2013-04-15

本稿では,多声音楽の自動作曲において新しい旋律スタイルを自動生成する手法を提案する.本手法において旋律スタイルは,書き換え規則の集合からなる文法として表され,その文法規則は遺伝的機械学習システムであるクラシファイアシステムを用いて生成される.これまでの文法的なアプローチの自動作曲研究においては,多声音楽をいかに文法的に扱うかという問題や,オリジナルな旋律スタイル自体を自動生成する問題はあまり重点的に研究されてこなかった.そこで本稿では,多声音楽の生成過程を,各旋律が互いに参照し合いながら,声部間での書き換え規則の非同期的な適用によって成長していくプロセスとしてモデル化を行う.そしてモデルの要素としての文法規則をクラシファイアシステムを用いて自動生成することで,新しい旋律スタイルを創発させる手法を提案する.生成楽曲の評価実験の結果,文法ルール数を小さく設定することが複数の観点からの高評価につながることや,各声部が別々のルールに基づく「複数スタイル」の楽曲が「旋律の動きの豊かさ」において高評価を得ることが明らかになった.In this paper, we propose a method to generate new melodic styles in automatic composition of polyphonic music. In the proposed method, a melodic style is represented as a grammar that consists of rewriting rules, and the rewriting rules are generated by a classifier system, which is a genetics-based machine learning system. In the previous studies of grammatical approaches, the problem of how to treat polyphony and that of generating new melodic styles automatically haven't been studied very intensively. Therefore, we have chosen to tackle those problems. We modeled generative process of polyphonic music as asynchronous growth by applying rewriting rules in each voice separately. In addition, we developed a method to automatically generate grammar rules, which are the elements of the polyphony model. The evaluation experiment revealed that setting the number of grammar rules to a small number leads to high evaluations and that "multi-style" pieces, which have different melodic styles in respective voices, have higher scores than "single-style" pieces from the standpoint of "diversity of melodic movement."
著者
大村 英史 二藤 宏美 岡ノ谷 一夫 古川 聖
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.152-159, 2013-03-01 (Released:2014-11-20)
参考文献数
11
被引用文献数
2

According to Meyer, musical emotion is elicited by deviations from musical expecta-tion. We assume such deviations as a musical complexity. In this study, we focused on the structure of melodies, and created complexities built in either or both types of structures: one made of notes and the other made of grouping hierarchic elements,which we called level 1 structure and level 2 structure. We conducted a psychological experiment revealing relationships between emotion and musical complexities. Par-ticipants assessed musical emotions (GEMS-9) and feeling that something is wrong as sensory psychological quantity of complexities. As the results of ANOVAs, we found that destructions of both level 1 structure and level 2 structure effected feeling that something is wrong. Moreover, destructions of level 2 structure effected tension, sad-ness,andtranscendence of musical emotions. These results indicate that manipulating destructions level of musical structure might control specific musical emotions.
著者
古川 聖太郎 楢崎 肇 中山 智英 市村 龍之助 岡村 圭祐 藤田 美芳 森田 高行 平野 聡
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.608-616, 2016-07-01 (Released:2016-07-23)
参考文献数
36
被引用文献数
1

症例は消化管ポリポーシスの家族歴のない54歳の女性で,36歳時の上部消化管内視鏡検査で初めて胃ポリープを指摘された.それ以降,胃十二指腸ポリープが出現,増大した.徐々に貧血と低蛋白血症が進行し,薬物療法が奏効せず,54歳時に手術が必要と判断した.病変は噴門部から十二指腸下行脚まで連続して存在し,空腸以下に病変を認めないため,胃全摘,十二指腸球部切除術を施行した.摘出標本では大小多数のポリープが集簇し,組織学的にCronkhite-Canada型と診断した.十二指腸に小ポリープが遺残したが,速やかに症状は改善し,術後3年6か月現在,症状は再燃していない.一般に薬物療法によるポリポーシスの根治は困難で,有症状例には外科手術が有効な症例もある.ポリープに悪性所見を認めない場合,全ての粗大ポリープを含む可及的小範囲の切除とし,術後は症状再燃に注意し,厳重経過観察することも選択肢の一つとなりうる.
著者
大村 英史 柴山 拓郎 高橋 達二 澁谷 智志 二藤 宏美 古川 聖
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

雰囲気は、環境から知覚される情報の総体である。知覚される情報を定量的にコントロールすることは、任意の雰囲気を作り出すために有用であると考えられる。私たちは、音の知覚である音楽に着目し、発音時間および周波数の構造をエントロピーに基づいて構造化し、音楽を生成するシステムを開発した。本システムはwebブラウザ上で動作するため、ユーザは任意の環境で音知覚を行うことができる。
著者
苅宿 俊文 郡司 明子 刑部 育子 茂木 一司 古川 聖 戸田 真志 植村 朋弘 佐伯 胖 高木 光太郎
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の研究成果は3点ある。その概要は、1、WSは参加者、ファシリテータ、活動対象の3つから構成されていることを基に、F2LOモデルを定義した。2、WSの3つの構成要素は、相互間の関係性の分析を重層的な視点から組み立ていくことの重要性を指摘した。そして、WSにおけるコミュニケーション構造は「位置づく-見立てる-味わう」の3つの場面の重層的な関係性を調査した。3、WSの重層的な関係性を分析していくために、iOSアプリ「デキゴトビデオ」を制作した。この「デキゴトビデオ」は、映像の編集を簡単に出来ることで臨床的な調査に適したツールである。今後、学習環境デザインの分野で活用することが期待されている。
著者
藤井 晴行 古川 聖 諏訪 正樹
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

デザイン知の形成と適用のプロセスを創造的認知プロセスとして解明すること,デザイン研究の方法論を構築することを目的とし,デザインの内部観測と外部観測の融合によって,従来の科学では捉えられないデザイン知を浮き彫りすることを試みた.デザイン主体の会話記録やインタビュー記録を資料とし,概念空間の遷移を創造的認知プロセスの現れとして分析した.概念空間を提示して創造的認知のメタ認知を促進し,概念空間の遷移に現れる影響を考察した.避難行動を生存のためのデザインとみなし,避難行動の証言の構成的構造を抽出した.概念空間を表現する手法の構築,「一人称」的デザイン研究の方法論を構築した.
著者
古川 聖 白石 智
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.690, pp.21-24, 2004-02-27

利用者がネットワークを通じてプレゼンス情報を交換するプレゼンスサービスを実現するにあたり,有望視される方式の一つにsIPおよびgIP拡張によるモデルがある.しかし特に大規模サービスの実現を目指す場合,機能配備・情報配備に関わる具体的な方法論が十分に整備されていないので,実装間の相互接続性が損なわれることがあった.本稿は大規模サービス実現に向けた要求条件として網による処理代行・不正利用防止・網による情報保持・スケーラビリティ担保を挙げ,これらを充足する方式としてプレゼンスエージェント・プロクシ・利用者ユーザエージェント等から構成される実現モデルを提案する.