著者
千住 琴音 諏訪 博彦 水本 旭洋 荒川 豊 安本 慶一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.1818-1828, 2019-10-15

ワンウェイカーシェアリングにおいて車両偏在問題の解決は重要な課題である.これまで,運営会社による効率的な車両移動による解決などが試みられてきたが,コスト面でのデメリットは無視できない.そこで我々は,新たなアプローチとして,潜在的利用者へ車両移動を依頼する手法を提案する.本提案は,依頼トリップの数を少なくしながら,要求トリップの成立数を最大化する問題として設定できる.提案手法の効果を検証するためにシミュレーションによる評価を実施した結果,依頼トリップの受託率が20%であったとしても,要求トリップの受託率を17%向上できることを確認した.また,依頼すべき潜在的利用者について検討するために,実証実験を実施しているパーク24株式会社から提供された利用実績データの分析を行った.その結果,利用行動パターンとして5パターン(常連,2way,分散,局所,1ルート)が存在することを明らかにした.また,そのなかでも依頼すべき利用者の利用パターンが,分散型,局所型であることを考察した.本研究の貢献は,車両偏在問題を解決するための新たなアプローチを提案し,シミュレーションだけでなく,実データの分析と合わせて議論していることである.
著者
前中 省吾 森下 慈也 永田 大地 玉井 森彦 安本 慶一 福倉 寿信 佐藤 啓太
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.629-642, 2016-02-15

本論文では,参加型センシングに基づき,多数の車両が車載スマートフォンを用いて,桜の花が咲いている場所の情報および動画を自動的に収集,配信するシステム,桜センサを提案する.桜センサでは,(1)桜の花の有無と量(桜度合い)を正確に認識すること,(2)複数車両が分担してセンシングすることで,負荷に偏りの生じないセンシングを実現すること,という2つの技術的課題を解決することを目標としている.(1)を解決するため,事前に作成した桜の花に出現する色の分布を用いて入力画像における桜度合いを算出する方法と,桜の花に似た色の人工物の誤検出を防ぐフラクタル次元解析に基づく方法を提案する.(2)を解決するため,各PoI(桜の花が見られる地点)の発見率をあまり低下させることなく車両1台あたりの処理負担を軽減する多段階センシング法を提案する.これは,すでに発見されたPoI近辺に新たなPoIが存在すると仮定し,既登録PoIの付近におけるセンシング(画像の撮影と解析)間隔を動的に短くする方法である.桜センサをiOSデバイスとサーバからなるシステムとして実装し,桜が開花中の道路を走行する実験を行った.7カ所で収集した合計1860秒の動画を10秒ごとに区切った動画186個に桜センサを適用した結果,桜のあり・なしを適合率0.91,再現率0.53で認識できた.また,シミュレーション実験により,多段階センシング法は,固定距離間隔でセンシングを行う手法と比較し,約半分のセンシング回数で同程度のPoI発見率を達成した.In this paper, we propose SakuraSensor, a system which senses and shares the information of roads with flowering cherries by leveraging car-mounted smart-phones. SakuraSensor aims to solve two technical challenges: (1) how to accurately detect flowering cherries and its degree, and (2) how to efficiently find locations of flowering cherries (PoIs) through cooperation among participants. For (1), we develop a color analysis-based method to detect image pixels belonging to flowering cherries. To exclude artificial objects with similar color, we also employ fractal dimension analysis. For (2), we propose the k-stage sensing method which dynamically narrows sensing interval near the PoIs already found, assuming that PoIs exist close together. We implemented SakuraSensor for for iOS devices with a cloud server, and traveled cherry-lined roads and recorded a total of 1,860 seconds video (divided into 186 ten-second videos for classification) in 7 different places. As a result, SakuraSensor classified the 186 videos into two classes (with or without flowering cherries) at about 0.91 of precision and 0.53 of recall. In addition, our k-stage sensing method achieved the comparable PoI discovery rate with half sensing times compared to a conventional method.
著者
山口 弘純 安本 慶一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J101-B, no.5, pp.298-309, 2018-05-01

近年のクラウド集中型アーキテクチャの制約と限界を受けて,ポストクラウドともいうべきエッジコンピューティング環境の構築と未来に関する多数の議論や研究がなされている.現状議論されているエッジコンピューティングアーキテクチャの多くは,従来のクライアントサーバーモデルをエッジサーバーとエッジデバイスのモデルに置き換えることで低遅延並びに帯域の節約を狙ったものであり,クラウドアーキテクチャの自然な拡張といえる.一方で,IoTアプリケーションやサイバーフィジカルシステムなど次世代のITシステムが必要とする「知的データ処理」をエッジコンピューティング環境でどのように行うかについては十分に議論されていない.本論文ではまずエッジコンピューティングに関する現状の動向を俯瞰する.次に,各々が計算機能を有するIoTデバイスやエッジサーバーを連携させ,可能な限りデータやフローの「地産地消」を行い,エッジコンピューティングのような分散計算環境においてもシームレスに知的データ処理のコアサービスを提供する著者らのアプローチを紹介し,今後の展望を述べる.
著者
寺島 芳樹 安本 慶一 東野 輝夫 安倍 広多 松浦 敏雄 谷口 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.116-125, 2001-02-15
参考文献数
13

本論文では,種々の機能拡張に柔軟に対応できるQoS制御機構の実装法を提案し,SMILへの適用例を示す.提案手法では,仕様記述言語E-LOTOSのサブクラス(時間拡張LOTOSと呼ぶ)を中間言語として用いる.QoS制御機能は,システムを動画,音声の再生動作などを記述した主プロセスと,メディアスケーリング,メディア同期など追加したい機能のみを記述した制約プロセスとで構成し,それらを並列に同期実行させるという,制約指向スタイルを利用して実現する.またSMILに動的メディアスケーリング,メディア同期の精度指定の機構を追加したQOS-SMILを定義し,実装方法の適用例として示す.QOS-SMIL記述は対応する時間拡張LOTOS仕様に変換され,我々が開発している時間拡張LOTOSコンパイラを用いて実行される.いくつかの実験結果から,提案手法はQoS制御機能の開発コストに優れ,実行効率の点でも十分な性能を持っていることを確かめた.In this paper, we propose a flexible implementation technique forQoS control mechanisms and apply it to SMIL language.In the proposed technique, we use a subclass of E-LOTOS (calledreal-time LOTOS).We implement QoS control mechanisms using the constraint orientedstyle where a system is composed of a main process(e.g., video/audio playback) and several constraint processes (e.g.,media scaling, inter-media synchronization and so on). Usingthe multi-way synchronization mechanism of real-timeLOTOS, those processes run in parallel satisfying the specifiedconstraints.We define QOS-SMIL as an example extension of SMILwhere it has dynamic media scalingand explicit inter-media synchronization amongobjects, and show the applicability of our implementation technique.QOS-SMIL documents are converted to executable programs with ourreal-time LOTOS compiler. Through some experiments, we have confirmedthat the proposed technique has some advantages w.r.t. developmentcost for QoS control mechanisms and the derived programs haverelatively good performance for practical use.
著者
柏本 幸俊 荒川 豊 安本 慶一
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2015-MBL-74, no.31, pp.1-4, 2015-02-23

近年,屋内でのユーザの生活支援に向けた屋内位置手法に関する研究が盛んに行われている.これらの屋内位置推定手法は健康支援システムや高齢者見守りシステムなど様々な応用が期待でき,多数の手法が提案されている.圧力センサ内蔵マットやマイクアレーを用いた屋内位置推定システムが提案されている.しかし,導入コストやプライバシの問題が存在する.本稿では,これら 2 つの課題を解決するため,床に貼り付けた振動センサによる屋内位置推定システムを提案する.提案手法では,一般的な日本家屋の床などの振動を伝搬しやすい床を対象として,床に複数の振動センサを設置し,ユーザが移動した時に床に生じる振動よりユーザの位置を推定する.提案システムでは,振動フィンガプリント及び振動の強度の変化を用いてユーザの位置を推定する.床に伝搬する振動には,ユーザの位置を特定できる振動が含まれる.例えば,ユーザがドアを開閉した時の振動,椅子に着席・離席した時の振動などである.これらの振動とそれぞれの振動が発生する場所の組み合わせ (振動フィンガプリント) によってユーザの位置を推定する.しかし,振動フィンガプリントのみでは,振動フィンガプリントが存在しない場所にユーザが移動した場合や,移動中のユーザの位置推定が困難である.そこで,振動波の大きさ (振動強度) の変化よりユーザの移動方向・移動距離を推定し,この課題を解決する.ユーザの歩行による振動強度が時間経過とともに増加した場合,ユーザが振動センサに近づく方向に移動していることが分かる.従って,複数の振動センサの振動強度の時間的変化より,ユーザの移動方向を推定できる.それぞれの振動フィンガプリント・振動強度の時間的変化によるユーザの移動方向・距離の推定で推定したユーザの位置をパーティクルフィルタを用いて統合することで,ユーザの屋内での位置を推定する.提案システムの実現に向けて予備実験を行った.予備実験では,大学が所有するスマートハウスのフローリング床に複数の振動センサを設置し,振動強度とユーザー振動センサ間の距離に相関が存在するかを確認した.予備実験の結果,振動強度とユーザー振動センサ間距離との間に対数関数で近似できる相関が存在することが分かった.
著者
隅田 麻由 水本 旭洋 安本 慶一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.399-412, 2014-01-15

本論文では,個人の身体条件に適した負担度でのウォーキングを支援するシステムの実現を目指し,スマートフォンで利用可能な機能のみを用いた心拍数推定法を提案する.提案手法では,歩行中の心拍数を推定するために,機械学習を基に,加速度や歩行速度などの歩行データから心拍数を予測する心拍数モデルを構築する.心拍数の突発的な変化に対応するため,モデルの入力として心拍数変化と関連性が高い酸素摂取量に着目する.そして,加速度および位置情報などのスマートフォンで計測可能なデータから酸素摂取量の変化を正確に推定する方法を新規に提案する.また,学習データのない様々なユーザに対して心拍数を推定できるようにするため,過去の運動習慣を基に分類したユーザカテゴリごとに心拍数モデルを構築し,パラメータの最適化,心拍数データの正規化などを適用する.複数の被験者および歩行ルートについて実際に計測したデータに本手法を適用した結果,6.37bpm(拍/分)以内の平均誤差で心拍数の推定ができること,提案する酸素摂取量推定法が平均10bpm以上の誤差の軽減に寄与することなどを確認した.
著者
玉井森彦 永田大地 前中省吾 森下慈也 安本慶一 福倉寿信 佐藤啓太
雑誌
研究報告コンシューマ・デバイス&システム(CDS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.15, pp.1-8, 2014-08-20

近年,景観の良さを評価指標とするナビゲーションサービスが提供され始めている.しかし,既存のサービスでは,景観の情報を人手により編纂しているため,あらかじめ決められた特定の時間帯や季節における静的な情報を提供するに留まっており,最新の状況を反映した情報提供が行われていない.また提供される情報もテキストや画像を中心としたものであり,経路選択の判断材料として不十分である.著者らは,参加型センシングに基づき,多数の車両が車載スマートフォンを用いて走行中の経路の動画を撮影し,景観の良い場所の動画を自動的に収集,配信するシステムの研究開発を行なってきた.これにより,広範囲にわたって動画付きの景観情報を様々な時間帯や季節のもとで自動的に収集可能となり,各ユーザのコンテキストを考慮した上で鮮度の高い景観情報を提供可能となる.本稿では,景観の良い場所として桜が見られる経路に着目し,スマートフォンにより撮影された動画から桜の写っている度合い (桜度合い) を数値化する手法を提案する.提案手法では,桜の花びらに出現する色の分布を表すヒストグラムを事前に作成しておき,そのヒストグラムを用いて入力画像における桜度合いを算出する.また,桜の花びらに近い色を持つ建物などが誤検出されることを防ぐため,フラクタル次元解析に基づきフレーム中で木の葉が茂っている場所のような複雑なエッジを持つ領域を特定した後,その領域に対してのみヒストグラムに基づく色解析を行う手法を考案した.提案手法による桜度合い算出結果の妥当性を検証するため,車両走行中に撮影された動画から桜の写っている部分,または写っていない部分の 1 秒間の動画を約 5000 個切出し,各々に対し目視で桜の有りなしを分類したものを正解データとして,提案手法に基づく分類精度を調べた.結果,提案手法は適合率が約 0.87,再現率が約 0.91 で桜の有りなしを分類できることが分かった.
著者
平部裕子 荒川豊 安本慶一
雑誌
マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.6, pp.77-79, 2013-11-27

スマートフォンやタブレット端末の普及により,タッチ操作はユーザの間で共通の技術となっている.そこで著者らは,このタッチ操作を新たなユーザコンテキストの一つとして着目している.タッチ操作というコンテキストを用いることで,将来的にユーザの感情やスキルといったより取得が難しいとされるユーザコンテキストを抽出できると考えている.本稿では,Android 端末におけるタッチ操作ログを,全てのアプリケーションから横断的に取得し,その操作を分析 (分類),可視化するシステム TouchAnalyzer に関する報告を行う.
著者
中村仁美 荒川豊 安本慶一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.1-8, 2014-11-13

ピークシフト貢献行動の容易な学習に向けたシリアスゲームの設計を行い実装・評価した結果を報告する.本ゲームでは,電力の上限 (契約電力) が設定された集合住宅において複数の住人が家電を使用して生活している環境で,プレイヤは一人の住人の家電使用予定を変更して,集合住宅全体での契約電力を超えない (ピークシフトに貢献する) ようにする.集合住宅内の電力使用予定は各家電の使用予定を縦が消費電力,横が使用時間のブロックとして表示し,ブロックをずらすことでゲーム内の予定変更を実現する.また,家電の種類や変更時間に応じて減少する快適度を設定し,これによりゲーム内に住人が予定変更の際に感じる不快感をゲームのスコアに反映する.これらの仕組みにより,プレイヤはゲームを通してピークシフト貢献行動を学習することができる.提案したゲームを実装し,被験者実験を通して,ピークシフト貢献行動の習熟度やゲームの熱中度合いを評価した結果を報告する.
著者
杉田敢 山下徹 水本旭洋 玉井森彦 安本慶一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.7, pp.1-7, 2014-03-07

近年,食生活の乱れが生活習慣病の要因の一つとして問題になっている.食生活の乱れは,人間が食事を行うのに適した時間や量を正しく認識できない事に原因がある.そこで食生活の乱れを抑制する方法として,人間の感覚的状態の一つである空腹感の推定による適時・適量の食事推薦が,この問題の軽減に役立つ可能性がある.しかし一般的に,感覚的な状態の推定は生体を傷つけて行う侵襲的測定や,専門的または高価な機器が必要であるためユーザへの負担が大きい.そのため,侵襲的ではない方法により,定量的な空腹感の度合い 「空腹度」 を推定できることが望ましい.本稿では,空腹度と血糖値との間に密接な関係があることに着目し,(1) 食事および行動情報からの血糖値の推定,(2) 血糖値から空腹度の推定,の 2 段階構成の推定モデルを構築する手法を提案する.この空腹度推定モデルにおける推定血糖値と実際の血糖値,推定血糖値と空腹度との関連性を調査するため,血糖値および生活行動の記録,およびそれらを空腹度推定モデルに適用する実験を行った.その結果,実際の血糖値と推定血糖値の推移,推定血糖値と空腹感との間には強い正の相関が確認できた.In recent years, disturbance of diet has become a problem in many countries. Disturbance of diet is caused by the fact that people are not so conscious of appropriate time to eat meals as well as appropriate amounts of the meals. Accordingly, estimating the hunger feeling which is one of the human sensory states may help alleviating this problem. However, estimation of human sensory states often requires invasive measurement by injuring human body with a special and expensive device. In this paper, we propose a method for estimating hunger degree of a user at arbitrary time from the information of meals and exercises that the user has taken. We construct the hunger degree estimation model consisting of two steps: (1) the blood glucose level from meal and exercise information and (2) the hunger degree from the blood glucose level. To evaluate the proposed method, we measured the blood glucose level of a subject at some points of time as well as the user's meal and exercise information, and applied the measured data to our proposed estimation model. As a result, we observed a strong correlation between the measured and the estimated blood glucose level and between the subjective and the estimated hunger degree.
著者
東野 輝夫 梅津 高朗 安本 慶一 内山 彰 山口 弘純 廣森 聡仁
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

今年度は次のような研究を実施した。(1)屋内空間における高精度トラッキング技術と都市街区や公共交通機関におけるトラッキング・状況理解技術の開発を行った。特に、駅構内(大阪駅など)や列車内の混雑度や乗客の行動を複数人のスマートフォンを用いて高精度に推定する技術などを開発し、その結果をユビキタス系難関国際会議PerCom2018などで発表した。また、(2)都市街区の移動ノードやデータの偏在性、モビリティの偏向性がもたらす課題とそれに対する堅牢で柔軟なフレームワークの構築手法を考案し、その成果が分散システムに関する難関国際会議IEEE ICDCS2018に採録された。さらに、(3)都市街区に多数配置されたマイクロモジュール間の通信機能や超分散型の時空間情報集約機能(自律的ロードバランス、モビリティの自動把握・調整など)をEdge Computingベースで構築し、DCOSS 2017国際会議やMobile Information Systems誌で発表した。また、災害支援のための包括的プラットフォームに関する成果をSMARTCOMP 2017国際会議での招待講演や分散システムに関する国際会議IEEE ICDCS2017で発表した。現在、(4)複数のマイクロモジュールを対象環境に配置し、十数名のモバイルユーザにより人や車のモビリティ収集実験を行うと共に、大阪大学吹田キャンパスでの実証実験を目指した取り組みを開始した。実証実験では、数十台の固定カメラやLIDAR、ドライブレコーダー、スマートフォンなどを併用した包括的プラットフォームを開発し、携帯電話網が部分的に機能しなくなった場合を想定し、(a) 安否確認メッセージなどの伝達、(b) 写真などの災害関連情報の収集、(c) 各エリアでの人流センシングに基づいた実時間空間情報の把握と可視化、などに必要な要素技術の開発を行っている。
著者
水本旭洋 KhaledEl-Fakih 安本慶一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.25, pp.1-6, 2013-12-04

本論文では,スマートハウスにおいて省エネルギーに様々なデバイスをコンテキストアウェア制御することを目的に,任意の 2 つのコンテキスト間を最小コストで遷移させるデバイス操作シーケンスを導出するツール PathSim を提案する.PathSim は,スマートスペースにおけるコンテキストの各構成要素の値域を有限個の範囲に分割することで,コンテキストを有限個の要素からなる空間として扱う.そして,各コンテキストにおいて任意のデバイスの操作イベントを実行した時に遷移するコンテキストをシミュレーションにより求めていくことで,最小コストで目的のコンテキストに遷移するデバイスの操作シーケンスを A* アルゴリズムに基づいて導出する.スマートスペースにおける典型的な要求仕様を想定したケーススタディを通して評価実験を行った結果,PathSim によって導出された操作シーケンスが,人が直感的な方法でデバイスを操作する場合と比べ,デバイスの合計消費電力量を 72% 削減できることを確認した.
著者
武兵 孫為華 村田 佳洋 安本 慶一 伊藤 実
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1141-1152, 2013-03-15

観光においては,ユーザの好む観光スポットをより多く回るスケジュールを立案することが望ましい.しかし各観光スポットにつき,観光方式や観光時間によって必要な体力が異なり,ユーザの体力がスケジュールを遂行できない場合がある.本論文では,観光中に休憩を適宜に行うことで体力の範囲内で最も満足度が高くなる観光スケジュールを求める問題を取り扱う.本問題はNP困難であり,問題例の規模が大きいときには,実用時間で最適解を算出することは困難である.実用時間で準最適解を得るため,ヒューリスティックな探索法である捕食法に基づいて複数の観光スポットを回る休憩なしのスケジュールを求めたうえ,局所探索を用いて適宜に休憩を差し挟むことで解を求める.提案手法を評価するため,異なる観光地候補数を有する複数のインスタンスを用いてシミュレーション実験を行った.その結果,候補数10の場合,提案手法は全探索で得られた解の95.65%の満足度を有するスケジュールを13秒で得られることを確認した.Tour schedules are required to include multiple sightseeing spots taking into account the user's preference, but the stamina of tourists may be depleted during sightseeing. In this paper, we formulate the sightseeing scheduling problem to maximize the user's satisfaction taking stamina into account. In this problem, break times are allocated in schedules to hold constraint of stamina. This problem is NP-hard, and thus it is difficult to be solved in practical time. In order to obtain a semi-optimal solution in practical time, we propose a method that derives a schedule visiting multiple sightseeing spots with no break times based on a predatory search technique and then allocates the break times in the schedule using a local search technique. To evaluate the proposed method, we compared our method with conventional methods through computer simulations for several different instances containing 10 sightseeing spots. As a result, the proposed method composed the schedule whose expected satisfaction is 95.65% of the optimum solution in 13 sec.
著者
孫 為華 木谷 友哉 柴田 直樹 安本 慶一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.20, pp.61-66, 2009-02-26

大規模災害により,被災地の通信インフラが破壊された場合,災害情報の収集と共有が困難となり,救援活動に大きな支障をきたす.本稿では,インフラが機能しない災害現場において携帯端末を携えた救急隊員間でDTN (Delay Tolerant Network) に基づいた通信を行うことで災害情報を災害対策本部のサーバにできるだけ早く収集し共有する方法を提案する.提案手法では,救急隊員の行動モデルを考慮し,情報伝送効率を向上させる方法を検討する.The information gathering and sharing are difficult in a disaster area where the commnunication infrastructures are destroyed due to the large-scale disaster. As a result, the rescue operation will be interfered. In this paper, we propose an efficient method for gathering disaster related information to a server at the headquarters in a disaster area, taking into account the mobility of rescue parties based on DTN (Delay tolerant Network).
著者
布川 雄大 花野 博司 孫 為華 安本 慶一 伊藤 実
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.20, pp.325-330, 2009-02-26

2006年から地上デジタル放送の携帯端末向けサービス(ワンセグサービス)が提供されている.一般的にワンセグ放送は移動受信に強いと言われているが,ショッピングセンタや駅構内,ビルの陰となる場所では,電波が遮られてしまう難視聴エリアが発生する.本研究では,近隣の複数携帯端末がアドホックネットワークを形成し,ワンセグ放送の電波受信品質の良い端末から悪い端末に対してデータ中継を行うことで難視聴エリアにいる端末でのワンセグ視聴品質を向上させる方法を提案する.本稿では,無線通信帯域の制約,リアルタイム性を損なわないための伝送遅延の制約を満たした上で,難視聴エリアにおいて救済される端末数を最大化する問題を定式化し,その問題を解くヒューリスティックアルゴリズムを提案する.また,これまでに得られたシミュレーションによる評価結果を報告する.The 1-segment broadcasting service, a digital TV broadcasting service for mobile/cell phone terminals has been provided in Japan since 2006. In general, 1-segment broadcasting is likely to achieve stable radio reception at user terminals even with strong mobility. However, there are still some areas where it is difficult to view a high quality videos (e.g., in train stations, shopping centers, etc) due to weak radio wave attenuation in those areas. In this paper, we propose a method to salvage user terminals in those weak 1-segment radio wave areas by transmitting videos from terminals in good radio wave areas through wireless multi-hop paths. For this purpose, we first formulate the problem to maximize the number of salvaged terminals in weak radio wave areas under constrains of wireless bandwidth and latency in watching videos in real-time. We propose a heuristic algorithm to solve the problem, and evaluate the algorithm with computer simulations.