著者
小泉 公乃 吉田 右子 池内 淳 松林 麻実子 和気 尚美 河本 毬馨
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

21世紀社会における中心的課題は,産業構造の変化や不安定化する国際政治によって生じた社会分断を克服することであり,地域コミュニティの中心にある図書館は社会分断克服空間への変化を求められている。本研究では,①包括的文献レビュー,②北欧北米と日本における図書館の政策分析,③北欧北米と日本の先進的な図書館を対象とした詳細な事例分析,④先進的な図書館の立地する地域を対象としたエスノグラフィ,⑤新しく創造された社会分断克服空間を対象とした図書館評価法の開発という5つの研究を通して,伝統的な図書館から21世紀の次世代図書館への<革新メカニズム>を解明したうえで,<新しい図書館評価法>を開発する。
著者
吉田 右子 吉田 右子
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.64, pp.1-31, 2010

【目的】本研究の目的は,ライブラリアンシップに関わる批判的観点の一つであるジェンダー(文化的性差)に着目し,図書館史におけるジェンダー研究の分析を通じて,批判的研究の枠組みを検証することである。Michael H. Harris が民主主義機関としての図書館にかかわる批判的視座を提示したのは 1970 年代であり,その後 Harris の"修正解釈"を踏まえた批判的な視点を基盤とする新たな図書館史研究が展開されるようになった。批判的研究は研究対象となる事象を階級,ジェンダー,マイノリティといった特定の切り口から再検証し,再構築していくことを目指している。\n\n 【方法】批判的図書館史研究の系譜の中にジェンダーを対象とする研究を位置づけるために,アメリカ図書館史研究における図書館女性研究の先行研究の分析を行なった。さらにこれらの文献にあらわれるジェンダーの概念が,公共図書館研究に与える意義について検討した。\n\n 【結果】先行研究を分析した結果,図書館実践という地平に,男性図書館員,対向軸としての女性図書館員・女性支援者・女性利用者を配置する布置は,主流の視点からの分析に偏っていた従来の研究方法に,新たな分析の枠組みを与える可能性を有していることが明らかになった。最終的に公共図書館研究におけるジェンダー概念への着目は,図書館にかかわる主流文化・周縁文化の捉え直しを意味し,図書館をめぐる文化政治的構造を再考するための手掛かりとなることが示された。
著者
吉田 右子 坂田ヘントネン 亜希
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.108-124, 2020

<p>本研究はフィンランドの作家と図書館のための公的支援システムに焦点を当てて,公共図書館と関連づけられた(1)図書館助成金制度(2)貸与補償制度(著作権補償制度)(3)資料購入・購読補助制度を,フィンランド文化政策全体を射程に入れて検討した。分析の結果,これらの助成制度の意義として,創作者側の文化創造を保障することで文芸の幅と厚みを担保し受取側の多様な文化へのアクセスを保障する基盤を創出していること,少数話者言語であるフィンランド語の文芸を活性化し保護する役割を担っていることの2点を導出した。</p>
著者
吉田 右子 Yuko YOSHIDA
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 = The library world (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.189-203, 2019-09

本稿では公民館設置の基点に立ち戻り,公民館を発案した寺中作雄の言説を中心に,公民館構想における図書館の位置づけを検討した。占領期公民館構想においては既存の図書館との関係や公民館内の資料提供サービス機能が提示されつつも図書館界と公民館界による領域横断的な議論はなされず,両者の一体的運営に向けた方向性は示されなかった。両者の関係性は図書館と公民館での個別的連携にとどまった。個別法を持つ図書館と社会教育法に規定された公民館の制度上の複線構造により,図書館と公民館は分離して論じられ今日に至っている。
著者
水嶋 英治 吉田 右子 宇陀 則彦 白井 哲哉 逸村 裕 大庭 一郎 阪口 哲男 原 淳之 平久江 祐司 松村 敦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究はアーカイブ技術を導入し「21世紀図書館情報専門職養成研究基盤アーカイブ」を構築するとともに日本の図書館専門職養成史を再検討することを目的とする。筑波大学図書館情報メディア系の前身組織関係資料の解明に向け、図書館情報専門職教育関係史料に関して包括的研究を実施した。本研究で遂行した研究課題は(1)文献資料・実物資料の精査と電子化のための選別・整理および文献資料補足のための聞き取り調査(2)現物資料の整理・展示および組織化、文献資料の部分的電子化、多言語インタフェース設計(3)図書館職養成史に関わる現物資料群の同定とアーカイブ活用可能性の検討(4)図書館情報学教育史の批判的再検討である。
著者
川崎 良孝 吉田 右子 小林 卓 三浦 太郎 呑海 沙織 安里 のり子 久野 和子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は19世紀中葉から21世紀にいたる図書館の歴史的展開を、新たな視点で解明している。「サービスの提供」という基本的価値に、1960年代から「資料や情報へのアクセスの保障」と「図書館記録の秘密性の保護」という価値が加わり、これらの3つの価値は思想的、実践的に20世紀末に向けて深められていった。しかし21世紀に入り、「アクセスの保障」と「秘密性の保護」という価値は、社会や技術の変化を受けて揺らぐとともに、それらを意識した図書館の理論や実践が生まれている。本研究は広範な一次資料の発掘や実践の研究を通じて、こうした歴史的展開を実証的に解明し、一般図式を提供した。
著者
吉田 右子
出版者
大修館書店
雑誌
言語 (ISSN:02871696)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.46-53, 2008-09

アメリカでは、コミュニティの活性化に図書館が不可欠であり、それが民主主義を保障するという認識が広く共有されている。そうした期待を受けて、司書たちがいかに専門的スキル-ライブラリアンシップ-を発揮してきたのか、その実践に学ぶ。
著者
吉田 右子 中村 百合子
出版者
同志社大学図書館司書課程
雑誌
同志社大学図書館学年報 (ISSN:09168850)
巻号頁・発行日
no.36, pp.73-121, 2010

特別インタビュー聞き手:中村百合子<修正箇所> p.121 9行目 (修正前)「1960年代から1970年代の子ども文庫研究の再検討」Vol.50, No.3, 2004.9, p.103-111. → (修正後)「1960年代から1970年代の子ども文庫研究の再検討」『日本図書館情報学会誌』Vol.50, No.3, 2004.9, p.103-111.
著者
吉田 右子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.121-137, 2002-09-30

第二次世界大戦ではあらゆるメディアが戦力として使われ,公共図書館もまた戦時情報の伝達機関として重要な役割を果たした。本稿ではアメリカ図書館協会(ALA)と戦時情報局(OWI)による戦時情報サービスを分析することによって,アメリカのメディア政策における公共図書館の位置づけを解明した。両者の協同関係に基づく情報提供サービスを検討した結果,第二次世界大戦期に公共図書館は,市民に対し必要な情報を適切に媒介する戦時情報センターとしてメディア戦略の一端に位置づけられていたことが明らかになった。また公共図書館の戦時情報サービスは印刷資料に限らず,映像資料を含む多種のメディアを通じて行われていたことを,ALAとOWIの連携活動を検討するなかから示した。そしてデモクラシー社会を支える見識ある市民にとって,円滑な情報流通が極めて重要であるとの認識が両者の情報提供サービスの理念的基盤にあったことを結論とした。